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寒い。


もうどれくらいの時間ここにいるかわからない。


もう慣れたけど、寒いのも暗いのもきらい。


はぁ......


もしこの心に、もう一度ぬくもりを感じられるのなら.........


◆ ◆ ◆


「こんにちは〜」


さて、場所は学校から.....


「いらっしゃい、坊」


日本の歴史を感じる屋敷へと移る。


俺は、眼前に広がる敷地にもう何度目かわからない関心をしていた。


西洋の豪邸かって思うほどの敷地を持つこの場所には、中央にどこか懐かしさを感じるような風情を感じる建物が立っていて、その横には日本の歴史をよく感じる庭園が広がっている。


玄関口に立つ立派な門には複数の御札が貼られており、ここが霊術師関係の場所であることを示唆していた。


ここは霊杏家。


およそ百年ほど前から代々死神を排出している、霊術師のエリート家系だ。


この地域に住んでいる霊術師で知らない人はいない。


まぁそんな霊杏家も今は婆ちゃん一人を残して他におらず、現在霊杏家は、霊術師たちが集まる憩いの場のようになっている。


俺は今日、婆ちゃんに用事があって会いに来た。


そして、そんな俺の後ろには........


「お邪魔します......」


「おっ邪魔しまーす!」


容姿の整った女の子が二人。


俺の背後から控えめに挨拶するのは、死神でありクラスメートの朝倉未来。


そして、もう鬱陶しいくらいの声の大きさで挨拶を返すのは、みんな気になっているであろう.........小雪である。


さて、前フリが長くなったが、ここに来ることになった経緯を話そうと思う。


時間は学校まで遡る。


◆ ◆ ◆


「ということで先輩!今日婆ちゃん家に行きたいです!」


「おう.......。別にいくぶんには構わないけど何かあるのか?」


「霊波を図ってほしくて!」


「ああ、なるほど」


先程の茶番は終わり、小雪と戯れていると、突然小雪が話を切り出す。


婆ちゃんとは、俺が小さい頃からお世話になっている霊杏家の当主、霊杏 美代子のことである。


強大な霊力をその身に宿す、元最強の霊術師。


日本の霊術師でその名を知らぬものはいないとも言われるくらいの生きる伝説。


他人の霊波を測るという高度な技術は婆ちゃんくらいしかできる人を知らない。


今は年なんかの影響もあって戦いに出てくることはないが、相変わらずその霊力は衰えることを知らず、多分本気を出したら高位霊くらいワンパンすることができるだろう。


そんな一歩間違えたら恐れられるような実力を持つ婆ちゃんだが、実際、人望はすごい。


婆ちゃんに救われた霊術師なんて数え切れないほどだ。


子どもの俺たちからしても話しかけやすく、相談相手として彼女ほど優れた人もなかなかいないと思う。


そのため、婆ちゃんのところへはたくさんの霊術師が訪れる。


正直、霊術なんかを除けばただの優しい婆さんだからな。


そもそも孤立に陥り気味な霊術師たちにとって、婆ちゃんのような人間は必要な存在だしな。


かくいう俺も婆ちゃんには色々助けてもらったりしたからなぁ。


なんて、俺が思い出にふけっていると......


「な・る・か・み・くん?」


ゾクッ!!


突然後ろからとんでもないオーラを感じた。


霊たちと退治するときよりも圧倒的に大きい恐怖のオーラ。


やばい、冷や汗が止まらない。


恐怖のあまり少し震えながら後ろを向くと.......


そこには、笑った鬼がいた。


鬼、もとい朝倉は、額に青筋を浮かべながらこちらを見つめる。


「お、おお....その、どうしたんだ朝倉?なんか怒ってるか?」


「怒ってる?怒ってなんてないわよええ怒ってなんてないわただ聞きたいことがあるだけ」


ええ........絶対怒ってるでしょ。


なんて、口を挟めるはずもなく。


俺は朝倉におそるおそる聞く。


「で、お、俺に何を聞きたいんだ?」


「そこにいる鳴神くんにベタベタしてる後輩のことよ。あなた誰?」


本当に、本当になぜだかはわからないが、朝倉は小雪に向かってフシャー!!と威嚇のような声を上げている。


いや、猫かよ。


ちょっとかわいいなぁ、とか、キャラぶれてないかなぁとか、そういう恐怖感の薄れた俺の感想はさておき。


今まで頭にクエスチョンマークを浮かべていた小雪は、急ににっこりと朝倉に笑い返すと。


「先輩はぁ.......私のダーリンです♡」


俺の腕に抱きつきながらそう言い放った。


いや、違うよね?何言ってくれてんの?


「いや、違.....」


俺が弁明しようとしたその瞬間。


ぴきっ!!


まるで空間が割れたような音が朝倉から聞こえたかと思ったら、そこにはさっきよりも怒りの色を濃厚にする朝倉がいた。


そしてものすごい速さで朝倉がこちらに迫ってきて..........なぜだかわからないが顔を赤くしながら俺のもう一方の腕に抱きついた。


うん......いやなんで?


今の朝倉の顔の赤さは怒りなのか、はたまた羞恥なのかわからない。


その様子を見て、今度は小雪が少し不機嫌になる。


「えーっと、朝倉?何してるんだ?」


「牽制よ、そこの女狐に」


「なーにが女狐ですか!狐は否定しませんけど、泥棒猫には言われたくありませんね!」


「誰が泥棒猫よ!」


「あなたですよ!」


「えぇ........」


もう、俺は終始困惑しっぱなしである。


はぁ、理由がわからん.......

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