1. 出会い
「ふわあぁぁぁぁ.........」
今日も今日とて睡眠不足。
いつもどおりの朝を迎えた俺、目黒黄泉は、大きなあくびをしながら学校への道を歩く。
高校二年の春。
桜はすでに散り始め、始業式の頃に見られた淡いピンク色は、次第に緑へと変わりつつある。
それでも、この一本道の両側を彩る桜並木は見事で、思わず立ち止まって見惚れてしまうほどだ。
改めて周囲を見渡すと、一年以上通い続けたこの道も、去年とは少し違っていることに気づく。新しい建物が増え、古い家々が姿を消している。時間の流れを感じ、少し寂しさを覚える今日このごろ。
俺は登校時間ぎりぎりに正門をくぐった。
「おはようございま〜す」
「おう! おはよう目黒! 相変わらず今日もギリギリだな!」
そう声をかけてきたのは、体育教師の田中敦。大柄で暑苦しいが、生徒に人気のある先生だ。
俺が最後の登校になることが多いせいで、一緒に校舎へ向かうのが恒例になっている。
「それにしても、寺に生まれたお前が時間にルーズなのは意外だったな〜! ガッハッハ!」
「ルーズって言っても、遅刻したことはないですよ……」
「確かに、いつもギリギリなのに一秒も遅れたことはないな。もはや職人技だな!」
田中先生は今日も豪快に笑う。
先生の言うとおり、俺は寺の家に生まれた。
この“黄泉”という名前には「死した人さえも導けるように」という意味が込められているらしい。
いかにも寺らしい名前だ。
いや、寺らしい名前ってなんだよ。
「そういえば、今日はあの日だな!」
「あの日って……何かありましたっけ?」
俺が尋ねると、田中先生はニヤリと笑う。
「お前は興味なさそうだもんな。今日はお前のクラスに女子の転校生が来るんだ」
「へぇ……」
興味がなさそうに見えたかもしれないが、そんなことはない。
この時期に転校生……珍しい。
考え込む俺を見て、田中先生はさらにニヤリと笑い——
「まさかお前が興味を示すとは……。女子だからって襲うなよ?」
「俺をなんだと思ってるんですか……」
「ガッハッハッハ!」
二人しかいない玄関口に、先生の豪快な笑い声が響いた。
◆ ◆ ◆
「……ということで、駒込未来さんの席は目黒くんの隣ね。目黒くん、教科書が届くまで駒込さんに見せてあげてね」
朝のホームルーム。
担任の井上真央が、転校生・駒込未来を紹介した。名前と出身地を簡単に述べるだけの、質素な自己紹介だった。
そして現在、彼女は俺の隣の席に座っている。
もともと俺の隣にいた女子は、心の病気で学校に来られず、転校することになった。そのため、しばらく空席だった俺の隣に、駒込が入ったというわけだ。
「よろしくな、駒込」
「こちらこそよろしく」
それだけの会話。
少ないと感じる人もいるかもしれないが、初対面なんてこんなものだ。
俺は陰キャだし、初対面で会話が続くなんて無理だし。
駒込未来の第一印象を一言で表すなら——冷静。
感情の起伏が少なく、人との関わりを極力避けているように見える。
教室に入ってきたときから、どこか他人を寄せつけない雰囲気をまとっていた。
おそらく、人付き合いが苦手なタイプだろう。
……なんだか仲間意識が湧くな。
いやいや、勝手に仲間意識を持つ俺、キモくね!?
そんな自己嫌悪をしている横で、彼女はもう読書に没頭していた。
まぁ、あくまで第一印象だし、実際どんな人なのかはわからないけど。
そんなことを考えながら、俺は窓の外へ視線を移す。
今日の天気は快晴。
窓いっぱいに、澄みきった青空が広がっていた。
◆ ◆ ◆
古典の授業中、俺は質の悪い睡眠をとっていた。
鐘の音が校舎に響き、意識を取り戻す。
7時間目が終わり、帰り支度を始める。
周囲を見渡すと、みんなも眠そうな顔をしていた。
今日は妙に短く感じた。
なぜだろう。
転校生の影響か?
いやいや、俺がそんなことで浮かれるわけがない。
そんなことを考えながら、帰りのホームルームを終えた。
ふと、ある女子が目につく。
彼女の表情はまるで何かに取り憑かれたように曇っている。
嫌な予感がした。
廊下で彼女を追うと、彼女は下駄箱へ向かわず、屋上への階段を上っていく。
俺はその後を静かに追った。
屋上への扉を開けると、夕日と心地よい風が俺を迎えた。
そして——
手すりに身を乗り出している彼女の後ろ姿が目に映った。
お読み頂きありがとうごさいます!
新連載開始です!ぱちぱち〜!
だいぶ書きだめあるんでまあまあな頻度で出せると思います!
ぜひ読んでいただけると嬉しいです!
ちなみに話は変わりますがもうすぐバレンタインですよね。
みなさんは貰えるんでしょうか。
僕ですか?もらえるにきまってるじゃないですかもう!(プンプン)
ではまた次の話で!




