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回復ポーションは儲かるらしい

 翌日、朝食を済ませた僕達は市場に来ていた。

 一番の理由は賃貸契約の為なのだが、同時に市場調査も兼ねている。

 朝から市場にはかなりの人が集まっていた。人口が減少傾向とは聞いているが、王都と変わらない程、沢山の人が集まっている。

 商品は農産物が中心。果物も多く、ブドウ、リンゴ、ブルーベリー、モモ、アプリコット等々が生の物や乾燥したものも売られている。そして肉だけでなく魚もたくさん売られている。逆に鉄製品、陶器やガラス細工などは少なく高い。当然、薬草もチェックする。品揃えはなかなか豊富だ。今売っているものだけでも作れる薬がいくつもある。聞くとやはり東側の山脈の森で多く採れるらしい。そして川を使ってこの町まで運んで来ているようだ。魚もその川で獲れたものだろう。

 東側の山脈は険しい高山で超えるのが難しく、国境にもなっている。東の隣国はこの大陸東側の沿岸部分と島々から成る海洋国家だ。山脈を越える事が出来れば隣国との間に流通が生まれる。この町にはそれを期待されていたが、出来なかったのでこの有様というわけだ。

 人も商品もたくさん集まる良い市場だと思ったが、少し違和感があった。どことなく人々の顔は暗く、不安の色が見え、活気に欠ける印象があるのだ。客と商人の会話も少なく、必要なものを買ったらすぐに帰っているような、そんな風に見える、気がする。

 気のせいだと良いのだけれど。

 さて、次は住むところを探そうか。

 人が集まる場所は大体3種類ある。教会か、酒場か、市場だ。一番集まるところがいわゆる集会所の様になり、領主からの告知などもその場所で行われる。この町は市場が集会所を兼ねている様だった。おそらく聖王国がこの国の北西方向にあり、この町がこの国の東の果てで遠く、ほぼ陸の孤島のような状況の為、教会の影響力が小さいのだろう。そして酒を十分に造れるほど食料に余裕がないので酒場にも活気がない。そんなところだろうか。

 市場の中央付近に、大きな木の板に紙が貼りつけてあるのを見つけた。その横に案内人らしい男もいる。僻地にもなると識字率は高くない。案内人、いわゆる情報屋になるのだが、ここで口頭で説明を受ける者も多いだろう。むしろ情報屋から聞ける事の方が多いかもしれない。一応掲示板に目を通してみるが、大半が求人で賃貸の案内は無かった。あまり需要も無いのだろう。

 案内人に金を渡すと親切にも大家のところに案内してくれた。皮肉にも空き家は沢山あり、しかも安い。町のはずれにある小さな薬品工場の近くの空き家に住むことにした。2階建てで2人で住むには広すぎると思ったが、スピラが自分の部屋を欲しがるのは間違いないし、広すぎるくらいが丁度いいだろう。なにより町の中心から離れているせいで安いし。

 痛んだ家具が放置された家に荷物を持ち込み、2人で掃除を進める。広い家なので掃除が大変ではあるのだが、風魔法を使って家じゅうのほこりを外に押し出したら水魔法で家ごと強引に水洗いしてすぐ乾燥させれば終わる。あとは目立った汚れをふき取るだけだ。痛んだ家具もひび割れや多少の欠け程度なら修復魔法で直せる。

 思ったより早く終わったので、市場から蜜蝋を買ってきて2人でワックスがけもすることにした。ついでに食材や日用品も買い込んでおく。ワックスがけで古くなっていた家具がぴかぴかになっていく様子を見るのは気持ちがいい。

 さて、この家はなかなか立派な家で水洗トイレもあるが、浴室が無かった。別に風呂屋を利用してもいいけれど、距離的に結構離れているので勝手に増築して浴室を作ってしまおう。飛行魔法でこっそり町の外に出て適当な岩を探し、飛行魔法で運ぶ。家まで岩を運んだところで土魔法で岩を変形させ、石造りの小屋を作って家と接続した。小屋の中には岩をくりぬいたような形で浴槽を作る。お湯はりと排水は全て魔法で行うつもりだ。

 問題は工場の方だが、今日は遅いので明日にしよう。慣れない魔法で魔力もかなり使って少しふらつく。もうあまり考えることを増やしたくない。

 買ってきた食材を使って簡単に夕食を作る。カットしたパンと、魚の干物とルタバガを使ったスープ。それと刻んだ芋と何かの肉のベーコンの炒め物も作った。全部一人暮らしだとやりがちな料理だ。干物とかベーコンはまとめて買い置きして使えるので便利すぎる。ただこっちはバターもチーズも売ってなかったんだよなぁ。あんまり酪農が盛んじゃないのかなぁ。

 ワックスでテカテカになったテーブルの上に皿を並べて、スピラと2人向かい合って料理を口に運ぶ。スピラは魚の干物の骨が気になるようだった。骨を飲み込まないようにほぐして骨を抜いてあげた。

 味は宿屋で食べた料理に比べるとやっぱりだいぶ劣る。特になんだこのベーコンは。獣臭さが結構あるし、固い。スピラもあまりお気に召さなかったようでベーコンを皿の端に避け始めた。

 避けられたベーコンを回収して代わりに食べる。ごめんほんとごめん。せめてもう少し小さく切ればよかった。

 血抜き失敗した肉だったのかな。まだ結構残ってるんだけどどうしよ。確か生姜を売ってたと思うんだよな、あれでなんとか出来ないか。

 いろいろ調理を思案しながら食事を済ませ、食器を片付けてからお風呂に入ることにした。

 岩の浴槽にお湯をはり、2人で一緒にお湯に浸かる。

 風呂屋は男女別だし、男湯にスピラを入れることは出来ないし。かといって個室はあんなだし。

 だいぶ無茶苦茶やったけど、こうするしかなかったよなあ。飛行魔法使えないままだったらだいぶ困ってたぞこれ。今はまだいいけど、そのうち女の子の悩みとかも出てくるだろうし、どうしたものか。

 あっ、まずいまずい、また考え事をして長風呂になってしまう。

 のぼせてしまう前にあがってしまおう。

 服を着て、寝る前に一応家の周りを見回る。一緒に行きたがるスピラと手をつなぎ、灯をつけてぐるりと家の周辺を回った。特に妖しい人影や野犬などもいない。平和なものだ。

 特に問題はなさそうだったので家に戻り、さっさと寝ることにした。

 大きなベッドに2人で一緒に布団に入って眠る。ベッドを別に用意したほうがいいかとも思うが、僕も実家では家族全員一つの大きなベッドで寝ていたことを思い出していた。なんだか懐かしい。今はこれでいいか。そのうち考えよう。



 翌日、スピラを連れ二人で工場に向かった。

 2年間も放置され続けた工場の扉の鍵を開け、戦々恐々と中の様子を窺う。

 締め切られた薄暗い部屋。埃っぽい匂い。カビっぽい匂い。

 大きなテーブルの上に置かれたままのガラス器具。蒸留塔とマントルヒーター。恒温槽。カラム。天秤。4枚刃の普通のミルとハンマーミル。バーナー。大型オーブン。薬品棚には中身の入った試薬瓶が並んでいる。引き出しの中にもスパーテルや温度計など器具が保管されていた。床には大型の撹拌機や化学用オートクレーブ、大型のオートデシケーターなどが設置され、どうやら必要そうな器具は一通りそろっているようだ。これだけの器具は相当な高額になるのだけれど、これを2年も放置していたというのだから税金の無駄遣いにも程がある。それだけ国がこの町にかけていた期待は大きかったという事か。

 窓を開けて換気し、慎重に風を送って埃を追い出す。そして家を掃除したときと同じように水洗い。出来るだけ装置に水がかからないように少しずつ慎重に行う。埃を被ったガラス器具は水に漬けて魔法で超音波洗浄。薬品工場で働く魔法士は少ないがガラス器具との相性が良く、新人の頃は一日中この作業をやらされたものだ。

 汚れを落とした器具を再度流水で洗い、風で完全に水気を飛ばし、オーブンの中に入れる。170度2時間をセットし、動作させる。動くか不安だったが、問題なく使える様だった。

 スピラは僕の作業を興味深そうに見つめていた。扱い次第では危ないものも多い為、触らせることは出来ない。退屈な思いをさせてしまったかもしれない。彼女にも何か仕事を任せられたら人件費の削減……いやいや、教育にもなって良いのかもしれないが、難しいところだ。

 さて、試しに簡単な回復用ポーションを作ってみよう。

 作り方や原理を再確認も兼ねて、スピラに説明しながら作ってみる。

 回復ポーションの原料として有名な薬草であるマセラン草をすりつぶし、ジャガイモから抽出したデンプンを加える。混合物をフラスコに入れて栓をし、撹拌しながら恒温槽に置き25℃に保ちしばらく放置する。その間にハーブや薬草として良く知られる乾燥リコリスをミルで粉末にしておく。漏斗に紙をセットし、いつでも濾過できるようにしておく。

 マセラン草とデンプンの混合物に戻り、フラスコの中に魔法をかける。使うのは回復魔法だ。そう、教会が禁じている回復魔法なのである。屁理屈に聞こえるが、教会が禁じているのはあくまで人体に対する直接的な回復魔法の使用であり、それ以外に使用することは禁じられていない。よく勘違いされるが回復ポーションの回復力は回復魔法由来であり、薬草の薬理作用とは全く関係がない。マセラン草などの薬草と回復魔法の組み合わせが、大昔から利用されている完全に安全な回復魔法の使用方法なのである。

 回復ポーションに利用される薬草はマセラン草の他にも様々存在する。研究によると、これは薬草による作用ではなく、薬草に共生している細菌の作用であると考えられている。草ではなく菌の方が重要なのだ。過去の報告では腐ったジャガイモでも回復ポーションの製造に成功している。この菌が植物のデンプン質から回復魔法を伝達する包接化合物を作る。包接された回復魔法が体内、あるいは患部に触れることで、主に患者の魔力を利用して適切に回復魔法が働くのである。

 回復魔法の致命的な欠点として異常回復があるが、これは術者と被術者の魔力の干渉による過剰増幅や反発によるものと考えられている。包接化合物に回復魔法を担持させることで、この問題を回避しているというわけだ。

 ちなみにリコリスは消炎鎮痛作用と香り味付けに良く使われている。ポーションの味というとだいたいリコリスの味の事だ。高級なポーションには更にピオニー等を加える事もある。

 回復魔法を込めると溶液が緑色に変わっていく。終わったところでフラスコに粉砕した乾燥リコリスを加え、撹拌する。そして加熱し90度を1時間保つことで殺菌と煮出しを行う。冷ました後、ろ紙で濾過し緑色の半透明な抽出液を得た。

 これを色や魔力を見ながら蒸留水で適度な濃度に希釈し、瓶詰して回復ポーションの完成。とりあえず10本ほど作ってみたが、まあ悪くない出来だろう。王都ならこれを0.8倍くらいに希釈するが、もちろん規定通りの濃度で販売する。

 ガラス瓶が割れないように、また持ち運びやすくするために瓶の周囲を樹皮の紐で縛り、持ち手を作った。それを藁と一緒に木箱に詰めて、市場へと持っていく。空いたところに折り畳みの椅子を置いて座り、回復ポーションを並べる。金額と1人1本までの注意書きを掲示し、客を待った。

 すると数分もしないうちに客が集まり、回復ポーションはすぐに売り切れてしまった。たぶん転売されると思うけど、別に好きにやってくれてかまわない。十分な需要があることは確認できた。

 紙に回復ポーションを製造していること。決まった価格で販売する事を記載し、掲示板に張り付けておいた。そのうち周知されるだろう。


 翌日も同じ様にポーションを作った。スピラには蒸留塔の使い方を教え、蒸留水の作り方を教える。火傷、突沸、空焚き、ガラス器具の取り扱いには十分に注意するよう説明し、一緒に作業した。何かあるかもしれないと思うと、不安で目が離せないが、意外と要領良く丁寧に作業している。これはそのうち全部一人で任せられるようになりそうだ。

 原料のリコリス、マセラン草は市場で安定して手に入る。問題はガラス瓶の方だ。この町ではガラスを作っていないのかあまり流通していない。ガラスを作れるかどうか試してみる必要がある。後は使用済みの廃ガラスを市場で回収してみるか。コルク栓の方は足りなくなったら木屑をにかわで固めて代用するか。

 今日は回復ポーションを20個作り、廃ガラス回収用の箱も持っていくことにした。

 やはり回復ポーションはすぐに売り切れ、廃ガラスもポーション瓶とは全く関係のない割れた廃ガラスが少量持ち込まれた。

 今のところ順調だ。回復ポーションだけを必要分だけ売っていけば人件費を考慮しても黒字に出来るだろうと思う。この一般的な回復ポーションだけを販売するなら、の話だが。

 医薬品販売が赤字になるのには様々な理由がある。単純な回復ポーションなら原材料も比較的安く手に入り、利益も出しやすい。しかし実際には様々な医薬品に需要があり、多様な薬を作っていかなければならなくなる。そうすると入手しづらい原料を用意する必要が出て来るし、その薬が売れなければ廃棄にもなる。保管するにも場所を取り、市街地だと倉庫代も高い。完全な受注生産という形にすればロスを無くすことは出来る。しかしその場合必要なタイミングで薬を供給できないという問題が発生する。薬が出来た時には患者が死んでましたでは話にならないのだ。

 つまり赤字を出さないようにするには、薬の需要をどう見極めるかという点がまずは重要になる。

 その為にはやはり市場調査だろう。この地域にどんな持病の人が多く、どんな疾患が流行しやすく、どんな体質の人が多いのか研究しなければならない。だがこれは一朝一夕で出来る事ではない。

 とりあえず今出来ることは、信頼関係の構築だろう。患者が薬を使うかどうかは完全に信頼関係に依存する。この前提を作れなければ話にならない。

 安定した効果と安定した価格、そして適切な情報共有を心掛けなければ。

 といっても最初なせいか、みんなよそよそしくて話しないんだよなあ。


「おう兄ちゃん、儲かってるみたいじゃないか」

「ああ、グレッゾさん。こんにちは」

「スピラちゃんもこんにちは!」

「うんっ、こんにちはっ!」


 いかつい顔のグレッゾさんに、スピラは笑顔で挨拶する。

 グレッゾさんも僕も自然と笑顔になってしまう。


「こりゃあいい看板娘になりそうじゃないか。ところで相談なんだが、うちにもポーションを卸してくれねえか。隣村にもポーションを欲しがる奴はたくさんいるんだよ」

「ええ、喜んで! 何本程度用意しましょう?」

「そうだな、まずは20本は必要だろうなあ。明日の朝には欲しいんだが、出来そうかい?」

「大丈夫ですよ。今日中に作っておきます」

「よっしゃ、じゃあ明日の朝に取りに行かせてもらうわ!」


 グレッゾさんは代金を割増しで先払いすると、笑顔で去っていった。

 20本か。市場で販売する分も考慮すると40本は作っておく必要がある。少し多めに薬草を仕入れておく必要があるな。

 そう考え市場の薬草店に向かったのだが……


「はぁ……やっぱりこうなるかぁ」


 ため息をつく。

 マセラン草の価格は2倍になっており、しかも回復ポーションを20本しか作れない数だった。薬草を採取できる量が日によって大きく変わるのは当たり前だし、良く売れるなら値上げもする。当然の事だった。

 2倍の値段で買っても良いが、もし買えば明日また値上げされるだろう。どこかでNOを突きつけられなければ、いくらでも値段は上がってしまう。しかも買ったところで目標量には届かない。

 さてどうしたものか。

 まだ昼前で時間は十分にある。

 今日は薬草を自前で用意しよう。

 先に説明した通り、回復ポーションの原料になる薬草は複数存在し、重要なのは共生菌の方なのだが、多くのハーバリストはこの事実を知らない。マセラン草は葉茎にデンプンをため込む性質のある植物で、類似の薬草はやはり葉茎にデンプンをため込む性質を持っている。そしてその性質のある植物がマセラン草の周囲に生えていれば、回復ポーションの原料として問題なく使えるのだ。仮にマセラン草が減り、採取が難しくなったとしても周囲に似た植物があればそちらで代用できる。

 スピラを連れ、飛行魔法で東の山まで飛んでいく。マセラン草は比較的木の少ないところに生えていることが多い。荒地でも生える生命力の強い草だ。木々がまばらに生えているところに目を付け、着陸する。

 2人で一緒にマセラン草を探していると、スピラが先に見つけてしまった。

 こういうのは子供の方が上手かったりするんだよなあ。

 周囲にも複数生えているのを確認し、何本か採取する。そして近くにある樹を見ると、アカマツが複数生えていた。これは裏技なのだが、アカマツも樹皮にデンプンをため込む性質があり、マセラン草の近くに生えるアカマツの樹皮は回復ポーションの原料として使える。ただしアクが多く味は落ちる。このアカマツの樹皮を採取すれば、40本分の回復ポーションを十分に作れるだろう。

 何本かアカマツの枝を採取し、表面の皮を剥がしてやわらかな内皮を採取する。急いで工場に戻り、アカマツの内皮を水に漬けた。少しでもアク取りをするためだ。

 アク取りを済ませたら乾燥させ、細かく刻み、ミルで粉にする。そして少量のマセラン草と混合する。後はいつもの回復ポーション作成と手順はおおむね同じだが、マセラン草以外の薬草を代用する場合はデンプンとの反応時間を長くとったほうが良い。

 なんとか40本作ることが出来たが、もう夜中になっていた。この方法でも品質に問題なく作れるが、どうしても時間がかかりすぎる。マセラン草を栽培する等、もっと効率的な方法を考えたほうが良いだろう。

 王都ではマセラン草に共生している菌を培養して使っているが、この方法は完全な無菌状態を保てる環境を整える必要があり、ここでは出来ない。しかも維持費が高コストで王都でも利益を出しづらい。酵母の様な菌なら比較的楽なのだが、脆弱な菌を扱うのは雑菌の混入の問題があり、最先端の設備でも非常に難しいのだ。

 なれないフィールドワークを頑張ったせいか、くたくたに疲れてしまって、倒れるようにベッドに入るとすぐに眠ってしまった。



 翌朝早く、グレッゾさんがやってきた。

 約束通り20本のポーションを引き渡すと、グレッゾさんは満面の笑みを浮かべて受け取ってくれた。馬車にポーションの入った木箱を乗せ、街の外へと向かっていく。あちこちの村を巡るのだろうけれど、果たして20本売れるだろうか。少し不安だ。

 市場に持って行った20本のポーションは、昨日と同じ様に早くに売り切れてしまった。廃ガラスも昨日より多く集まった。瓶のストックが少なくなっていたが、この量ならなんとか足りるだろう。

 マセラン草の価格も以前と同じ値段に戻っていた。他の薬草も、特に値上げした様子はない。帳簿を確認するが、赤字にもならなそうだ。

 問題はこの地域にどういった病気が多いか、というところ。

 そろそろそのあたりの情報収集を進めていかないと。

Q.マセラン草の代わりにアカマツ内皮を使用して回復ポーションとして販売するのは法的に問題ないのですか?

A.現実だと明確なGMP違反になります。この世界でも好ましいやり方ではありません。原材料を開示して別商品として説明し販売するのが正当な販売方法です。現実世界の類似例としては、クラシエの六君子湯は原料に白朮を用い、ツムラの六君子湯は蒼朮を用いていますがどちらも六君子湯として販売しています。


Q.グレッゾさんに割増しで薬を売るのは違法では?

A.現実では患者が医療保険を利用する場合、薬の価格は薬価で定められています。この世界もそれに似た感じにしていますが、現実でも医薬品卸が小売業に販売する場合の価格は定められていません。実際に薬局が卸(他薬局等を含む)から薬価よりも高い価格で薬を買う事があります。この場合、薬局の『薬価差益は』当然赤字になります。

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