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痛みを知るから優しくなれる  作者: 天野マア
3章 アンタレス、中編 
83/136

悪夢の終わり

「飛ぶ鳥を撃ち殺すのは得意なんだよ」


 そう言ってエイナルは僕に銃弾を放った。


 

 コンクリートの道を進む中、突如大きなサイレンが鳴り響く。

 この状況を鑑みるにエレノアさんが外にいるクレアさん達の事を報告した事の変化だと考えられる。

 ただ内側にいるはずのエイナルが僕の侵入に気付いているかはわからないが、どちらにしても油断はできない。

 希望的な観測になるが警備の者や罠がないことを考えると


「僕の事は気づかなかったと」


 そう判断することもできる。

 なら急ぐべきだと、無駄に入り組んだ通路を進む。

 施設の地図はないが、地下ということは反響し易いということ。

 つまりは探知魔法がより効果的に機能する。

 案外簡単に施設の地図は頭の中で出来上がる、そして一つの扉の前で足を止めた。

 理由は簡単だ、この部屋の先にエイナルがいる。

 何故すぐ突撃しないのかというと、子供達とエイナルどちらの対処を先にしたほうが成功率が上を考えてしまった。

 気持ち的には子供を優先にしたいが、子供達を守りながらエイナルと戦うのは得策とは言えない。

 だがエイナルの対処をしている間に今だ姿を見せていない警備員なるものがいたとしよう。

 その警備員が子供を別の場所に移動させるかそれとも人質にするか、その状況を作られるのも厄介だ。

 ならばどちらを選ぶ。

 答えは簡単だ、僕はエイナルを先に倒す方を選んだ。

 子供達に闘技場のような場ならともかく、生き死にの掛かった戦いを見せたくない、それだけの理由だ。


「入るか」


 扉の横にある四角い装置に触るとあっさりと扉は開く。

 エイナルは誰かが入ってきた事には気付いたがそれが敵であるとは気付かない。


「エレノアか外の連中は片付いたか、ここは廃棄してダンジョンのクソジジィの隠れ家に行くぞ、データの抹消を手伝え……エレノアか? アイツは今外でっちお前か」


 部屋の奥にある精密そうな機械を弄っていたエイナルは僕の顔を見て舌打ちをする。

 眉間に皺を寄せ不機嫌そうな顔を作っているが、それは僕に対してではなく、あくまで現在行なっている作業に関してのようだ。

 彼は一瞬僕を見ただけですぐに手元にある機械を再び弄り始めていた。


「覚えていてくれたんだ」

「ああ、今まで忘れてた。そしてもう忘れる」


 以前こちらを見ないエイナル。

 剣を右手に鞘を左手。

 左手で持つ鞘を引きずりながらエイナルの元へ一歩ずつ距離を詰める。


「っち、うるせえ」


 鞘を引きずる音に気が散ったのだろう。

 エイナルはこちらを見ずに銃を撃つ。

 一切の予備動作のない早打ち、空気の流れにすら逆らわない自然に放たれる弾丸。

 それを右手の剣で弾き、何事もなかったかのように鞘を引きずりながら前にでる。


「へぇ、面白そうじゃないか」

「無駄だ、相性の問題でお前は僕には勝てない、それこそ奇襲でもしない限りは」


 機械から手を離し腰にあったホルスターからエイナルは2丁の銃を抜く、そして明後日の方向に銃を向け弾丸を放つ。

 エイナル得意の跳弾による攻撃。

 弾丸はコンクリートの壁を跳ね僕の側面を囲むように襲ってくる。


「……」

「おらおらおらおら」


 だが問題ない、全て見えている。

 僕とエイナルの相性の差がどこからくるか?

 それは探知魔法で周囲の状況を把握する僕は相手の遠距離武装その射線の把握が完璧に出来る点だ。

 跳弾などの技術は意味をなさない、ただどこに何がくるか確実にわかる、それだけでエイナルを詰ませることができる。

 ただ予想外なことと言えば、弾丸が本来の直線移動ではない、横に軌道を変えたことだ。

 


「飛ぶ鳥を撃ち殺すのは得意なんだよ」

「弾が曲がるか……厄介な」


 その一発は太ももに命中したが今更その程度では苦痛の表情すら見せない。

 今までェイナルが放った弾丸を回避などはしない。

 あくまでゆっくり一歩ずつ、鞘を床に引きずりながら進み続ける。

 弾丸から身を守る行動は右手の剣で弾くのみ。


「なんだ、その気は」


 僕の体から赤い気が漏れ出し気の周りに中には銀色の粒子が輝く。

 奥義と気を同時に使い極限まで身体能力を上げる。

 が焦る心を縛り付け、体に力を溜める。

 ここは相手の領域だ、もしかしたら壁から武器が出てくるかも知れない、どんな場面でも対応出来るように速度を自身の身体から出来るだけ削ぎ落とす。


「足を撃たれた苦肉の作か? その行動機動力を自分から潰されましたと宣言してる見たいなもんだぞ」


 エイナルは言葉でこそ挑発しているが冷静さはない。

 そしてエイナルもついに本気か、両手に持つ2丁の銃を連射、弾丸を跳弾させ陣を敷く。

 弾丸が空間を狭め最終的には上下左右斜めまで含めた銃弾の嵐がその場を支配するはずが、僕の剣の一振が弾いた弾丸1つが跳弾するたびに他の弾丸その軌道をほんの少しずつずらしていく。


「っは、ふざけんなよ」


 結果、完璧に思われた陣は崩壊した。

 そもそもエイナルは勘違いしている。

 僕とお前の相性は悪いのではなく最悪、例えシリウスにいた時の僕であっても勝てるだろう。


「エイナル、お前に勝ち目など存在しない」


 場所も良くない。

 この狭い空間、床壁共にエイナルの得意技の跳弾を活かしやすい環境だろう。

 でもそれは僕の探知魔法も同じ、固い壁、狭い空間、よく音が波が反響する。

 本来専用の道具がないとできない、探知魔法の高負荷モードを再現できるほどに。

 だからエイナル君の撃った弾丸は君の味方ではない、僕の物だ。


「ならこれはどうだ」


 エイナルのその一言で奥の壁が開き何か人影が出てきた。

 その人影は口を封じられ、手を後ろに縛られている。

 だがその姿は僕がよく知っている人物に似ていた。


「レクト?」


 目は虚でしかし僕をその瞳に入れるとそのままこちらに向かって走ってくる。

 戦いの場であまりに不用心な行動。

 探知魔法で調べた結果は人形。


「偽物だな」


 そもそも必要だから攫ったのにこんな捨て駒のような真似はさせない。

 そして僕がこの部屋に入るまでエイナルは僕の存在を認知していなかった。

 闘技場の活躍を見聞きし、いずれここまで来ると予想していたのなら僕の専用のトラップがあったとしてもおかしくないが、この戦闘が始まった当初エイナルは僕に興味を示していなかった。

 ただの暇つぶしで作ったそう考える方が合理的か。


「さて、試してやろうお前の善性を」

「お前!!」


 エイナルは偽レクトに銃を向ける。

 本当は無視すればよかった。

 どうせ偽物、ここで偽物をかばった所で僕に良いことなんかない。

 だが体が動いていしまった。

 偽レクトとのエイナルの間に走り込み、そのまま盾になる。

 エイナルの弾丸事態は右手の剣で弾けたが。


「いい人間だねロスト」

「はぁ」


 背中から抱きつかれる感覚がある。

 その行動でこれから何が起こるか想像がつく。

 自分の馬鹿加減にうんざりするが、気分的にはそれほど悪い物ではない。

 何故かそれは自分の嘘っぱちな矜持、子供を守りたいそれが本物になったことの証拠のような気がしたからだ。

 そう思えばまだ耐えられる。

 

 そして起こるのは背後からの爆発。

 飛べばまだダメージを減らせる、だがここでも僕の意地が悪さをする。

 相変わらず負けた時の言い訳はいくらでも出来る。

 だが最後の負けたくない理由は目のを通り過ぎた。

 わかっていた後ろの爆発その意味は、だが目の前に飛ぶ子供の頭部。

 確かに人形だ、でも僕の生きる意味はそれを許さない。


「お前僕の事好きすぎない?」

「はは、バレたか。お前は眩しすぎるからな。子供たちの為に全身焼かれながら孤児院に現れるとか普通はできない、最初のは演技さ演技」


 僕は軽い言葉とは今までの理性的な思考が凝り固まっていくのを感じる。

 これは怒りだ。

 全部が気に入らない。

 目の前のエイナルがするヘラヘラした笑みも、子供の人形を使うといった発想も、そしてそれを自爆させるという手段も、有用な事は認めるが全てが気に入らない。

 よくよく考えると僕に有機物、無機物の境界はかなり薄い。

 そもそも武器の声が聞こえるのだ、言葉が理解できれば誰だって無機物であろうと愛着は湧くだろう?

 

 それに誰もが幸せに生きる資格を持っていると思うから。

 強制された、例え意思なき物だからといって他人の命令1つで己の命を散らすそれを僕は許容できない。

 己の意思なき死はは尊さを決して得ることはないのだから。


「はは、ここからは俺も接近戦に付き合ってやるよ」


 ナイフを取り出しこちらに走ってくるエイナル。

 そこで僕は久方ぶりに殺意を人に込めた。

 クロードもヘザーも許せなかった、他に戦い殺した邪教徒も敵意は持っていたが明確な殺意を表したことはない。


(なんだ?)


 エイナルは不自然に足を止め、ナイフを捨て、再び銃を両手に構える。

 

 武器はどこまでいっても人を殺す道具だ。

 例え使い手が活人剣と歌い、人を救うために使ったとしてもその本質は決して変わらない。

 否定するつもりはないだがその武器の使い方は烏滸がましいと思う。

 彼らは形を持って生まれてくる、ならその形にあった使い方をしてやるのが礼儀ではないか?

 武器は己の斬ったもので己の生その価値を決める。

 

 息を深くすう。

 そしてお腹に溜めて一気に吐く。

 この一連の何事もない行動で怒りで凝り固まったはずの頭は嘘のように柔軟さを取り戻す。

 熱に支配されていた頭も嘘の様に静かで冷たい。

 


エイナル視点

 

 ナイフを持ち、もう動けないであろうロストの前に走り込み喉を切り裂く。

 それだけで終わるはずだった。

 しかし体が前に出る事を拒否をする。

 元々妙な迫力があるガキだとは思っていた。

 だがこれは今までとは格が違った。

 自分の持つナイフが、一流の鍛冶師に作らせたはずナイフが、いや自分の持つナイフとその手がおもちゃのように感じられた。

 それにロストの変化はそれだけではない。

 今までの彼の体を包む気功術によって生み出されたオーラはあくまで無作為なものだった、だが今は明確な流れが生まれていた。

 唯一変わらないのは彼が纏っていた赤いオーラに紛れていた銀色の粒子のみ変わらぬ範囲で舞っていた。

 赤いオーラ? 赤いオーラか? 今はもっと実在する物に見えてしょうがない。

 彼のはオーラは全身にピッタリ張り付き、無駄と思える部分は剣のみ。

 しかしその無駄な部分も意味を持たせた瞬間彼の本質をこちらに覗かせてくる。

 剣の持ち手までは体と変わらず綺麗な物だが、刀身の部分になると何故その制御が乱れる。

 ただ無作為に乱れるわけでもない、刀身をまるで雫が転げるようにオーラが剣の先端に向かう。

 彼の赤い気も相まってそれは返り血に見えた。

 

 対峙すればわかる、あれがロストいう少年の本質。

 それを理解した時俺は真正面からやり合う事を諦めた。


「エレノア、すぐに救援に来い、あのガキが来ている」


 情けない自覚はある、だがそんなプライドは捨てる事を恥ではない。 

 それは自信をもって言える。




「俺は負けても良い、でも捕まるわけには行かない、アイツを治すまでは」


 先程とは打って変わりエイナルに攻撃の意思はない。

 ただ時間を稼ぎ、何かを待っている。

 エレノアを呼んだのだろう、その証拠に先程は僕を囲むように使っていた弾丸の陣を今では己の前に展開し防御を固めている。

 ただ2対1の状況を許容しわざわざ自分を不利にする必用はない。

 それにその程度の防御は壊すのは一振りで足りる。


 先程と同じ様にエイナルの弾丸を1つ弾く。

 弾丸は他の弾丸を掠り軌道を変えていく、最終的にはエイナルが陣敷くのに利用した12発の弾丸は互いに真正面からぶつかりあい、計6箇所同時に勢いを失い地面に転がった。


「う、嘘だろ」


 その光景を見てエイナルは両腕から力が抜け銃を下ろしてしまう。

 戦意が喪失したエイナルを見て、足に力を込め踏み込む。


「掛かったな」


 僕が床を踏みしめると同時にエイナルはニヤリと笑みを浮かべた。

 先程の呆然とした姿は演技だったのだろう。

 早打ちの要領で素早く銃を両手で構えて射撃の態勢に入る。

 いつのまにか左手の銃はホルスターに仕舞っており、1つの銃をどれだけ早くそして正確に撃つかにに全神経を集中させている。

 普通ならこれで僕の負けだ、エイナルに一直線に走っている所をそのまま射撃され、蜂の巣になる。

 だが今回は前提条件が違った。

 エイナルが銃を構えた時にはすでに僕は己の間合いにエイナルを入れていた。

 そして弾丸を撃たせるまでもなく、エイナルの顔を剣を持つ右手の拳でぶん殴った。

 

 2回転しながらエイナルは壁に激突した。

 壁にぶつかり跳ね返った所で追いつき、剣を僕が上段から振るうそこで終わるはずだった。

 僕とエイナルの間に粒のような物が集まりエレノアが壁として立ちふさがる。

 その時僕が思った事は間に合わなかったなどではない。


【それでいいんだな】


 目だけの意思、しかし相手に確実に伝わったその確信ができた。

 エレノアは溜まった唾を飲み込み、体を緊張させる。

 

 そして僕は剣を振るった。

 エレノアが構える槍は一切僕に斬ったという感触を与えず、しかし確実にその槍の柄の部分を両断、浅くはあるがエレノアの左肩から右脇腹にも傷を付ける。

 だが攻撃はまだ終わらない。

 振った剣の勢いを活かし回転、そのまま回し蹴りでエレノアの腹部を強く蹴りつけた。

 蹴りを入れる際魔法で身体の強化も同時に行う。

 エレノアに押しつぶされる形でエイナルも巻き込まれ、壁を破壊。

 隣の部屋と現在いる部屋を開通させる。

 指を鳴らしエイナルとエレノア二人の状態を確認するが動く様子はない、そこでようやく一息僕はついた。

 

 

エレノア達を追って壁に開いた穴から隣の部屋に侵入する。

 探知魔法でわかっていたが気味の悪い部屋だ。

 この部屋一面には13から16才前後の子供達が水槽に入れられて居る。

 しかもその水槽は1つや2つじゃない。

 部屋一面にぎっしりとだ。

 不快感を隠さず顔を歪めていると、背中を軽く叩かれる。

 意識外からの刺激に体を大きく跳ね上げるが、背中を叩いた人物を見て一旦はこころ落ち着かせる。


「おい、大丈夫か?」

「って先輩どうしてここに」


 タイロン先輩はニコニコと手を振っているが、彼が現れた事が原因で。


(なんかこう、この施設の胡散臭さが増した気がする)


 ある意味僕の冷静さを取り戻す手助けをしてくれたタイロン先輩に感謝を心の中でしつつ、ある違和感を感じ取る。

 その違和感を明確にするために指を鳴らし探知魔法を使用すると同時にタイロン先輩への探りを入れる。

 彼が僕を害するとは思っていない。

 ただ明確な狙いがあることは確実だ。


「先輩、飼い主は政府の人?」

「ああ、今回はしっかりと王族派に手柄をやるから許してくれ。それに俺の狙いはそこのエイナルじゃない、エレノア、この女の確保だ」

「手を出しちゃだめだよ」

「俺を何だと思ってやがる。ま大丈夫だ。この女の存在こそ俺の雇い主が欲した証拠だからな。それよりロストそこの水槽に入っている女の子を出してやってくれないか」

「どこの水槽」


 タイロン先輩が指差すその水槽は丁度エレノアが倒れている近くの水槽だった。

 そこでようやく違和感に気付く、エレノアの倒れている位置がおかしい事に。

 僕の蹴りでここに吹き飛ばされた後に最後自分で動いたのか?

 そう考えれば説明は付く、付くが……何か釈然としない。

 誘導されているそんな気がするのだ。


 その水槽の目の前にまで立つが他の水槽との変化はない。

 精々水槽の中で眠っている紫髪の少女が美し過ぎるくらいか。

 だがこの水槽の中にいる少女だがどこかで見た記憶がある。

 いや、記憶に引っかかるといた方が正確か?

 誰かに似ている、例えばこの子の兄弟を知っている、それに近いような遠いような。


 子供達の元にも急いで向かいたい。

 はっきりしない事柄を気持ち悪く思いながら剣を構える。


「水槽は剣で壊しても大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

「わかった」


 剣を横に2回、縦2回振り抜き水槽に少女よりも少し大き目な正方形の切れ目を入れる。

 正方形に切り裂かれた水槽の水が出口を求め、切れ目から僕の側に流れてくる。

 思ったより強かった水の抜ける勢いに僕の服はびしょびしょになってしまった。

 そして何も聞かれていないが、やり場のない感情を解消するためタイロン先輩に眉を吊り上げ。


「うるさい」

「まだ言ってないが期待通り言ってやろう、何やってるんだ」


 笑みを浮かべつつ呆れているタイロン先輩から意識を追い出し、服を乾かす。

 魔法で水分を操り、外に追い出してから体の熱を増幅、服を温めれば1分もあれば乾く。

 服を乾かしてから水槽に作った正方形の穴から入り、少女を抱きかかえたその時、突如少女の目が開き少女を閉じ込めていた水槽が眩い光を放つ。


「登録者不明、適性あり、契約を開始します。終了。休眠状態に入ります」

「へ」

「ああ、やっぱりそうなったか」


 一応温めた上着を裸の少女に着せ濡れてない床に寝かせてからタイロン先輩に詰め寄る。

 先程の言い方からして絶対にこうなることがわかっていた筈だ。


「こうなるって知ってたわけだよね」

「まぁ、奴隷契約じゃないから大丈夫だ」

「大丈夫じゃない」

「怒るな、子供達が捉えられた場所に行って来い。コイツラは俺が見張っててやる。あ、場所は部屋を戻って通路に出た後左に曲がって4つ目の通路を右だったかな、そこの一番手前にある部屋だ」

「こいつ……わかった」

 

 何事も優先順位がある。

 ここの施設の関係者だと白状したタイロン先輩への怒りを1度納め孤児達がいる場所に走り出す。

 そして指定された通路を進み、1つの部屋の中に入る。


「レクトいるか?」

「……」


 扉を開けると同時にそう呼びかける。

 他に拐われた孤児の声と鉄格子を叩くような音が鳴る。

 幸い他の警備はいなかった……、そこで1度気になり探知魔法を使う。

 一旦ため息を吐いた後、1度立ち止まり表情を作る。

 流石に色々ありすぎて素直に喜ぶことができない。


(殆どタイロン先輩のせいだけど)


 そして部屋の奥に入ると拐われた孤児院の子供達全員が降りの中に閉じ込められていた。

 

「もう大丈夫だ、離れてろ」


 安心させるように笑顔で言うように表情を作ったが正直自身がない。

 

 レクト達は頷きその場から離れる。

 僕は剣を抜き、彼らを捉えている鉄格子を剣で斬る。

 鉄格子が役割を果たせなくなるとレクトや他の孤児達が僕の元に抱きついてくる。

 それをしっかり受け止め。


「みんな遅れてゴメンな」


 そして僕の悪夢はようやく終わりを告げた。

 


拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。


また読みに来てくだされば大変うれしいです。


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