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痛みを知るから優しくなれる  作者: 天野マア
3章 アンタレス、中編 
71/136

悪夢までの前日譚 2

 互いに睨み合う二人、僕はどちらに組みするかもう決めていた。 

 だが、それ以上に優先することがあるのでまずはこのいざこざを止めねばならない。


「とにかくそこまで」

「ロスト君、悪いけど今大事な話をしてるんだ」

「わたしはやめたいけど、この腐れ女が逃してくれないからね」

「ここ、どこだと思う?」


 僕は教会を指差し、続いてレクトを指差す。

 そして二人に向けてレクトを抱き上げ、レクトは予定通り呆れたように目を細める。


「主義主張は置いておいてあなた達は教会で暴れて孤児に迷惑を掛ける反省しなさい。ほらあそこを見てみろ」


 もう一度今度は指を指す。

 その位置はレクトや教会ではない。

 教会と孤児院を繋ぐ裏口そこから大勢の子供達が覗いていた。

 彼らからしたらそろそろ僕がパンを届ける時間帯だ。

 まだかなと覗きに来たのだろう。

 

「は、はいすいません」

「だってこの女が」

「ターニャさんに言いつけますからね、お二人とも教会の一室で仲良く待っていて下さい」


 素直に謝ったミリアムさんに対し、少し拗ねた用な言い訳をしたクラリスさんが唯一頭が上がらないターニャさんの名前を持ち出す。

 肩を落としミリアムさんを引き連れクラリスさんは教会の中に僕はレクトを地面に降ろした後パンが袋詰めされている袋を持ち上げレクト共に孤児院の方に向かった。


「おや、無礼者でも多少は罪悪感を感じますか?」

「あなたが壊した扉でしょう」


 そんな声が裏手の孤児院まで響く。

 僕は()()()()時間をかけ、子供達に本の読み聞かせをしてから問題児二人が待つ教会に向かった。



「で、私は大変待たされました何故2対1の状況から話し合いが始まるんですか?」

「それは私の美貌の力かな〜〜」


 彼女らが待っている教会の一室に入ると僕は迷わずクラリスさんが座っている方の椅子に腰を掛ける。


 ミリアムさんの抗議にクラリスさんは勝ち誇る、でも僕がクラリスさんの方に付いたのは主義主張が原因ではない。

 そもそもまだ話すら聞いていないのだそこでどちら側かは決められない。


 僕がクラリスさんの側に着いた理由、それは彼女に対す既視感。

 普段はゆっくりとした口調と表情で己を隠しそこを少しでも突かれると豹変し激しい敵意を向ける。

 その際自分を守るためならば相手を壊すことも厭わない。

 何かを悩み、それを押し殺し、同時に解決できないと諦めているが周りの人達の存在と僅かな心残りが完全な否定をさせてくれない。

 シリウスで腐っていた僕そのものだ。

 だから彼女に寄り添うと決めた。

 ミリアムさんには悪いけどどんな主義をぶつけられても今回僕はクラリスさん側だ。


「いえ、付き合いの長さでこちらに付きます」


 ただこの事は僕も言うのが恥ずかしくて本心を隠してしまう。

 それに自分はもう無理だと決めつけている人間に同情や共感は逆効果だ。


「では、状況次第でこちら側に引き抜けますね」 

「そうかもしれないですね」


 ニコニコと表情を隠す僕に2対1この状況を覆す事が出来ない事を悟ったのかミリアムさんは左手を握りしめ、震えている。


「ともかくクラリス、貴方を勇者の相棒の聖女にしたいです」

「いやだよ」


 左手を伸ばし握手を求めるミリアムさんだがクラリスさんはそれを無視し、ミリアムさんの手だけが虚しくその場に残る。

 勇者とは聖具を扱う事ができる人間、言ってしまえば教会が所持する兵器みたいの物だ。

 この世界の皆が知っているはずの物語に出てくる有名な存在。

 しかし僕の記憶からは抹消された様にそれらの情報が出てこない、


「勇者、聖女?」

「あれ、ロストくんは昔話しとか呼んだことはないですか?」

「ああ、聖剣を名剣だと勘違いしている奴らだね。ごめん我がハイゼン一派ではその手の話しが書かれた書物は火の燃料にしろという伝統があるから」

「ど、どうして? 勇者って普通憧れの目で見られるものじゃないの?」


 僕の答えに戸惑うミリアムさんには悪いが彼女の方に僕がこの場では着くことが決してなくなった

 悪いが僕らの反応はあまりに冷たい。

 クラリスさんは当然だが、僕もニコニコとしているが、その目から拒絶を醸し出す。

 そもそも聖剣なんて何がいいんだろうか? 力で皮を取り繕っている恥さらしをいったいどう愛せばいいのだろうか。

 武器や物は必ず壊れる。

 もちろん例外はある、例えば僕の師匠が定義した宝剣に至った剣達などのだ。

 ただ聖剣は経年の劣化や斬った時に出来る傷を強引に中にある力で治し今代まで存続し続けている。

 見た目こそ良いが剣としての中身はボロボロで生き恥を晒し続けているだけだ。

 いや、僕も聖剣の器を作れるから知っている。

 あれは武器じゃない、器だ。

 そうだなわかりやすく言うなら自分の息子の体に息子ではない人物の魂が取り付き生きている。

 それを許容できる親がどこにいる。

 それでもまだ……まだ手入れをされているのなら僕も此処まで……きっと酷評しないがやれ伝説の剣だから手入れが必要ない、やれ刃こぼれしないからいくら斬っても血糊を拭かなくていいだ。

 馬鹿にしてるのか全部してるんだよ、しっかりとやらないからかつて程の切れ味も重さも失くなっているんだよ、わからないか。


「あれ、ロストくん何か怒ってますか?」

「怒ってない、で勇者と聖女って何? 詳しく教えて」

「選ばれしもの名のことです」

「と教会は言い張りたいみたいだね」


 今まで話を聞いてなさそうに机に突っ伏し始めていたクラリスさんが辛辣に応える。

 それを聞いてミリアムさんは顔をしかめる。

 そんな彼女を見て誇らしそうにクラリスさんは勇者その教会内での内情を教えてくれた。


「勇者は確かに選ばれし者だけど結構数はいる。見習い含めて300人はいるかな。教会内だと勇者ランクなんてのもあるくらいだしね。そして聖女も同様に」

「勇者は聖具を使えるから勇者なの?」

「いいや、勇者は女神の力その欠片を持って生まれてきた子、聖女は修行で女神の力を得た人の事を言う」


 これ以上は少々踏み込み過ぎか? これ以上の話となればもう一歩踏み込んだ話が必要になる。

 部外者である僕はこれ以上話しを聞くことはできないし、そうなるとこの二人はいつまでも睨みあったままだろう。

 互いの状況を聞き、すり潰して妥協点を探す方法が解決としては最も丸い方法だろうが、ただクラリスさんが答えを出している中で引き下がらないのはミリアムさんだ。

 ミリアムさんがクラリスさんの心を溶かす努力をすると自分で考え直してくれればいい。

 ただ彼女の焦っているような態度を見るとそれも難しそうだ。

 

「とりあえずミリアムさんが悪いと言う事で」

「何でですか」


 ミリアムさんがそう返答をするが、実際問題今この状況は誰がどう見てもミリアムさんがワガママを言っているだけ。

 そしてそんな彼女にわざわざクラリスさんが自分に過去を打ち明けてまで説得をする必要があるか?


「ミリアムさん、他人を使って何かを成しても不相応の期待で潰されるだけだよ。貴方だけじゃない周りも一緒に」

「それは……でも私には時間がなくて」


 ミリアムさんは顔を下に向け何も喋らない。

 

 確かに今の話はこの議題を終わらせる為に言ったが彼女に取っても教訓になるだろう。

 そもそもアンタレスの寂れた教会に寝転ぶ聖女? 相手にはるばる勇者様がやってきた。

 教会のシステムがどうだかは知らないが、形に拘るのであれば勇者と聖女はセットが好ましい。

 ならば訓練中から互いに組ませ相性を図りながら信用を築く、教会の思惑通りかもしれないがその方が将来絶対いい。

 もし相棒の聖女がいないのであればそれはミリアムさんが問題を抱えている。

 そもそもだけど相手に頼み込むならまず自分から思いを曝け出さないと。


「ねぇ、ミリアムさん。何か事情があるからここの寝んごろ聖女の元まで会いに来たんだよね。」

「ちょっとその言い方酷くない?」


 クラリスさんの避難の声を無視し話を続ける。

 本題に入るためにも、まずミリアムさんの事情から話さなければならない。


「だったらまず、ミリアムさんの事情をしっかりとクラリスさんに話すのが筋じゃない?」

「私の事情……」

「クラリスさんも話くらいは聞いてくれると思うよ、聞かなかったらターニャさんに言えばこの聖女に話しを聞かせられると思う」


 ミリアムさんは顔を上げず、うわ言のように「私の事情……」と言い続けている。

 そこまで真剣に悩むのであれば一旦この場はお開きか。

 もちろんクラリスさんにもミリアムさんにも双方にも問題はある。

 でもどちらも悪い人じゃないんだから話し合いの結果が悪くても互いの溝を作る必要はない。

 

 両手を一度強く叩く。

 場の仕切り、話の一端の終わりをただ表しただけなのだがその音に反応してミリアムさん、クラリスさんがどちらも一斉に立ち上がる。

 なるほど皆下積み時代は教官などの目上の人にしごかれたという事か。


「と、ともかく今日の話し合いはここまで」

「はい、少し自分の中で整理してきます」


 そう言うとミリアムさんは教会を逃げるように出て帰ってしまった。

 僕は部外者なのに言い過ぎたかなと、少し申し訳ない気持ちになってしまった。


「ありがとう、ロスト、君は優しいね」


 クラリスさんは立ち上がると僕を見つめる。

 瞳を開けどこ自愛に満ちた表情、しかしそれは自然体とは程遠い。

 どこか外付けな笑顔。

 でも嬉しそうな事は事実であるだろう。


「そんな事ないですよ、クラリスさんの問題は僕ではどうしようもなさそうなので自分で答えを見つけて下さい」

「はは、そこは冷たいね」

「僕にできるのは寄り添う事くらいですから、あとこれは一つアドバイスです」

「何?」


 クラリスさんはいつもと同じゆっくりとした言葉、しかしその態度の意味が僕にはわかる。

 人と人との付き合いに仮面を付け自分を誤魔化して生きているといざ正面から向き合う時妙な恥ずかしさが込み上げる。

 クラリスさんは完璧な仮面を被っているものの、一瞬な顔を逸らすと頬をかく。

 そんな彼女に僕は。


「案外の気の持ちよう、って事ですよ」

「ふふ、なにそれ」

「これでも一番難しい事を言ったつもりですけどね」


 互いに笑い合い穏やかな時間を過ごす、でもそんな時間は長くは続かない。


 「すいません、ここの責任者の方はいますかな?」


 教会の入り口から聞こえる声。

 しかし足音は十数人単位の物だ。

 とてもじゃないが穏やかな相手ではない。

 その声を聞いたのは僕だけじゃない、クラリスさんは入口の方へと目を細める。

 今までのただやる気がない目ではない。

 この表情を見ると先程のミリアムさんに対しても明確な敵意を覚えていなかったのだろう。

 ほんの僅かに漏れ出た敵意、それを感じただけで僕は背中の汗が吹き出した。

 そしてクラリスさんは仮面被り、部屋を出て教会の入口に向かう。


「どちら様ですか」


 冷たい受け入れる事はないと誰が聞いても分かる声。

 それを教会に乗り込んだスーツ姿のメガネを掛けた男性が相対する。


「いえ、いえ私はノルディス商会のハルトといいます」

「私はこの教会の責任者クラリスです」


 え、クラリスさんが責任者。

 柱の陰から事態を覗いていた僕はついつい声を出しかけてしまった。

 正直ターニャさんの方が立場が上だったと思っていた。

 決めつけは行けないと首を振り事態を見守る。


「はい、先程私の部下がお話をしようと伺った所どうやら事件に巻き込まれたみたいらしくてね。貴方がたを責めているわけではありません。ただ部下がお使いをできないみたいなので上司である私が直接来ただけですよ」

「それでお話とは」


 正直怖い。

 あそこだけ吹雪でも吹いているのではないかと思えるほどに空気が冷たい。

 そしてハルトという男性はメガネの付け根の部分を人差し指で押し上げると。


「ええ、隣の孤児院その出資者になりたくて」


 そこで僕とクラリスさんは全く同時のタイミングで眉を潜めた。

 出資者、それは確かにありがたい。

 ここにある孤児院は教会からの支援、領から送られる支援金、そして地域の人からの善意で運営できている。

 それでも孤児院自体が自身での稼ぎ口を持っておらず、そこに孤児院の職員は危機感を覚えていた。

 他の孤児院に比べれば確かに経営に余裕がある。

 だが貯金ができる程の余裕ではなく、3食健康な食事が出せる位の余裕だ。

 そういう事情だ確かに出資者は欲しい。

 しかし気にしなければいけない所は出資者という存在を1度受け入れてしまえば彼らの存在が以降、否応にも孤児院の経営に影響を与えるようになることだ。

 上手くやれば教会の保護を孤児院から外しその後に孤児院を出資者に依存させる。

 最後には出資を打ち切り孤児院を潰しその後は何気もない顔でこの土地を買い取る。

 

 そして僕が眉を潜めた理由はこのノルディス商会がこのアンタレスでの子供の失踪事件に関わっているという噂を耳にしたからだ。

 情報屋も情報を売れないが噂だけはと教えてくれる気前のいい人間もいた。

 そしてこのノルディス商会員達の目は濁っていた。

 

「では私から1つ、子供の将来に取って最も必要な事を教えてください」

「おや、テストというわけですかな」

「いえ、考えを聞いておきたいだけです。孤児院も経営が厳しいですから」

「なるほど」


 クラリスさんの言葉を聞いてハルトという男性はニヤリと笑みを浮かべる。

 それにしても容姿が優れているということは隙を作り出してくれる反面、相手の反応を中々探りにくい。

 クラリスさんの顔やスタイルに後ろのノルディス商会員達は下卑た笑みや恍惚とした目を向けている、それに反応が固定され、他の勘定を読み取れない。

 まぁおかげで教会の窓から外に全く感づかれずに出ることができた。

 そしてハルトという男性は答えをクラリスさんに伝える。


「私の答えは教育です。優れた才能は磨かねば意味はない。その磨かれた才能こそが後の孤児院が存続するために必要なお金を生み出す、一人でも子供を救う事に繋がるのですから」

「確かに間違っていませんね。わかりました今回のお話お断りさせていただきます」

「は?」


 そんな間抜けな事を声に出したのはハルトという男性だ。

 明らかに上手くいく流れ、クラリス貴方も同調したではないですか。

 そんな心の声が聞こえて来る。


「ハルトさん、私の子供達の将来にとって最も必要なの事答えはただ生きている事それだけですよ。どんな才能も生きている事が大前提。それにどれだけその子が価値を高めたとしてもそれは親の価値でもなければ、他人同然の孤児院の価値でもない。私はのとある知り合いが言っていた言葉です。幸せは感性を育み不幸は情緒を育てる、不要な事は別に知らなくてもいいと思うのです。まぁそれ以上に孤児院の出資をしたいなら自分たちの評判を上げてから来て下さい」

「貴様、おいお前らやっちまえ」


 ハルトの一声で後ろに控えていたノルディス商会員達がクラリスさんを襲おうとするが誰も動けない。

 商会員達が足元を見ると何か文字のような物が自分たちの体に巻き付き動きを封じている。


「まさか、拘束術で捕まっているのを誰も気付かないとはね」

「くっそ、最後の手段だ。孤児院から連れてきた子供を人質に」

「それも無理なんだけどね」

「は?」


 教会の裏で子供を確保していた男は僕がすでに捉えている。

 自分の手柄といいたいが、あそこまで商会員をクラリスさんに引きつけて貰ってると自分が商会員を捉えましたとは恥ずかしくて言えない。


「ありがとうロストくん」


 何故かクラリスさんは嬉しそうに笑う。

 正直彼女の実力なら人質を取られたとしても子供を傷つけることなく相手を倒し確保できたはずだ。

 先程までの仮面ではない自然な彼女の笑み。

 まったくどうなってるんだか? 最近の人達はどうして何もしてないのに嬉しそうなのか?

 ただ褒められるのは嬉しいので僕も笑顔で答える。


「じゃ、こいつらは領兵に突き出せばいいかな」


 クラリスさんは教会の一室にノルディス商会員を詰め込み結界で蓋をする。

 ようやく終わった。

 そう痛む足を労うために先程ミリアムさんも共にいた部屋の椅子に座る。

 クラリスさんも同様。

 すでに顔を机に押し付けだらけているが彼女のおかげで自体は何事もなく済んだし文句は言えない。

 

「クラリスいますか?」


 再びの声。

 僕ら二人は勢いよく開いたドアに向け鋭い視線を向ける。


「え、なんですか? 私に何かしましたか?」


 僕らの敵意ある視線に戸惑うターニャさん。

 彼女の姿を見た僕は肩の力を抜くが、それより早くクラリスさんは机に体を預け眠り始めていた。

 ターニャさんは頭を傾げながらも僕に頭まで下げる少々行き過ぎた挨拶をしてからクラリスさんの元に近づくき彼女の肩を揺らす。


「クラリス、クラリスすぐに王都に行きますよ」

「何でよ」

「これですよ、これ」


 そしてターニャさんは一枚の手紙を取り出した。

 その手紙はには僕も見覚えがある、そしてもちろんクラリスさんも。


「私が破った手紙だね、これが何」

「問題はこの内容です」

「内容?」

「はい、王都にグローリア教の教皇様が明日来ます。これはその招待状です」

「行かなくてもいいじゃん」


 教皇からの呼び出しでも態度を崩さないクラリスさんは凄いと思うけど、流石に行かなきゃまずいと心の中で僕は思う。それは当然ターニャさんのような常識人も思うわけで。


「ダメです、今回は強引にでも連れていきます」

「でも、子供達はどうするのよ」


 そこでターニャさんの目が僕に向く、同時に天啓を得たような顔もしている。


「ロストくん、数日間いや1週間ほど、ここの教会と孤児院をお願いします。大丈夫です孤児院の方は他の領が雇った人達もいるのでそれでは」

「嫌だ〜〜」


 部屋からターニャさんはクラリスさんを引きずりながら、凄い勢いで飛び出し、そのまま教会の外へ、そしてクラリスさんの声の残滓のみがこの場に残る。

 静かなのも一瞬、教会の奥の部屋でドタバタと激しい音がする。

 恐らく今から荷造りを急いでしているようだが。


「もしかして今日列車に乗る気じゃないよね?」


 確かに最終便まではまだ時間がある為、乗れはするだろう、でも今から? と頭に過る。

 ターニャさんとクラリスさんは荷造りを僅か10分ほどで終えると急いで教会を飛び出して行ったが、あの慌てようだと何か忘れ物をしていないか心配にもなる。

 ただ、あの二人を見てると。


「本来は逆なのかもしれないな」


 すぐ焦るターニャさんをクラリスさんがフォローする、そんな普段は想像できない光景がなぜかしっくりきた。


 それはそれとして。


「えっとノルディス商会の連中はどうしよう?」


 流石に領兵に話しを通してからクラリスさんも王都に行ってくれるよね。

 そんな浅い希望を願いながら、痛む足を擦っていた。


拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。


また読みに来てくだされば大変うれしいです。


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