チーム?
今日は8:00のみの更新です。
己仕事め (´;ω;`)
「げ」
「げとは何よ魔法の先生相手に」
「ロストこの人は誰ですか?」
「私? 私はリーザ・シーホーン。この馬鹿の魔法の先生ね」
頭をポカポカと叩き続けるこの青髪の女性は確かに魔法の先生だがこの人を僕は少々苦手としている。昔からデリカシーがなく他人の傷口に塩を塗るのが上手い人なので苦手意識を持つのはしょうがないだろう、だが恩は感じている。このレガリア全盛期の時代、魔法を一から学び独学のみで覚えるには僕の才能と直感そして体質ではあまりに難しすぎた。彼女が教えてくれた魔術理論がなければ自力で魔法を使うことすら出来なかっただろう。
「それにしてもあんたがよそ者デビュー? いや〜〜若いっていいわね」
「えっと、もしかしてリーザさんは……」
若いっていいわね、そのリーザさんの発言にクレアさんはある事を想像した。この世界にはこんな格言がある。魔法使いの容姿は疑え。奥が深く長い年月をつぎ込む分野のため魔法を専門とする人の外見と年齢が比例しないことは多々ある。その癖年齢を聞かれれば過敏な人物も多いのでかなり気を使わなければいけない部分だ。
「クレアさん大丈夫、この人今年で21歳だから歳の事には敏感じゃないよ」
「こら、女性は誰しも敏感なの。ねクレアちゃん」
「はい。そうですよロスト」
リーザさんに強烈な拳骨を頭に落とされその衝撃で僕は机に突っ伏した。僕が起き上がる間に女性陣は手を取り合い4つの厳しい眼差しがこちらを睨みつける。そしてリーザさんは意気投合したであろうクレアさんの隣の座るが、クレアさんはリーザさんに気付かれないよう横にずれ距離を作る。クレアさんは相変わらずだなと顔を上げた後溜息を吐く。その時横目に見知らぬ男の腕が見えた、その腕は僕の首を通り抜け遠い方の肩にまで伸び組まれる。
「おい何してるんだ」
その時赤髪の男性が僕ら3人の会話に入ってきた。見知らぬ男性だが、そんあ事より背後を取られた事に僕は少しショックを覚えていた。
(探知魔法を使っている場気づけたさ)
そう意地になってはみるが気持ちが落ち込むのは変わらない。僕は探知魔法を使っているおかげか振動や音、気配に敏感だ。それなのに腕を組まれる直前まで気付くことができなかった。赤髪の男性はかなりの腕だ。だからこそ誰の知り合いかわかる。
「えっとこちらもロストの知り合いですか?」
「いや、全然初対面、多分リーザさんの知り合いだと思うよ」
「はぁ、こらグラント絡むんじゃないわよ」
「悪い悪……お、ありがとよ」
僕は自分が座っている場所から奥の方にずれグラントさんが座るスペースを作る。その時グラントさんはお礼こそ僕に言っていたがその目は不安そうにリーザさんを見つめていた。
(ああ、なるほど)
今度は意図的にこの場にいるメンバーに顔を隠すために右側を向きニヤニヤといやらしい笑みを浮かべる。表情を見ずに僕の心の内を察したのはあの中でリーザさんのみだと思う。
「リーザさんどうしましたか?」
「そうだぜリーザその嫌なものでも見た顔は」
「ゴッホん、なんでもない」
リーザさんの性格なら仕返しをするだろうが、現在の話の中心人物であるリーザさんはとても目立つ。そして僕が気付いた事はリーザさんにとって話題にすら出したくない事だ。だからせめてもの抗議としてリーザさんは嫌な顔を前面に出していたわけだが、気付いていない他のメンバーからしたら不快にさせてしまったか? と心配させてしまう訳である。つまり。
(今回は僕の勝ちだリーザさん)
(覚えときなさい)
互いに視線をぶつけ合い、負け惜しみを聞いていたのはそこまで。赤髪の男性グラントさんが僕らにこんな提案をしてきた。
「正式な自己紹介がまだだったな。俺の名前はグラント・オブライエンだ、よろしくな。提案なんだが俺を手伝わないか?」
*
グラントはアンタレスでは珍しい分類の冒険者だ。皆アンタレスの内へ内へと目を向ける。内への内容は主に2つ、ダンジョンと闘技場。アンタレスは闘技場で集客し、そこからダンジョンで得た私財で飲食や露店、屋台を賄う。アンタレスは都市だけで完結している本来ありえない都市だ。
そんな中グラントは外に目を向けた。アンタレスの郊外、都市と街、街と町を繋ぐための馬車の護衛、薬草の採集、他のギルドでの当たり前の依頼だがアンタレスでは切り捨てられる所に力を入れていた。
「ま、無駄だとわかっているんだが俺はアンタレス近くの小さな集落生まれだからな、そこを割り切れない。それに勿体ないだろう?」
割り切れない。その言葉は敗北宣言のように聞こえる、だが彼の凄い尊敬できる所は今はまだ、と本気で思っている点だ。彼は諦めを語りながら目は真っ直ぐ前を向いていた。
「グラントさん、後で飲みに行きませんか?」
「ああ、後で行こうぜ」
時間は5時半、そろそろアンタレスの冒険者達が外から戻って来る。戻ってきた彼らはグラントさんを見ると手を振り皆挨拶を欠かさない。グラントさんはアンタレスでは芽生えない突拍子のないことをしている、それは間違いない事実だ。しかし彼は奇人としては見られず尊敬されている。これは彼が現実を見ながら歩んできた結果。そんな彼の提案は。
「すまない話の続きだがお前らの依頼に俺を混ぜてくれ、多分だがお前たちは子供達の失踪事件を追っているんだろ」
だからこそグラントは僕らに声を掛けてきた。ここの冒険者達は誘拐事件が起こっていてもそれはここを統治する領主の仕事だと割り切っている。間違っていないしアンタレス上層部が望む模範的な冒険者は間違いなくこれだ。しかしここアンタレスで生活しているグラントさんはこの状況を見過ごせない。彼自身探していた筈だ。一人では間違いなく手が足りない。少しでも多くの人手を確保するために。人で確保その狙い所は余所者だ。他所から冒険者が来る、それ自体が本来冒険者の間では異常事態。その異常事態が今回はわかっている、そう子供の失踪事件だ。特にこのアンタレスという土地柄なら確実に手を組める。
こちらとしても腕が良く人格的に問題ない現地人。断る理由はない。
「こちもよろしくお願いします」
クレアさんは頭を下げグラントさんに協力を頼む。そしてクレアさんは僅かに顔を上げ、不安げに僕を見つめてきた。勝手に自分一人で決めて良かったのか? それが不安なのだろう。異論はない。そもそも僕は異論が言える立場にいない。クレアさんへグラントさんには見えぬよう右手でオッケイサインを出す。それを見てクレアさんは目から迷いを捨てグラントさんを見た。グラントさん、クレアさん、リーザさん彼らに問題がないわけない。正確には一人、この世で最もありふれた面倒くさい悩みを持った人物がいる、それはグラントという人物なのだが……ただそちらは問題ない。話せばわかる事、自分の恥ずかしい過去を明かせば解決できる小さな問題なのだから。
*
今日はもう遅いが時間を無駄にできない。僅かな時間だが情報収集をすることに僕らはした。組み合わせは男女別。僕とグラントさん、リーザさんとクレアさんで決まった。気安い関係? である僕とクレアさんで組むというのが初日の組分けとしては無難かもしれないが、大きな問題点として僕らはここアンタレスの土地勘がない。なら男女で分けた方が気楽、そんな理由でこの組み合わせが決まった。
アンタレスに着いたばかりの僕らはすぐ調査へ行けるわけでもない。まずは僕とクレアさんの泊まる宿を確保しそこから2組に別れる。情報収集に出て1時間後に冒険者が行き付けの串焼き屋の店に集合という話で総決まりとなった。
そして僕とグラントさんは子供達が集まる公園に来ていた。実際の現場がここだとは思っていない。しかしあらとあらゆるものは下準備が大事、継続的に行なうことならなおのこと。子供を攫っている犯人達は現場を必死に隠そうとするだろう。であるのならば僕らが狙う所はその前の攫う子供達の目星つを付ける下見場所、そこなら犯人達の尻尾が残っているではないか? ただ子供達が多くいる場所で漠然と事情を聞いてもヒントは得られない。だから公園を見渡せる位置にある裏路地に向かう事にした。そこならいるだろう、平穏の中にいる違和感、それを見つけられる浮浪者が。
「おお、たしか毎回服を変えて来ていた奴がいたな。今も毎日来ていたから知ってるよ」
「よし」
3000ルドをその手に握らせると、公園が見える裏路地を縄張りとしていたお爺さんはあっさりと教えてくれた。
「小僧は意外そうな顔をしているな。そんなに儂が情報を吐くのが意外じゃったか?」
「まぁ、はい」
顔に出ていたのか、自分の頬を少し抓り変化がないかを確認して見てもわかるはずはない。ま、気持ちを紛らわせる為にしたことだ対した意味はない。
「ふぉふぉ、簡単じゃよ。儂がここを縄張りにしているのはな子供が好きだからじゃ。今回は儂以外の連中も口止めをされてなければ脅しもされてないからの、お金でみな口を滑らせていただろうがな」
「ありがとうおじさん」
僕は裏路地を出るため浮浪者を背に歩きだしたその時「最後に」と浮浪者は僕の背に話しかけてきた。声を掛けられ振り返るとそこにお爺さんの姿はない。彼が座っていた布を寄せ集めて作られた座布団があるのみ。声だけが建物を反響して聞こえる。
「それと忠告じゃ、今すぐお仲間の元に帰るんだ」
「どういう事?」
「ハハハそれは内緒じゃよ」
そう一方的に言うと声すらもなくなった。彼のいた座布団に何か残されているのでは? と近寄ろうとした時に声を掛けられる。
「何かわかったか、シルヴァフォックス君」
分かれて聞き込みをしていたグラントさんがこちらにやってきた。先程消えてしまったお爺さんの話しを彼にすると思い当たる節があるようで。
「マジか!! だがあれの情報なら確実だな」
先程の事を話すと、グラントさんは目を見開き興奮気味に浮浪者の話をしだした。
「都市伝説みたいなものだ。アンタレスに危険が迫るとその事件の鍵となる人物にヒントを与える。そんな浮浪者がいるって。まぁ姿形も分からないらしいが、そうか会ったのか、俺も一目会いたかったな」
忠告通りにクレアさんとリーザさんとの合流を目指し僕らは裏路地を出る、その前に際探知魔法を使い辺りを調べる。すると先程のお爺さんがいた座布団の辺りに僅かだが魔法を使用した形跡である残像魔力を発見した。
「怪異ね。正体見たり」
そのままグラントさんの後を追い合流地点である串焼き屋に向かう。その途中には段差がキツイ階段がある、僕はグラントさんの左側から腰に寄り添い足を介助しながら階段を登る。
「そんな都合のいい怪異なんているんだね」
「ま、ダンジョンも人の手で作られたものだからな。有り得はしないだろう。それはそうと、優しいなお前。歩いていた時も歩幅を合わせてくれていたしな」
「その足は?」
グラントさんは左足を引きずっている。初対面ではわからないほどだ小さなものだが階段となれば違和感も大きくなる。グラントはさんは自力で歩くことは出来ていたのだ変に手伝うよりもペースを合わせたほうが良いかと最初は様子を見ていたが階段は別だ。
「ああ、1ヶ月ほど前になダンジョンでやられた名誉の負傷だ」
「リーザさんを庇ったの?」
「何でリーザの名前が出るんだよ!!」
「だってグラントさんリーザさんの事好きじゃん」
「……わかりやすかったか?」
顔をそむけ出したグラントさんの背中を優しく叩き。
「目線とタイミングで」
「タイミング?」
「僕とリーザさんが親しげに話してたから割り込んできたんでしょ。しかもえらく駆け足且つ忍び足で」
「見てたのか?」
「全然」
「バレてたか、みっともないよな」
僕とグランドさんの問題とは色恋沙汰。冒険者パーティーが揉め、解散する理由第1位である。そもそも僕はリーザさんに恋心は持ち合わせていない。それはグラントさんもわかっているだろうが、他者を好きになると自然に嫉妬やヤキモチ、危機感を持ってしまうものだ。
「で、どうして好きになったの?」
ここまで話しを聞いてしまえば僕も気になる。グラントさんは少し躊躇いながらも空を見上げ思い出すように言葉を探す。そして彼の表情が優しげな物に変わったのを見て僕はようやく言葉を見つけたことを理解した。
「憧れだったんだ」
「憧れ?」
「常に前にいて眩しくかった。俺みたいに臆病じゃなくて堂々と胸を張りおかしい事なら例え何を犠牲にしても己を曲げない彼女に憧れた。でも命の危機に怯えた彼女を見て、彼女も俺と同じだと思い出したら目が離せなくなっていた。そしてようやく彼女が好きだと一目惚れだったと少年時代の淡い心を理解できた」
夕日に照らされ顔は見えないがとびっきり誇らしげに左足を手で擦りながら。
「俺はこの負傷を名誉と呼べる」
僕をしっかりと見据えそういった。
「なるほど良かったね」
そう言って逃れようと思っていたが。
「おい、逃げるなよ。シルヴァフォックスお前はどうなんだ?」
「どうって?」
「リーザとの出会いだよ」
「グラントさんみたいにカッコいい話じゃないんだけど」
「俺のどこがかっこいいんだ?」
だがグラントさんの左足を介助している都合、逃げることはできない。本当にそれほど話したい内容じゃないんだけどな。
「僕にとってリーザさんは恩人だよ」
そう彼女は僕の恩人。シリウスの冒険者ギルドで自分に何が出来るかを探していた時だ。幼馴染のレティシアとの約束を守るため毎日夜遅くまで努力を続けていた。体術を磨き、体力を鍛え上げた。周りの地形を完璧に把握しそれに適した罠の制作。戦闘を有利に行う小道具の開発。出来ることはなんでもやった。ただ自分はこれだと言い切れるほどの核となる強み、その答えとするにはどの技術も少々物足りなかった。魔法を最後に学ぼうと思ったのは希望だったからだ。魔法、その力は偉大だ。身体能力が低くても強力な魔法が使えればそれだけで価値がある人材となる。それに強力な補助魔法を使えれば今の僕でも色々な人達に認められる、必要とされる人間になれると思ったから。
「今覚えば保険を掛けていただけかもしれない」
様々な事に手を出し上手くいかなくてもまだ魔法がある、そんな希望に縋れるから。そして僕は支部にある全ての魔法資料を読んだ。もちろん専門用語などわからない事も多かったが、冒険者を引退した魔法師の職員に聞いたり、様々な本の内容とすり合わせ意味を考察しながらもなんとか理解できていたと思う。だが現実は残酷だ。僕はどの魔法も使用する事はできなかった。魔法の適性と魔力量も図り準備も完璧。でも結果は……もうどうすればいいかわからなかった。だから最後の手段を取ろうとしていたその時リーザさんは僕に声を掛けてきた。外から来た余所者の冒険者でレティシアを彷彿とさせるギルド内でも高い評価の人物。声を掛けてくる事が僕の中では珍事に近かった。
「ちょっと何してるの? 死にたいわけ」
その日は10年に一度の大雨の日であり川の状態は氾濫寸前。全ての住民が避難をしていた、そんな日だからこそ僕は川に飛び込もうとしていた。
「別に死にたくないよ。ただ最後の手段を取ろうとしてるだけ」
「最後の手段?」
「そう命の危機に身を置いて自分の身に宿る力を開放させるんだ」
「ちょ、それを身投げっていうのよ」
「大丈夫死んだらそれだけの人物だったという話さ。それに会いたい人の半分以上はあの世にいるしね」
正直力の覚醒なんてのは嘘っぱちだ。もう疲れてしまった僕は死のうとしてたんだと思う。でもそれを認めなかったのはリーザさんだった。
「魔法を使えない僕に可能性なんかない」
「はぁ、ならこうしましょう。私が魔法を教えて上げるから今は生きなさい」
「教えられるの?」
「あんた図書館にある魔法関連の本を読んだとかでしょ、それで知った気になったなんて甘い甘い。魔法はレガリアの普及によって専門的な物はより閉じられた知識になったんだから。本なんかには大事な事は何も書いてないわ。だから本場で学んだ本物の魔法知識をあんたに教えてあげる。それでいいでしょ」
「わかった」
「ずいぶんと聞き分けがいいのね?」
「まだ望みがあるのならそれに従うよ」
橋の縁から降りリーザさんの元に向かう。
「僕を死なせないでねお姉さん」
「なんかとんでもないのを拾った気が」
そして僕とリーザさんの教え子関係が始まった。正直リーザさんから学べるような基礎は殆どなかった。教えられたことと言えば基礎の応用。当時の僕にとって机上の空論に近かったが、彼女が僕に与えてくれたものの中でもっと大きかったのは僕の体質についての事だ。魔力を別の部質に変換できない体質を発見できたのは間違いなくリーザさんのおかげだ。それがなければ今の僕はなかった。
「ちょっと待て」
「まだ話の続きだけど」
「なぁシルヴァフォックス、話が重すぎないか?」
「そう? もう少し後、リーザさんが帰った後の方が重いけど」
「わかった俺が悪かったから……ほら階段も終わる」
階段を登り終えるとグラントさんは僕から離れた。無理をしてでも話しを打ち切りたかったのだろう。彼は早足で僕の前を歩き集合場所の店へ歩みを進める。
「……そういうことか」
そしてグラントさんの足を横と真後ろから見ることでようやく理解できた。この事件を解決するために今の僕が本当にやらなければいけないことを。
*
ークレア視点ー
リーザとクレアもまた合流地点の近くに来ていた。時間的にはロスト達のグループと別れて10分後ほど、クレアは何か用事があるのかと何も考えずリーザについて行っていたが、しかし目に映った光景にクレアは緊張感が走った。すぐさまリーザから一歩距離を取りホルスターに手を掛けるが銃を抜くことは出来ない。
「リーザさん何をする気ですか?」
クレアは地面にしゃがんでいるリーザに声を掛ける。銃がホルスターから抜けない理由を探す時間稼ぎのつもりだった。クレアが焦っている反面リーザは変わらず地面に何かを書いている。
「いい目ねクレアちゃん。その目は未来視の魔眼ね」
「どうしてそれを」
「見ればわかる。魔眼はそれぞれ魔力の消費の仕方が違う。多分ロストも気付いたでしょうね。あの子の魔法は特別だから」
ロストもグルだった? いやもう考える時間はない。
「ごめんねクレアちゃん」
「何がですか?」
リーザはようやく地面から立ち上がり指を鳴らす。すると辺り一面の景色が崩れた。先程までの街中ではない、誰も入り込まないような裏路地へと周囲の景色が変わっていく。まるで鏡のような物体が崩れ、いや実際鏡としての役割を持っていたのだろう。その崩れた欠片が周囲を舞うと同時に冷気を感じた。恐らく氷を鏡のように使い、周囲の景色を偽装したのだろう。そこでようやく自分のホルスターから銃が抜けない理由を理解した。
「氷の魔法で」
「ええ、あなたの武器は封じた。ごめんねクレアちゃん私と一緒に誘拐されて」
リーザさんは本当に申し訳無さそうに私を見る。しかし目には強い決心を秘めており、さらに瞳はとても澄んでいた。それは人を破滅に追い込み甘い汁を吸おうとする人間の目ではない。だからこそ疑問が残った、何故リーザさんはこんな事をしているのか? しかしその疑問を解消するまでもなくすぐさま6人の黒服が私達を囲む。
「この」
銃が使えないのであれば魔法で迎撃をしようとレガリアを使って魔法陣を呼び出す。しかし呼び出した魔法陣はすぐさま凍りつき発動することなく消え去った。誰がそれをしたかは理解している。視線をリーザさんの方に向けると口を防がれ麻袋を被せられる彼女が見えた。
そしてごめんね。彼女の口元がそう僅かに動く。抵抗手段を奪われた私もまた拘束されどこかに連れ去られていった。
拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。
また読みに来てくだされば大変うれしいです。
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