アニマルセラピー
もう一話、投稿できればと考えています。
「で、ルシアは何であんな事をしていたんだ」
「それは……」
ロストをデメテルから送り出し後アガレスとオプシディアはルシアにそう聞いた。勿論あんな事とはレガリアとの適合率が理由でルシアに生える耳のことである。
「あれは、ロベルトが言っていた事なんだけど」
それは数日前に遡る。薬屋デメテルにロベルトがやってきた。
「珍しいな、お前が来るなんて」
「少し相談が合ってな」
話の相手こそルシアではなくアガレスだったが、彼女もその場におり聞き耳を立て話を聞いていた。
「最近ロストが元気がないんだ」
「修行が上手くいっていないのか?」
「いや、修行の話を振ると2時間近く拘束される。内容もロストの認識からして悪い状況ではなさそうだ、なんせ目を輝かせながら話すのだから問題ないと思う。ただ不意の溜息が増えた。それにここ数日間真夜中になると廊下を徘徊するようになったのも俺は問題視していてな」
「恐らく修行のストレスだろう」
アガレスは知っていた。ロスト自身よく道場帰りにデメテルにやってくる。傷の手当が目的であるのだが何度か緊急搬送されたこともある。その際は内蔵が破裂した状態の時もあり、デメテル内でも緊張が奔った。ファトゥス流、彼らの修行はよくも悪くも常軌を逸している。
「オプシディア先生曰く、今回はいつも以上に常軌を逸して厳しいらしい。デメテルが近場にないと何回か死んでるとぼやいていた。まぁ詳しいことは主治医に聞いた方がいいだろう。ルシア聞いているのは知ってるから話に混ざってくれ」
「はは、バレてた」
私は自分の座っていた椅子を持ち、彼らが囲んでいる机の元に向かう。
「ロベルトも意外にご主人様の事を大切にしているんだ」
「それなりにだ。誰だって近場のいる人間の元気がないと気にするだろう」
「素直じゃないね」
表情を隠しながら言っている所にロベルトの天邪鬼さが出ているなと思いながらも話題を戻す。
「修行による精神へのストレスはないかな。ロストは無意識にストレスを溜め込むタイプではあるから
自覚のなかった場合は確実に違うとはいい切れない」
「で、主治医様の押す説はなんだ」
ここまでは彼らの話を補足しただけ、とは言え私の意見も彼らと殆ど変わらない。新しい要素を付け加えるのであれば。
「肉体のストレスですかね」
「肉体のストレス?」
「最近の無茶な修行でロストは怪我をし続けています」
先程話していた内臓の破裂以外にも骨折は当たり前、筋肉の筋を切り、何度も呼吸不全も起こしている。
「問題なのは怪我をし続けると溜まる肉体のストレス、一番なのは休養を取ることなんですが」
「取ると思うかアイツが」
アガレスの一言にロベルトと私の考えは合致した。
「取りませんね絶対」
「取らないな、絶対」
「じゃぁどう取らせるかだな、何か作戦がある奴いるか?」
誰も手が上がらない。そんな中、無理やり出した結論が。
「犬猫飼ってみるとか?」
「ロベルト、アレルギーは?」
「大丈夫だ」
自分の事でストレスを抱えてしまうのならば自分以外の事をやらせる。そういう意味では犬猫はベストだ。そこで大きな問題点はロストが冒険者だという点だ。王都預かりになったとはいえ本部のロストへの対応を見ていると今後アトラディア王国中を駆け巡りそうな気配もある。そんな中で犬猫を飼うという選択肢が取れるか。
「ないな」
「時期が悪いですね」
泡粒のように浮かんだ案だ。別に落ち込みはしない。
「まぁロベルトが犬猫の面倒を見ればいいとは思いますけどね」
「ルシア、無理だろロベルトには」
日頃の行動を鑑がみるに私とアガレスの出した答えはロベルトではペットの世話はできない、これに行き着いた。この時ばかりはロベルトも無言を貫き出された紅茶を啜っていた。まだ私達は悲観せずともいい案がいずれ出るだろうと皆で楽観視していた。
「で、雁首揃えた結果何も出なかったと。」
「はい」
「で、ルシアはダメ元で自分の耳を触らせてみたと」
「はい」
アガレスと私は互いに下を向く。
「いや、ルシアに関しては自分の耳を触らせるのは意味がわからないからな」
話を蒸し返すようなアガレスの一言だが不思議とこの場に深々と刺さる。そんな余計な事を言ったアガレスの足を自身の足で踏み抜き黙らせる。声を出さぬよう顔を歪めるアガレスから目を離し先生の方に顔を向け直す。
「まぁ、見守ろう。今から第二陣が出撃するみたいだしな。それに、生き死にに関係ない悩みはな、直接聞いたほうが早いんだよ」
そんな私達の悩みをあざ笑うかのように先生は胸を張った。
拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。
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