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痛みを知るから優しくなれる  作者: 天野マア
2章 立ち上がるために
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刹那の目覚め


「走り込みに行くぞ」

「はい」


 レグルス先生の指導で何よりも重視されるのは走り込みだった。ただひたすらに彼の後を追い走り続ける中ある1つの事を思いだしていた。それは昨日の晩の話しだ。実は冒険者を引退して酒場に出入りしているある人物が元レグルス先生の教え子だったという話を小耳に挟み、先生がどんなことを教えてくれるのか内容を聞きに行ってみたのだが。


「知らんよ」

「おっちゃん、エール追加」


 元教え子はゼンさんという。彼は殻になったジョッキの中をチラチラと見て僕に無言の要求をする、恐らく話を聞きたいのなら俺を酔わせろという事なのだろう。お店の人が持ってきた追加の酒を片手にゼンさんは話始めた。


「そもそもあの人は個人主義の教え方しかしない。お前に合った、お前に教えたい事を気づかせる為の鍛錬しかさせない」

「だから聞いてもわからないと」

「ああ、まぁ頑張れや。レグルス先生はどんなに出来が悪い生徒でも見捨てることはないからな」


 ゼンさんの言葉を思い出しつつレグルス先生の後を追い走り続ける。王都を2週3週と走り続ける、走るコースは平坦の場所を避けるように工夫されている。今走っているのは砂利道で足を踏みしめる毎に砂利がザザと音を立て続ける。

 

「はぁはぁ」

「……」


 さすがに息が乱れ着いていくのもやっとだ。何を教えたい? その答えが出ることはない。ただ僕はレグルス先生を追い、そして僕の走る速度が落ち始めるとレグルス先生はペースを落としこちらに合わせる。それを今日一日中、日が昇り落ちるまで続けた。


「で、なにかわかったか?」

「えっと」


 道場で大の字になって倒れていると顔にタオルが被せられた。そのタオルで顔を拭きながら上半身を持ち上げてレグルス先生の問いについて悩んだ。正直今日の鍛錬の意味を推し量れていない。走り込みが重要な事はわかっている、だが明確にレグルス先生が教えたい事とは違うのも理解していた。

 

「ゼンに聞いてただろ」

「だめでしたか?」

「いや、他人に聞く事は重要だしな。ただ今日の走り込みはお前の課題とは関係ない」

「へ?」

「ゼンが変な入れ知恵すると思ったからな変えてやった」

「ちょ」


 講義するように声を上げるが、鼻で笑われてしまう。

 

「それにお前に関しては一度現実を教えた方が良いと思ってな」

「?」


 頭を傾げ次の言葉を待つ。レグルス先生は少し考えるように僕を見ていた。言葉を選んでいるのはわかる、だが何をそんなに悩んでいるのだろうか?


「ロストお前の未来について話そう。お前はいずれ鍛錬をしていない凡人にすら負ける」

「レガリアの事?」

「ああ、レガリアの進歩は早い。レガリアの優れたところは2つ、身体能力の強化と技術の模倣。いずれ剣術の奥義といえるものすらもレガリアの条件を満たせれば簡単に再現出来てしまうかもしれない。俺が伝えたいのはそんな時お前はどうするか?」


 思わず溜まった唾を飲み込んでしまう。


「お前の最も優れた才能は目の良さだ。正確にはお前の使う探知魔法だ」

「なんで魔法? あれって探し物を見つける時に使ったり、周囲の状況、その把握が使い道でしょ?」


 そこでレグルス先生は表情を崩した。わかってないなと、人差し指を立て左右に振る。


「他人の技を盗むには目が良くないといけない。己の動きを研ぎ澄ますには鏡を使い己の動きを見るこ事が一番。といっても目が良いというのは視力の話をしてるんじゃない。空間把握能力、見えない場所への想像力、ほとんどの奴らはそれを想像で埋める。でもお前の魔法なら実際に目で見た確実性で埋められる。だから覚えておけお前の一番の武器はその魔法だと。その魔法があればお前はどんな技術も模倣できる。そこから自分なりのものを見つけていけば良いんだ」


 そしてレグルス先生は壁に掛けてある木剣を僕に投げる。


「研ぎ澄ませ、そして盗んでみろ」


 **


 レグルス視点


「酒に溺れる日もいいが月が綺麗な日は汗を夜風で吹き飛ばすのも悪くない」


 そして家に返した新しい教え子の姿を思い出す。

 

「シズカは気付いているのか? ロストを気に入った本当の理由を」


 気付いてはいないだろうな。そもそも俺がロストという少年を教えると決めた理由はあの子の本性に気付いたからだ。といってもその本性が表に出ることはまずない。

 

「そもそも戦闘に向くような才はないしな。流石にあの探知魔法がないと俺でもお手上げだったしかし」


 逆の事を言うがあの子に才能は必要ない。あの探知魔法だけでロスト・シルヴァフォックスが強くなるのには十分だ。シリウスの友人から聞いた話だが万能の目か。

 

 それにしても戦闘の心構えが出来ているだけで心技体の何もかも足りない。心に関しての課題として、戦闘中の注意散漫の抑制。取捨選択をしなくてもいい能力があるのはわかるが、それにしても集中力がなさ過ぎる。よほどの動機がなければ普段の日常生活と戦闘中の意識にあの子は変化がない。いや俺が勝負から降りると決めたギャンブルと同じくらいには低い。

 

「そこも少しずつだな」


 もしかしたら俺の真の目的を果たせる可能性がある子かも知れない。


「ただシズカは1つ嘘をついたな。あいつは別に弱くない」


 そう弱くない、あの子は噛み合わないだけなのだから。

* 


 僕は兄弟子のテオ兄さんの家に来ている。といっても彼が普段住んでいる豪邸ではない。その敷地の隅っこにある彼の仕事場、木造の小さな小屋に来ていた。僕はその小屋に入ると笑みを抑えきれなかった。シリウスにあったテオ兄さんの鍛冶部屋と変わらない棚道や道具の配置、テオ兄さんがシリウスの家に戻ってきたと錯覚させる懐かしさを覚えたからだ。出来るだけ広くこの小屋の中を見ていたくて部屋の隅に陣取った僕を見たテオ兄さんは。


「何をニヤけているんだ」


 と不機嫌そうに話しかけてくる彼の姿も師匠が死ぬ前のあの一番幸せだった頃と同じだ。


「いや、昔を思い出してさ」


 師匠がいて、テオ兄さんがいた。ただ鉄を打っていただけの場所なのにあの時の僕はそれだけでよかった。いや、今もそれは変わらない。あの場所が永遠に続くなら冒険者の道なんて選んではいない。

 

「昔はよかったよ。ただ何が良かったか僕には記憶が抜けている場所があるんだけどね」

「遠回しに聞くな。どうせ伸び悩んでいるんだろ今」


 テオ兄さんの言っている事は間違っていない。レグルス先生の道場に通い始めたのだ、これから新しい価値観と技術を学んでいくだろう。だが技術以前に僕の頭の中に突破出来ない壁のような物がある気がする。


「勝手に期待して貰っては困る」

「それでも今生きている人の中で僕の事を一番理解しているのはテオ兄さんだから」


 僕がそう言うとテオ兄さんは渋々ながら口に出す。


「お前にとって剣とは何だ?」


 とても難しい質問だ。答えるのは簡単だ。それでも心の中の根っこの部分を曝け出すのはとても難しい。 

 でも誰かに明かすことが出来るのであれば僕にとってそれは彼であろう。


「僕の救世主だ。色々な人との出会いが僕にはある。忘れられないものが殆どで、そのどれもが大事だ。でもそれは最初ではない。何もなかった僕に師匠とテオ兄さん二人に出会わせてくれた存在が武器なんだ。初めて大切な人と出会わせてくれた存在が武器なんだ。武器は僕にとってまさしく救世主さ」


 そう僕が言うとテオ兄さんは悲しみとは何かが違う。ただ背負っている、それだけはわかる堪えた表情をしていた。


「わかった」


 そう言うとテオ兄さんは壁掛けに置いてある剣を手に取り僕に渡す。僕が剣を受け取ると彼は背後に回り込み僕の手足を動かす。最終的には剣を全身で抱きしめるような形に動かしそしてテオ兄さんは離れた。


「どうだ? 落ち着かないか」

「うん、落ち着く。それと何か剣とより密接になった感じがする」

「最近やっていないだろ? 昔から集中したい時にお前がよくやっていた事だ」


 これで答えになるか? そう語るテオ兄さんにお礼を言い僕はその場を去る。また来いよと後ろから聞こえる声に手を振り返し自宅に戻った。


 *


 自宅に戻ると珍客がいた。茶色い尻尾に茶色い耳、赤いリボンが特徴の王都の冒険者本部の受付嬢のミーシャさんだ。とりあえず家の中に案内し居間の椅子に座って貰う。対面に僕が座り話し合うことになったが会話そうそうミーシャさんは椅子から立つと。


「ごめんなさい」


 と頭を下げた。ミーシャさんはあの場で半狂乱だったので後から状況を知ったらしいのだが、僕が本部の冒険者達に敵意を持たれているのは自分のせいだと彼女は思っている。間違いではないが……原因も僕にあるため謝罪を求める気はない。そもそも一番の問題はあの本部長なのだが。このまま何を言おうと彼女は納得しないだろう。そんな時僕の頭には怯えた彼女の姿がよぎる。


「もしよければなんだけど、あの日なんで僕に怯えたかだけ教えてくれない?」

「もちらんです」

 

 と彼女は少し体を震わせながらそういった。ミーシャさんは獣人の中でも特に感覚が鋭かった。その感覚の中で血の匂いというのがどうしてもミーシャは苦手で濃い血を嗅ぐと自分の中の獣人の血を抑えきれずに暴れてしまうらしい。その日はいつもよりも己の中の獣人の血が高まっていたのは理解していた。仕事に行き魔物を解体している職員の隣を通る毎に己を制し、何とか午前中までは己を保っていた。ミーシャは途中から鼻を摘みながら通っていたと笑いながら話してたが、僕にはその笑みがぎこちなく思え、今から話す事への心の準備をしているように見えていた。そして午後の業務中、獣人の感覚が全身の震えという形でミーシャに異変を教えてきた。

 

(体が震えている)


 どこまでも他人行儀な自分の感情に気付いた時にはもうダメだった。恐ろしいほどの血の匂い。獣人の本能が暴れるのではなく服従を選んでいた。


「えっとそれは僕なの?」

「わかりません」


 彼女は視線を送る事も恐れ下を向きその場で固まる。そして同時に気付いた、今行っている行動はこの御方に無礼を働いているのではないかと。服従した彼女の本能はその無礼に耐えきれずその場で頭を抱え蹲る。ごめんなさい、ごめんなさい、殺さないでと。そしてミーシャさんの話は終わった。ミーシャさんは再び頭を大きく下げ。


「本当にごめんなさい」


 そう謝罪を僕に表した。元々怒ってはいないが少しイジワルな質問をミーシャさんにしてみる。


「今も僕が怖い?」

「少しだけ」

 

 そうミーシャさんは呟くように僕に言った。

 

(もしかしてミーシャさんの異変、その理由って)


 ミーシャさんの話を聞いて僕は1つ思い当たる節があった。機密ではある。しかし獣人の間では有名な話だとも聞いたことがある。彼女を安心させ今後ともいい関係を築く為に話すことを決めた。


「実は僕、王都に来る前、シリウスで迷いの森の森番をしていたんですよ」

「なるほど、そうだったんですね」

 

 この事実を聞いたミーシャさんの中で納得が怯えを僅かに消した。その証拠に今まで逆立っていた彼女の尻尾が垂れたのだ。

 

 彼女が納得した理由はシリウスにある迷いの森と大いに関係ある。迷いの森の森番に獣人はいない。昔1人雇ってみたらしいが迷いの森の魔物を見た瞬間発狂した。その魔物はゴブリン一匹だ。迷いの森の魔物とはいえゴブリン単体ならば他の地域とそう強さは変わらない。慣れれば大丈夫だと周りの森番はそう思っていた。皆が軽く思っていた。獣人故の特殊な感覚があるのだろうと、あれほど過敏に反応するなら良き、力強い仲間が増えたと歓迎の雰囲気さえ合った。しかし迷いの森の魔物を見たその日の夜、その獣人は首を吊って自殺した。獣人の中でも有名なこの話をミーシャは知っているはずだ。それを聞き彼女は泣きそうな顔で再び頭を下げた。


 彼女は見送るため僕は玄関に来ている。


「送って行こうか?」


 と聞くとまだ暗くないので大丈夫だとミーシャさんは笑ってくれた。怯えはもうない、打ち解けられ愚痴のような事を話せる関係にもなった。同僚のサボり癖がとか、気になる冒険者を見つけるとすぐに自宅に連れ込もうとする受付がいて風紀が乱れるなど、それこそ軽い愚痴もだ。


 一応通りまではと自宅近くの小道を抜け貧民街の大通りまで送っていった。そこで姿見えなくなるまでミーシャさんへ手を振り帰ろうとしたその時、1つの馬車が速度を上げ突っ込んでくるのがわかった。霊宝の事件以来探知魔法の修行と称しリミッターを外して人間ウォッチを最近の日課に加えていた僕だが、その成果もあり現在は連続して3回までなら人が多くても吐かずに使えるようになった。

 

 今回探知を使ったのは気まぐれ、いや虫の知らせ? ちょっと外出したし練習するか。その程度ものだった。だから気付けた、速度を上げた馬車がミーシャさんの隣を横切ると同時に彼女を馬車の中に引きずり込むのを。


 幸いではないが馬車はこちらの方にやってくる。速度を上げる馬車に住民も危機感を持ち道を開け始めた。ミーシャさんを見捨てる選択肢はない。だがどうする? 効率を上げるため先程テオ兄さんから教わった剣を抱き集中力を高める方法を試してみる。本当に不思議だ。意識が冴え時間がゆっくりと流れ始める。手足が速く動くといった感覚はないがより神経が通い手足の触感1つ1つがはっきりとし剣を振るう重圧をより感じる。


 そして馬車が通り過ぎるであろう進行方向に足を進める。策と言えるものは正直何も浮かばなかった。投げナイフはない。煙玉があったとしても馬を混乱させ2次被害の可能性がある手段は避けるべきか。ああ、馬車に飛び乗る手もあったな。思考が他人事のように流れ、この状況を打破する策を幾つか思いつくが、それらを実行する気はない。何故なら答えはもう出ていた。普段ならもっと利口な方法を選択するだろうが不思議と出来る気がする。


 僕に構わず馬車が速度を上げ周りの人々が悲鳴に近い声を上げた。僕の身に起こる残酷な結果。馬車に轢き殺されるその瞬間を周りの人達は予測した。

 

 そんな状況でも僕に不安はない。恐れも命の危機に時折現れる高揚感も。最後の確認として鈴を鳴らす、いつもよりも透き通った音が馬車の中にいるミーシャさんの姿を映した。必要な情報はこれだけ、馬車の何処にミーシャさんがいるかそれだけわかれば斬らずに済む。


 そして次の瞬間。馬車の御者と周りの住人達は馬車が真っ二つにされると同時に鈴の音を聞いた。悲劇を予測させた少年は剣を抜き真っ二つに切り裂かれた馬車を背に腰を深く落としている。誰もが常識外の行動をした彼に目を向ける筈だが誰1人彼に目を向ける観衆はいなかった。住人達の目は斬られた馬車にある。

 正確には馬車の斬り痕だ。誰もが目を離せなかった。ただの斬り痕、しかしその芸術的な美しさに。


 一方の僕は落ち込んでいた。先程までの冴えた感覚は僕の中から消え去り残ったのはいつもの鈍い体だけ。栄光の残骸である馬車に目を向けると、引きずられ連れ去られようとするミーシャさんの姿があった。 


「あ」


 忘れていた彼女を思い出し馬車に走る。僕が近づいて来たのに気付いたのか男は片手をこちらに向け魔法を放とうとしているが遅い。詠唱を唱え終わる前に懐に入り媒介である杖を鞘で巻き上げる。最後の抵抗と殴り掛かってきた男の足を払い地面に転ばせてから魔法で電流を流し意識を奪った。周りに集まる人々に紐がないかと聞くとすぐに投げ込まれた。男の手を縛った後麻袋を顔に被せられていたミーシャを開放する。

 

 しかし助け出した彼女は半狂乱ではないもの怯えた表情を僕に向けていた。それが攫われそうになった事が原因か、それとも僕を恐れていたのかは分からない。先程の愚痴を言い合う気安い関係に戻る事は再びないそれだけはわかった。



 僕の修行は順調だ。テオ兄さんから集中法を教えて貰ってからは戦闘意識の作り方という訓練も始まった。 自分と向き合ってくれる指導者が出来た。今までの息詰まりが嘘のように様々な事が僕の血肉になっていく。でも今までが無駄だったとは思わない。昔の苦労があるから今がある。それは変わらないから。


「向かう先が分からぬまま征く旅は辛いだろう」


 レグルス先生は様々な課題を与えそれを乗り越えると次の課題といった指導法を取っていた。そんな言葉に理解を示し技を学ぶ。不思議な流派であったものの修行をしながら、そもそも王都に来ていた理由であるルドレヴィアの資材の確保もしっかりと行なっていた。本部に必要な物をまとめた目録を提出して向こうで集めて貰うだけだから難しい事はないが少々遅れが出ている資材があった。そうポーションだ。疫病により冒険者ギルド御用達のデメテルはおよそ4週間ほど機能停止になっていた。疫病で3週間、特効薬づくりで1週間が内訳だが寧ろ大変なのはそこからだ。

 

 冒険者ギルドや様々な組織がデメテルを懇意にしている。普段店を経営し問題なく維持しているアガレスさんであっても1人で4週間分の遅れを取り戻すのは無理だ。なので普段は店にいない二人に頑張って貰っていた。現在はそれぞれ空き家を借りてルシアさんやオプシディアさん達が獅子奮迅の活躍を見せている。  

 この前アガレスさんに傷の手当をしてもらおうとデメテルに行ったら主治医はあっちだとルシアさんの方へと行かされた。ルシアさんの方では新薬の制作に付き合わされたり、マナを使った僕専用のドーピング剤を作れるのではないかと画策し頻繁に出入りしているので主治医と言われても否定しがたい。


 そして遅れたポーション以外の物資を施設に届ける為にシズカは先にルドレヴィアへ戻っていった。その際だが。


「待ってるからね」


 僕は不意にシズカに抱き締められ少し顔が赤くなったてしまう。それを見たシズカとレグルス先生は意地悪い笑みを浮かべてからかって来た。その報復をするためにレグルス先生に模擬戦を挑んだが残念ながら一本も取れず、夜疲れてすぐ眠ってしまうはずの布団でその晩はひっそりと涙を流した。


 そんな日々が2週間。僕もそろそろルドレヴィアに帰らなければいけない。とりあえず貧民街の宿舎にロベルトを放り込む準備を明日しよう。そんな事を深夜に剣を振りながら考えているとシズカがルドレヴィアへ戻る際僕に手渡したルドレヴィア直通の通信機が鳴る。何かあったらギルド本部に通信を送るようにするとは言っていたが一応との事で僕も通信機を持っている。


 現在の時刻は朝4:00、本来か掛かってくる事のない時間帯。震える通信機に危機感を持って手に取る。


「き・・・こえ・・・ます・・か・・邪教徒・・・・に」


 途切れ途切れ聞こえるのはエリックの声、そして最後の言葉が僕を震撼させた。


「し・か・・・さ・わ・た」


 シズカさんが攫われた? ありえないという考えと心の中の激情がすぐに飛び出せと命じる。冷静になるため道場にいるレグルス先生に目を向けた。


「行く前に準備を忘れるな。それと事情を知りたかったらあのダークエルフに聞け」


 ギルドの事は任せろ。そう述べ先生は出かけていった。こんな時間まで付き合ってくれる面倒見の良さも含め感謝をし僕は道場を飛び出した。


拙い文ですが読んで頂きありがとうございました。


また読みに来てくだされば大変うれしいです。


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