僕らの前提条件
「いつもごめんねフィーネ」
拠点である地下に戻ってきた僕らは先に戻っていたフィーネに声を掛け眼帯をつけて貰っていた。
「私は眼帯を付けない貴方の方が好きですよ、だって流石に狙いすぎですから」
「そうしたいのは山々だけど、この眼帯を付けないと人格の融合が進行するから付けないといけないんだ」
右目を軽く触りつつ、思い出すように前を向くと目の前に背中で腕を汲んだフィーネが僕の右目を覗き込むようにじっと見つめている。
「確かスヴェンさんでしたっけ、その右目にいる人は」
「うん、僕を軍の施設から救い出してくれた人」
フィーネは眉を一瞬寄せ、その行動を上書きするように首を左に動かしわかりやすく首を傾げる。彼女の性格と過去を考えるとそれを気にしてしまうのもしょうがない。
「そっか、フィーネは僕がどうしてここルベリオ王国にいるかを話してなかったね」
「はい、秘密が多い人と一緒にいるのは大変です」
フィーネは僕から一歩距離を取り「もう少し打ち明けてくれるとありがたいのに」と小さく呟く。1人の事のつもりだったのだろうが、彼女の人の芯に残る声質と拗ねたように目線を下げる表情、そして何より僕の耳の良さがそれを聞きのがさなかった。フィーネとの出会いを思い出して吹き出すように笑ってしまっう。
それでフィーネも気付いたのだろう。先程の独り言が僕に聞かれていた事を、少し頬を赤らめながら視線を右に逸らす、それでも僕の過去を知れるのが嬉しいのか、ずっと口元が緩んでいたのを彼女は気付いていないだろう。そこまで興味を持たれると僕も照れくさくてついつい頬をかいてしまう。
そこで僕は一旦目を瞑る。明るい話しではない、それに今の僕にとって思い出すという作業が一番難しいことだからだ。少し乾いた喉で眉を潜めながら話し出す。
「僕はここルベリオ王国を調査するためにやってきた」
「冒険者なのにですか?」
「うん、ルベリオ王国のギルドが国の命令で強制的に全て封鎖されたからね、その調査に来たんだけど」
*
それは一ヶ月前に遡る。
「空を飛ぶってこんな気持か……クレアさん何その顔」
両手を大きく広げ腕を通り過ぎる風を十全に感じていると彼女は信じられない物を見る目で僕を見ていた。
「空中を気軽に跳ねている人物が今さらそこに感動されても」
「全然違うよ、僕が未熟なのはあるけど、空中を蹴るのは結構制限もあるし、やっぱり飛ぶ方が爽快感が凄い」
拳をぐっと握りそう力説する。確かに空中を蹴れば滞空時間は伸びるし、咄嗟の判断、その選択肢を増やすことが出来るが、それはあくまで地面を蹴るように宙を蹴る、地上で戦う延長でしかない。素早い動きで全身に風を浴び、青く広い空を独り占めする。そんな爽快感は決して宙を蹴ることでは得られない。
さて僕らはルベリオ王国に向かう為に現在飛行船に乗っている。技術の進歩か、飛行中でも甲板に出る事ができる仕組みで、外の世界に出てみるとアトラディア王国は閉じた世界だと改めて実感する。
アトラディア王国からここまでのルートは、まず船に乗り海路を進む、そこから馬車でダムド王国に入り空路でルベリオ王国に向かう。
その場に座るクレアさんを見た後僕もう一度風を楽しむために目を瞑る。そして意識を触覚に集中させるのだが。
(クレアさんがいるのに彼女を無視しているようなこの状況はどうしたものか? といっても話題があるわけじゃないし……そう言えばあった)
議題が頭に浮かぶと自然と目が開く、広げていた両手を下ろし、クレアさんの隣に立つと肩を落とし遠くを見つめながら話題を口にしする。
「それにしてもなんで? というメンバーになったね。今回の依頼」
「確かに」
少し掠れた笑い声が僕の耳が捉える、クレアさんがそんな笑みをしたのもその筈、今回の依頼のメンバーは。
「僕、クレアさん、シズカ、そしてエレボスの4人か増えたね」
無意識に人差し指から順に指を曲げ数えていたがまさしくどうしてそうなったか教えて欲しいメンバーだ。
「エレボスに関しても契約を結んでいる僕じゃないと止められないからわかる……あれ? エレボスは今後固定メンバーになるの? シズカに関しては本当にわからない」
魂が抜けたような愛想笑いをしたが、頬が引きつり口角が上がりきらず愛想笑い自体をできた自信がない、そんな顔をしているとこんどは楽しそうな笑い声が隣から聞こえてくる、興味を持ちクレアさんの方へと顔を向けると彼女は僕の方を見ながら人差し指で笑い涙を拭いていた。なるほど面白かったのは僕の顔か、不貞腐れるように今度は青々とした空を見上げる。
「ごめんなさい、でもそうかも知れないですね、ちなみに2人は船内の何処に行ったんですかね?」
今だ少し顔を膨れさせながら人差し指を回し斜め下を指差す、その後は真下を同じように指差した。
「エレボスは席で寝てる、シズカは一番下の倉庫で素振りしてるよ」
目を閉じれば先程の出来事が簡単に脳裏に浮かぶ。
この飛行船の通路での事だ。飛行船の内部構造の確認がてら歩いていると廊下の先からシズカの声が聞こえてきた。何をしているのだろうと興味が湧き、シズカのいる位置から死角の通路に張り付き覗いていたのだが。
「流石に人が大勢いる場所では刀は振れないよね」
心の中で何を言っているんだこの人はと僕はその時思っていた。鍛冶に命を掛けていた師匠であっても旅行先の他人の工房を乗っ取ろうという思考にならなかったのに。
シズカは従業員に手を上げ気軽に声を掛けると。
「私シズカ、そうだからできれば倉庫を間借りしてもいいかな、お、ありがとう」
最初は普通に接していた従業員の背中が徐々に伸びていき、最後は興奮したようにその場を去っていった。鼻歌を混じりに倉庫に入っていくシズカを見て隠れるのを忘れ数秒間瞬きを無心でしていた。
僕はその時まだ甘く見ていたのだ、シズカの知名度を。
突然溢れ出した記憶を振り払うように頭を動かし両頬を軽く叩く。そしてせっかくの空の旅を楽しもうと再び目を閉じようとしたその時前方から吹く風に息遣いを感じた。
「何だあれ?」
それを言ったのは誰だろうか? 隣にいるクレアさんの声ではないことだけは明らかだ。
目を開け前方の甲板に近づくと黒色の物体が少しずつこちらに近づいてくる。飛行船は接触を避けるため速度を落としその場に停止、だが黒い物体は飛行船の前に陣取りギロリと僕ら乗客を睨みつけると大きく息を吸い込み火球を放った。火球は目の間に現れた青色の膜が防ぐが衝撃は抑えられず船内を激しく揺らす。
「クッソ」
「きゃ」
「あれはワイバーンだ」
隣にいる恰幅の良さそうな男性がそう声を荒げる。魔物種類がわかったのはありがたいが問題はこの飛行船があくまで民間の物だという点。ワイバーンにダメージを与えられる武装などは付いていない。そして大きな問題がもう一つ。
「逃げろ、できるだけ飛行船の中に」
隣にいる恰幅の良い男性大声を上げると甲板の最前列にいた人達が波となりこちらに押し寄せてきた。止めるすべなく船の側面に追いやられ、肩を押され壁に頭を強く打ちゴンという音を立てる。頭を抑えながら床にお尻をつけ一旦周りを見渡すと、クレアさんは飛行船の甲板中央部、そこにある船内への階段近くにる、それを目で確認したと同時、こんどは耳が妙な駆動音を3つ聞き取る。
「今度は何だ」
立ち上がり音のした前方を見ると3機の飛行船が現れた。だがその飛行船をワイバーンが攻撃する事はない、後から来た3機の飛行船の1つ、一番奥にある飛行船にワイバーンは顔を近づけると尻尾を大きく振り始めた。
「なるほどテイマーがそこにいるのか、モグよこせを剣」
目は真っ直ぐ奥の飛行船に向けたまま不安定な土魔法を従魔であるモグに要求、目の前に現れた肌色の土で出来た剣、それを左手で掴むと右手の親指を除いた全ての指、そも第2関節部分で刃の根本を掴み、剣を一瞥すらせず外側に向け腕を振るい剣の造形を行なう。
「固めてくれ」
そしてモグに固めて貰った剣を右手に持ち替え、左手は飛行船の外枠をなぞりながら船の前方に足を向けたその時剣を持った右腕が前に出てこない。振り返る直前目の端に空色の髪が映り目を数回パチクリさせ戦闘意識を解いた。後ろには左腕で胸の近くを抑え、肩で息をしているクレアさんがいた。そして行ってはいけないと首を振るうクレアさんの指示に従い彼女の方に体を向ける。
「駄目です。私達は秘密裏に調査に来ているんですから。それにワイバーンの攻撃は一度止まっている、恐らく手懐けられていると考えていい、ならここは一旦様子を見ましょう」
「わかりました」
クレアさんの意見に頷き一度船内に戻ろうとクレアさんが僕の腕を引こうとしたその時だった。
背後から砲撃音が鳴り船内が揺れる。揺れに耐えようと足を踏ん張ろうとしたその時全身が突如痙攣し動けなくなった。揺れに踏ん張れずその場に倒れたがさらなる揺れと重なりクレアさんの手から僕の右腕が溢れる。固定する術を失った僕は甲板が揺れるままにぶつかりながら転げ回り、そして船外へと投げ出された。
「ロスト」
投げ出される直前クレアさんが揺れる船内を走りながら船外に飛び出した僕に駆け寄り手を伸ばそうとするが届かずそのまま僕は落下していった。目を瞑り体に意識を集中させる、今だ体が痙攣しておりこの状況では宙を蹴る事も出来ず地面に叩きつけられ死んでしまうだろう。今僕に出来る事は痙攣終わるまで耐える事、もし地面への衝突前に痙攣が終われば、落下速度を落とし生き長らえる事が出来るかも知れない。最後のチャンスを見逃さないように呼吸を乱さず、体の力を抜く。
「ぐ」
先程とは違う、命の危機を現す風を全身に浴びながら落下する筈だったのだが突如左腕に現れた灼熱感に目を開けた。
そこには僕の左腕に噛みついているワイバーンがいた。腹のそこから湧き上がる恐怖を歯で食いしばる事で抑え、ワイバーンを確認する。鋭いキバに噛みつかれているが左腕の骨はまだ砕かれていない、そして灼熱感に隠れながらも感じる左腕をヤスリのような物で擦られる感覚。このワイバーンは僕を食う気なのだろう。左腕で感じるヤスリのような感覚、これは恐らくワイバーンの舌だ。血を舐め味わっている、そして間近で感じる興奮しているような鼻息。確実にこのワイバーンは人間の味を知っている。
「だがここで死ぬわけにはいかない」
危機的状況だがこのワイバーンが捕まえてくれた時間のおかげで痙攣をやり過ごす事ができた。そして右腕には痙攣するまえから握っていた土剣は今がまだある。そして息を荒げながら右手の剣を左腕の肘より少し上の部分に添え。
「ふぅ〜〜」
唇を強く噛み右腕を一気に引く。流石は僕の造形、剣を引いた右手は殆ど抵抗感なく左腕を切り落とし、血を撒き散らしながら地面に落ちていく。今だ斬り落とした腕を大事そうに舐めているワイバーンを鼻で笑い、すぐさま体の向きを入れ替える。
「まだ、まだ、まだだ」
足がちぎれるかと思うほど足で宙を蹴り落下速度を落とそうとするが、やってる本人からしたら落下速度が下がっている気はするが周りを冷静に俯瞰し速度の低下を確認している余裕はない。ただ上昇してない以上まだ危険な速度にいるような気がして只管に宙を蹴る、そして地面が近づき着地の瞬間思わず目を瞑り、ドンという音と共に地面に激突した。
「急いで逃げないと」
立ち上がるのはいい、だが腰を上げる際に片腕がない不自由さを十全に感じ取りながらその場を離れる。近くにある森に逃げ込み、大きな木の後ろに隠れ腰を着けると、道具袋からルシアさんに貰ったエクスポーションを手に取ろうとするが、袋の中が妙に湿っている事を感じ取る。まさかと袋をベルトから取り外そうとするが、慣れない片腕と焦りが原因で手間取ってしまう。足を組みその上で道具袋の中を漁るが、ルシアさんから貰ったエクスポーションの容器は全て砕けていた。
「クッソ、全滅か。モグは大丈夫、怪我してない?」
「モグ」
「よかった大丈夫だね」
同じ腰の部分にある袋を寝床としている従魔のモグは大丈夫なのかと突然心配になったが、彼は僕の胸ポケットの方に退避しており、手を上げ無事な姿を覗かせる。モグの頭を軽く右手で撫でた後、近くにあるダチョウの卵位の大きさの石がある場所に向かい、口にハンカチを噛ませ魔法で熱した石に向けて左腕の傷口を押し当てる。
「”#$#$&#」
今までで最も不快な焼けた肉の匂いを嗅ぎながら傷を塞ぐと僕はその場で倒れ込み意識を失った、そして次に気付いたときには牢屋にいた。
血の跡が変色し黒シミとなっている壁に周りの男性からは排出物を何日もそのままにしたような匂いがする。鼻を摘みながら自分を確認する、服は着替えさせられ従魔のモグの姿もない。一応気になって右腕を近づけ袖の匂いを嗅いでみたが当然のように周りの男性達と同じ匂いがした。
「ひ」
匂いの強烈さに眠れず横になっていると、正面の男性が目に入る、見回りの足音がなるだけで体をこわばらせ目を覚ましてしまうその過敏さに、目が向きそうになるが本当に気にしなければいけないことはその顔だ、窶れもう何日も眠れていなそうな表情をしている。
「おい。ハイド。眠れているか」
「は、はい。見回りさんのおかげで安心して眠れています」
「そうかい、そうかい。じゃぁまたくるからな」
(わざとか)
目の前の男性は今だ震えが止まらないようで、お腹に掛けていた布を頭に巻き付け、外の音を遮断しようとしていた。これが命の危機がない普通の生活をしていた人なら環境変化に対する同情だけで済ませるが、この牢夜に入れられている人は全員体が鍛えられており、つまり軍人の可能性だ高い。そんな1人が足音1つで全身をビクつかせる程心身共に弱っている。
そうここが僕の出発点、そして罪を犯す牢屋だ。
*
本当は飛行船から投げ出された所で話しを終えようと思っていた、それでも牢に入れられたところまで話したのはフィーネの不満の解消とこれから話す事実、その心の準備をさせるためだ。
「えっとその冒険者仲間は今何処に」
手を貸しますという強い信念を込めた瞬き1つしない目を向けられるが首を振るう。この話しをしようと思った理由はもう1つある。フィーネが言った「秘密の多い人と一緒にいると疲れるんです」彼女には助けられているから少し隠し事を明かそうと考えたからだ。
「フィーネ今からきつい事をいうぞ」
「はい」
普段冷静で顔色を中々変えない彼女が思わず眉を寄せた、そしてある意味フィーネにも関係する事を話した。
「僕はね、ルベリオ王国に来る前の記憶が殆どないんだ。軍の施設で行われた実験のせいで」
「そうですか……ありがとうございます」
フィーネは全身に力を入れ頭を下げる。彼女の顔は見えないがいつもの綺麗な所作ではない、体は震え、お辞儀をする際はいつも綺麗に伸ばされている手は固く握られている。それは怒りか? いや彼女のゆっくり持ち上がった瞼からして覚悟だろうか?
「フィーネ、そこまで固くならなくていいよ。それにそこま酷いものじゃない。知識として頭の中に残っているんだ、でもそれが実際に経験したことだと実感が持てない。記憶と感情、そして経験が結びつかないから思い出せないんだ。さっきの仲間もだけどね、何を話したかは覚えているし顔もわかるんだけど、多分今直接会ったとしても彼らを僕の知り合いだと認識出来ないかもしれない」
人差し指で軽く頭を数回突く。でも記憶は残っているから問題ないよと表したつもりだったのだが、フィーネは顔を崩さず、真剣な表情で僕に再び頭を下げた。
「ご主人様」
「その言い方はやめてくれフィーネ」
「私が必ず貴方を元に戻して見せる、だって私は貴方のお陰で何も失わずにここにいらるのですから」
認めなければ動かない、頭を下げ続ける鋼の意思を持つフィーネを見て、右に目を向けながら頭をかく。僕が過去を出来るだけ話さないのはこうなることが目に見えているからだ、そもそも比較的にフィーネと打ち解けられている理由は境遇が少し似ているからだ。だから僕は彼女に気を許す、そしてそのまた逆、フィーネは僕を決して見捨てない。
「わかったよ」
「はい」
「それにもう時間だろ?」
了承を聞き嬉しそうに顔を上げたフィーネだが僕の時計を指差しながら言った言葉に一気に表情を消す。そんな彼女を置いて地下室の出口に向かう。その場から逃げ去るように歩く僕を見て、「フフ」と笑い声が聞こえるが構わず出入り口に向かう。
「御主人様忘れ物です」
地下の出口に辿り着くより早く、フィーネは歩く姿勢のまま追い抜き、頭を下げながら両手の平で持った剣を僕眼の前に突き出す。受取ると剣に着いていたあるものが目に入る。
「ごめん忘れてた、それに鎖もありがとう」
フィーネは表情を変えず僕の言葉を受け取ると再び頭を下げ、今度は左側に周り欠けた腕にあるものを丁寧に、1つ1つ幸運を込めるように巻いてくれた。
そしてフィーネは自分の定位置だと言わんばかりに左後方で待機する。フィーネの所作は洗練されている、いつも気付くと彼女の丁寧な動きを目で追ってしまうが、今回はいつもと違って少し心苦しい。
先程時間を主張したのは罪悪感からだ。フィーネはは先程の話しを聞けば絶対にこのルベリオ王国の件が終わるまで僕から離れようとしないだろう。だが僕らの勢力弱い。メンバーも僕にフィーネ、そして上の宿屋の女将さんくらいだ。それでも手札の強さではどんな組織にでも負けない自信があるが、こんな沈む事が定められているような泥舟にフィーネを突き合わせていいものかと考えてしまった。
その罪悪感を塗りつぶすために、時間を指摘しフィーネの心からの笑顔を潰したのだ。フィーネから僕の顔が見えない事を良いことに、下を向きながら眉を寄せ歯ぎしりをする。
「私はお世話が出来る分今の方が好きですよ」
そんな僕の背中を優しく擦りながら地下の出口、その扉のドアノブを掴み僕にフィーネは持たせる。作られた笑みを浮かべつつ目だけは蘭蘭と輝いている。覚悟を決め、悩んだら背中を押してくれる素晴らしい仲間がいるのに何を悩むのだろうか。それにフィーネは言っていた。
「私はここに居たいからいるのです、命を賭ける覚悟は最初からしてきているので、ご安心して下さい」
そうか、過去を話した所で彼女の決意を強めるだけで、何も変える事は出来ないのか。それに気付くと肩の力が抜け、フィーネに持たせて貰ったドアノブを勢いよく引く。
「行こうフィーネ、今から反乱軍の人達と初面談だ」
「はい」
そして僕ら二人は地下室の扉を開け、外に向かう。




