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ショッピング!

凰哦さんの膝の上で、初めてのドライブを楽しんでいるキュー。

車の外を流れる景色が楽しいのか、窓に張り付いて見ている。

それを満足気に喜んでいる凰哦さん。

何故僕が運転してるのかというと、凰哦さんが外に出てもひた謝りの姿のままだったから、近所の目もあるので、今回は許してあげたからだ。

まぁ本当は、元から僕が運転するつもりだったから、別に良いのだけれどもね。

そう思って車を走らせていると、キューが酔ったみたい。

「ギャウゥ…ぎもち…わるい…」

その言葉に焦る凰哦さん

「どうしよう蓮輝!キューが、キューが気持ち悪いって言ってるぞ!車停めないと!」

この人、こんなに取り乱す人だった?

「落ち着いて!取り敢えず窓開けて、外の空気吸わせてあげてよ!」

「おぉ、そうだな!」

そう言うなり、窓を開けると

「キュー!気持ち良いのぉ〜」

と、言った途端、窓の外に

「ヴァロロロロロ〜…ヴェッ…」

決して誰にも見えない、キラキラを出しちゃいました。

その証拠に、後ろの車のフロントガラスにしっかり付いているのに、後ろの運転手は気付いてない様子。

「…キューも、気持ち悪い時は吐くんだな…」

「どうやらそうみたいだね…凰哦さん、キューの口を拭いてあげてね」

「あぁ分かった…大丈夫か?キュー…」

ティッシュで拭かれながら、頷くキュー。

「もう少しで着くから、もうちょっと我慢しててね。着いたらお水買うから、それ飲んで休もうか?」

その問いかけにも、無言で頷くキュー。

こりゃ車が嫌いになったかも知れないなぁ…。

「ほらキュー、もう着くからね!見えるかな?あの大きな建物が、目的地だよ」

そう言って、近所の大型ショッピングモールを指差すと

「あそこぉ?…大きいねぇ!沢山美味しいものあるぅ〜?」

キューの食い意地は果てしないね!

車酔いの事なんて、既に忘れてるみたいだ。

「あぁ有るぞ!キューが食べたくなる物。沢山有ると思うが、この前みたいにならない為にも、キューが食べられそうなのを選んでくれよ?でもその前に、買い物済ませようなぁ、分かったかな?」

凰哦さんがキューの頭を撫でて、説明する。

キューも“良い子良い子〜”と笑ってるし、すっかりお気に入りになった、キューの頭を撫でる行為。

中毒性が有る様だね〜、まぁ幸せそうなら良いかぁ〜。

ショッピングモールの駐車場に車を停めて、取り敢えず水を買って来て、キューに飲ませる。

「どう?気持ち悪いの治った?」

僕がそう聞くと

「気持ち悪いの〜ナイナイしてるぅ〜」

「そっかぁ、それじゃ買い物始めよう。凰哦さん、肩車してあげてね、キューも凰哦パパに、しっかりしがみついてるんだよ!それじゃ行こうか」

今日は、凰哦さんに、キューを堪能してもらおう。

その方が、何だか良い様な気がするからね。

肩車をされたキューが、ギュッと凰哦さんの頭にしがみ付く事に、幸せを感じる凰哦さんは、ずっと嬉しそうに笑ってる。

バックやカバン等を取り扱っている、ショップに着いた僕達は、早速キューが入っても良さそうな、リュックを品定めしていく。

出来れば入口は、チャックではなく紐が良いよね。

キューがチャックに挟まれたら、痛いだろうから。

キューの大きさだと、普通サイズは小さいし、かといって登山用は流石に毎日担いで買い物は、世間の目があるからね〜。

この人、毎日大きな荷物背負って何処にいくのか?みたいな目で見られそう。

そう思っていたら、手頃で見た目も良いリュックが有った。

「凰哦さん、これ良さそうなんだけど、どう思う?」

「それか?…良いんじゃないか?後はキューがちゃんと入るか確かめてみたらどうだ?」

「そうだね、それじゃキューをここに入れてみてよ」

「………」

「凰哦さん?」

「今しなきゃダメか?」

バチィーーン!

僕は思いっきり、凰哦さんの背中を叩く。

「いったー!何するんだよ!」

「何するんだよじゃないよ!叩くよ!?」

「叩いてから言うな!」

「今凰哦さんが、自分から言ったじゃんかよ!キューを入れてみて確かめようって!バッカじゃない!?」

「いやだって…降ろしたくないんだもん…」

「いいオッサンが、そんな可愛く言っても無理があるから!」

「オッ…オッサン…て…」

「いいから、早くしてよ!人の目も有るんだから!それにカメラに撮られてるの分かってる?僕らの行動が、不審者扱いになったらどうするの?」

「わわ、分かったよ…」

そう言いながら、渋々キューを肩から降ろし、リュックに入れるのだった。

何をされてるのか理解出来ないキューだったが、リュックにスッポリ入ったら、とても嬉しそうに笑うのだ。

「ケヘッケヘッケヘェ〜、つつまれてる〜、気持ちいいのぉ〜」

とてもお気に召した様だ。

「それじゃキュー出して、これ買って来るから」

「ああ!分かった!」

また直ぐに、キューを肩車出来ると嬉しそうにする凰哦さんに、ちょっと呆れてしまう。

リュックをレジに出し

「これ、直ぐに使うので、値札とか全部外してくれます?」

「えっ?」

「えっ?」

「直ぐに使うのか?」

「…あの…お客様、…如何なさいますか?」

店員さんまで、僕達のやり取りに巻き込んじゃったよ…

「スイマセン〜切っちゃって下さい!もぅ〜スパッと!」

「はい、かしこまりました〜!スパッ〜とですね!」

「はい!スパッ〜と!」

ほっとけば、ずっとポンコツな凰哦さんなど、完全無視して差し上げましょう。

「肩車…」

凰哦さんの呟きを無視して店員さんが、値札を切り取り

「ではお会計、税込6,800円になります」

「カード一括で」

「一括ですね…では暗証番号お願いします」

はい、ポチポチポチポチとね!

「はい、お支払い完了しました。お買い上げありがとうございます」

「は〜いこちらこそ〜」

レジを後にして、多目的トイレに向かう。

その間も

「肩車〜肩車〜…」

と呟きながら、ゾンビの様にノタノタ付いてくる凰哦さん。

多目的トイレに入って、キューをリュックに入れ

「買い物とか家から出る時は、今度からこれに入ってもらうね、それでもいい?」

キューはコクンと頷き

「分かったぁ〜」

と言ってくれた。

多目的トイレから出て、抱えていたリュックを凰哦さんに渡す。

「はいこれ担いで」

表情が明るくなる凰哦さん。

キューを担げる事が、余程嬉しいみたい。

ひと時も離れたくないのが伝わってくるから、今日1日は、好きな様にさせてあげよう。

それが大人の対応だよね〜。

でも渋メンの凰哦さんが、見た目は良いけれど、結構カジュアルな若者向けのリュックを担ぐ姿は、見ててイタイのですよ。

まぁ本人が気にして無ければ、それでも良いのですがね、ちょっとだけ離れて歩こう。

「なぁ蓮輝…俺がこのリュックを担いでいたら、そんなに違和感あるのか?…」

あっこれは、僕の心を読んだのじゃなく、僕の行動から察したみたいだね。

「…かなりね…でも凰哦さんが気にしないのなら、それで良いんじゃない?…ただ僕が同じイタイ人に、思われたくないだけだから」

結構キツい事言ったのだけれど、出来れば凰哦さんには、渋メンを貫いて欲しいんだよね〜。

その方が、近所の人や会社の人達に会った時に、変な目で見られて欲しくないからね。

「今僕が考えてた事、心読んだりしてくれてる?」

「いや、全然…」

これだよ…何時もは必要ない時に、人の心読む癖に、読んで欲しい時に読まないなんて、本当勘弁して欲しい…。

だから小さい声で、さっき思った事伝えました。

すると、しっかり凰哦さんが、僕の考えてた事を理解してくれて、なんとか落ち込ませない事が出来て、一安心。

今回分かった事は、僕の心を読むのは、万全では無いって事を判明出来たのが、大きい収穫ですね〜。

「今日この時間なら、余り人も少ないから、思う存分キューを堪能してね!」

「あぁありがとう!そうするよ!…ってな訳で、ハメを外させて貰うかぁ〜!」

何時も立ち振る舞いに気を遣っている凰哦さん、今日ぐらい無邪気になっても良いよね〜。

僕はその後をゆっくり付いて行くから、遠慮なく楽しんでくれれば、僕も嬉しいよ。

「篠瀬社長?」

ビクッとする僕と凰哦さん。

後ろから、凰哦さんの事を呼ぶ声が聞こえてきた。

恐る恐る振り返ると、そこには社員の男性がいた。

「か、鐘川(かねかわ)君?…ななっ何故君がこんな所に、い…居るんだね…?」

「篠瀬社長こそ、あっ僕は妻と産まれたばかりの子供を連れて、ベビー用品を買いに来てます。こちらが妻の爽子(さわこ)で、こっちが娘の摩羽(まわ)です」

「初めまして、妻の爽子です。夫が何時もお世話になっております」

「は、初めまして。ご丁寧にありがとうございます」

「いえ、篠瀬社長にそんなお言葉頂くなんて、恐縮です」

妻の爽子がそう返す。

「で、どうして君達が、こんな時間にここに来ているんだい?」

社員の鐘川が

「今育児休暇を取ってまして、平日の今なら、客も少ないだろうと…で、社長は今日会社は…」

「そうなのかぁー!育児休暇だったんだね、子供は大切に育てないとな!ハハハッ…。私かね、私もしばらく休暇を取る事にして、今日は甥の蓮輝とショッピングに来てたんだ」

「そうだったのですか…で、そのリュック…」

凰哦さんは鐘川さんの両肩に手を乗せ、

「ちょっと向こうで2人っきりで話そうか?」

と、僕にキューの入っているリュックを預け、少し離れて行く。

いきなり連行される夫に、何か不味い事しでかしたのかと焦る奥さん。

「あ、あの…夫が何かしでかしましたでしょうか…?」

「あっいえ、しでかしたのはこっちなんで、気にしないで下さい」

「えっ?本当にそうなんですか?」

「は〜い、そうなんです!ですからお気にせずに〜。多分、何かサプライズ的な事しようとしてたの、バレちゃったから、焦ってるだけですから。今日はその為のショッピングでしたから…」

ちょっと苦しい言い訳だけれど、これで誤魔化せるだろう…。

念の為、素早く凰哦さんに、メールで誤魔化し内容伝えとこう…。

そうすれば、凰哦さんもそれに合わせて、上手く誤魔化してくれるだろうしね〜。

メール送信!っと。

…オッ?僕のメールで上手く誤魔化せているみたいだね〜、良かった〜。

2人、和気あいあいと戻って来る。

「おい爽子、聞いてくれよ!何と篠瀬社長が、俺達の摩羽のお祝いをしてくれようとしてたらしいんだ!」

「えぇそうみたいね!実は私も先程、社長さんの甥っ子の蓮輝さんから、サプライズしようって聞かされて、とても驚いてたところなのよ」

「でも本当に良いのですか?娘だけじゃなく、僕や妻迄好きな物買って頂けるとおっしゃいましたが…」

「えっ?それ本当なの、貴方…」

「えぇ奥さん、私が彼にそう言ったんですよ!ですから貴方も好きな物を選んで宜しいですから…」

「そんな!頂けません!…お気持ちだけで結構です。この子だけでも恐縮なのに、私達迄頂く訳には…」

「いや、彼の働きが素晴らしいだけではなく、その彼を支えている中、お子さんを産んだ事は、とても素晴らしい事です。その2人を労いたい私の勝手な気持ちを汲んで頂けると、とても嬉しいのですが?それでも駄目かな?」

ちょっと強引過ぎると思うけど、奥さんは涙目になるし、旦那さんも感極まって

「篠瀬社長!そこ迄僕達の事を思って頂けてたなんて、これ程嬉しい事は有りません!そのお気持ちに応えられる様、今後も社長の下で、精一杯励みたいと思います!」

「良かったわね貴方…社長、本当にありがとうございます…。今日の事は、生涯忘れません…」

と、涙を流しながら深く頭を下げる2人。

ごめんなさーい!本当ごめんなさーい!!

本当は、こんなに感動されるつもりはなかったんです!

ただの誤魔化しなんですよ…。

そんなに感動されたら、心が痛みます〜〜…。

凰哦さんも、ここ迄感動されるなんて思って無かったから、罪悪感で顔が強張り固まってますもん…。

だから、外では変な姿を見せられないんだよ…。

2人が頭を下げる間に、凰哦さんの脇腹を軽く小突いて、フリーズ解除。

我に返った凰哦さんは、即座に脳をフル回転させ

「本当は、君達だけにこんな事をするのは、いけないんだが、これは私達だけの秘密という事で、他の社員には黙っていてくれないかな?他の社員全員に同じ事してたら、私が参ってしまうからね…。秘密の共有って事で、そこ迄感謝しなくて良いから。って事で、済まないが秘密に!…な?」

凰哦さんは、鐘川さん夫婦にこれ以上気遣わせないよう、そう言ったのだが

「えっ?僕達だけなんですか?どうして僕達だけ特別扱いなんですか?」

と、まぁ〜当然の疑問ですわ…。

そりゃそう思いますわ…。

「いや、あの、その…」

そこ迄深く考えてない凰哦さんは、あたふたしだすから、しょうがない一肌脱ぎますかと

「実はですね、僕の知人にも3歳児の子供がいまして、その子に何かプレゼントしようと思ってたんですよ。そんな時、凰哦さんから産休されてる社員の話を聞きましてね、それじゃその方にも、サプライズって事でプレゼント買おうと提案したんです。凰哦さんも、何時も頑張ってくれてるからと、その提案を承諾したのですが、1人だけ贔屓にしてると思われたらどうする?と言われたのですが、それなら匿名で贈れば、何処の誰かは分からないだろうと、安易な考えで…。よくよく考えたら、知らない誰かから、突然プレゼント貰っても気持ち悪いですよね…」

と、我ながら誤魔化すの上手いと思います。

「そ、そうなんだよ…今蓮輝が言ってた通りなんだ。だから、鐘川君だけを贔屓にしてるとかじゃ無いんだよ…。君が頑張ってくれてるお礼も兼ねて、普段はやらない事やってみようかと、気まぐれなところも有るから、気にしないで欲しいんだ…」

これでまぁ、面目は保たれたでしょう〜。

「そうだったのですか、それなら遠慮なく、社長のご厚意に甘えさせて頂きます。でも社長の気まぐれだとしても、僕の働きを評価して頂けたのは、本当に嬉しいです。それと、秘密を共有出来る事も、嬉しいですね!…ただ、こんな事言ったら気分を害するかもしれませんが、普段の社長のイメージとギャップが有って、意外でした」

「何だとぉ〜?…それじゃ、プレゼントの話は無しでも良いのかい?」

「いえいえ!有りでお願いします!」

「ハハハッ!冗談だよ!…でも1つ聞くが、そんなにイメージにギャップが有るのか?」

「…正直に言っても…」

「あぁ構わない、是非聞かせてくれないか?」

「…では正直に、かなりギャップが有ります。何時もの社長のイメージは、つけいる隙が無く、ビシッとした敏腕社長ですね。それでいて、端正な顔立ちなのとそのスタイルなので、余計に凄さが増してますね。その為自社社員だけじゃ無く、取引先の方達の憧れの存在ですよ。勿論僕も、社長の様な大人になりたいと憧れてます」

と、素直に述べてくれました。

鐘川さんの素直な意見と憧れなのだと言われ、赤面して狼狽える凰哦さん。

それを見た鐘川夫妻が笑い

「笑って済いません…でも本当意外な一面を見られて、僕はとても嬉しいです。もっと頑張って、社長のお役にたちたいと、強く思いました」

「篠瀬社長、今後とも主人を宜しくお願いします」

「あ…ああ、此方こそ宜しく頼むよ」

とまぁ、この場は何とか収まりまして、ショッピングのお供が追加され、ワイワイと楽しくショッピング再開です。

この件がキッカケで、凰哦さんの会社での振る舞い方が変わるのだけれど、それは今後またの機会にでもお話ししますね〜。

凰哦の言動、とても気に入ってます。

僕の作品に出て来るキャラの中で、1・2を争うお気に入りのキャラです。

もう1つは、別の小説のキャラなんですが、どのキャラかは伏せておきます。

では次話にて。

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