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キューと僕の思い出日記  作者: 喜遊元 我可那
新たな出会いと別れへの旅路
63/65

凰哦と隆志と泰騎と… 2

 今回のエピソードで、62話目なのかな?

 結構続いちゃってますね〜…。

 遠い目で過去を振り返りながら、前書きを書いてます。

 あっ其うそう、今話は、これ迄に書かれて来た伏線を回収してます。

 何処に伏線が有ったのかは、各々で読み直してみて下されませ。

 では本編を如何ぞ〜。

「さぁ始めようか…」

 隆志は其う言って、ゆっくりと凰哦に近付いて行く。

「凰哦、心の準備は良い?」

「じゅ、準備って隆志…」

「何だ、やっぱり緊張してるんだ…」

 少しずつ近付く隆志に、顔を強張らせて、ジリジリと後退りをする凰哦。

「大丈夫だよ凰哦…。優しくするからさ…」

 ふわっと柔らかく笑って言う隆志に

「や、優しくってお前…お、俺、こう言った事初めて何だぞ!?き、緊張するのは当たり前だろ!?そそそ、其れに、痛い事とか、怖い事とかキツい事とか、お、俺…我慢出来そうには無いんだが…」

 と、オドオドする凰哦。

「大丈夫だよ本当に…。成るべく痛くはしないからさ、優しくするから…」

「ほほほ、本当か…?」

「本当だよ…。まぁもし痛かったとしてもさ、最初だけだから大丈夫だって…。ね?だから少しだけ我慢してよ、良い…?」

 と、凰哦に触れる距離迄近付いた隆志。




「──ッダア──!!なあ〜にこっ恥ずかしい遣り取りしてんだよ!単なる魂抜きするのにさ、なあ〜にエロ要素ぶち込んでんのさ!このムッツリ助平共があ!!」

 一連の遣り取りに、思わず声を上げる蓮輝。

「遣り取りだけを側から聞いてるとさ!メッチャ嫌らしく聞こえんだけど!?」

「だわよ!一応此処にレディの私も居るんだけれど!?其の事分かってる?本当、嫌らしい言い方しないでよ!」

 ドン引きの寵が、蓮輝に続いて言う。

「ははは…私は何も言わないでおくよ…ははは…」

 此方もドン引きな江田は、目を細めて、笑って距離を置く…。

「ねぇねぇ凰哦パパァ〜、其れと隆志お兄ちゃ〜ん、蓮輝お兄ちゃんが言ってたエロい事ってなぁ〜に?メグお姉ちゃんが言ってた嫌らしい事ってなぁ〜に?」

 凰哦の側に居たキューが、2人にエロと嫌らしい事を説明せよと、純粋な目で見つめて聞くのだ…。

 まさか無意識の内に、エロ要素をぶち込んでいるとは思っていなかった2人は

「あぅ…」

「えぇえ…っと…」

 純粋無垢のキューに、如何説明して良いか分からず、言葉に詰まる2人。

「どったのぉ〜?」

「「………」」」

 何も言えない凰哦と隆志。

「ねぇねぇ凰哦パパァ〜、隆志お兄ちゃん、どったのぉ?ねぇねぇ〜」

 早く説明しろと言わんばかりに、如何したのかよと聞くキュー。

「ねぇねぇ〜?パパァ〜、お兄ちゃ〜ん…」

「あっ…えっと…あ〜…あ〜…」

 あたふたし、言葉が上手く出て来ない凰哦。

「ねぇ〜パパァ〜?」

「キューちゃん、おバカパパとおバカ宮津さんから離れて、こっちにおいで〜。おバカが感染るといけないから〜こっちにおいで、ね?」

 寵が手招きして、キューを呼び寄せる。

「ん?感染る?…良く分かんないけど、は〜いメグお姉ちゃんの所に行くねぇ〜♪」

「フフッ偉いわね〜、其れじゃ早くおいでね♪キューちゃん♡」

 ウケケッと笑いながら、寵の所に向かうキュー。

「はい、いらっしゃ〜いキューちゃん♡」

「ウケケッアキャッ♪」

 寵に撫でられて喜ぶキューに

「ねぇキューちゃん、よ〜く聞いてくれる?」

「うん?な〜にを?」

「あのおバカ2人の話はね、キューちゃんが知らなくても良いモノなのよ〜?分かるかな〜」

「んん?其うなの?メグお姉ちゃん…」

「其〜う、知らなくても良いのよ〜。知っちゃうとね、キューちゃんの賢さがね、無くなっちゃうの。其れでも知りたい?」

「………う〜んとね、僕、良い子良い子されたいからね、賢いままが良い!だから知らなくても良い!ケヘッ♪」

「ほ〜んと賢くて偉いわね〜、キューちゃんは〜♪」

「アキャキャッ♪」

 寵に褒められ、上機嫌のキュー。

 和気あいあいとしている2人に

「ちょちょちょちょっ、ちょっとメグちゃん、何だよ其れは!何バカ認定してくれてんだよ!失敬じゃないかー!」

「そそそ、其うだよ寵さん!如何してバカ認定されなきゃいけないんだよ!普通に其のままスルーしてくれてたらさ、エロ要素も、おバカ要素も無かったよね!?エロ要素ぶち込んだのって、蓮輝君じゃないかよ!あのツッコミが無きゃ、普通だったじゃないのさ!違う!?エロく思えた君達の方が、どちらかと言うとエロ何じゃないの!?」

 おバカさんだと言われた事に対して、反抗する2人の醜い悪足掻き。

「…ハッ!な〜に抜かしてんのさ!おバカ2人対ドン引き3人じゃ、ドン引き3人の方が、正常でしょーが!!」

 至極真っ当な蓮輝の意見。

「「グゥッ…」」

 蓮輝の意見により、何も言い返せないまま、赤面して崩れ落ちる凰哦と隆志。

「本っ当に仲が良いわよね…。2人同時に赤面して崩れ落ちるだなんて…呆れるわぁ…」

「「……!!……」」

 ズシャッ…

 結局寵に、華麗にトドメを刺されて、撃沈する2人なのでした…。

「さて、本当におバカな事は此処迄にして、そろそろ真面目に始める準備をしないとね…」

 江田が、少しだけ?冷ややかな目をさせながら、話を纏めるのでした。

「其うですね…。そろそろ月も真上に昇って来そうですから、此処からは真面目に取り掛かりましょうか…」

 パンパンと服に付いた泥を払い、隆志が空に浮かぶ月を見て、真剣な顔をする。

「いやぁ〜2人のおかげで、持て余した時間を無駄にせずに潰せたね♪おバカネタだったけどねぇ〜」

「出来ればおバカネタじゃ無くって、もっとこの場に合うモノが良かったんだけれどね〜。付き合う方の事も考えて欲しいわ〜…」

 河橋夫婦が遠回しに、無駄な時間だったとデスるのでした。

「うっさいわ!気付いたら、其う成ってたんだから、しょうがないじゃないか!」

「其うだよ!蓮輝君の無駄なツッコミさへ無ければさ、何事も無く済んだのに〜!!」

「「この、バカ蓮輝(君)!!」」

 凰哦と隆志から、一斉に“バカ”砲弾を浴びせられる蓮輝。

 蓮輝に対して、かなりご立腹のご様子です。

 ギャーギャーワーワー騒いでると

「ほら宮津君、満月が昇り切るよ?」

 と、江田が忠告して来ました。

「あっ其うだった…。おふざけ夫婦の野次で、危うく忘れる所でした。ありがとうございます江田さん」

 此処最近、本気で小馬鹿にして蓮輝を野次る隆志。

「ちょっ!何其れ!?其れって親友に言う言葉〜!?」

「其うよ宮津さん!少なくとも結婚申し込んだんでしょ!?其れなのに、ダーリンを野次るのは酷く無い!?まぁ気持ちはスッゴく分かるけれどもね〜」

 酷く無いかと言うのに、隆志の言葉に同意する寵。

「ちょっ、メグちゃん!?分かるって…」

「寵さん、あの告白は僕の間違いだから、今はもぅあの気持ちは、綺麗〜サッパリと無いからね〜。だから安心して〜」

「はい、OK〜」

「ちょっメグちゃん…隆志さん迄、其れ酷く無い!?」

「「無視っ!」」

 結局雑に扱われる蓮輝なのでした。

 其うこうしている内に

「月が昇り切ったみたいだね…」

 江田が、空を見上げて呟いた…。

「ですね江田さん…。其れじゃ、僕の為すべき事を始めますね…」

 雲一つ無い、夜空に浮かぶ満月を見上げ、隆志が大きく深呼吸をする。

「凰哦、始めるからキュー君を抱いていて」

「あ、あぁ分かった…」

 隆志に言われるまま、キューを抱き上げる凰哦。

「江田さん、江田さんにはご迷惑を掛けますが、如何か力を貸して下さい」

「あぁ勿論良いとも…。で、私は如何すれば良いのかな?」

「只凰哦の体に触れてくれるだけで大丈夫です。後は僕がしますから…」

「おっ?其うなのかい?そんな簡単な事で、本当に良いのかい?」

「えぇ大丈夫です。其れじゃ宜しくお願いしますね…」

「あぁ分かったよ、宮津君」

 江田も、隆志に言われるままに、凰哦の肩に手を乗せた。

「凰哦、其れじゃ始めるよ?本当に良い?」

「あ、あぁ大丈夫だぞ…。さぁ、お前の思う様に始めてくれよな?…」

「ありがとう…。あ、其れとね、どんな事が有っても、キュー君から意識を逸らさないでね」

「んん!?そ、其れって如何言う…」

「お願いだから、絶対に逸らさないでよ!?良い?本当にお願いだから…」

「あ、あぁ分かった…」

 ちゃんとした答えが返って来なかったのだが、緊迫した表情を見せる隆志に、其れ以上何も言えなかった凰哦…。

「其れじゃ始めるね…」

 始めると言い、其のまま静かに目を閉じて俯く隆志。

 月光を一身に浴び、呼吸を整える隆志の全身が、淡く光り始めて行く…。

「「「!!!!」」」

 江田を除く3人が、其の現象に驚いて仕舞うのだが、何故か声が発せられなかった。

 唯、其の神秘さに、言葉を失っただけなのだが…。

 目を開け

「江田さん、僕の手を掴んでくれますか?」

「あぁ…」

 コクっと頷き、隆志の手を握る江田。


 リリリリリリリン…リリリリリリリン…


 何処からともなく、鈴の音が聞こえて来た。

 優しく鳴り響く鈴の音に合わせて、辺りに光の粒が浮かんでは消えて行く。

 其れはまるで、蛍の光の様だった。

「わぁ…綺麗…」

 思わず綺麗と口ずさんだ寵に

「シ〜…此処からは、誰も言葉を発してはいけないよ?…皆んな、良いかな…?」

 江田が、人差し指を口に当て、喋ってはいけないと注意を促すのだ。

 其の行為で、これから始まる事に対し、声を出してはいけないのだと、一瞬で理解する蓮輝達。

 理解した蓮輝達は、静かに頷き伝える。

「父さん…泰騎父さん…聞こえてる?僕だよ、隆志だよ…父さん…」

 凰哦に向け、泰騎父さんと呼び掛ける隆志。

「父さん僕だよ?ねぇ聞こえてる?父さんと久々にさ、話がしたいんだよね…。ねぇ父さん…聞こえてる?…」

 少し悲しげな目をして、凰哦に宿る泰騎に語り掛ける隆志。

「如何やら未だ、僕の呼び掛けに反応しないみたいです…。江田さん、少しだけ力を流しますけど、暫くの間、耐えてくれますか?」

「あぁ良いとも…。君が望む様にしてくれれば良いからね?私の事は気にせずにね…」

「ありがとうございます…。江田さんの負担に為ら無い程度に、力を流しますね…。では…」

 と言うなり、江田に隆志の力を流し始めると、握り締めた手から徐々に、江田の体も淡く光り出して行く。

「うっ…」

 力が流れ込み、少ししかめ面に成る江田。

「済みません…もう暫くだけ耐えて下さい…」

 悲しげな顔で謝る隆志に

「何、これくらい大した事無いから、安心してくれて良いからね…」

 何でも無いからと答える江田。

「ありがとうございます江田さん…。其れじゃ今度こそ、父さんを呼び起こしますから」

 申し訳無さそうな顔で感謝する隆志。

 隆志からの力が注がれた江田の全身が、淡い光を帯びた時

「父さん、ねぇ泰騎父さん、聞こえる?僕だよ?隆志だよ…。僕の声が聞こえたなら、姿を見せてよ…お願いだから…」

 じっと凰哦を見つめて、宿る泰騎に呼び掛けると…

『た…隆志…隆志なのか…?』

 と凰哦から、ブレた様な声が聞こえて来た。

 其れと同時に、凰哦と重なって、見知らぬ男性が浮かび上がって来た。

「「!?」」

 側で見ていた蓮輝と寵が、其の現象に驚いて仕舞う。

 今にも驚いた声を発せそうに成るのだが、声を発せられないと、驚きをグッと飲み込むのだった。

「父さん、泰騎父さん…聞こえる?僕の声が聞こえる…?」

 凰哦に重なって見えている男性に向け、語り掛ける隆志。

「泰騎父さん…ねぇ聞こえる…?」

『…た…かし…』

「父さん!聞こえる!?僕の声が聞こえてる?」

『た…かし…隆志…なの…か…』

「!!─父さん!泰騎父さん!僕だよ!隆志だよ!!」

 凰哦と重なる男性に、必死に呼び掛ける隆志。

『た…隆…志…?』

 隆志と呼ぶ声は、凰哦の声とも重なり、音声がダブって聞こえて来る。

 この数回の遣り取りを観察していた蓮輝達は、隆志の父泰騎の魂が、凰哦の肉体を借りて、隆志と会話をしているのだと思えた。

 この時唐突に、江田が言っていた、声を発してはいけない理由を何故か、理解出来た気がしていた。

 月の光の力を借りて、増幅した隆志と江田の力を持ってして、朧げだが、やっと泰騎の魂を呼び起こし、視覚化出来たのだ。

 普通では有り得ない現象を引き起こしているのだが、これ迄ずっと側で見て来た、隆志の霊力の凄さを知っていた蓮輝達。

 其の凄さを知っているからこそ、朧げだが凰哦の肉体を介し、会話出来る迄にするには、相当な集中力が必要だと言う事と、力が必要なのだと思えた。

 多分この時に、横から誰かの声で、集中力の妨げに成ればまた、凰哦に宿る泰騎の魂が、深く眠る事に成るとも思えたのだった。

 今は唯、この不思議な光景に驚く声をグッと堪え、事の成り行きを見守るしかない蓮輝達。

 じっと見守っていると

『隆志…此処に隆志が居るのか…?』

 凰哦から、先程迄とは違い、はっきりとした口調で、声が聞こえて来た。

「と、父さん!?泰騎父さん!?ぼ、僕が分かる!?僕だよ、隆志だよ!父さん!」

『隆志…?其処に居るのは…本当に…隆志なのか?』

「其うだよ僕だよ、隆志だよ!父さん!」

『…違う…俺の知ってる隆志は、未だあどけなさが残ってる少年だ…』

「違わないよ、僕だよ父さん!大人になった僕だよ!」

『大人になった…?何をバカな…。俺の隆志は、クリクリとキラキラした目をして、幼顔の優しい男の子だ…。そんなにシュッとした顔で、()()()()()()()()()()()()()()何てしてないぞ?俺を騙そうとするんじゃ無い!俺の可愛い可愛い愛息子は、そんな目をしないからな!』

 泰騎の言い分に、総出でズッコケる。

 泰騎に、“バカ”認定された一同。

 其の“バカ”達が

(((言わせておけば、このクソがぁ〜っ!!)))

 と、プルプル怒りに震えるのでした。

「ちょっ父さん!?其れ酷く無い!?大方其の通りだけれどさ!其処迄言う!?」

 ズルッ

 隆志の反論にもコケ、更に怒りを増す蓮輝達。

 怒りの余り、文句を言いたいのだが、今はグッと堪えて、魂が解放した時に、しっかりと仕返ししてやると誓うのでした。

 其うとは知らない隆志と泰騎。

「父さん、いい加減にしてよ!本当に僕だから!隆志だから!!」

 真剣な目で凰哦と重なる泰騎を見る隆志に

『………プハッ!アッハハハハハハッ!』

 突然笑い出す泰騎。

「「「!?!?」」」

 思いもしない反応に、ポカ〜ンと呆気に取られる隆志達。

『いやいや悪い悪い、そんなの初めから分かってたさ…アッハハハハハハッ…』

 分かってたと、カラカラ笑う泰騎に、次第に怒りが爆発し

 ギュ───────ッ!

「『イギャイ!』」

 思わず隆志専用のお仕置き抓りを繰り出しました。

「幾ら父さんでも、やって良い事と悪い事が有るでしょ!反省しなよ!」

 ギュ───────ッ!

 更に強さを増す抓りに

「『イギャ──イ!ゴメンなさ───い!』」

 泣き叫んで謝る凰哦と泰騎。

「ちょっと隆志─!!な〜んで俺迄お仕置きされなきゃいけないんだよ──っ!」

「あっご、ごめ〜ん凰哦!」

『あぁあすすす、済いません宿主!本当申し訳ない!』

 凰哦の不満の言葉に、即座に謝る隆志と泰騎。

「許さん!!」

「本当ゴメ〜ン凰哦〜!!後で何でもするから許してよ〜!」

『本当申し訳ない宿主さん!全て息子の隆志が、俺の分迄引き受けてくれるから、如何か許してくれないかな?』

 自分のしでかした事を全て丸投げする泰騎。

「…えっ…と、父さん…?」

 何を言ってんだと思った隆志。

「あっ良いっすよ、其れで構わないです」

 あっさりと承諾する凰哦。

 自分も良く隆志に、面倒事を丸投げしていたので、あっさりと了承したのでした。

「…えっ…お、凰哦!?マジ…?」

 こっちも、何を言ってんだと思う隆志。

『良かった〜!安心したよ…。本当済まないね〜、宿主の君…。後は宜しく!な?隆志…』

 …………プチッ

 ギュ─────────────ッ!

「『イギャ───────イ!』」

「未だまだあ─────っ!」

 ギュ─────────────ッ!

「『ゴメンなは──────い!』」

 隆志に抓られて、悶絶する凰哦と泰騎。

「本っっっっっ気で怒るよ!?」

「『……はい……』」

 マジ切れする隆志に、怯える凰哦と泰騎。

「もぅ良いや、これだけ意識もしっかりして来たから、皆んな、喋っても良いよ〜」

 と隆志が、黙っていた蓮輝達に、好きな様に話しても大丈夫だと伝える。

 其の後直ぐ

「ちょっと隆志さん!なぁ〜にバカ認定、親子してしてくれてんのさ!」

「其うよ何なのよ其れっ!酷く無い!?」

 ギャーギャー騒ぐ河橋夫婦。

「っと、其れにさ!もしかして、そんなオチャラケキャラなの!?隆志さんのお父さんってさ!?」

「あ〜其れ、私も思ったわ〜。隆志さんと凰哦兄の話から、想像してた人物像とは打って変わって、正直ガッカリだわよ…」

 一連の遣り取りを見ていた蓮輝達が抱いたのは、オチャラケ親父のイメージが、しっかりと焼きつけられたのでした。

「あぅぅ…恥ずかしながら、これが父さんの()でございます…」

 赤面しながら、肯定する隆志。

『ハハッあ〜初めまして、隆志の父親の泰騎っすわ〜。暗い顔、怖い顔せず、明るく行こうぜ〜?アハハ〜』

 死んでも尚、底抜けの明るさを持つ泰騎に、ドン引きの一同。

「ね、ねぇ隆志さん、これ本当に、隆志のお父さんの素なの?…」

 顔を引き攣りながら、隆志に確認する蓮輝。

「………其う…。正直、何処かの誰かさんと似てるけれど、コッチは()()()()でやってる、本物のおバカキャラ…」

 両手で顔を隠し、ドシャっと膝まづく隆志なのでした。

「「「マジかぁ…」」」

 キューを除く全員が、憐れみの眼差しで、隆志を生温く見つめるのでした。

『如何した?なぁ隆志…?』

 崩れる隆志に、深く考えもせずに聞く泰騎。

「……………」

『なぁ隆志、本当に如何したんだよ?ほらっ何時ものチュ〜は無いのか?父さんにチュ〜はしてくれないのか?なぁ〜隆志〜』

「!!」

「「「!?エエエッ!!??」」」

 青ざめる隆志とは違い、驚きを隠せない蓮輝達。

「たたた、隆志さん!?い、今のチュ〜って、如何言う事ー!?」

「い、何時ものって宮津さん、あ…貴方、ファ…ファザコンだったの…?」

「!!」

 河橋夫婦の質疑に体を震わせて、大地に沈む隆志。

『おいおいた〜か志〜、本当に如何しちゃったんだよ〜?お前のだ〜い好きなダディだぞ〜?なぁ〜た〜か志〜』

 凰哦の体を上手く操り、埋まる隆志をツンツンと突く泰騎。

『た〜か志〜?ほれほれ如何した?』

 ピキッ…

「うっさいよ父さん!僕何時迄も子供じゃないんだよ!?もー良い大人何だよ!?恥ずかしいから其れ以上は、止めてくんない!?」

 半べそを掻きながら、猛抗議する隆志。

『え〜?何でだよ〜。可愛い愛息子を弄るのが、俺の生き甲斐だし、楽しいのにさ〜』

 ブチチチチィッ

「凰哦…此処から先、何が有ってもキュー君から、意識を逸らさないでよ?良い?」

 ユラユラと揺れながら立ち上がり、ギロっと睨む様に、凰哦に言う隆志。

 余りの禍々しさに、ビビった凰哦は

「ははは、はい!了解です!」

 言われるまま、ギュッとキューを抱き

(キュー可愛い、キュー可愛い、キュー可愛い、キュー可愛いー!!)

 と心の中で、連呼するのでした。

「父さん…僕を怒らせないでよ?」

 ギュ──────────ッ!

『ヒギャ─────イッ!』

 凰哦にキューを意識させる事で、今回は上手く、泰騎だけを抓る隆志。

「このまま悪霊として、父さんを浄化しても良いんだよ?」

 実の父親を睨み付けて言う隆志は、最早鬼神と言っても過言では無さそうだ。

『ごごご、ゴメン隆志!お前の存在を直で感じられて遂、嬉しさの余り、悪ふざけしただけだよ〜。だから其れは止してくれよなぁ…』

 抓らられたまま、許しを懇願する泰騎。

「っとに…相変わらずだよね、父さんはさ…」

『えへへ、照れるじゃないか〜』

「褒めてない!」

 この遣り取りを見ていた一同は皆

“此処に、努と蓮輝が混在した人物が居たんだ”

 と、思ったのだ。

「ね、ねぇ宮津さん…ちょっと聞いても…良い?」

 恐る恐る聞く寵に

「ん?何?寵さん。まぁ大体聞きたい事分かってるけど、一応聞くよ…」

「あ、ありがとう。えっと聞きたいのはね、宮津さんのお父さんって、努パパとダーリンが合わさった人だったの?ってのと、だからダーリンと、努パパには手厳しいのかな?って、其う思ったのだけれど…」

 寵が聞きたかった事とは、この2つだった。

「やっぱり其れ気に成るよね…。うん正に其うだよ…。恥ずかしながら、これが僕の父さん。事ある毎に、ほっぺにチューするキス魔でも在るんだよね…」

 ガックリ肩を落としながら、抓りを止めない隆志が、其う答えるのでした。

「「「ハ…ハハハ…」」」

 隆志が答えた内容により、何故蓮輝と片平に手厳しいのかも判明しました。

 判明した事により、渇いた笑いしか出て来ない一同です。

「ふ〜…父さん。そろそろ父さんを、ちゃんとした眠りに着かせたいんだ…。父さんの息子として、最後のお願いを聞いてくれる?泰騎父さん…」

 目を赤くし、涙目で声を振るわせながら、泰騎に想いを伝える隆志。

 暫し間を空け

『……あぁ其うさせて貰うよ隆志…。お前にこんな事させて済まないな…。お前を残して逝くのは辛いが、如何やら心許せる仲間や、想い人も居る様で、俺は安心したよ…。あっ後其れと宿主の君、君はあの時の彼だろ?俺が生きろと励ました君だろ?…良かった…しっかりと生きててくれて、俺は嬉しいよ…。助かってくれてありがとう…。そして死して尚、隆志に会わせてくれて…ありがとう…』

 死んで尚、隆志に会えた事を感謝し、生きててくれた事も感謝する泰騎。

「泰騎さん…」

 泰騎の心からの想いに、胸が熱く成る凰哦と蓮輝達。

「其れじゃ父さん…ゆっくりと休んでよね…。向こうでは、余りバカな事しないでよ?」

『アハハ…善処するよ…』

「其れじゃね…父さん…」

 ボロボロと涙を流しながら、泰騎と重なる凰哦の頬に、キスをする隆志。

「お休み…父さん…」

『あぁお休み……隆……志…』

 お休みと言った途端、凰哦と重なって見えていた泰騎が、淡い光の粒と成って、空高く、月の光に溶け込んで行く。

「お休み父さん…さよなら、またね…」

 其う言うなり、膝から崩れ落ち

「嗚呼ぁあ──…父さん…父さ──ん…」

 声を上げて、泣き崩れるのだった。

「隆志…」

「隆志さん…」

「宮津さん…」

「宮津君…」

 唯泣き続ける隆志に、其れ以上、何も言えない蓮輝達…。

「隆志…ご苦労だったな…お疲れ様…隆志…。良く頑張った…隆志…。さ、今日は帰ろう…」

 隆志を抱き締め、寄り添う凰哦。

「隆志お兄ちゃん、今日は僕が一緒に居て上げるね。だから寂し寂しをナイナイしてね…」

 無垢なキューが、精一杯隆志を励ましてくれる…。

「…ありがとうキュー君、そして凰哦も皆んなもね…」

 ありがとうと言った後も、止まらない涙。

 無言のままこの場を後にし、ホテルに戻る蓮輝達。

 唯1人、江田だけが

「宮津君の為すべき事が無事終えて、本当に良かった…。これで心置き無く、彼も前に進めるだろうね…」

 と、誰にも聞こえ無い小さな声で、呟いたのだった…。

 江田の呟きを最後に、この日は終わりを告げた。

 また前に進む為、其々が、深い眠りに着く。

「お休み…父さん…」

 2話続けて隆志と凰哦に、泰騎の内容に成りましたね〜。

 実の所、か・な・り、話の内容を端折ってます。

 其うしないとですね、次話に持ち越しに成るか、文字数1万5千文字に成りそうでして、中〜途半端に切りが悪い感じに仕上がりそうだったのですよ…はい…。

 今回の話は、これからの重要な内容だった為、如何しても書きたい話なのです。

 まぁ次話に持ち越ししても良かったのですが、今話で終わらせた方が読み易いだろうと、こんな感じで纏めました。

 今回で、以前に出て来た幾つかの伏線を回収したって事で、今話は終了〜です。

 では次話のエピソードをお待ち下さいまし。

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