凰哦と隆志と泰騎と… 2
今回のエピソードで、62話目なのかな?
結構続いちゃってますね〜…。
遠い目で過去を振り返りながら、前書きを書いてます。
あっ其うそう、今話は、これ迄に書かれて来た伏線を回収してます。
何処に伏線が有ったのかは、各々で読み直してみて下されませ。
では本編を如何ぞ〜。
「さぁ始めようか…」
隆志は其う言って、ゆっくりと凰哦に近付いて行く。
「凰哦、心の準備は良い?」
「じゅ、準備って隆志…」
「何だ、やっぱり緊張してるんだ…」
少しずつ近付く隆志に、顔を強張らせて、ジリジリと後退りをする凰哦。
「大丈夫だよ凰哦…。優しくするからさ…」
ふわっと柔らかく笑って言う隆志に
「や、優しくってお前…お、俺、こう言った事初めて何だぞ!?き、緊張するのは当たり前だろ!?そそそ、其れに、痛い事とか、怖い事とかキツい事とか、お、俺…我慢出来そうには無いんだが…」
と、オドオドする凰哦。
「大丈夫だよ本当に…。成るべく痛くはしないからさ、優しくするから…」
「ほほほ、本当か…?」
「本当だよ…。まぁもし痛かったとしてもさ、最初だけだから大丈夫だって…。ね?だから少しだけ我慢してよ、良い…?」
と、凰哦に触れる距離迄近付いた隆志。
「──ッダア──!!なあ〜にこっ恥ずかしい遣り取りしてんだよ!単なる魂抜きするのにさ、なあ〜にエロ要素ぶち込んでんのさ!このムッツリ助平共があ!!」
一連の遣り取りに、思わず声を上げる蓮輝。
「遣り取りだけを側から聞いてるとさ!メッチャ嫌らしく聞こえんだけど!?」
「だわよ!一応此処にレディの私も居るんだけれど!?其の事分かってる?本当、嫌らしい言い方しないでよ!」
ドン引きの寵が、蓮輝に続いて言う。
「ははは…私は何も言わないでおくよ…ははは…」
此方もドン引きな江田は、目を細めて、笑って距離を置く…。
「ねぇねぇ凰哦パパァ〜、其れと隆志お兄ちゃ〜ん、蓮輝お兄ちゃんが言ってたエロい事ってなぁ〜に?メグお姉ちゃんが言ってた嫌らしい事ってなぁ〜に?」
凰哦の側に居たキューが、2人にエロと嫌らしい事を説明せよと、純粋な目で見つめて聞くのだ…。
まさか無意識の内に、エロ要素をぶち込んでいるとは思っていなかった2人は
「あぅ…」
「えぇえ…っと…」
純粋無垢のキューに、如何説明して良いか分からず、言葉に詰まる2人。
「どったのぉ〜?」
「「………」」」
何も言えない凰哦と隆志。
「ねぇねぇ凰哦パパァ〜、隆志お兄ちゃん、どったのぉ?ねぇねぇ〜」
早く説明しろと言わんばかりに、如何したのかよと聞くキュー。
「ねぇねぇ〜?パパァ〜、お兄ちゃ〜ん…」
「あっ…えっと…あ〜…あ〜…」
あたふたし、言葉が上手く出て来ない凰哦。
「ねぇ〜パパァ〜?」
「キューちゃん、おバカパパとおバカ宮津さんから離れて、こっちにおいで〜。おバカが感染るといけないから〜こっちにおいで、ね?」
寵が手招きして、キューを呼び寄せる。
「ん?感染る?…良く分かんないけど、は〜いメグお姉ちゃんの所に行くねぇ〜♪」
「フフッ偉いわね〜、其れじゃ早くおいでね♪キューちゃん♡」
ウケケッと笑いながら、寵の所に向かうキュー。
「はい、いらっしゃ〜いキューちゃん♡」
「ウケケッアキャッ♪」
寵に撫でられて喜ぶキューに
「ねぇキューちゃん、よ〜く聞いてくれる?」
「うん?な〜にを?」
「あのおバカ2人の話はね、キューちゃんが知らなくても良いモノなのよ〜?分かるかな〜」
「んん?其うなの?メグお姉ちゃん…」
「其〜う、知らなくても良いのよ〜。知っちゃうとね、キューちゃんの賢さがね、無くなっちゃうの。其れでも知りたい?」
「………う〜んとね、僕、良い子良い子されたいからね、賢いままが良い!だから知らなくても良い!ケヘッ♪」
「ほ〜んと賢くて偉いわね〜、キューちゃんは〜♪」
「アキャキャッ♪」
寵に褒められ、上機嫌のキュー。
和気あいあいとしている2人に
「ちょちょちょちょっ、ちょっとメグちゃん、何だよ其れは!何バカ認定してくれてんだよ!失敬じゃないかー!」
「そそそ、其うだよ寵さん!如何してバカ認定されなきゃいけないんだよ!普通に其のままスルーしてくれてたらさ、エロ要素も、おバカ要素も無かったよね!?エロ要素ぶち込んだのって、蓮輝君じゃないかよ!あのツッコミが無きゃ、普通だったじゃないのさ!違う!?エロく思えた君達の方が、どちらかと言うとエロ何じゃないの!?」
おバカさんだと言われた事に対して、反抗する2人の醜い悪足掻き。
「…ハッ!な〜に抜かしてんのさ!おバカ2人対ドン引き3人じゃ、ドン引き3人の方が、正常でしょーが!!」
至極真っ当な蓮輝の意見。
「「グゥッ…」」
蓮輝の意見により、何も言い返せないまま、赤面して崩れ落ちる凰哦と隆志。
「本っ当に仲が良いわよね…。2人同時に赤面して崩れ落ちるだなんて…呆れるわぁ…」
「「……!!……」」
ズシャッ…
結局寵に、華麗にトドメを刺されて、撃沈する2人なのでした…。
「さて、本当におバカな事は此処迄にして、そろそろ真面目に始める準備をしないとね…」
江田が、少しだけ?冷ややかな目をさせながら、話を纏めるのでした。
「其うですね…。そろそろ月も真上に昇って来そうですから、此処からは真面目に取り掛かりましょうか…」
パンパンと服に付いた泥を払い、隆志が空に浮かぶ月を見て、真剣な顔をする。
「いやぁ〜2人のおかげで、持て余した時間を無駄にせずに潰せたね♪おバカネタだったけどねぇ〜」
「出来ればおバカネタじゃ無くって、もっとこの場に合うモノが良かったんだけれどね〜。付き合う方の事も考えて欲しいわ〜…」
河橋夫婦が遠回しに、無駄な時間だったとデスるのでした。
「うっさいわ!気付いたら、其う成ってたんだから、しょうがないじゃないか!」
「其うだよ!蓮輝君の無駄なツッコミさへ無ければさ、何事も無く済んだのに〜!!」
「「この、バカ蓮輝(君)!!」」
凰哦と隆志から、一斉に“バカ”砲弾を浴びせられる蓮輝。
蓮輝に対して、かなりご立腹のご様子です。
ギャーギャーワーワー騒いでると
「ほら宮津君、満月が昇り切るよ?」
と、江田が忠告して来ました。
「あっ其うだった…。おふざけ夫婦の野次で、危うく忘れる所でした。ありがとうございます江田さん」
此処最近、本気で小馬鹿にして蓮輝を野次る隆志。
「ちょっ!何其れ!?其れって親友に言う言葉〜!?」
「其うよ宮津さん!少なくとも結婚申し込んだんでしょ!?其れなのに、ダーリンを野次るのは酷く無い!?まぁ気持ちはスッゴく分かるけれどもね〜」
酷く無いかと言うのに、隆志の言葉に同意する寵。
「ちょっ、メグちゃん!?分かるって…」
「寵さん、あの告白は僕の間違いだから、今はもぅあの気持ちは、綺麗〜サッパリと無いからね〜。だから安心して〜」
「はい、OK〜」
「ちょっメグちゃん…隆志さん迄、其れ酷く無い!?」
「「無視っ!」」
結局雑に扱われる蓮輝なのでした。
其うこうしている内に
「月が昇り切ったみたいだね…」
江田が、空を見上げて呟いた…。
「ですね江田さん…。其れじゃ、僕の為すべき事を始めますね…」
雲一つ無い、夜空に浮かぶ満月を見上げ、隆志が大きく深呼吸をする。
「凰哦、始めるからキュー君を抱いていて」
「あ、あぁ分かった…」
隆志に言われるまま、キューを抱き上げる凰哦。
「江田さん、江田さんにはご迷惑を掛けますが、如何か力を貸して下さい」
「あぁ勿論良いとも…。で、私は如何すれば良いのかな?」
「只凰哦の体に触れてくれるだけで大丈夫です。後は僕がしますから…」
「おっ?其うなのかい?そんな簡単な事で、本当に良いのかい?」
「えぇ大丈夫です。其れじゃ宜しくお願いしますね…」
「あぁ分かったよ、宮津君」
江田も、隆志に言われるままに、凰哦の肩に手を乗せた。
「凰哦、其れじゃ始めるよ?本当に良い?」
「あ、あぁ大丈夫だぞ…。さぁ、お前の思う様に始めてくれよな?…」
「ありがとう…。あ、其れとね、どんな事が有っても、キュー君から意識を逸らさないでね」
「んん!?そ、其れって如何言う…」
「お願いだから、絶対に逸らさないでよ!?良い?本当にお願いだから…」
「あ、あぁ分かった…」
ちゃんとした答えが返って来なかったのだが、緊迫した表情を見せる隆志に、其れ以上何も言えなかった凰哦…。
「其れじゃ始めるね…」
始めると言い、其のまま静かに目を閉じて俯く隆志。
月光を一身に浴び、呼吸を整える隆志の全身が、淡く光り始めて行く…。
「「「!!!!」」」
江田を除く3人が、其の現象に驚いて仕舞うのだが、何故か声が発せられなかった。
唯、其の神秘さに、言葉を失っただけなのだが…。
目を開け
「江田さん、僕の手を掴んでくれますか?」
「あぁ…」
コクっと頷き、隆志の手を握る江田。
リリリリリリリン…リリリリリリリン…
何処からともなく、鈴の音が聞こえて来た。
優しく鳴り響く鈴の音に合わせて、辺りに光の粒が浮かんでは消えて行く。
其れはまるで、蛍の光の様だった。
「わぁ…綺麗…」
思わず綺麗と口ずさんだ寵に
「シ〜…此処からは、誰も言葉を発してはいけないよ?…皆んな、良いかな…?」
江田が、人差し指を口に当て、喋ってはいけないと注意を促すのだ。
其の行為で、これから始まる事に対し、声を出してはいけないのだと、一瞬で理解する蓮輝達。
理解した蓮輝達は、静かに頷き伝える。
「父さん…泰騎父さん…聞こえてる?僕だよ、隆志だよ…父さん…」
凰哦に向け、泰騎父さんと呼び掛ける隆志。
「父さん僕だよ?ねぇ聞こえてる?父さんと久々にさ、話がしたいんだよね…。ねぇ父さん…聞こえてる?…」
少し悲しげな目をして、凰哦に宿る泰騎に語り掛ける隆志。
「如何やら未だ、僕の呼び掛けに反応しないみたいです…。江田さん、少しだけ力を流しますけど、暫くの間、耐えてくれますか?」
「あぁ良いとも…。君が望む様にしてくれれば良いからね?私の事は気にせずにね…」
「ありがとうございます…。江田さんの負担に為ら無い程度に、力を流しますね…。では…」
と言うなり、江田に隆志の力を流し始めると、握り締めた手から徐々に、江田の体も淡く光り出して行く。
「うっ…」
力が流れ込み、少ししかめ面に成る江田。
「済みません…もう暫くだけ耐えて下さい…」
悲しげな顔で謝る隆志に
「何、これくらい大した事無いから、安心してくれて良いからね…」
何でも無いからと答える江田。
「ありがとうございます江田さん…。其れじゃ今度こそ、父さんを呼び起こしますから」
申し訳無さそうな顔で感謝する隆志。
隆志からの力が注がれた江田の全身が、淡い光を帯びた時
「父さん、ねぇ泰騎父さん、聞こえる?僕だよ?隆志だよ…。僕の声が聞こえたなら、姿を見せてよ…お願いだから…」
じっと凰哦を見つめて、宿る泰騎に呼び掛けると…
『た…隆志…隆志なのか…?』
と凰哦から、ブレた様な声が聞こえて来た。
其れと同時に、凰哦と重なって、見知らぬ男性が浮かび上がって来た。
「「!?」」
側で見ていた蓮輝と寵が、其の現象に驚いて仕舞う。
今にも驚いた声を発せそうに成るのだが、声を発せられないと、驚きをグッと飲み込むのだった。
「父さん、泰騎父さん…聞こえる?僕の声が聞こえる…?」
凰哦に重なって見えている男性に向け、語り掛ける隆志。
「泰騎父さん…ねぇ聞こえる…?」
『…た…かし…』
「父さん!聞こえる!?僕の声が聞こえてる?」
『た…かし…隆志…なの…か…』
「!!─父さん!泰騎父さん!僕だよ!隆志だよ!!」
凰哦と重なる男性に、必死に呼び掛ける隆志。
『た…隆…志…?』
隆志と呼ぶ声は、凰哦の声とも重なり、音声がダブって聞こえて来る。
この数回の遣り取りを観察していた蓮輝達は、隆志の父泰騎の魂が、凰哦の肉体を借りて、隆志と会話をしているのだと思えた。
この時唐突に、江田が言っていた、声を発してはいけない理由を何故か、理解出来た気がしていた。
月の光の力を借りて、増幅した隆志と江田の力を持ってして、朧げだが、やっと泰騎の魂を呼び起こし、視覚化出来たのだ。
普通では有り得ない現象を引き起こしているのだが、これ迄ずっと側で見て来た、隆志の霊力の凄さを知っていた蓮輝達。
其の凄さを知っているからこそ、朧げだが凰哦の肉体を介し、会話出来る迄にするには、相当な集中力が必要だと言う事と、力が必要なのだと思えた。
多分この時に、横から誰かの声で、集中力の妨げに成ればまた、凰哦に宿る泰騎の魂が、深く眠る事に成るとも思えたのだった。
今は唯、この不思議な光景に驚く声をグッと堪え、事の成り行きを見守るしかない蓮輝達。
じっと見守っていると
『隆志…此処に隆志が居るのか…?』
凰哦から、先程迄とは違い、はっきりとした口調で、声が聞こえて来た。
「と、父さん!?泰騎父さん!?ぼ、僕が分かる!?僕だよ、隆志だよ!父さん!」
『隆志…?其処に居るのは…本当に…隆志なのか?』
「其うだよ僕だよ、隆志だよ!父さん!」
『…違う…俺の知ってる隆志は、未だあどけなさが残ってる少年だ…』
「違わないよ、僕だよ父さん!大人になった僕だよ!」
『大人になった…?何をバカな…。俺の隆志は、クリクリとキラキラした目をして、幼顔の優しい男の子だ…。そんなにシュッとした顔で、バカを相手にするのに疲れた目何てしてないぞ?俺を騙そうとするんじゃ無い!俺の可愛い可愛い愛息子は、そんな目をしないからな!』
泰騎の言い分に、総出でズッコケる。
泰騎に、“バカ”認定された一同。
其の“バカ”達が
(((言わせておけば、このクソがぁ〜っ!!)))
と、プルプル怒りに震えるのでした。
「ちょっ父さん!?其れ酷く無い!?大方其の通りだけれどさ!其処迄言う!?」
ズルッ
隆志の反論にもコケ、更に怒りを増す蓮輝達。
怒りの余り、文句を言いたいのだが、今はグッと堪えて、魂が解放した時に、しっかりと仕返ししてやると誓うのでした。
其うとは知らない隆志と泰騎。
「父さん、いい加減にしてよ!本当に僕だから!隆志だから!!」
真剣な目で凰哦と重なる泰騎を見る隆志に
『………プハッ!アッハハハハハハッ!』
突然笑い出す泰騎。
「「「!?!?」」」
思いもしない反応に、ポカ〜ンと呆気に取られる隆志達。
『いやいや悪い悪い、そんなの初めから分かってたさ…アッハハハハハハッ…』
分かってたと、カラカラ笑う泰騎に、次第に怒りが爆発し
ギュ───────ッ!
「『イギャイ!』」
思わず隆志専用のお仕置き抓りを繰り出しました。
「幾ら父さんでも、やって良い事と悪い事が有るでしょ!反省しなよ!」
ギュ───────ッ!
更に強さを増す抓りに
「『イギャ──イ!ゴメンなさ───い!』」
泣き叫んで謝る凰哦と泰騎。
「ちょっと隆志─!!な〜んで俺迄お仕置きされなきゃいけないんだよ──っ!」
「あっご、ごめ〜ん凰哦!」
『あぁあすすす、済いません宿主!本当申し訳ない!』
凰哦の不満の言葉に、即座に謝る隆志と泰騎。
「許さん!!」
「本当ゴメ〜ン凰哦〜!!後で何でもするから許してよ〜!」
『本当申し訳ない宿主さん!全て息子の隆志が、俺の分迄引き受けてくれるから、如何か許してくれないかな?』
自分のしでかした事を全て丸投げする泰騎。
「…えっ…と、父さん…?」
何を言ってんだと思った隆志。
「あっ良いっすよ、其れで構わないです」
あっさりと承諾する凰哦。
自分も良く隆志に、面倒事を丸投げしていたので、あっさりと了承したのでした。
「…えっ…お、凰哦!?マジ…?」
こっちも、何を言ってんだと思う隆志。
『良かった〜!安心したよ…。本当済まないね〜、宿主の君…。後は宜しく!な?隆志…』
…………プチッ
ギュ─────────────ッ!
「『イギャ───────イ!』」
「未だまだあ─────っ!」
ギュ─────────────ッ!
「『ゴメンなは──────い!』」
隆志に抓られて、悶絶する凰哦と泰騎。
「本っっっっっ気で怒るよ!?」
「『……はい……』」
マジ切れする隆志に、怯える凰哦と泰騎。
「もぅ良いや、これだけ意識もしっかりして来たから、皆んな、喋っても良いよ〜」
と隆志が、黙っていた蓮輝達に、好きな様に話しても大丈夫だと伝える。
其の後直ぐ
「ちょっと隆志さん!なぁ〜にバカ認定、親子してしてくれてんのさ!」
「其うよ何なのよ其れっ!酷く無い!?」
ギャーギャー騒ぐ河橋夫婦。
「っと、其れにさ!もしかして、そんなオチャラケキャラなの!?隆志さんのお父さんってさ!?」
「あ〜其れ、私も思ったわ〜。隆志さんと凰哦兄の話から、想像してた人物像とは打って変わって、正直ガッカリだわよ…」
一連の遣り取りを見ていた蓮輝達が抱いたのは、オチャラケ親父のイメージが、しっかりと焼きつけられたのでした。
「あぅぅ…恥ずかしながら、これが父さんの素でございます…」
赤面しながら、肯定する隆志。
『ハハッあ〜初めまして、隆志の父親の泰騎っすわ〜。暗い顔、怖い顔せず、明るく行こうぜ〜?アハハ〜』
死んでも尚、底抜けの明るさを持つ泰騎に、ドン引きの一同。
「ね、ねぇ隆志さん、これ本当に、隆志のお父さんの素なの?…」
顔を引き攣りながら、隆志に確認する蓮輝。
「………其う…。正直、何処かの誰かさんと似てるけれど、コッチは完全に素でやってる、本物のおバカキャラ…」
両手で顔を隠し、ドシャっと膝まづく隆志なのでした。
「「「マジかぁ…」」」
キューを除く全員が、憐れみの眼差しで、隆志を生温く見つめるのでした。
『如何した?なぁ隆志…?』
崩れる隆志に、深く考えもせずに聞く泰騎。
「……………」
『なぁ隆志、本当に如何したんだよ?ほらっ何時ものチュ〜は無いのか?父さんにチュ〜はしてくれないのか?なぁ〜隆志〜』
「!!」
「「「!?エエエッ!!??」」」
青ざめる隆志とは違い、驚きを隠せない蓮輝達。
「たたた、隆志さん!?い、今のチュ〜って、如何言う事ー!?」
「い、何時ものって宮津さん、あ…貴方、ファ…ファザコンだったの…?」
「!!」
河橋夫婦の質疑に体を震わせて、大地に沈む隆志。
『おいおいた〜か志〜、本当に如何しちゃったんだよ〜?お前のだ〜い好きなダディだぞ〜?なぁ〜た〜か志〜』
凰哦の体を上手く操り、埋まる隆志をツンツンと突く泰騎。
『た〜か志〜?ほれほれ如何した?』
ピキッ…
「うっさいよ父さん!僕何時迄も子供じゃないんだよ!?もー良い大人何だよ!?恥ずかしいから其れ以上は、止めてくんない!?」
半べそを掻きながら、猛抗議する隆志。
『え〜?何でだよ〜。可愛い愛息子を弄るのが、俺の生き甲斐だし、楽しいのにさ〜』
ブチチチチィッ
「凰哦…此処から先、何が有ってもキュー君から、意識を逸らさないでよ?良い?」
ユラユラと揺れながら立ち上がり、ギロっと睨む様に、凰哦に言う隆志。
余りの禍々しさに、ビビった凰哦は
「ははは、はい!了解です!」
言われるまま、ギュッとキューを抱き
(キュー可愛い、キュー可愛い、キュー可愛い、キュー可愛いー!!)
と心の中で、連呼するのでした。
「父さん…僕を怒らせないでよ?」
ギュ──────────ッ!
『ヒギャ─────イッ!』
凰哦にキューを意識させる事で、今回は上手く、泰騎だけを抓る隆志。
「このまま悪霊として、父さんを浄化しても良いんだよ?」
実の父親を睨み付けて言う隆志は、最早鬼神と言っても過言では無さそうだ。
『ごごご、ゴメン隆志!お前の存在を直で感じられて遂、嬉しさの余り、悪ふざけしただけだよ〜。だから其れは止してくれよなぁ…』
抓らられたまま、許しを懇願する泰騎。
「っとに…相変わらずだよね、父さんはさ…」
『えへへ、照れるじゃないか〜』
「褒めてない!」
この遣り取りを見ていた一同は皆
“此処に、努と蓮輝が混在した人物が居たんだ”
と、思ったのだ。
「ね、ねぇ宮津さん…ちょっと聞いても…良い?」
恐る恐る聞く寵に
「ん?何?寵さん。まぁ大体聞きたい事分かってるけど、一応聞くよ…」
「あ、ありがとう。えっと聞きたいのはね、宮津さんのお父さんって、努パパとダーリンが合わさった人だったの?ってのと、だからダーリンと、努パパには手厳しいのかな?って、其う思ったのだけれど…」
寵が聞きたかった事とは、この2つだった。
「やっぱり其れ気に成るよね…。うん正に其うだよ…。恥ずかしながら、これが僕の父さん。事ある毎に、ほっぺにチューするキス魔でも在るんだよね…」
ガックリ肩を落としながら、抓りを止めない隆志が、其う答えるのでした。
「「「ハ…ハハハ…」」」
隆志が答えた内容により、何故蓮輝と片平に手厳しいのかも判明しました。
判明した事により、渇いた笑いしか出て来ない一同です。
「ふ〜…父さん。そろそろ父さんを、ちゃんとした眠りに着かせたいんだ…。父さんの息子として、最後のお願いを聞いてくれる?泰騎父さん…」
目を赤くし、涙目で声を振るわせながら、泰騎に想いを伝える隆志。
暫し間を空け
『……あぁ其うさせて貰うよ隆志…。お前にこんな事させて済まないな…。お前を残して逝くのは辛いが、如何やら心許せる仲間や、想い人も居る様で、俺は安心したよ…。あっ後其れと宿主の君、君はあの時の彼だろ?俺が生きろと励ました君だろ?…良かった…しっかりと生きててくれて、俺は嬉しいよ…。助かってくれてありがとう…。そして死して尚、隆志に会わせてくれて…ありがとう…』
死んで尚、隆志に会えた事を感謝し、生きててくれた事も感謝する泰騎。
「泰騎さん…」
泰騎の心からの想いに、胸が熱く成る凰哦と蓮輝達。
「其れじゃ父さん…ゆっくりと休んでよね…。向こうでは、余りバカな事しないでよ?」
『アハハ…善処するよ…』
「其れじゃね…父さん…」
ボロボロと涙を流しながら、泰騎と重なる凰哦の頬に、キスをする隆志。
「お休み…父さん…」
『あぁお休み……隆……志…』
お休みと言った途端、凰哦と重なって見えていた泰騎が、淡い光の粒と成って、空高く、月の光に溶け込んで行く。
「お休み父さん…さよなら、またね…」
其う言うなり、膝から崩れ落ち
「嗚呼ぁあ──…父さん…父さ──ん…」
声を上げて、泣き崩れるのだった。
「隆志…」
「隆志さん…」
「宮津さん…」
「宮津君…」
唯泣き続ける隆志に、其れ以上、何も言えない蓮輝達…。
「隆志…ご苦労だったな…お疲れ様…隆志…。良く頑張った…隆志…。さ、今日は帰ろう…」
隆志を抱き締め、寄り添う凰哦。
「隆志お兄ちゃん、今日は僕が一緒に居て上げるね。だから寂し寂しをナイナイしてね…」
無垢なキューが、精一杯隆志を励ましてくれる…。
「…ありがとうキュー君、そして凰哦も皆んなもね…」
ありがとうと言った後も、止まらない涙。
無言のままこの場を後にし、ホテルに戻る蓮輝達。
唯1人、江田だけが
「宮津君の為すべき事が無事終えて、本当に良かった…。これで心置き無く、彼も前に進めるだろうね…」
と、誰にも聞こえ無い小さな声で、呟いたのだった…。
江田の呟きを最後に、この日は終わりを告げた。
また前に進む為、其々が、深い眠りに着く。
「お休み…父さん…」
2話続けて隆志と凰哦に、泰騎の内容に成りましたね〜。
実の所、か・な・り、話の内容を端折ってます。
其うしないとですね、次話に持ち越しに成るか、文字数1万5千文字に成りそうでして、中〜途半端に切りが悪い感じに仕上がりそうだったのですよ…はい…。
今回の話は、これからの重要な内容だった為、如何しても書きたい話なのです。
まぁ次話に持ち越ししても良かったのですが、今話で終わらせた方が読み易いだろうと、こんな感じで纏めました。
今回で、以前に出て来た幾つかの伏線を回収したって事で、今話は終了〜です。
では次話のエピソードをお待ち下さいまし。




