凰哦について 後半
少し間を空けて仕舞いました…。
今回も、少々長文仕様でございます。
でもね、ツラツラサラサラ読める筈です…。
多分…。
ってな事で、凰哦について後編をどうぞ〜。
とあるホテルの一室。
其の部屋のダイニングから、コーヒーアロマが漂って来ました。
人数分のコーヒーをドリップし、ゆったりとした時間を楽しむかの様に、鼻歌を歌う凰哦。
普段とは違う凰哦の仕草に、何処となく感じられるのは、何か思う事が有るのだろうと、蓮輝だけではなく、寵や江田に隆志も、其う感じていた…。
凰哦について、色々と聞いていた話の途中。
話が長く成りそうだと言う事で、コーヒーでも飲んで、一旦休憩を挟む事に成った。
何時もなら、コーヒーを淹れる役目は蓮輝なのに、自ら進んで淹れる凰哦。
其れだけでも、普段と違う行動に、如何したんだろうと思う蓮輝達。
其処に、鼻歌を歌う事が珍しいと誰もが思い、凰哦について、これから話される内容が、どんなものなのかと其々が、黙って考えていた…。
ドリップしている凰哦の目線の先には、隆志が居た。
其の事にも気付いている蓮輝達。
きっとこれから話される内容には、隆志に纏わる事が多く含まれているのだろうと、其々が思っていた。
この中の誰かが、ドリップしている凰哦に、其の事を確かめたとしたらきっと…いや確実に、凰哦は胸の内を話さずに、口を閉ざして仕舞うだろうと、誰もが聞けずにいた。
親しいモノには、分かり易いと言われてる凰哦は、其れを充分に分かった上で、隆志を見つめながら、コーヒーを淹れていたのだ…。
以前に蓮輝がした様に、其々の好みの味にドリップしたコーヒーを、時間を掛けて淹れ
「お待たせ…さぁコーヒーを飲んで、気持ちをリラックスしようか…」
と其々に、淹れたコーヒーを配って行く。
配られたコーヒーを一口飲み
「あぁとても美味いコーヒーだね…篠瀬君…」
「其うですか?其う感じてくれたなら、とても嬉しいです、江田さん…」
江田の褒め言葉に、素直に嬉しいと答える凰哦。
「本当、お世辞抜きで美味しいわ、凰哦兄。正直私、コーヒーって苦手何だけれど、凰哦兄の淹れたコーヒー…美味しくて心が落ち着く…」
「あはは、其れは良かったよメグちゃん」
寵の言葉に笑って喜ぶ凰哦。
「僕も凰哦の淹れたこのコーヒー、大好きだなぁ…」
「ふふっ隆志も気に入ったみたいで、良かったよ…」
ふわっと笑って、優しく隆志を見つめる凰哦。
「本当メグちゃんが言った通り、心が落ち着くよ…凰哦さん。ねぇ凰哦さん、このコーヒーってさ、以前僕が正樹お爺ちゃん達に淹れた時みたいに、其々の好みで淹れたんでしょ?違う?」
「ふふっあぁ其うだ蓮輝、お前の真似をさせて貰ったよ…。今回は俺なりに、一工夫を加えたけどな〜ハハハ〜」
少し楽しく自慢げに笑う凰哦。
「ねぇ凰哦さん、ちょっと聞いて良い?」
「ん?何をだ?」
「………あぁ〜やっぱり良いや…」
「おいおい蓮輝、何だよ其れ!?何を聞きたいのかは知らないが、聞きたい事が有るんだろ?なら聞きなさい。聞いて不味い事や、疚しい事では無いんだろ?」
「……あぁ…うん…」
「なら何故聞かない…。聞きたい事が有るのなら、ちゃんと聞きなさい。聞いて良いかと聞きながら、聞かないって言われたら、尚更気に成るだろ?ほら、早く言ってみなさい蓮輝」
ちょっと不機嫌そうな顔をして、ハッキリしなさいと言う凰哦。
このままじゃ、確かに気に成るよね〜と
「分かったよ…」
と答える蓮輝。
一緒に居た者達も、蓮輝が何を聞きたいのか知りたいと、確実思っていると考えたから、ちゃんと聞く事にした。
何故ならば、一点集中でガン見されてるからだ…。
でも、全員の視線に耐えきれず
「ちょっと皆んな、そんなにガン見しないでくれる?ちゃんと聞くからさぁ!」
「其れはしょうがないだろ?蓮輝…。お前の口からは、何時もおバカな事しか出て来ないんだから、全員がまた、何下らない事を聞くんだろうと思ってる筈だぞ?」
凰哦の言葉に
「だよね〜凰哦、僕も同じ事を思ったよ…」
「ダーリンには悪いけれど、私も同じ意見」
「篠瀬君が言った様に、私も河橋君が、ま〜た何言い出すのかとね、変な関心を持って構えてたよ…」
と、隆志と寵に江田迄もが、蓮輝の発言が気に成るみたいなのだ。
全員が全員、蓮輝の言動全てが、おバカだと認めてる事を理解するバカ。
「ひ、酷っ!ちょっと皆んな!な〜におバカ認定してくれてんのさ!そ、其れ、マジ酷く無い!?」
涙目で文句を言うが
「諦めろ蓮輝、これがお前のして来た行いだ。自業自得」
「「「うんうん…」」」
凰哦の言葉に頷く3人。
「ダーリン諦めて?ね?もぅ既に遅いから…」
「だよね〜寵さん、時既に遅し!だよね〜」
「あはは、其うそう。私も其う思うよ河橋君」
追加でトドメを刺す3人。
トドメを刺された蓮輝は、泣きながら、生きた屍と化すのでした。
「分かったか蓮輝、これがお前の報いだ。ほら何時迄も屍に為ってないで、聞きたい事聞きなさい」
凰哦に諭され、ピクピクしながら
「チッ…こうなりゃね、ご期待通りにおバカを貫いてやろうじゃないの!おバカ天邪ッキーの恐ろしさを知らしめてやろブ死っ!」
毎度の如く、凰ピンを頂戴する蓮輝。
「バカな事言ってないで、早よ言わんかー!」
何故かちょっと、関西弁を使う凰哦。
「マジ何時迄バカをし続ける!?」
かなり苛々している凰哦に
「……だってさ、何だか凰哦さん、コーヒー淹れてる時、別人に思えたんだよね…何故だろう…。だからさ、おバカをしてみたんだよね〜。本物か如何かを確認したくて…」
「あっ其れ、私も感じたわ、ダーリン」
寵も蓮輝と同じ事を感じていたみたいだ。
「お、おまっ…バカか!?俺が偽物って何なんだよ…。本物に決まってるだろうが!如何してそんな事思ったんだよ!?」
凰哦の問いに
「だって…何故か本当にさ、其う思ったんだもの…」
「ハア!?」
蓮輝の答えに、意味が分からないと、疑問系の受け答えをする凰哦。
このままじゃ、話が進まないと思った隆志と江田が
「2人共、取り敢えずは其処迄にしといて、そろそろ話進めよ?ね?」
「だねぇ…。まぁこのまま篠瀬君についての話を切り上げて、別の話題にしても良いだろうけれど、今回はちゃんと聞かないとね…。何せ、宮津君に関連する話でも有りそうだからね…」
此処に来て、また何かを含んだ事を言う江田。
「えっ…其れって如何言う意味?…ねぇ江田さん…」
「まぁ話を聞けば分かる筈だよ…だろ?宮津君…」
「……多分其うですね…。でしょ?凰哦…」
2人が凰哦に、隆志についての内容も、含まれてると言われ、ドキッとする凰哦。
「え…ふ、2人共…如何して分かって…」
「…前にもね、言ったのだがね、私にも見えてるといったよね?…」
「其う…。僕達2人にはさ、凰哦の言いたい事の1つが、おそらく其うだろうとね、予測が付いてるんだよね…。此処最近に成って、見える力を身に付けた寵さんは、未だ理解出来ないだろうけれど、多分ちょっとした違和感を感じていた筈…。でしょ?寵さん…」
急に話を振られた寵は
「えっ!?私!?」
「うん其う…」
「……う〜ん…ちょっとピンとは来ないけど…でも何と無く、宮津さんと凰哦兄が2人だけの時に感じる違う暖かさは、何時も不思議に思ってたわね…。何でなのかしら…」
隆志の問いに、寵は感想で答えた。
「まぁそんな感じ。だから包み隠さずに、僕達に教えて欲しいんだ…。お願い、凰哦…」
何時もの様な優しい笑顔で、お願いをする隆志。
「………あぁ分かったよ…。其れじゃ時間も勿体無いし、パパっと話すとするかぁ〜」
この言葉で全員が姿勢を正し、真剣に話を聞こうとする。
勿論、おバカの蓮輝もです。
「さっきも話したが、この3人の約束が有って、誰とも恋愛や、恋に落ちた事は無かったよ…。特にレスキュー隊の人の言葉がさ、何故かずっと胸に留まっていて、元々有った正義感が強くなってな、色んな人やモノを助けるのに必死だったんだ…。だから、恋人を作る暇なんて無かったよ…」
其の言葉を聞いた一同は、ひどく納得する。
「確かに凰哦さんはさ、僕だけじゃ無く、社員や取引先のピンチとかにも、手を差し伸べてたもんね…。其れに、正樹お爺ちゃんと美砂お婆ちゃんもだし、更に言えばさ、子供達もだし、あの片平さんや仲上さんも、有る意味助けてるもんね…。メグちゃんも子供の時の虐めで、助けられてるよね〜。江田さんは、支援して貰って助かったって言ってたし、後は隆志さん…あれ?隆志さんは、助けられてるの?」
次々と、助けられてるラインナップを語ってる最中、隆志だけが、凰哦に助けられて無いと思った蓮輝。
其の蓮輝に
「僕は、君が昏睡状態の時に、既に助けられてるよ?」
「えっ?其うなの…?」
「うん其う。マジだから…ね?凰哦…」
「……まぁ其うだよな〜…。あの時は、2人して助け合った感じ何だがな〜…」
「へぇ〜其う何だ〜…」
「まぁ其の事に関しては、此処迄にして、話を進めるぞ?」
「うん了〜解〜」
この遣り取りの間にも其々が、こんなにも多く、人々やモノを助けていたのかと、凰哦の持つ正義感の強さを知るのだった。
「あ〜話をかなり戻すが蓮輝、先に謝っておく、済まない」
「えっ…何が?…」
「俺の生死を彷徨った時の話だから…」
「あっうん…大丈夫だから、話し続けても良いよ…」
「ありがとう…。あの時、俺の血が足りなく成って、其れじゃ僕の血を使ってと言ったの覚えてるよな?」
凰哦に聞かれて、其の時の状況を思い出す蓮輝。
「うん言ったね…。でも凰哦さんの血液型が特殊でさ、僕のO型でも無理って言われたんだったよね…。確か…ボンベイ型…だっけ?」
「其うそれ!俺も其の時に、初めて自分の血液型を知ったよ…。余りにも珍しい血液型だった為に、輸血の血が足りないと緊迫して、騒がしく成った時に偶々、俺を運んだレスキュー隊の人が、同じ血液型だと言って、限界ギリギリ迄輸血してくれて、俺は助かったんだ…」
其の後の内容は、こんな感じだった…。
脅威の回復を見せつつも、退院したのは3ヶ月後。
当時、会社の軌道が安定してたけれど、社長不在の会社は慌ただしく、入院している時にでさえ、部下に指示を出したり、必要書類等のチェックをする事で、何度も医師や看護師に叱られた凰哦さん。
無事、退院出来て直ぐに向かった場所は、助けられたレスキュー隊の人が務める、消防署だったみたい。
助けられたお礼をしたいと入院中、ずっと思ってたんだって。
だけどね、其のレスキュー隊の人を訪ねたのだけれど、会えず終いだったみたい…。
何でもね、隊員の守秘義務が有るからと言われ、教えてはくれなかったらしいんだ…。
別に良いじゃんよね?
助けてくれてありがとう〜!ってさ、言いたいだけなのに、合わせてくれても良いんじゃない?って、僕達は思ったんだけれどさ、本当の理由が他にも有ったんだ〜…。
其れはとても…とても悲しい事だったよ…。
聞いてて泣いちゃったんだもの…。
会えず終いで帰された凰哦さんに、対応した隊員さんがね
“無事助かってくれて良かった、其の隊員の代わりにも此方から、助かってくれてありがとうと言っておくよ…。そして、其の隊員にも、ありがとうと伝えておくよ…”
と、言ってくれたんだって…。
直接会えず、直接礼も言えずに帰された凰哦さん。
帰された時は、如何しても会いたいと強くお願いしたんだけれど、運悪くなのか、火災が発生したとの事で、消防署が慌ただしくなり、悔やまれながらも帰宅したんだって…。
でも流石は凰哦さん、自分のネットワークを駆使してさ、何とか其の隊員の情報を手に入れたんだ〜。
本当、流石は凰哦さんだよね!
執念が凄いと言うか、言い出したら聞かないと言うか、ほんの僅かな情報だけで、相手を見付け出すだなんてね。
でもね、知って悔やんだと言った凰哦さんの目には、涙が溢れそうに成ってたんだ…。
さっきも悲しいと言ったけれど、本当に悲しい内容だったからね…。
もぅ分かってると思うけれど、其の隊員さんは、凰哦さんを助けた其の日に、火災現場で亡くなったらしいんだ…。
限界ギリギリ迄の輸血をした為なのか、正直今と成っては、分からないけれどね、フラフラの状態で、火災現場に取り残された子供を救出した時に、自分だけ崩れて来た家屋に押し潰されて、焼死体で発見されたと、部下からの調べで知ったみたい…。
其処迄言った凰哦さんは、声を殺しながら泣いていたよ…。
俺を助けなければ、死ななかった筈だと…。
ごめん…凰哦さん…。
其の罪…僕の所為だよね…。
本当ごめんなさい…。
謝っても謝り切れないよ…。
償いたくても、如何償えば良いかすら、僕には分からないよ…。
其う泣きながら謝るとさ…
「其うやってまた、お前が傷付くと分かっていたから、今迄言えなかったんだ…。こっちこそ済まない…。また辛い思いをさせて仕舞って…。でもまた先に謝っておくよ…。お前にはもっと辛い話に為るからな…」
「えっ…其れって…如何言う事…?」
泣いて謝る凰哦に、思わず聞き返す蓮輝。
「………皆んな、何と無く分かってるとは思うが…ちゃんと聞いて欲しい…」
悲しそうな表情のまま、真剣な眼差しで言う凰哦。
其の表情を見た僕達は、黙って頷いた…。
「部下に調べて貰った隊員の名前…宮津 泰騎さんと言う方だったよ…」
ガタンッ!
驚いた僕とメグちゃんが、思わず椅子から立ち上がった…。
「えっ?…えっ…ウソ?…ウソでしょ!?凰哦兄!?」
「う、嘘…だ…よね…お、凰哦…さん…」
「…俺も其う思ったよ蓮輝…とメグちゃん…」
これ程辛そうな顔をして話す、凰哦さんを僕は、今迄見た事が無かった気がする…。
「ね、ねぇ凰哦さん…」
「ん…何だ…?」
「か、確認したいんだけれど…」
「あぁ聞きたい事は、分かってるさ…。苗字が隆志と同じだと確かめたいんだろ?…あぁ其うだよ蓮輝…。泰騎さんはな、この隆志の父親だよ…」
「エェッ!!?」
返って来た答えに、僕は驚きの声を上げ、メグちゃんは口を両手で押さえて、青ざめていたよ…。
其れ程にも衝撃的な内容だったんだもの…しょうがないよね…。
「ま、間違い…じゃ…無いんだよね…」
「……あぁ間違い無いと思う…。だろ?隆志…」
隆志に、自分の父親の名を聞く凰哦。
凰哦の問いに、少し声を震わせながらも
「うん其う…。僕の父さんの名前は泰騎って言うんだ…。間違い無いよ…」
隆志さんもまた、悲しそうな顔で、其う答えたんだ…。
「ちょっと…ちょっと待ってよ凰哦さん、隆志さん!…今の2人の遣り取りを聞いててさ、2人共、確信を持ってたんじゃないの!?何故今に成って、確認し有ってんの!?」
僕のもっともな疑問に答えたのは凰哦さん。
「初めは隆志の苗字を知った時、同じ苗字だと思ったんだ…。お前が入院してた時に聞いた時は、正直同じ苗字で驚いたよ…。だがまさか、そんな偶然有りはしないって、心の何処かで思ってたんだ…」
俯き加減で答える凰哦さん。
「でもな蓮輝、お前が昏睡状態になった時にな、お互いの信頼を得る出来事が有ったって言ってただろ?」
「…うん…確かに其う言ってたよね…」
「其の時にな、隆志の過去を聞かされて、俺はあの人の息子だと確信したんだ…。だがな、其れを確認するのが怖くて…今迄確かめられずに居たんだ…」
唇を噛み締め、悔やんだ様な顔で涙を流しながら、隆志を見つめて言う凰哦。
「済まない隆志…。今迄俺…其の事を確かめる勇気が無くて…ずっと聞けなかった…」
小刻みに震えながら、隆志に頭を下げる凰哦に
「……僕こそごめん…。凰哦の心を守るって言ってたのに…傷付けてばかりだね…。本当にごめん…」
逆に謝る隆志…。
「はぁ…えっ…何故…何故隆志が謝る必要が有る…。悪いのは俺なのに…」
謝られた方の凰哦は、隆志の行為に困惑する。
「……だって…ずっと前から凰哦の中に、父さんの面影が重なって見えていたんだもの…」
「エッ…」
隆志の言葉が、余り理解出来ない凰哦。
「ねぇ隆志さん、僕からも疑問として聞いても…良い…?」
「ん…?あぁ大丈夫だよ…。何、疑問って…」
理解し切れなく、呆然としている凰哦の代わりに、蓮輝が率直に感じた疑問を問い掛ける。
「ずっと前からって言ってたけれど、何時頃からなの?…もしかして、凰哦さんと初めてちゃんと出会ったあの日からなの…?」
自分が入院中に、出会ったあの日の事を聞く蓮輝。
其の蓮輝の疑問に
「あの時は未だ、分かって無かったよ…」
首を軽く振り、其う答える隆志。
「あの頃は未だ凰哦の中に居る、父さんの影響が薄かったんだよね…」
「父さんの影響!?」
隆志の言ってる意味が分からず、繰り返し聞き返す蓮輝。
「其う影響…」
「そ、其れって、どどど、如何言う事!?」
「あの頃は未だ、僕達出会って間も無いっていうのも有ったのだけれどさ、蓮輝君と会う頻度が増えて行くにつれ、凰哦の中で眠ってる父さんの霊というか、魂の意志とでも言えば良いのかな?段々と色濃く成って来てたんだよね…」
其う説明しながら、凰哦を見つめる隆志。
「僕が凰哦の中に、父さんが居るって確信を持ったのはね、蓮輝君、君が昏睡状態に成ったあの日何だ…」
次は蓮輝を見て話す隆志。
「ぼ、僕が、昏睡状態に成った日!?」
「うん其う…其の日…」
「エッ!?…そ、其の日に一体何が有ったの!?」
蓮輝にしてみれば、其の日の出来事を知りはしないから、当然の疑問として出て来た。
「………あの日、凰哦が君を想い泣いたんだ…。そして僕は凰哦を励まして、其のまま眠りに落ちたんだけれどね、翌朝、君が昏睡状態に成ったと連絡が入って…向かった病院で、死亡が宣告されたんだよ…」
「エェッ…嘘…マジ…?」
「マジ…。其の時に、ショックを受けた凰哦が少し乱れてしまってさ、僕達ちょっと怪我をしちゃったんだ…」
蓮輝には、本当の事を言えないと、嘘を織り交ぜた隆志。
「でも結果的に、死亡したのは見知らぬ他人だったのが分かってさ、凰哦は安堵から気を失ったんだよね…」
「其れもマジなの!?」
「あぁ本当だよ?…でね、僕が付き添いで凰哦を見る事に成って、疲れた僕はソファーで眠っちゃってね、目を覚ましたらさ、うなされてた僕を心配した凰哦がね、僕を大切な人だと励ましてくれたんだ…。其の時にね、父さんの存在を凰哦の中に、感じたんだ…」
蓮輝には、内緒にしたかった経緯を話したと、申し訳なさそうに、凰哦を見る隆志。
「……そんな事が有ったんだ…」
隆志が語った内容で、凰哦と隆志が仲つまじく思えてた訳が、分かった気がした蓮輝達…。
「多分凰哦の中に、父さんの血が多く取り込まれたから、父さんの魂が、凰哦の中に宿ったんだと思うんだ…。だからね江田さんも、其の事を理解してくれてたんだと思ってる…。でしょ?江田さん…」
隆志が江田に聞くと
「宮津君、君が言った通りに、多分其うだろうと思ってたよ…。篠瀬君から感じる暖かさが、父親の様だと思ってから、君と篠瀬君が一緒にいる時に、悪いと思いながらも観察してたら、篠瀬君に重なって、君を優しく見守る男性の姿が見えたからね…」
と、凰哦の中に居る、隆志の父親の姿を見たと言うのだ…。
「だからね、其の事を…ずっと…ずっと黙ったままでいた事を…許して欲しいんだ…。ごめん…凰哦…」
凰哦に許しを乞う隆志は、今迄黙っていた事に罪悪感を感じて、泣き崩れるのだった…。
隆志と江田の話を涙しながら聞いていた凰哦は、椅子から立ち上がり、隆志の元へと駆け寄り、泣き崩れる隆志を抱き締めた。
「何故、何故お前が謝る必要が有る…。俺こそ…俺こそ謝らないといけないのに…。お前に負担を掛け続けていたんだな…。俺こそ済まない…悪かったよな隆志…。だからこれ以上、罪の意識を持たないでくれよ…。頼むから…な?お願いだから泣くなよ…隆志…。だからこれ以上…罪だと思わないでくれよ…。そしてこれ以上泣かないでくれよ…隆志…」
隆志を優しく抱擁する凰哦の心に、声を上げて泣く隆志。
「……隆志さん…」
「…宮津さん…」
凰哦と隆志の姿を見て、其れ以上、言葉が出ない蓮輝と寵。
2人の関係性を知った蓮輝と寵に
「河橋君、寵さん、今日はこのまま2人だけにさせて上げようか…?私達は席を外そう…良いかな…?」
と、江田が言う…。
「……だね…。其れじゃ、僕達は席を外すよ…凰哦さん、隆志さん…」
「其うよねダーリン…。私達は席を外すから、心置きなく、お互いの気持ちを語り合ってよね…2人共…」
其う言って、テーブルのコーヒーカップを片付けて、部屋を出る蓮輝達。
部屋を出た蓮輝が
「まさか隆志さんと凰哦さんの関係ってさ、こんなにも凄い結び付きが有ったんだね…。本当…凄いや…」
この言葉に寵が
「其うよねダーリン…。知らなかったとはいえ、2人の仲の良さをずっと揶揄っていた事が…私…如何謝れば良いのか分からないわ…」
と、今迄の言動を悔やむのだ…。
「其れを言うのなら、僕もだよ…。其れに、隆志さんのお父さんを死なせた原因は、僕にも有ると思うと…如何したら良いのかすら…分からないよ…うぅ…嗚呼ぁ…」
2人、其々が抱える罪の意識で、押し潰されそうに成ってた時
「そんなに自分を責めなくても良いよ、河橋君、寵さん。宮津君も篠瀬君も、其れに、篠瀬君に宿ってる泰騎さんもね、恨んじゃいないからね…」
と、2人を慰めるのだった。
「えっ?」
「如何して、そんな事が言えるの?江田さん…」
2人は江田の慰めに、思わず聞き返した。
「ふふふ、ほら何度も言ってるじゃないか、私にも見えるとね…。宮津君みたいに、払うとかは出来ないがね、言葉は聞き取れるんだよ?」
「えっ!?其うなの!?」
「あぁ本当だよ河橋君。泰騎さんはね、ずっと誰の所為でも無いと、言っていたよ…。だからね2人共、宮津君と篠瀬君に心から謝れば、許してくれる筈だから、罪の意識で押し潰されないでくれないかな?其うしないと、あの2人が逆にね、罪の意識を持ち続けて仕舞うからね…」
江田の語る内容を聞き、2人は
「……だね…うん分かったよ、江田さん…」
「……私も…。でも後で、ちゃんと謝罪するわ…。其うしないと私、これから先、2人と一緒に居られないから…」
「…うん其うだよね、メグちゃん…。僕も、僕も後で、2人にちゃんと謝るよ…。これからも一緒に居る為にもね…」
2人の決意に
「あぁ其うだね…2人共、是非其うしてくれるかな?きっとあの2人も、其うしてくれると、嬉しいと思ってくれる筈だからね…」
其う言って、僕とメグちゃんを優しく抱擁してくれたんだ…。
やっぱり江田さんの抱擁はさ、優しくて癒されるよ…。
癒された僕達は、凰哦さんと隆志さんが落ち着いて話終わる迄、色々と思いを馳せながら、ゆっくりと流れる時を過ごしたんだ…。
其の時、ポツリと
「これで宮津君のすべき事も、為せる様に成ったね…良かったよ…」
と、また何かを含んだ事をね、江田さんが呟いたんだ…。
僕とメグちゃんの2人は
“えっ…?”
と成ったんだけれど、其れ以上、何も聞く事はしなかった…。
だって、凰哦さんについて、こんなにも凄い事を知ったんだもの…。
今は、其れだけでお腹いっぱいだもんね…。
凰哦さんについて、これ程濃い内容を聞けた僕達は、有る意味幸せモノだよね。
本当、聞けて良かったと思うよ。
其れじゃ、2人が出て来るのを待っていようか。
この先、皆んなで楽しく旅を続ける為にもね…。
如何でしたか?
凰哦と隆志の関係が、この回で分かったと思います。
何故、あれだけ仲が良かったのかもね〜。
では次話をお待ち下さい。