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教えてキュー

慌ただしくも、楽しい朝食は終わり、何だかんだとそろそろ時刻は9時過ぎになっていた。

やっとポンコツ様からお戻りになった凰哦さんは、キューから話を聞く前に、会社に電話をすると言って、リビングから離れて行きました。

トゥルルルルルルー トゥルルルルルルー ガチャッ

「はい株式会社篠瀬、総務部の岡場です。申し訳ありませんが、外部からの直接のお電話は…」

「君は岡場という名前なんだね?」

「はいそうですが何か?」

「いや悪いが、別の者に電話変わってもらえるかな?古野田君が居れば彼に、居ないのなら絹山さんにでも変わって欲しいのだが、凰哦と言えば分かるから」

「あっはい、凰哦様ですね、失礼ですが内の古野田と絹山に、どういったご用件でしょうか?」

「いいから変わって貰えれば…」

「馬鹿野郎ー!社長の名前じゃないか!お前直ぐ気付けよ!…っておい!着信表示に社長って書いてあるじゃないか!……」

「えっ!あっ本当だ!どうしましょう部長…」

「取り敢えず直ぐに代われ!」

電話口から社員のやり取りが聞こえてくる。

「お電話代わりました古野田です、すいません部下の岡場が失礼を…で、どうされました篠瀬社長?」

「おはよう古野田、先ず岡場君に、気にすることはないと伝えなさい、誰にでもミスは有るものなんだから。取り返しの付かない事や、命に関わる事じゃ無ければ、そのミスを次に活かせば、良いだけだからと伝えてくれ。それと要件とは、私がしばらく会社を休む事を伝えようと思って、電話を掛けたんだよ」

電話口からガタガタガタァーっと、物が崩れ倒れる音がする。

どうやら、非常に驚いた古野田部長。

「えっ?えええっ!社長が休まれるんですか!?」

「そうだが、なにか不味いのかね?」

「い、いえ全く…ただ休まれた事、お見かけした事がないものでして、少々驚きを隠せなかっただけでして…」

「そんなに驚かなくても…まぁいい。そういう事だから、しばらく出社はしないから。取引先とかの事は任せたぞ」

「はいそれはよろしいのですが、ちなみに何日程休まれるのでしょうか?」

「分からない、まだ未定だ…いけないか?」

「いえ!承知しました!では失礼します!」

電話を切り、リビングに戻ってくるなり、聞く耳をたてていた蓮輝が

「凰哦さん、古野田さんだっけ?凄く驚いてたんじゃない?前に1度会った時、石橋叩いて叩いて叩いて壊す感じの印象があったからさ、小心者(びひり)のクラッシャー、略してビビクラと勝手に思ってたんだけどね、凰哦さんが突然休むって言われて、アタフタして何かしでかしそうなんだけどさ〜」

「ビビクラってお前…まぁ確かに度胸は無いかもな…。でもここぞって時には、とても頼れる奴なんだぞ?」

「ふ〜ん…そうなんだ…。でもまぁそれよりもさ、気分次第で長期休暇にするつもりでしょ!?確か2、3日って言ってた筈なんだけどなぁ〜?」

痛いところをつかれ、ビクッとして固まる凰哦。

「ハハハハハッー。何を言っているんだい?…いや?そんな事は考えてないぞ?全くもって、長期休暇どころか、社長を辞めようとか、会社を譲ろうとかなんて、これっっぽっちも思ってなどないぞ?」

あっ今プチパニ起こして、聞いてもない本音が漏れてきたよ…。

マジかぁ…この人、やると決めたら絶対するから、本気になる前に止めとかないと、部下達が可哀想だよね…。

「凰哦さ〜んあのね、今とても重大な事口走ったけど、本気なら僕、この家キューと一緒に出て行くからね〜!」

「はぁっ!?突然何を言い出すんだ?俺が重大な事、何か言ったのか?」

「ありゃりゃ…自分で言った事、覚えてないの?思いっきり本音漏れてたよ?社長辞任とか、会社譲るとかさ!」

しまったー!みたいな顔をして、あたふたし始めた凰哦さん。

言い訳しそうだったから、先手をうって

「社長辞任するにしても、会社譲るにしても、丸投げして後は知らん顔するつもりなら、僕本気で出ていくからね!ちゃんと部下達の事考えて、凰哦さんが居なくても、大丈夫な様にしてから辞めてよ!」

「は、はい…」

「分かればよろしい!」

いつもは、凰哦が蓮輝を叱る立場なのに、これに関しては、立場が逆転して、へこたれてしまうのだ。

「でさ、それはもうどうでもいいとして、キューの事色々聞かないと…」

「えっ?…どうでもいいって…」

「えっ何?」

「いえ何も…」

すべき事をしっかりやれ!と言いながら、どうでもいいと切り捨てる蓮輝。

凰哦は“へへっ”と肩を落とし、その背景に、幻の木枯らしが吹いているかの様だった。

凰哦の電話の最中、蓮輝から与えられた色鉛筆と、スケッチブックに、絵を描いていたキュー。

鉛筆を持つのも、絵を描く事も初めてのキューは、とても楽しそうにしていた。

それを見た瞬間、木枯らしを背負った凰哦は、木枯らしを跳ね除けて、今度は春の陽だまりを背負うのだ。

蓮輝のどうでもいいの言葉に、確かにどうでもいい!キューの可愛さに勝てるものなし!と、共鳴するのだった。

「よしっ!それじゃキューの事、色々聞かないとな!」

可愛いキューの事、沢山聞いちゃうぞ♡みたいな顔をして、この人、こんなにも表情豊かだったっけ?

表情の移り変わりが激し過ぎるよ…感情の振り幅もあり過ぎ!

凰哦さんって、これが素だったんだ…知らなかったぁ〜…。

「お座り!…はい待てっ!」

取り敢えず、大人しくさせなきゃね!

軽くポンコツ化してくれてるから、しつけ楽だね〜。

凰哦ワンコちゃんは、しっかりお座りと待てをしてくれてます。

「っておい!俺は犬か!?バカヤロウー!!」

ありゃ…しつけ失敗かな?

「お前、しつけ失敗って思ったな?いい加減本気で怒るぞ!?」

あらやだ怖い…旦那様…怒らないで下さいまし〜

「キュ〜、凰哦パパ怒ってるよ〜、助けて〜」

「…凰哦パパァ…怒ってる?そうなのぉ?凰哦パパァ〜」

「いや全然!この俺が、怒る筈ないじゃないか〜。こんな可愛いキューを前にして、そんな事しないよ〜」

キューのパパ呼び、絶大な威力です!

でも後で、キューの居ない所でチョップ頂きました!ありがとうございます!

さて、遊んでないで聞かないとね。

「キュー、お絵描き楽しい?」

「うん!たぁ〜のし〜いよ〜」

その返答に、悶えてる凰哦さんを視界からデリートして

「キューの事、そろそろ色々と聞こうかな?って思ってるんだ。分かる事だけでいいから、教えてね」

「うんいいよぉ〜、蓮輝お兄ちゃん」

グハァゥ!…これは…確かに効きますなぁ…アンタ…良い物持ってるじゃぁないか!

「あぁ…ありがとう…それじゃ先ずは食べ物の事聞かせて?」

危ねぇ危ねぇ…なんとか持ち堪えましたぜ…

まぁ、食べ物ってフレーズに、即反応したキューのおかげでも、あるのだけれどね。

「キューって、キューの食べられない物分かる?それとどんなのが良いのか、知りたいんだよね」

食べ物の事になると、頭の回転が速くなるみたいで

「僕ねぇ、食べられないものってねぇ、けがれたものダメなんだってぇ言ってた!…それ食べるとねぇ、お腹痛い痛いなるか、こあいのになるかねぇ、ちんじゃうんだって〜。綺麗なものはねぇ、なんでも食べれるのぉ」

キューの言った内容を、凰哦さんと話し合う。

「ねぇ凰哦さん、キューの…」

「なぁに?呼んだぁ?」

自分が呼ばれたと勘違いしたキューに、2人同時にデレッとなりながら

「違うよ〜、今ね、凰哦パパとキューの事話してただけだから、お絵描き楽しんでて良いからね〜」

「…そうなの?分かったぁ〜」

本当可愛いなぁ…

「…で凰哦さん、キューが言った内容は理解出来た?3歳児の話し方と似てるから、なんとなくでしか分からなかったのだけど、凰哦さんは分かった?」

「まぁ大体は理解したかな?穢れた物を食べたら、腹痛になるか、多分怖いものと、死ぬって言いたかったんだろう…。お前はどう聞こえたんだ?」

「流石凰哦さん、僕もそうだろうと思ったけどね、こあいのは、コアラ?って思ったのと、ちんじゃうってのは、青椒肉絲か神社?って一瞬思ったんだよね〜」

「お前…大体前後の文章を考えたら、そんな言葉出てこないだろう…どうすればそうなるんだよ…」

「エヘヘェ〜、そんなに褒められても〜」

「褒めてない!」

「だよね〜、何でかな?耳に入ってくるのは、合ってる筈なんだけど、頭の中で別の物に変換されてるんだろうね〜、僕、本当よく聞き間違いするもんね〜」

「本当するよなぁ〜…」

「で、凰哦さんの言ってた事で合ってるとして、穢れた物とか、怖いのに綺麗な物だったよね?どんな物なのか予想つきそう?」

少し考えてから

「怖いのってのは、多分凶暴化するとか、悪い物に変わり果てる事を言ってるんじゃないかな?穢れた物は、どれを指してるのか分からないが、綺麗な物は、その穢れた物に、汚染されてない物の事なんじゃないかな…」

「穢れなんだけど、例えば農薬とか化学汚染とか、それかキューみたいな存在が他にいて、それが取り憑いた物とかかな?綺麗な物は、天然物とかかな?何だろう…」

「う〜〜ん…こればっかりは、これ以上の予想は出来ないよなぁ…。憶測でしてしまっても、もしもの事もあるからな…」

「そうだよね…それじゃキュー本人に、良し悪し選んでもらうってのは、ダメかな?」

「それは提案としては、悪くはないが…買い物の時、どうするんだ?キューを連れて行くのか?仮に連れて行くとしても、どうやって連れて行くつもりなんだ?」

「えっ?キュー、他の人に見えないじゃん。だから大丈夫なんじゃない?」

「浅いわ…これだから蓮輝は、ダメなんだよ…。良く考えてみろよ、お前がキューと話してる姿。ただ独り言を喋ってる、怪しい奴にしか見られないだろう!それと、キューが何かに興味を持ったとしよう、そのキューが何かを触ったり持ったりしてみろ、蕎麦屋の俺みたいに、怪奇現象が起きたと怖がられるのが容易に想像出来るだろう?」

そう言われて

「あっ本当だ!…そうだよね…そりゃそうなるよね…そんな事も思いつかなかった…。でも家の中にキューだけ残してってのも、不安があるし…あーっ!どうしよう!」

頭を抱えてしまう。

こんな時、どうしたら良いのでしょうかね〜。

蓮輝Bさん、どうしましょう?蓮輝Cさん、何か良い案ございませんか?蓮輝Dさん、貴方はどう思います?何か良い案ございませんか?

僕の頭の中で、4人の僕が必死に考えてます。

ーーーーーブブゥーーーはい時間切れ!

「どうしよ〜?」

僕の呟きに、凰哦さんが

「お前の頭の中、時々楽しそうだよな…」

あれ?また頭の中覗かれた?

「多分気付いて無いんだろうな…お前、小声でBやらCとか呟いてたぞ…。今迄面白いからと黙ってたけど、その癖治した方がいいぞ?」

僕的、超衝撃事実です!

「ウソ…マジで…?」

「こんな事でウソ言ってどうする!子供の頃からやってたぞ?…まぁそのおかげで、お前の頭の中を覗くスキルついたのだがな」

更に衝撃!…そうだったのかぁ…。

僕って他人に、結構ヤバい奴に思われてるかもね…。

まぁそれはいいとして、切り替えてキューの事考えよ〜ぅと。

「癖ならしょうがないよね〜、それはその内なんとかするとして、キューの事、もっと良く考えなくっちゃだよね…」

「切り替え本当早いよな。まぁ確かにキューの事先決だな…外に一緒に連れて行くとして、ベビーカーに乗せて…は、無理があるか…。ご近所さんに、子供出来たのかとか聞かれそうだしなぁ…」

「いや、それ良いかも!」

「はあっ?何処が良いんだ?」

「いやね、別にベビーカーじゃなくても良いかもって思ってさ、例えばリュックに入れて背に背負ってれば、誰にも怪しまれないんじゃない?」

「!!おおなる程!それは良い案かもな!蓮輝、お前にしては、冴えた提案だな!」

一言余計なんだけど、まぁいいか…。

「でしょ?キューが外に出たくなったら、リュックから出して、肩車してしまえば良いだろうしね」

「そうだな〜、よし!その案でしばらくやってみよう!食べる物買う時は肩車をして、キューに良し悪し見てもらえれば、こっちも助かるからな」

「それじゃ決まりって事で!」

凰哦さんと2人、イェーイとハイタッチ。

それを見ていたキューが

「いえーい!」

真似をして両手を出すので、嬉しくて、2人してキューとハイタッチ!

「クキャキャキャキャ〜」

と笑うキュー。

本当、キューに癒される事が多いよね。

「凰哦さん、キュー用のリュックを先に買いに行こうよ、どうせ色々買わないといけないから、車で行かないといけないし、車なら膝の上に乗せてれば良いからね」

「そうだな、リュックを買う迄は、肩車をすればいいから、久々に車で買い物に行こう!…で、どっちが運転する?」

「…今、凰哦さんの考え読めたよ…。キューを膝の上に乗せて行きたいんでしょ?」

「そうだがなにか?なにか問題でもあるのか?」

あっ開き直っちゃたよ…こりゃ写真の脅しも効きそうにないね。

「問題はないけど…ふぅ…いいよ好きにして。僕が運転するから」

「えっ?いいのか?本当にいいのか?」

「うんいいよ、たまには凰哦さんにも、自由に好きな事して欲しいもんね!やっぱり大切な人には、ずっと喜んでいて欲しいもんね!」

屈託のない綺麗な笑顔で言うもんだから、凰哦は感動し思わず抱きしめて

「今の言葉、本当に嬉しかったぞ!ありがとう」

回した手で、ポンポンと蓮輝の背を叩く姿は、我が子に感謝する様に見えるのだった。

久々の、凰哦さんのハグは照れるね。

本当の父親の様に思えて、この歳で今更だけど、僕もパパ呼びしようかな?

「いいぞ、そう呼んでくれても!」

っああ!だから人の心を読まないでよ!よし決めた、絶対呼ばない!

「そんな事思わないでくれよ…」

「!!ったく!絶っっっっっ対しない!本当そんな事ばかりするのなら、車の運転お願いするね!」

「ごめん!本当本当ごめんよ〜!」

「はい、残〜念!キュー、今から一緒にお出掛けするよ〜」

「おでか…けぇ?」

「そう、キューの物を沢山買いに出掛けるよ!さぁ行こう!」

「わ〜い!おでかけるん!」

「蓮輝、許してくれよ〜…」

「無視!」

キューを抱いて、さっさと玄関に向かう蓮輝を悲しそうに追う凰哦でした。

キューのイメージを伝えたいです。

こんな姿だと絵にして、挿絵入れたいです。

ただ可愛いだけじゃ、イメージし辛いですもんね…。

僕の中のキューのイメージ、どう表現すればいいのか悩みます。

それと、今回の蓮輝の頭の中の変換ミス、僕の日常です。

では次話、ショッピングの2人と1匹をお届けします。

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