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キューと僕の思い出日記  作者: 喜遊元 我可那
新たな出会いと別れの準備
45/61

誰が誰で、僕は僕。3

蓮輝の病室に集まる凰哦達。

蓮輝の関係者全てがこの部屋に集まる様、“キュー”に言われて来ていた。

キューから伝えられた“キュー”の予告通りに、正午丁度に、此処に居る全員が“キュー”の声を聞くのだ。

だが

“今日も始まりました本日の“キュー”のお時間!皆んな〜、ちゃんと聞いてるかなぁ?”

と、余りにも軽過ぎて

「「真面目にやれ!」」

と、ついツッコんで仕舞う。

だが其れは、不安になっていた凰哦達に“キュー”が気を遣ったお茶らけだったのだ。

少しでも不安を取り除いて欲しいと言う、“キュー”の優しさだったのだ。

其れを理解した凰哦達は、キュー達の神様は、自分達が思い描く神では無く、心優しくてフレンドリーな神様なのだろうと思った。

流石は純粋無垢なキューの神様。

“キュー”も純粋無垢で、愛らしいのだろうとも思えていた…。

でも出来れば、其の低く渋い声で

“さぁさぁ皆んな、今日も元気かなぁ?如何なんだい?…あれ?元気が無いのかな…返事が返って来ないぞ?其れとも恥ずかしいのかな?良い子はちゃ〜んと元気にお返事しよう!さぁもう1度聞くぞ〜?皆んな〜元気かなぁ〜?”

と、子供番組のお兄さんか、ノリの良いラジオのDJ調に言わないで欲しいと思った…。

誰もが其う思ったのに、隆志だけがまた、違う事を思っていた。

隆志が思った事…。

其れは此処最近、出会い知り合う者やモノ達に、変わっている者とモノが多いと言う事…。

子供の頃から虐められて来た隆志は、蓮輝や凰哦の様に、余り人とは関わら無い様にして来た。

其の為、知り合う人達と接する事が少なかった隆志は、こんなにも個性豊かな者やモノ達が居るなどとは思ってもいなかった。

他人と関わって来ていたら、コレが普通だと思えたのだろうか…。

いや其れは無い。

世間知らずだとは自分でも思う。

其れを差し引いたとしても、隆志の思い描いていた“普通”の者やモノに程遠いと、其う思えて仕舞うのだ。

女性と勘違いして恋した相手に告白し、見事超ダメージのおまけ付きで思いっ切りド派手に振られ、2度と其の相手とは関わる事は無いだろうと思っていたのに、バイク事故で入院した知人のお見舞いを義理で1度だけはしようと病院へ行ったあの日偶然出会い、謝罪したいと言われ、渋々話を聞く事にして、謝罪と彼の過去を聞かされてからは、今度は親友として付き合う事に成った。

今は其の者に恋心を感じる事は無いが、其の代わり、人とは違う感性を持っているのだと知る。

其れからは、其の者を中心に出会う者やモノ達が放つ個性に、着いて行くのが精一杯なのだ。

初恋で、今は親友の蓮輝を始め、際立って変人のツトツトに、其の恋人の仲上。

蓮輝の叔父の凰哦も、大人なのに子供地味ているし、青柳夫妻も何方かと言うとおおらか過ぎていて、時折ヒヤッとする時が有るのだ。

其処に来て“キュー”のこの軽さ。

普通と言われる人達も、この様な感じなのだろうか…?

個性豊かで、変わっているのだろうか?

何度も繰り返して考えてみるが、やはり其れは無いだろうと結論付けるのだ…。

これだけ個性豊かで変わり者やモノが多いと、普通なら付き合うのを止め、関わら無い様にするだろう…。

でも今の隆志には、其の者やモノ達と関わり合えて、毎日が新鮮でいられるのが、とても心地良く思えているのだ。

其の様に思えている自分も多分…いや確実に変わり者なのだと思うと少し複雑に成るのだが

(変わり者でも良いかなぁ〜。もっと皆んなと関わっていたいし、関わるのが嬉しいもんね…)

と、其う思ったのだ…。

だからか、ノリの良い“キュー”の問い掛けに

「元気で〜す!」

と唯1人、返事をして仕舞うのだった。

「「「エッ!?」」」

キューを除く全員が、一斉に隆志を見て驚いて仕舞う。

「!!」

全員の反応に、逆に驚き恥ずかしさで赤面する隆志。

「「「…………」」」

無言で何も言えない一同。

まさか、隆志がノリノリで嬉しそうに答えるとは、誰も思っていなかったから、如何リアクションして良いのか、全く思い付かないみたいなのだ。

恥ずかしさの余り、顔を隠す様に蹲る隆志に

「た…隆志…お前の其の今の気持ち、俺はとても良く分かるぞ?」

慰めの言葉を掛ける凰哦を見ると、“うんうん”と頷きながら優しく微笑んでくれていた。

「お…凰哦〜…」

この恥ずかしさを分かってくれて、慰めてくれるのは、やはり凰哦だけ何だと、少し救われた気持ちに成り掛けたら

「でも俺の慰めは此処迄だからな?今後、こんな場面が訪れたら、後は自力で頑張れよ〜♪」

これ以上も無い笑顔で言うのだ。

「エッ?…何で…?」

「そりゃぁ〜決まってるだろぅ〜?唯一の味方だと思ってたお前の慰め、あの時使い切られたからなぁ〜。だから俺もお前に習ってお返ししておくぞ〜?」

カッカッカッと嬉し其うに笑う其の顔は、とても憎たらしく思えた隆志。

良い歳したオッさんが、何幼稚な事を抜かしてるのだと段々ムカ付いて来て、思わず凰哦専用のお仕置きを繰り出して仕舞う。

「フギュ〜!…い…痛い…」

「ん?未だ痛いって言える余力は有るんだね〜、もう少し強く抓らないといけないかなぁ〜?」

「ぶぉべぇうあはい…」

抓られて上手くゴメンなさいが言えない。

「フンッ!謝るくらいなら、最初からしないでよね?」

「はい…」

「まぁ今回はコレくらいで済ますよ。其れにしても、良く僕の気持ちが分かったよね?」

「…俺、何度も恥ずかしさで赤面しながら、蹲っていたからなぁ…」

「あっ其う…」

実体験談なのだと分かった隆志は、聞く必要は無かったと、軽い相槌で終わらせた。

この2人の遣り取りを見た一同が騒めき始める。

凰哦は未だ見慣れているから良いとして、まさか隆志が大勢の中で、今迄取った事の無い行動をするモノだから、コレが隆志の素なのか?と、驚きを隠せないでいるのだ。

其の中でも

「ねぇねぇちょっとさ、2人何時の間にそんな仲良く成ってるのさ?」

と聞く蓮輝。

2人以外騒付いてるが、昏睡状態だった蓮輝にすれば、当然の疑問なので有る。

「エェッ!?マジ…?隆志さんって、そんなキャラだったっけ?」

皆んなが騒めいたせいで、気不味く気恥ずかしく成っていた2人。

其処に蓮輝からの質問に、如何答えて良いのか戸惑って仕舞う。

何せ其のキッカケが、蓮輝の昏睡状態から始まり、蓮輝が死んだと勘違いしたあの一件後、お互いの信用と信頼が深まった上、今は一緒に暮らしていると言うコレ迄の流れを簡潔に、とても上手く説明出来そうに無い。

最も信用と信頼している凰哦が、勘違いだったからだとは言え、自分のせいで、隆志に暴力と暴言を浴びせて仕舞ったのだと思われ、深く傷付けて仕舞わ無いかと思い、悩んで口籠もる2人だった。

其の2人に、助け舟を出したのはツトツト。

「ブフッ!アッハハハハハ〜!ゲホゲホゲホ…か…ゲホッゲホッ…河橋君よ〜、やっぱ気に成るのかぁ〜?ブハハハハハッ!」

意味も無く笑って、逆に質問をする。

「一体今の何処が笑えるのさ…。本当変人の変異種だよね…」

「アハハ…ん?いや別に〜?唯何と無くだけど?って違うなぁ…。河橋君の其の驚く顔、今迄見た事無い顔だったからさ、何か新鮮で笑っちまったわ。済まねぇ済まねぇ〜」

「本当に何なのさ!片平さん、アンタって人は失礼だよ!面白かったのならOKだよ!…ップ…アハハッ!」

とても満足其うに笑う蓮輝。

「オッと其うだった。俺の事、今後片平呼びじゃ無くツトツトで呼んでくれよ〜?コレは決め事何で、其処ん所宜しく!」

「了か〜いツトツト〜♪って呼ぶかー!オッさん!!遂流れとノリで言っちゃったけど、アンタ恥ずかしく無いの!?其の歳と強面の顔で、な〜に抜かしてんのさ!?バッカじゃ無い!?」

「…だって、このミッミ〜…。俺ちゃま…俺ちゃまぁ〜〜…」

「ヨシヨシツトツト〜ん…私が付いて居て上げるからねぇ…」

「はっ?」

「コッチはこのミッミ〜って呼んでくれよ?」

「改めて宜しく〜♪」

「……って、アンタもか!良くまぁ〜恥かし気も無く、そんな事出来るよね!?バカップルとしてはお似合いだろうけどさ!其れに僕達を巻き込まないでくれる!?ったく…僕、貴方の弟止めて正解だったよ…」

「まあ失礼ね!弟は、以前から認めて無いって言ってるでしょ!?だけどこうして私達がふざけていたら、子供達に向けられる陰湿な目を私達に向けられるでしょう!?今じゃコレが板に付いて来た感有るけれど、初めは其のつもりでして来たのよ?」

其れ本当なのか?と思って仕舞うが

「本当だからね!エッ?何!?今度は皆んなで呟いちゃって!」

其の言葉に驚く一同。

「「「マジーー!?」」」

声も揃う。

「キャア!ビックリした…。何よ皆んなして一斉に!そんなに驚く事!?」

「「「勿論」」」

「ちょっ!……あぁ泣き其う…」

「可哀想なこのミッミ〜…慰めてやるよ〜。さぁコッチに来いよ〜」

仲上は、慰めてやると言うツトツトに近付き

パァーーーン……

「痛っタァー!!ななな、何で叩くんだよー!!」

「何言ってるのよ!貴方も皆んなと一緒に驚いて納得してたじゃないの!このバカ()!!」

「つ…努…」

ブチ切れた仲上に、今後ツトツト呼びされる事は無いだろう…。

ご愁傷様、ツトツト…。

「ゴメ〜ン!謝るから〜!マジ切れしないでくれよぉ〜ん…。このミッミ〜……」

「イヤッ!今回は絶対許さないから!」

「そんな事言わ無いでくれよ〜…。心から謝るから〜さぁ〜。其れに心から愛してるのこのミッミだけなんだからよ〜…」

「ハァッ!?良く言うわわね!私の目の前で、隆志君を抱き締めてやるって言った事も有ったでしょ!?そんな貴方何かに愛してるって言われても、信じられる訳無いでしょ!!」

「あ…あぅ…」

ドロドロして来た2人に、静まり返る病室。

「えっ?何其れ?この変異種さんが、隆志さんを抱き締める?ハァ?……おいアンタ、僕の知らぬ間に何オモロい事してくれてんのさ!って言うかオタクさん、其方もOKな人だったの?ちょっと、もう少し詳しく聞かせなさいよ!」

このドロドロ状態をオモロいと感じてる蓮輝の発言。

掛け布団をバンバン叩き、話を催促して来る。

ツカツカツカ…パチィーーン…

「痛ったぁ〜〜!くぅ〜…久々の凰ピンは効くねぇ〜。あっ父さん母さん久し振り〜…」

パタ…

凰哦にデコピンを喰らい、バタンキューと成る蓮輝。

「何誤魔化しの気絶演技してんだ!其れに何が凰ピンだ!デコピンに名前付けるんじゃ無い!このバカタレが!」

「あらあらあら…ウフフッ。久々にこのやり取り見たわ〜」

「アハハ其うだね〜!蓮ちゃんと凰君のこのやり取り、久々に見られて嬉しいよ」

其う言って笑う正樹と美砂。

でも涙が溢れて

「あぁ…嬉しいよ…。蓮ちゃんと凰君のこのやり取りが見られて…嗚呼ぁ…」

「本当に…本当に其う…嗚呼ぁぁ…」

子供達も

「蓮輝お兄ちゃ〜ん…何時ものお兄ちゃんだぁ〜!嬉しい〜…」

「だよねぇ〜…ヒクッヒクッ…ワアァァァーー…蓮輝…お兄ちゃんだ〜…」

「「蓮輝お兄ちゃ〜ん…」」

其々が、こんな感じで泣いてくれる…。

「フフフ…蓮輝君…君は皆んなから、こんなにも慕われてたんだね…。僕も友達として嬉しいよ…」

涙目に成りながら、隆志も嬉しそうに言ってくれる。

「皆んな…」

目の前の光景が、とても嬉しくて、胸がギュッとグッとして来る…が

「ドロドロとウルウルは堪能したからさ、早く2人の事教えなよ!其れと片平じゃ無かった、ツトツト…って違うわ!片平で合ってたよ!アンタの事も教えなさいな!さぁさあ!!」

掛け布団をバンバン叩き、“サッサと教えなさい!”と催促する蓮輝。

昏睡から目覚めたばかりだと言うのに、“コイツは〜!”と思う一同。

はぁ〜と溜め息を吐き、デコピンの仕草をする凰哦に気付いた蓮輝が

「其れ以上凰ピンされたら、マジ向こうの父さん母さんに会っちゃうから止めて!マジお願い!…折角僕の知らない間に起きた事、オモロい事聞けると思ったのに…」

如何やら誰も見舞いに来てくれなくて、入院する前の蓮輝は、皆んなとの生活に慣れて仕舞っていたからか、入院中ずっと1人寂しいと思っていた様だ。

しかも自分が知らない内に起きた出来事が、蓮輝にしてみれば娯楽と言うご馳走で有り、其のご馳走に飢えていたのだ。

其れをしっかり理解した凰哦達。

「本っ当にお前ってヤツは…情け無い…。取り敢えず簡単にだぞ?簡単に説明してやるから、今は其れで我慢しろよ?良いな?」

「うんうん!分かったから!早く、早く聞かせて!お願い凰哦さん!」

目をキラキラさせながら、前のめりで聞く体勢に成る蓮輝。

「ハァ…其れじゃ…。先ず俺と隆志の事だが、お前が昏睡状態に成った時に色々と有ってな、其の時に、お互いが信用と信頼を築く事が出来て、今は一緒に暮らしてるよ…」

「ハァッ!?何其れ!?色々有って、信用と信頼し合って一緒に暮らす?意味が分かん無い…。簡単に説明し過ぎて分っかんないよ!ちゃんと説明してくれなきゃ!色々と有ったって、何が有ったのさ!?」

「あっ其れはもぅ終わった事だから、聞く必要は無いよ?」

「エッ?何言ってるのさ隆志さん…。必要無いって言うのは、如何言う事!?」

「其のままだよ…。まぁまぁ細かい事は別に良いじゃ無い。細かい事とか、疲れる話は嫌いだろ?蓮輝君って」

「うっ…あぅ…。まぁ確かに其うだけどさ…」

「そんな感じの内容だからさ、聞いたら損したって確実思うから、其れで良いんじゃ無いかな?其れでも聞きたい?」

「……隆志さんが其処迄言うと成ると、マジ細かくてウヘェって成るみたいだよね…。なら聞かないで良いや」

「うん分かった。取り敢えず君が退院したらさ、僕も一緒に暮らす事に成るから宜しくね!」

「あっ其うだよね!おぉう?何だか今から楽しみに成って来るね!後正樹お爺ちゃんと美砂お婆ちゃんも一緒なら、もっと最高〜だよね!」

「だね!」

「「アハハハ」」

凰哦と隆志の事は、何とか誤魔化せる事が出来た様で一安心する。

「で、変異種さんは如何なのよ?」

其のまま丸く収まると思っていた片平は

「お、俺!?」

「其う!アンタさん、仲上さんが居るのに、隆志さん迄手を出そうって聞いてしまったからね、大事な親友に何してくれてんの?って普通は思うでしょ?」

「あ、いや俺は…。俺はマジこのミッミ〜しか愛せないってのは確か何だよ〜…。でもホラ俺の性格こうだろ?お調子者の其の場でアレコレ言っちまう性格…」

「バッチリ分かるよ」

「ブフゥ…即答かよ…。隆チッチを抱くって言って仕舞った時はさ、隆チッチの言葉に嬉しくてさ、ノリで遂言っちまっただけなんだよ…。本音じゃ無くノリ何だよなぁ…。だから違うからな?マジで…」

本当かよ〜?と、全員が思った。

唯、凰哦と隆志に正樹や美砂は、本当の事を説明すれば確実傷付くからと、蓮輝を傷付けたく無い思いから、無駄に笑って場を作り変えたのだと分かっていた。

其れなのに其の話を変えた事で、2人の仲がドロドロし始めたかもと、やるせない気持ちに成る。

特に凰哦と隆志は、居た堪れない気持ちが強く成っていた。

後で2人の仲を修復させようと其々が思っていたら

「そんな事分かってたわよ…。唯、此処最近ちゃんと構ってくれないから、不満がさっきので爆発しちゃったの…ゴメンね…努さん…」

と、あっさり許される片平。

「ゆ、許してくれるのか?」

「…えぇ…」

「良かった〜!マジ嬉しい〜!…でもツトツト呼び…」

「其れは止めます。本当は恥ずかしくてしょうが無かったんだから…」

「そ、そんな…」

はい!結局ツトツト呼びは、コレにて終了しました。

今後、片平本人以外は、誰もツトツトと呼ぶ事は無い事でしょう…。

何だかんだと和やかな雰囲気に成って来て、このまま皆んなで仲良くワイワイと話が弾みそうに成った時

“何だ皆んなして…。我1人だけ置いてけぼりなの…悲しい…”

低く渋い声で悲しいと言われても、本当に悲しいのかと思って仕舞う。

「キュー悲しいのね…。悲し、ナイナイして上げるね」

と、キューが“キュー”にナイナイと撫でる様に手を振る。

其れを見た一同は、本当に“キュー”が悲しんでいるのだと分かり

「“キュー”様済いません、決して1人にしたつもりでは無いんですよ。仲間外れにしては無いので、悲しまないでくれませんか?お願いですから…」

凰哦が、姿の見えない“キュー”に其う伝える。

「ゴメンなさい“キュー”様。コレだけ個性豊かな人達だから、1人着いて行けなかったみたいですね。でも安心して下さい、誰1人として“キュー”様を忘れていませんから。そんなプカプカ浮いてないで、この椅子に座って下さい」

其う言いながら、蓮輝のベッドの横に、椅子を置く隆志。

突然ベクトルの違う事をブッ込む隆志の言葉に

「「「!!!……エエエエッ!!!」」」

と、激ビックリする一同。

だが、其れだけでは無く

「後其の話し方、控えて頂けたら嬉しいのですが…」

“えっ?ダメ?何で?”

「多分其れ、かなり力を使ってません?皆んなの心に直接語り掛ける念話とでも言うのですかね?其の為、せっかく素敵な声をお待ちなのに、低く渋い声に成り、其の声で話されると、恐れ慄いて畏まって仕舞いますよ…。普通にキューちゃんみたいに話してくれたら、大変助かるのですけれど…」

そんな感じで大いなる力を持った“キュー”に対し、平気な顔で、まるで当たり前の様に普通に話すのだ。

其の図太さに目が点に成って何も言え無い一同。

驚き過ぎて、キューと“キュー”に隆志以外は、時が止まったかの様にピクリともせず、動け無くなる。

“え〜…ダメなの〜?コッチの方が、カッコイイと思うのに…”

「怖がられるよりも良いでしょ?」

“……………”

「まぁ“キュー”様のお好きにされたら良いですけど…」

後は本人次第だと、隆志は話を切り上げた。

「分かったよ〜其れじゃ声だけ。流石に姿は見せ無い方が良いだろうから、其うするよ〜」

「「「!!!!」」」

ベッドの横に在る椅子から、今度は少し可愛い声が聞こえて来た。

先程迄の声とは違う可愛い声と、椅子以外見え無いのに、其処から声が聞こえて来るからパニックが乱反射して仕舞い、青褪めて行く一同。

「だから言ったのに…想いの声の方がカッコイイし、変に怖がられてしまわ無いし…。我不満…ご立腹!」

隆志に言われた通りにしたのに、今迄で1番怖がられたと腹を立てたみたいだ。

「た、隆志…。お前だけ何だな?“キュー”様が見えるのは…」

「うん其うだよ」

「今ご立腹って…其れヤバいじゃ無いか!俺達“キュー”様にキチンと御礼とか、色々と聞きたい事有るんだぞ?其れなのに怒ってるって…」

「あっ大丈夫。僕が責任を持って対応するから、だから任せといてくれない?」

「本当に大丈夫なのか!?」

「だ〜い丈夫大丈夫!フフッ、“キュー”様が見え無い皆んなは如何して良いか分から無いと思うけどね、見える僕だったなら、ちゃんと宥められるから」

「本当にか?…其れなら任せても良いか?皆んなも隆志に任せて大丈夫だと思えるかな…?」

凰哦の質問に、全員フルスイングでコクコクと頷く。

「では如何ぞ〜」

全員で全てを丸投げする。

「改めまして“キュー”様、僕は隆志と言います」

「………プンッ!」

「アハッ…ありゃ嫌われちゃったかな…。でも貴方程の存在なら、僕の力の強さや穢れが無い事ぐらい分かってますよね?其れに、此処に居る皆んなも穢れが無い事も。ですから如何か嫌わ無いで下さい、お願いしますから」

「…………」

「貴方の低く渋い声、実は此処に居る子供の1人にとっては、とても心に負担が掛かるみたいなんですよ。其れ、分かってました?」

「えっ?嘘…其れ本当?もし嘘だったら怒るよ!?其の子はどれ?確かめるから…」

「この子です」

其う言って1番年少の子を“キュー”の前に連れて行く。

“キュー”は其の子を見て

「ええぇっ!?如何したの?」

と、驚きを隠せ無い。

何故なら、其の子が青褪めてフラ付いていたからだ。

「貴方の念話がこの子にとって、とても強力だったみたい何です。未だ幼いから、耐えきれ無いんですよね…。少し上の子達も、あのまま念話で話されていたら、同じ症状に成ってたと思いますよ…」

優しく諭す様に、“キュー”に説明する隆志。

「……ゴメンなさいだよ……。沢山の人と話すの…()()()振りだから、我達とは違う事忘れてた…」

「「「!!!!!!!」」」

“キュー”がポロっと簡単に口にした年数に、驚く大人達。

子供達は余りピンと来ていないが、大人達にすれば、どれだけ長生きなのだと思うのと、流石神様は、人とは掛け離れた存在なのだと畏怖する。

そして凰哦と蓮輝は、キューを見ながら同じ事を思うのだ。

“キューは一体、何歳なのだ!?”と…。

「ねぇ神様の方のキュー、アンタの其の話って本当なの?」

怖いモノ知らずの蓮輝。

タメ口だけじゃ無く、見え無い相手に疑いの目を向けるのだ。

「あれ?信じ無いの?…せっかく願いを叶えて上げたのに…」

「願い?僕、何かお願いしたの?まぁ〜別に其れは良いけどさ、僕の質問に答えなさいな!後、何しに此処に来たのさ?…あっもしかして、僕のお見舞」

パチコーーン!

「ホグゥ…」

「お前は黙れ!何カッパの神様にタメ口所か、失礼な事言ってるんだ!アホか!怖いわ!お前が怖いわ!」

これ以上神様の“キュー”に対して、無礼な言動をさせてはいけないと、蓮輝の頭を平手打ちする凰哦。

「済いません…。気を悪くしたのなら、私が代わりに謝りますから…」

見え無い“キュー”に向かって、頭を下げる凰哦。

蓮輝以外の大人達も一緒に頭を下げる。

「ゲヘッゲヘッゲヘ…良いよ気にして無いから。皆んながワイワイしてたからスッカリ忘れてたけど、伝えないといけない事が有ったよね〜。え〜っと何だっけ?」

伝える内容を忘れている“キュー”に、抜けてる神様だと、其々が思ったのだ。

「あっ其うそう、思い出した!キューの願いを叶える為に、()()()()の病気を消して上げたかったんだがね、其れをするには如何しても、この何様偉様の記憶と性格を他の者達に移す必要が有ったんだ〜。そして願いを叶えた後、其々に移した記憶と性格を元に戻したんだけど、暫くは、其の残骸が残るかも知れないからね〜。其れを言いたかったのよね〜ゲヘッ♪」

しっかり蓮輝の態度に怒ってる事を織り交ぜて、今迄感じていた違和感の正体が、何だったのかを聞かされる凰哦達。

“キュー”に聞かされた内容で、其々から感じていた蓮輝は、“キュー”によって付加されたモノだったのだと理解した。

「伝える事伝えたし〜其れじゃ帰るよ〜。じゃあねぇ〜…」

「ストーーップ!ちょっと待って!待って下さい!未だ帰らないで下さい“キュー”様!!」

するべき事は済ませたと、帰ろうとする“キュー”を慌てて呼び止める凰哦。

「うっビックリ!何何々!?我帰りたいのに…」

「あっ済みません、申し訳無いです…。私達、“キュー”様に聞きたい事が色々有りまして、話を聞いて頂けませんでしょうか?…」

「えぇ〜…。疲れたから帰って寝たいのに…」

「タダとは言いません、ちゃんと御礼はしますから」

「御礼?どんな?」

「其れは“キュー”様の要望によりますが、取り敢えずは、キューが大好物の食事を用意しますので、其れを食べながら話を聞いてくれませんか?其の後に、“キュー”様の要望を聞かせて下さい」

「!!食事!?キューが何時も美味しそうに食べてるヤツ?」

「はい」

「其れで構わないよね!話きくよね!」

「ありがとうございます」

何とか引き留める事が出来、一安心する凰哦達。

さぁて、この神様を満足させられるメニューを考えなければと、片平と相談する凰哦でした。

蓮輝を1人残し、孤児院へ向かう凰哦達。

唯1人、ポツンと残された蓮輝は

「全く意味が分から無いよ…。まぁ〜良いや、寝よう寝よう…。お休み……」

と呟きながら、お昼寝に突入するのでした。

余り“キュー”様が絡んで来てませんね…。

でも次話では絡んで来ると思います。

多分其の筈…。

では次話をお待ち下さい。

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