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キューと僕の思い出日記  作者: 喜遊元 我可那
新たな出会いと別れの準備
44/61

誰が誰で、僕は僕。2

サブタイトルを引き継ぎです。

では本編を如何ぞ…。

昏睡状態から目を覚ました蓮輝。

目を覚まさせ、其れを齎したのはキュー。

だがしかし、昏睡状態から目覚めた蓮輝は、凰哦達の記憶が一切無く、自分の事も記憶から消えていたのだった。

消えていたのは記憶だけでは無く、記憶障害を引き起こしていた脳腫瘍も消えていて、主治医に“有り得ない”とさへ言われたのだ。

其れを聞いた凰哦は、脳腫瘍だけでは無く、他の全ての癌も消えたのかと聞くと、消えたのは脳腫瘍だけで、余命も変わらずなのだと告げられる。

脳腫瘍が消えたのなら、他の癌も消えてくれたならと思わずにはいられない凰哦達。

だが消えた脳腫瘍は、キューが“キュー”にお願いしたからだったのだ。

其れを聞いた時、誰もがキューの存在に出会えた事を感謝した。

其の上無くなった記憶も、キューにお願いされた“キュー”によって、元の蓮輝に戻る事が出来た。

何処迄も幾つモノ奇跡を齎してくれるキューに、凰哦達は如何恩を返せば良いのかと悩んで仕舞う。

返したくても返せない程、キューは様々な奇跡を無償で与えてくれているからだ。

冬眠から目を覚ましたばかりのキューが愛おしい凰哦達。

其の愛おしいキューが、“キュー”に願いを叶えて貰う為には、キューが持っている、何かしらの対価を支払らわなければいけない。

其の対価とは何なのか尋ねてみても、キューにはさっぱり分からない…と言うか、気にしていないみたいなのだ。

だが凰哦達からしてみれば、何を犠牲にしたのか知る必要が有る。

既に支払われて仕舞っている対価だが、可能なら自分達が代わりに支払えたなら、支払われた対価をキューに返して上げたいと、誰もが思ったのだった。

普通に考えても、脳腫瘍を消し去る様な凄い力を使うのだから、其れ相応の対価が必要だと思えるからだ。

キューを介して“キュー”との会話が出来無いかとも思ったのだが、目覚めたばかりの上、蓮輝の為に対価を支払ったキューに、これ以上今は無理をさせられない。

如何したモノかと思っていたら、“キュー”から明日の正午に成った時、蓮輝に関わる全ての者に伝えたい事が有るのだと、キューから聞かされたのだ。

伝えたい事とは何なのかは分からないが、其の時に今考えている事を聞こうと思う凰哦達。

早く明日の正午が来ないかと、待ち侘びてこの日を過ごすのだ。

「ねぇ凰哦さん」

「如何した?蓮輝」

「あっ…いや…」

「おい、本当如何したんだ?何口籠ってるんだ?…あっまさか、お前記憶がまた…」

「有る有る有る!記憶は有るから!其れは多分大丈夫だからさ!」

「…本当かぁ?」

「有るって!此処に閉じ込められて、不貞腐れて寝てから、さっきキューがダイブして来て驚いた迄の事、全て覚えてるから!」

「ん?ちょっとだけ記憶…抜けて無いか?」

「えっ?何処が?」

「ICUで五月蝿い眠れないだろと言ったのは、未だ良いとしてもだ、俺達が此処に入って来た時の事は、覚えてるの…か?…」

「…皆んながこの部屋に来た時?……其う言えば…あれれ?何時入って来てたの?あれ?…分かんないや…」

「其れじゃお前が俺達に驚いて、看護師と警察呼ぶぞって言ったのは…覚えて無いのか?」

「へっ?何で?僕がそんな事言ったっての?またまたぁ〜、僕を揶揄ってるの?僕が皆んなにそんな事言う訳無いじゃ〜ん!止してよ〜笑えない冗談はさぁ〜」

少し不思議な事を言って、揶揄ってると思った蓮輝。

蓮輝の其の表情から、本当に覚えていないのだと理解した凰哦達は、キューに触れてから、蓮輝の記憶が戻ったのだとも理解する。

まさにキューが“キュー”の奇跡を与えてくれたのだと、再度深く感謝するのだった。

「済まん済まん…本当に記憶が戻ってるのか気に成って、つい試して仕舞ったんだ。其れ程心配してたんだよ…本当悪かったな、だから許してくれないか?」

「別に気にして無いから良いよ。でもやっと皆んなと会えて嬉しいのだけれどね、僕…何だか未だ体が(だる)くてさ…もう少し寝てたいんだよね…」

「あっ其れは済まない。俺達はそろそろ帰るからさ、今日はゆっくり休んでいろよ?明日また全員で来るからさ…」

「うん分かった…ありがとう…。でもゴメンね〜、折角お見舞いに来てくれたのに…」

「其れこそ気にするなよ、俺達はお前とこうして話せて嬉しかったんだから…。其れじゃ本当に行くな?ゆっくり休めよ…」

「うん…来てくれてありがとうね…。また明日…」

「あぁまた明日な…」

「うん…皆んなもありがとうね…。来てくれて…スースースー…」

言い終える前に、静かに眠って仕舞う蓮輝。

「おや…余程疲れていたみたいだね…」

「其うみたいね貴方…」

そっと優しく蓮輝の顔と頭を撫でる正樹と美砂。

「其れじゃね、蓮ちゃん…」

「また明日来るからね、蓮ちゃん…」

其う言い残し、先に部屋を後にする。

「俺達もまた明日来るわ、其れ迄しっかり休んでくれよ?河橋君…」

「私達も、もう行くわね…。さぁ皆んな、蓮輝君に挨拶して行きましょうか?」

「「うん、蓮輝お兄ちゃんまた明日ね〜。バイバ〜イ」」

ツトツトと仲上が、子供達を引率して部屋を出て行く。

「蓮輝君、明日また必ず来るから。其れ迄大人しくしててくれよ?また脱走とかしたら、君にも僕流のお仕置きするからね!…でも本当に良かった…。君が君のままで居てくれて…。凰哦、もう少しの間、蓮輝君の側に居て上げてね。僕はロビーで待ってるからさ」

「そんな気を遣わなくても良いのに…。でもありがとなぁ〜隆志、其うさせて貰うよ…」

「うん分かった、其れじゃ待ってるから。ゆっくりしてくれて良いからね」

「あぁありがとう…」

隆志は凰哦を1人残し、ロビーで待つと言いながら、部屋のドア付近で凰哦を待つのだ。

凰哦の思いを汲み取って、蓮輝と2人っきりに成りたいと思ってるのだろうと、そして眠って聞こえ無い蓮輝に1人話し掛けて、心に溜まった思いを吐き出したいのだと分かっていた。

正樹達も同じ事を考えていて、本当は未だ蓮輝の側に居たいと思いながらも、部屋を後にしたのだった。

唯隆志は、きっと凰哦は吐き出すだけ吐き出した後、聞こえないのを良い事に、勝手な行動を取った自分が許せ無いと罪の意識を持つ事も分かっていたから、罪の意識に囚われない様タイミングを見計い、何か適当な理由を付けて部屋に入るつもりでいたのだ。

隆志が其う思っている事など知らない凰哦は、隆志達の予想通りに、眠る蓮輝に小さな声で語り掛ける。

「蓮輝…良く目覚めてくれたよ…ありがとう…。記憶も戻ったみたいでとても安心したよ…。本当…何時も何時も心配掛けやがって…。俺がどれだけ心配してるか分かってるのか?なぁ蓮輝…。だけど其れは良い。其れは良いんだ…。唯お前が無茶してさ、お前が願った最後のお願い…叶えられ無く成ったら如何するんだ?お前は其れで良いのか?キューを…キューを自然豊かな場所に帰すんだろ?其の為にも無茶して病気が悪化したら、何の意味も無いじゃないか…。お前との約束、俺達がサポートするからさ、必ず…必…うぅ…あぁぁ……叶えてやるか…嗚呼…嗚呼ぁぁ……」

其れ以上言葉が出て来なく、必死に声を殺して泣く凰哦…。

これ以上此処で泣いていたら、眠る蓮輝が目を覚ますといけないからと

(明日また来るからな…だからお願いだ…蓮輝…。無理をしないでくれよ…俺の為に…皆んなの為に…キューの為にもな…)

其う強く思い

(其れじゃ行くから…お休み蓮輝…)

と、そっと顔を撫でて部屋を出る…。

止めど無く溢れて来る涙を拭きながら部屋を出たら、其処に隆志が居て

「た…隆志…お、お前何でこんな所に…。皆んなの所で…ロビーで待ってるんじゃ無かったのか?…」

「ゴメン…此処で凰哦を待ってた…。凰哦が何をしたいのか何と無く分かっていたから、多分其れをした事で、凰哦は自分のした事が許せなくて、また辛い思いをして仕舞うんじゃないかと思って…。其の辛さを持ったまま、皆んなと会うのは更に辛いだろうなと其う思ったら、無力な僕でも支えにならなけりゃって…」

本当にコイツは何処迄優しいんだ?如何して此処迄人を気遣えるんだ?と、思わずにはいられないのだ。

声を殺して泣いていた凰哦は、隆志の慈愛の心に触れ

「うぅぅ……た…隆志…。お前ってヤツは…何でそんなに優しいんだよ…。なぁ教えてくれよ…如何したらさ、そんなに優しく成れるんだ?……俺も…俺もお前の様に…成りたいよ……。なぁ…俺はお前の様に成れるかな…ううぅぅ……あぁぁぁ……」

止められない涙を流し、崩れそうに成る凰哦を支える様に受け止める隆志…。

「僕は優しく何か無いよ…。他の誰かに何て、同じ事など出来無いよ…。そんな僕が言うのは如何かとは思うけれどさ、凰哦は優しく出来ると思うよ…。既に僕は、凰哦の優しさに助けられてるんだから…。僕だけじゃ無く、皆んな其う思ってる筈だよ?」

「うっ…うっ……隆志…本当に其う思うのか?…俺はお前や皆んなを助けられているの…か?…」

「うん本当だよ…。僕だけじゃ無く、皆んなが助けられてるんだよ?其れは自信を持って言えるよ」

自信を持って言えると断言され、今はどの誰よりも信用している隆志の言葉に、素直に其う何だと思えた凰哦。

「心が辛い時は、何時でも僕に辛いんだと言ってよ?苦しい時も、悲しい時もね…。この先ずっと、僕が言った“凰哦の心は守る”って約束、絶対ちゃんとまもるからね。だから遠慮無く、僕に弱音を吐き出してよね?良い?」

かなり年下の隆志が自分よりも年上に感じる凰哦。

正樹や美砂も心苦しい時、凰哦に寄り添ってくれるが、隆志の寄り添いは、他の誰よりも心を癒してくれる。

多分其れは、幼い頃から穢れなどの辛さを癒して来たからだろう。

隆志は無意識に、其の者の1番欲しい言葉を心から思って言ってくれるのだ。

だから無防備に、心の扉を(ひら)ける事が出来る凰哦だった。

「……ありがとう隆志…。おかげで何も無かったかの様に、皆んなの所に行け其うだよ…。本当…何時もありがとな…」

「気にしないで、僕がしたいと思っただけだからさ…」

「…あぁ、其うするよ…」

正樹達と合流する前に、トイレの手洗い場で顔を洗い

「……ヨシッ大丈夫!…ふうっ!…」

大きく息を吐き気合を入れてから、正樹達の元へと向かった…。

ロビーに行くと

「おっ?凰君来たのかい?」

「お待たせしました正樹父さん」

「私達は全然待ってませんよ、子供達を先に帰す為のタクシーを呼んだりしてたから、結構慌ただしくしてましたからね。だから気にしないでね、凰さん」

「美砂母さんも色々気遣ってくれて、本当にありがとうございます。助かりました、では私達も孤児院に向かいましょうか?」

「あいあい、其うしよう」

「えぇ其うしましょう」

「其れじゃ僕がタクシー呼んで来るけど、1台で良い?其れとも2台にする?」

「其うだなぁ〜大人4人が乗るにはちょっと狭いよな…1台だと…。悪いが隆志、正樹父さんと美砂母さんと一緒に帰ってくれないか?」

「えっ?凰哦は1人でタクシーに乗るの?」

「いや、ちょっと遠いけど、歩いて帰るよ」

「エエッ!?ちょっとじゃ無いよ!?結構距離有るのに、歩いて帰るっての!?」

「あぁ其のつもりだ…」

「其れじゃ僕も一緒に歩くよ」

「私も今日は歩こうかな…」

「私も一緒に歩きますよ凰さん。偶には歩いて帰るのも良いものでしょうからね」

「3人共お気遣いありがとうございます。でも出来れば俺1人で帰らせて下さい。如何考えても、父さんと母さんにはキツい距離ですし、隆志と一緒なら安心しますし、其れに…1人でゆっくり考えながら帰りたいと思いまして…」

「凰哦…」

「…其うかい?あいあい分かったよ」

「凰さんが其れで良いなら思った様にして頂戴…。でも無理しちゃダメよ?平然としてるけれど、貴方も此処最近本調子じゃ無いみたいだから、体に辛さを感じたなら、直ぐ帰って来るのよ?良い?」

「分かりました美砂母さん、では先に行きますね。其れじゃ後で…」

其う言って1人、歩いて病院を出て行く凰哦の後姿は、何処か物悲しそうだった。

1人物思いにふけながら、蓮輝と過ごした思い出の場所を巡る。

幼い蓮輝を連れて良く遊びに行った公園。

姉夫婦が事故死して引き取ると決めてから、懸命に父親母親代わりを務めなくてはと奮闘し、悪さをした蓮輝を叱る為に“調教”と言って行う体罰には、将来蓮輝の為に成る事を一緒にした、懐かしい街並みや道のりは、今も余り変わっていない。

凰哦の作る食事が不味いと言う蓮輝の為に、少しでも美味しく作れたならと、料理本を読みに通った図書館。

自分も不味いと思っていたから頑張っていたのだが、読んだ料理本は間違いだらけのお遊び料理本だった為、全く上達する事が出来無かった…。

蓮輝に料理を指導して貰った時に、あの料理本はデタラメだったのだと初めて知り、訴えてやるつもりで其の本を借りに、何十年か振りに図書館へと行き、必死で其の本を探し出しタイトルを見たら、“子供が考えた手料理Book 〜不味いけれど美味しい我が子の手料理〜”と書かれていた。

愕然とする凰哦…。

あの頃の自分には余裕が無く、“子供が考えた”と“不味いけれど”の部分を見落として勘違いしていたのだと、哀愁を漂わせながら図書館を去った記憶が蘇る。

(……フフ…苦い思い出も、何時かは懐かしい良き思い出に成るだろうな…。何時の日か、あの味を思い出したいと思えたなら、此処にまた借りに来ようか…)

図書館に向け、眼で軽く“其の時は宜しく”とお辞儀をし、人が賑わう商店街の人混みに溶け込んで行く…。

病院を出たのは昼前。

既に夕方5時。

この時間に成っても未だ帰らない凰哦。

「凰さん、未だ帰って来ないわね…」

「本当如何したんだろうね…ちょっと心配だよ…」

正樹と美砂が、心配して焦る様に時計を見る。

「何かが有ったなら、俺の元部下から此処に連絡が来る筈だから、そんなに心配しなくて良いっスよお2人さん」

「其うですよ青柳さん。彼が帰って来た時に、そんな心配した顔をしてたら、悪い事したってまた落ち込んじゃいますよ…」

ツトツトと仲上が、2人に気を遣って安心させる。

「其ういや隆チッチは何処だ?」

「あらっ?本当だわ…。トイレかしら?」

「おや…隆志君迄何処かに行ったのかな…?」

「何時の間にか居なく成る何て、まるで蓮ちゃんが隠れる時みたいだわ…。蓮ちゃん、誰にも気付かれ無い様にするの得意でしたものねぇ…」

「ウッ…其れが本当なら…俺ちゃまメチャクチャ怖いんだけど…」

「えっ?何でよツトツトん?」

「あっいや…何て言うか…()()()の恐怖が蘇るって言うか、聞いた話し、河橋君のお仕置きの時、誰も見付けられ無かったんだよな…」

「「確かに!!」」

正樹と美砂が、あの時の恐怖を思い出し、意味も無く震えて仕舞う。

「またお仕置き…しようとしてるんじゃ無いのか?」

「エエッ!?だ、誰によ!?」

「そりゃこのミッミ、凰凰にだよ…」

「ハァ?其れこそ何でよ!?」

「連絡も無しに此処迄遅いからな…。他人に心配させるんじゃ無いってな…」

「「「…あぁ〜…成る程…」」」

変に納得する正樹達。

そんな事を言われてるとは思って無い隆志は

「ックシュン!…あぁ〜風邪…引いたかなぁ…」

と呟き、1人此処から近い神社へと向かっていた。

少し長い階段を登り、最上段辺りに着いた時

「隆志?お前如何してこんな所に来たんだ?…」

息を切らしながら、ふと其の声のする方を見ると、其処には凰哦が神社の石畳に座っていたのだ。

「ハァ?…ハァハァ…。其方こそ…ハァハァ…こんな所に…ハァハァ居るのさ…ハァハァ…」

「あっいや…」

息を整えた隆志が

「皆んな凰哦が遅くて心配してたんだよ!?幾ら1人に成りたいからって言っても、連絡くらいしないとダメだろ!?」

「……だよな、済まない…」

「…で、如何?1人に成って、色々と心の整理は出来たの?」

「あぁ…まぁそこそこにはな…。でも何で、お前が此処に来たんだ?もしかして、俺を探しに?そんな訳」

「探しにだよ」

「!!…マジか?…」

「マジ」

「だとしたら、何故此処だと思ったんだ!?」

「う〜〜ん…唯何と無く?」

「唯何と無く!?」

「まぁ消去法で色々と蓮輝君との思い出を巡り歩いて、記憶が戻ったかを自分成りに整理したかったと思ってさ、以前倒れる前に、孤児院の近くで蓮輝君の見た風景って、確か此処だと聞いてたからさ、もしかしたら凰哦も其の風景を街灯りが灯る迄、此処で見てるんじゃ無いかな?って思ったんだ〜」

ピタリと言い当てる隆志。

「お、お前…。隆志、如何して俺が其う思ったと分かったんだよ…」

「だって観察してたらさ、凰哦って分かり易いんだもの」

「!!」

以前蓮輝に言われた事を言う隆志に驚く凰哦。

親しく成った者には分かり易いと、其う注意された言葉を思い出し、隆志と此処迄親しく成れたのだと思えて嬉しく成るのと、やはり自分は分かり易いのかと落胆するのだ。

其れと同時に、隆志の中には蓮輝が居るのだと思ったのだ。

隆志から蓮輝を感じるとは、とても不思議な感覚だ。

「僕も其う思うよ」

「!!」

「多分今呟いてたの、気付いて無いでしょ?」

「エッ!?お、俺…また呟いてたのか?」

「うん、呟いてた…」

「ハァッ!?そ、其れってまるで、蓮輝の呟癖みたいじゃないかよ!?」

「だよね…。未だ他にも呟いてたけど、其れに対しては、何時か必ず答えるから、其れ迄待っててくれる?」

「ん!?ちょっと待て、他にも何か呟いてたのか?」

「取り敢えず其うとだけ答えておくよ」

「ななな、何言ったのか教えてくれよ!俺何言ったんだ!?」

「取り敢えず秘密。僕自身、心の整理が必要な事だったから、今は内緒にしておくよ」

「ハァッ?」

「其れより早く帰ろ?皆んなが心配して待ってるからさ…」

「おいちょっと、はぐらかすなよ!」

「フフッまぁまぁ…。早く帰るよ?良い?」

「ウッ…ったく、お前も頑固だからな…分かったよ、其れじゃ帰ろうか…」

納得いかない顔をしながら、孤児院に帰る2人。

孤児院に着く成り、正樹達に心配掛けた事を謝り、この日は終わるのだった。

(メッチャ気に成る〜!俺は一体何て呟いたんだ〜!!)

其れが気に成って仕舞い、全く眠れない凰哦でした。

蓮輝の元へ行く為に、孤児院に泊まった凰哦と隆志。

「おはよう凰…」

凰哦の姿を見て、言葉に詰まる正樹。

「おばよゔございます…」

一睡もして無い凰哦の目の下のクマと、たった一晩でやつれている姿に

「如何したんだい凰君…。もしかして寝て無いのかい?其れにしても、此処迄ゲッソリしちゃって…一体何が有ったんだい?…」

「お気を遣わせて済いません…。色々考え事してまして…。其の上キューのベッドが無かったモノで、一緒に寝てましたら…アイツ…寝相が悪くてボコボコにされて仕舞いました…」

「ありゃ…」

「朝食後軽く仮眠しますので、申し訳無いですが、寝過ごしそうなら起こして貰えませんか?…」

「あいあい。其れじゃ先に食事済ませて、少しでも早く寝なさい」

「ありがとうございます、其うします…」

食堂に有る食べ物を適当に食べ、キューと入れ違いに寝る凰哦。

寝ている間、蓮輝の元へ行く準備を済ませて、凰哦を起こしに行く美砂。

「凰さん、そろそろ蓮ちゃんの所に…って、あら既に起きて準備出来てるのね」

「あっ美砂母さん、わざわざ済いません。では行きましょうか…」

「えぇ其うしましょう。皆んな〜凰さんも準備出来てるから行きましょう〜」

予め、待機させていたタクシーに乗り込み、蓮輝の居る江田総合病院に向かう。

向かう途中、其々が思う。

“キュー”の伝えたい事とは一体何なのだろうと…。

不安いっぱいの凰哦の膝の上で、ルンルンランラン鼻歌を歌うキュー。

其のキューが器用に膝の上で向きを変え、とても嬉しそうに

「凰哦パパ〜、蓮輝お兄ちゃんに早く会いたいねぇ〜。ケヘケヘ〜」

と笑って抱き付いて来る。

其の無邪気な笑顔に、一瞬にして不安は消え去り、凰哦は思う…。

今迄気付か無かった、キューが無意識にする癒しの行為。

心に不安や怒り、悲しみと苦しみを無意識に感じ取り、其の負の感情を何時も“ナイナイ”してくれているのだと…。

其れは凰哦と同じタクシーに乗った者達にも、感じ思えた事だった。

ケヘケヘ笑うキューに心から

(ありがとうキュー…)

と、優しく抱き締める凰哦。

そして江田総合病院に着き、蓮輝の部屋へと向かう。

病室に着き、ゾロゾロと一斉に入って来るから、其れにギョッとして驚く蓮輝。

「エッ何!?1度に全員が来たの?来てくれるのは嬉しいけどさ、今迄放置してたのに、何で今更何だよ!」

もっともな蓮輝の意見。

「このヤロ!お前が要らん事するからだろ!其うじゃ無きゃ俺達も素直に見舞い来てたんだぞ!?」

「アグッ…」

凰哦のもっともな反論に、何も言い返せ無い蓮輝。

「其れとな、今日は如何しても此処に全員来なきゃいけない事が有るんだよ…」

「全員が来なきゃいけない?何其れ?」

「今に分かるさ、そろそろ約束の時間だしな…」

「約束?誰と?」

「キューの“キュー”」

「キューの“キュー”!?」

「あぁ“キュー”だ…」

「其れって…神様の“キュー”?」

「あぁ…」

「へっ?尚更意味が分からない…」

「だろうな…。ん?如何したキュー?バタバタし始めて…」

凰哦の腕に抱かれていたキューが、腕から抜け出そうとしていた。

「僕、蓮輝お兄ちゃんにくっ付いていなきゃなの〜!其う“キュー”に言われたの〜!」

焦る様に言うキュー。

時計を見ると、正午迄後1分。

コレは、言われるままにしなくてはと慌てて蓮輝にキューを渡す。

「何何何!?」

困惑した蓮輝に抱き付いた時、丁度12時に成った。

其の時、全員の心にまた、あの低く渋い声が聞こえて来る…。

“は〜い今日も始まりました、本日の“キュー”のお時間です。皆んな〜ちゃんと聞いてるかなぁ〜?”

思わずズルッと転けて仕舞う一同。

“キュー”からどんな事を聞かされるか不安で堪らなかったのに、こんなにも軽い出だしに思わず

「「「真面目にしろよ!!」」」

と、蓮輝とツトツト以外がツッコンで仕舞う。

ツトツトは腹を抱えて大笑いし、蓮輝は唯呆気に囚われて何も言えない。

“うっ…怒られた…そんなに怒らなくても…”

寂しそうに言う“キュー”…。

“キューから伝わるお前達の不安を和らげ様としたのに…怒られた…傷付く…悲しい…”

何とも威厳の無い感じがするのは何故だろう…。

でもキューと同じ、純粋で優しいモノだとも思えた。

不安を和らげ様と気遣いをする神様に心擽ぐられ、1発で好きに成る凰哦達。

「済まない“キュー”様。まさか神様がそんなお茶らけるとは、夢にも思って無かったから、お告げに構えてた分つい驚いて言って仕舞いましたよ…」

「其うだよね。まさか其の渋い声で、ラジオのDJみたいに言うとは誰も思わないもの」

凰哦が謝り、隆志が皆んなが感じた気持ちを“キュー”に伝える。

“本当に?其れが本当なら嬉しい!ゲヘゲヘゲヘ…。では皆に、大切な事をお知らせしようかな?心の準備は出来てるかなぁ?さぁ如何何だい?”

「「「……………」」」

軽いノリの“キュー”の言い方は、本当にテンションの高いDJの様だった。

奇跡を起こすモノが、こんなにも軽くて大丈夫なのかと心配に成る凰哦達なのでした…。

さて、この偉大?な“キュー”の伝えたい大切な事とは、一体何なのかは、心の整理が付いてから聞く事にしましょうか…。

サブタイトル持ち越しに成りました。

予定では、今話でサブタイトル完了するつもりでした…。

では次話をお待ち下さいませです。

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