目覚めの日…3
今話も前話のタイトルを引き継ぎです。
文字数、今回も多く成りました。
前話までは暗い話しがメインでしたが、今話は笑える所が有る様にした内容です。
では本編を如何ぞ〜。
僕ねぇ、大好きな大好きなお兄ちゃんにね、楽しく笑ってて欲しいのねぇ〜。
だからねぇ〜、其の為のお願いするのにねぇ、沢山の美味しい物食べて、沢山のお寝んねしてるの〜。
僕がねぇ〜、“キュー”にねぇ、お願いしたの!
大好きなお兄ちゃんがねぇ、悲しくなる原因をねぇ、無い無いして〜って、“キュー”にお願いしたらねぇ、分かったって答えてくれたの〜。
ケヘケヘケヘ〜。
後は早く起きなさいって言ってた〜。
ん〜〜でもねぇ…僕未だ眠いの〜〜…。
“キュー”に、お願い叶えて貰う為に、僕の力を持って行かれたからかなぁ〜?
ポカポカを感じるけど…未だ眠いのねぇ〜…。
だからもうちょっと寝んねしてるねぇ〜……。
蓮輝が昏睡状態になってから1週間が経った。
其の最初の日には取り乱した凰哦により、隆志が傷付けられ暴言迄吐かれる一件が有った。
其れにより、傷付けられた隆志よりも傷付けた本人が1番傷付き、罪の意識で潰れてしまいそうにもなっていた。
だが隆志の心に触れ、間違い無く疲弊した心が癒やされ感謝し、更に隆志の癒せていない傷付いた心を知り、凰哦もまた、隆志の心の傷を癒すのだった。
2人に強い信頼が生まれ、心から素で話せる仲になれたのだった。
其の事を正樹達に報告し、凰哦は謝罪と感謝を伝えた。
正樹達は、凰哦の誠心誠意の謝罪を今度は素直に受け取り、自分達こそ凰哦の心の支えになれて無かった事を詫びるのだった。
蓮輝を中心に、凰哦の取り巻く者達の絆が深まって行く。
此処に居る者達は其々が他人で在り、接点も無かった者達の筈なのに気付けば接点が多く、1人1人と接点が結び付き、今では掛け替えのない大切な者達となっていた。
其れを齎したモノは、長い眠りに付いていて、未だ目を覚さない。
目を覚さない其のモノを最初に見付けた者も、深い眠りに落ちてしまい、やはり目を覚さないままだった…。
主治医曰く、バイタルは安定しているが、何故昏睡状態なのかは不明。
其の事を聞いた後で、江田院長は凰哦に直々に謝罪する為に、凰哦の家へとやって来た。
凰哦が心乱れて取り乱した時、江田が蓮輝の状態を分かっていたのに其れを告げずにいた理由は、心肺停止になった患者に気を取られていて、告げるタイミングを逃してしまっていたからだ。
其の事と、冷たい言葉を凰哦に向けて言った事も、この時謝罪された。
正直腹立たしく思えた凰哦だったが、其のおかげでこれ迄以上に其々との信頼と信用が深まり、特に隆志との絆が強く築かれた事が嬉しく思えたので、逆に感謝するのだった。
何故凰哦が隆志との絆を強く築く事に、喜びを持ったのかと言うと、過去にある者達との約束が有ったからなのだ。
其の約束を果たす事が出来るのが、とても嬉しく思えるのだった。
其の約束とは、今は未だ語られる時では無く、今後知る事が出来ると思われる…。
ゆっくりと過ぎて行く時間。
この時点で3日が経っていた。
春はもう其処…。
未だ寒さは残っているが空は蒼さを取り戻し、陽が照らす暖かさは心地良くなって来ていた。
春が訪れれば、全てを結んでくれた存在が目を覚ますだろう…。
何時目を覚ますのか分からない…。
其の為、凰哦は家を空ける事が出来ずにいた。
美砂や正樹に頼めば、快く其の存在の世話をしてくれるだろう…。
だが何故か其れをする事が出来無い。
目を覚ます時、自分が1番先に“おはよう”を言わなければいけない気がしたからだ。
“おはよう”の一言を言わなければ、蓮輝の眠りも覚めない様な気がしていた。
とても気になる蓮輝の状態なのだが、確信に近い其の思いを胸に、はち切れそうに成る心をグッと堪えて、蓮輝の事を正樹と美砂達に任せ、未だ目を覚さない大切な其の存在が、早く目を覚まして欲しいと願いながら、今日もベッドで眠る存在を見守っているのだった。
「キュー…もう直ぐ春だぞ…。パパ、お前が起きるの待っているからな…」
優しく語りかける凰哦だった。
子供達の新たな学校の手続きも終わり、今年から新一年生として小中学に入る子達の入学準備も一通り終え、使い回ししていてボロボロのカバンも全て新調された事で、大はしゃぎで喜ぶ子供達。
其れを親の気持ちで嬉しく思う凰哦。
子供達も凰哦を叔父さんでは無く、本当の親の様に思ってくれていた。
正樹と美砂は、完全にお爺ちゃんお婆ちゃんになったと、2人共とても幸せな気持ちになれていた。
ツトツトと仲上は、寮父寮母として慕われる事が、こんなにも喜びに溢れるモノだとは思っても無く、子供達の世話をする事の喜びと大切さを噛み締めていた。
隆志は優しいお兄さんとして、子供達が甘えて来るのが嬉しかった。
一人っ子だった隆志は、沢山の弟妹達が出来たと素直に喜ぶのだった。
其の隆志は今、就いていた仕事を辞め、1人暮らししていたアパートを引き払い、初めはツトツトと仲上と一緒に孤児院で暮らすつもりでいた。
だが凰哦の強い要望で孤児院で暮らす事は無く、今は凰哦の家に一緒に暮らす事になった。
何故なら、ツトツトと仲上カップルのバカさ加減の洗礼を毎日受け続けなければならないからだ…。
「ツトツト〜ん♡」
「このミッミ〜ん♡」
ブチュ〜〜ン…♡
このバカップル!
何が“ツトツト〜ん♡”で“このミッミ〜ん♡”何だ!
しかも毎回其う呼び合ってキスするモノだから、本気で解雇してやろうか!と思って仕舞う凰哦。
このまま行くと、子供達の前で事を始めないかと心配になるのだった…。
蓮輝の教え?に従い、常にビリビリさんを縫い付けたリストバンド、別名「緊箍児ちゃん」を装着する事を義務付け、遠隔でスイッチON!出来る様になっている。
スイッチはこの2人以外の者全てに渡されていて、何時でもお仕置きが可能な逸品なのである。
今の所、仲上は理性を持って、昂るイチャイチャを制御しているのだが、何せツトツトは、このビリビリにある種の快感を得てしまった様で、お代わりを要求していた。
「アビビビン〜アハハハハッアイアイアイアイ〜〜♡アハハハハッゲホゲホゲホ…ワンモァ〜♡」
ツトツトよ!このバカヤロウ!
何がワンモァ〜何だ!
其れが、凰哦達の素直な感想。
そんな場所に、純粋で清浄で有る大切な隆志を置いておく訳にはいかない。
出来れば子供達もなのだが、何故か憎めないツトツトのキャラが子供達の遊び道具となり、悪影響を及ぼす迄は現状維持となった。
なので、隆志のみが凰哦と一緒に暮らす事になったのだ。
そんなやり取りをしながらの4日間。
「おはよう凰哦」
「おっ?起きたのか?おはよう隆志」
「如何?キュー君は未だ起きそうに無い?」
「如何だろうなぁ…所々でケヘケヘウマウマ言ってるからなぁ〜。お腹を空かせて起きて来そうにも思えるんだが…」
「アハハ、食いしん坊のキュー君らしいや」
「だよな〜!アハハッ!」
グゥゥ〜ッ…
「何だ隆志?デカいお腹の音が聞こえたぞ?」
「ウッ…」
「アッハハハハハッお前も食いしん坊さんだな〜!」
「!!ちょっ!今のはしょうがないだろ!寝起きで未だ何も食べてないのに!」
「アッハハハハハッ!其れでもかなりデカいおギュ〜〜」
最後迄言わさず、揶揄う凰哦の両ほっぺを強く挟み引っ張る隆志。
其の顔は、笑いながらも怒りに満ちていた。
「い…痛い…」
涙目で呟く凰哦に
「僕のお仕置きはこのやり方だから!今後もお仕置きする度に、抓る強さ増すからね!」
「……はい……。何だか蓮輝以上にキツい気がするぞ…」
「あっ其うそう、このお仕置きは凰哦だけにしかしないからね、其のつもりで〜」
「ハァ!?何でだ!?何故俺だけなんだよ!」
「えっ?マジで聞いてる?」
「そりゃ当たり前だろ!」
「だってさ、僕が他の人に同じ事出来ると思う?蓮輝君は先ず無理でしょ?親友の仲壊したく無いしさ、青柳夫妻や仲上さんにツトツト…は出来そうかな…。まぁ僕が同じ事したくても出来る人達では無いでしょ?違う?」
「おまっ…このっ!……でもまぁ確かになぁ…。ツトツトは有りかも知れんが…其れをしたら仲上さんが如何反応するか怖いものな…」
「でしょ?だから凰哦だけ。喜んでよ、こんな事出来るのただ1人何だから。まぁ子供の頃は、よく死んだ父さんにされてた事を凰哦にしてるだけ何だけれどね〜♪」
笑って言う隆志の言葉に赤面し、嬉しく思えた凰哦だった。
「隆志が親しくなった者達の中で俺だけかよ…。其れは其れで小っ恥ずかしいなぁ…。でも蓮輝との親友の仲を壊したく無いってのは、何だか納得いかないな…クソッ段々ムカ付いて来た!仕返しだこのヤロ!」
「ウギュッ!」
隆志のほっぺを抓り返す凰哦。
「ブハハハハハッ!」
涙目になりながら嬉しそうに笑う凰哦。
「ムギューゥ!……プッ…フフフッアハハハハハッ…ハァ〜朝から笑った…」
「其うだな、笑え合えるのって良いよな…」
「だね…。あ〜笑ったら尚更お腹空いちゃったよ…」
「其れなら朝食にしよう。既に出来てるから、顔洗って来いよ。其の間に温め直しておくから」
「本当?やった!凰哦の作ったご飯美味しくて好きなんだよね〜。其れじゃ直ぐ顔を洗って来るよ」
「あぁ」
隆志とのやり取り。
蓮輝とは違う心穏やかさが其処に有り、挫けそうな心を満たされる凰哦は、隆志に感謝するのだった。
「キュー…其れじゃちょっと此処を離れるな…。ご飯食べ終えたらまた来るから、其れ迄もう少しゆっくり寝ててくれよ…」
ベッドに寝ているキューに、優しく微笑んで部屋を後にする。
隆志と2人で食べる朝食。
「やっぱり凰哦の作る料理、本当美味しくて止まらないよ」
「其うか?其れは良かったよ。未だ沢山作って有るから、お代わりしても良いんだぞ?」
「やった!…でもバクバク食べると、食いしん坊って言われそうだし、太りそうだから…悩むよ…」
「ハハハッ食いしん坊を未だ気にしてるのか?隆志はもう少し太っても大丈夫だろう。遠慮無く食べろ!俺も付き合って食べるからさ」
「……そうだね、其れじゃ遠慮無く!……あっ其う言えばさ、この緊箍児ちゃんのスイッチってさ、離れていても入るのかな?」
テーブルに無造作に置かれた緊箍児ちゃんのスイッチを見ながら、隆志が凰哦に聞く。
「其れは無いだろ。此処から孤児院迄、少なくとも何kmも離れてるんだから、電波は届く訳無いって」
「だよね〜、其れじゃ遊びでスイッチON!」
不審不審不審者♪ 不審不審不審者♪ 不審不審不審者♪
凰哦の携帯の着信音が鳴る。
「何其の不審不審不審者♪って着信音…」
「あっコレか?着メロで誰から電話来たか直ぐ分かる為に、部下に作って貰ったんだ。ちなみにこの着メロ、ツトツトの着メロ…」
「エッ!?……マジ?」
「あぁマジ…って、このタイミング…まさか…嘘だろ…?」
「ハハ…まさか…」
「ちょっと出るの怖いな…」
「だよね…でも出ないと…」
恐る恐るスピーカーで出てみると
「ちょっと凰凰!今ビリビリって来たんだが!お前さんスイッチ押さなかったか!?」
マジかぁー!この距離届くのかよ〜!?
「ツトツト朝からビックリ何だが!?泣きそう何だが!?このミッミ〜もお怒りプンプンなのだぞ!?」
「あっ…いや…」
「まさか本当にスイッチONしたのか!?」
「ごめんなさ〜い!スイッチ押したの僕です!」
「何だ!?隆チッチが押したのか!?」
「ごめんなさい!まさかこの距離でスイッチ入るとは思っても無くって!」
「ん?この距離?ありゃ?まさか家の近くに来ているの分かってたんじゃ無かったのか?」
「エッ!?家の近く?」
「あぁ、今凰凰の家の前♪」
「「家の前!?」」
「エヘッ♡遊びに来ちゃった♡」
「「…………」」
「ってな訳で、お家にご招待してくれよ〜」
「帰れこの不審者!」
即答で訪問拒否する凰哦。
「ヒドッ!誰が不審者何だよ!俺の何処が不審者何だ!?こんな紳士で可愛い俺ちゃまアビビビビィ〜!」
今度は問答無用でスイッチON!をする隆志。
「キャーちょっとツトツト〜ん!大丈夫なの〜!」
電話の向こう側から仲上の心配する声が聞こえる。
「オゥ…ワンモァ〜♡」
「「…………」」
「NO〜!ワンモァ〜!プリーズ!」
「「帰れ不審者!」」
「ヒドッ!」
「余り人の家の前で不審な行動取る様なら、警察に連絡するぞ!此処に不審者居ますってな!…ったく、元警察官が何してるんですか!」
「本当其うですよ!其れにツトツトとこのミッミは我慢したとして、何故僕達も変な呼び名付けてるんですか!何が凰凰で隆チッチ何ですよ!」
ツトツトが勝手に呼び名を付けた事がご立腹の隆志。
凰哦も其れが嫌で、訪問拒否と不審者扱いしたのだった。
「いやだってさ、可愛いだろ?子供達に愛されそうな呼び名じゃ無いかアギャギャギャギャッ!」
凰哦と隆志は共同作業の様に、緊箍児ちゃんのスイッチを一緒に押す。
「ナイス!ワンモァ〜♡ゴチワンモァ〜♡」
懲りないツトツト。
最早緊箍児ちゃんでは手に負えない様だ…。
「……本当何なのですか?アンタって人は…。全く思考が読めない…」
「あっ!また失敬な!…照れるじゃないかぁ〜其れ褒め言葉何だけど〜♪ブハハハハハッ……ゲホゲホゲホ…」
「…毎回思うのだけれど、ツトツトさんって、笑ったら必ず咳き込みますよね?…蓮輝君が変異種って言うのも分かる気がしますよ…」
「何だ隆チッチ?さっき迄のタメ口ぽく言ってくれても良いのに、俺…そんな他人行儀されたら…傷付くぜ?…」
「傷付くぜ?ってバッカじゃ無い!?アンタがそんな玉ですか!ワザと他人行儀にしてるのに!ああ〜如何して僕の周りの渋い大人の人って、こうもお子様何だよ〜!ギャプ有り過ぎ!!良いオッさんが可愛く拗ねるなよ〜!其れに何故か其れにちょっとキュンキュンしちゃう僕はオカシイのか!?そんな自分がマジ嫌だ〜〜!!」
遂に爆発した隆志。
「なぁ…隆志…。お子ちゃまの其れ俺も…入ってる?…」
恐る恐る聞く凰哦。
「入ってる!…アッ…しまった…遂本音が…」
「ありゃ…隆チッチも毒吐くんだな…。でも俺様の事可愛いんだろ?この〜可愛い奴め〜隆チッチ〜!遠慮無く俺の胸に飛び込んで来ても良いんだぞ〜!優しく抱き締めてやるからさイターーーッ!!」
ツトツトを思いっ切り平手打ちする仲上。
「私を差し置いて、隆志君を抱き締めるですってぇ〜!」
「あっいや…ちょっと嬉しさの余り…悪ふざけ…」
バチィーーーンッ!
「また同じ事言うなら別れるわよ!」
「ゴメンッ済いません!許してこのミッミ〜!愛してるのはお前だけ何だから〜!綺麗で可愛いこのミッミ以外を愛せないんだから〜!…でも怒ったこのミッミも…可愛い♡」
「あらイヤだ〜♡も〜ツトツトったら〜」
ファンファンファンファンファン…
「はいお疲れ〜、あっ警察呼びましたから…」
「エッ!?マジ!?ちょっ、マジ警察呼んだのかよ!?」
「私達、今日突然篠瀬さんの家に来た理由が有るのよ!」
「其う何だよ!ゴメンふざけるの止めるからさ、中に入れてくれよ〜ぉん」
「捕まりたく無いからって、適当に誤魔化すのは止めて貰えませんかね?」
「違うよ〜マジ何だよ〜凰凰〜!」
「其の凰凰止めろ!」
「…チッ!…」
「このっ!舌打ちしやがったぞ!?」
「あっゴメンゴメン!でも本当何だよ!俺達の夢にさ、ドデカいカッパ?みたいなのが出て来てさ〜」
「「カッパ!?」」
「其うなの!私が変な夢見たって言ったら、ツトツト〜んもね、“キューと言う名前を付けられた者達の家に行け”って言われたと言うから、ウソッ私もよ!?ってなったの」
「其の事を青柳さんに言ったらさ、此処に行けば良いと言われたんだよ〜」
凰哦と隆志は其の話の内容に驚くのだった。
「其れ…本当ですか?…」
「本当本当!!」
「…ふぅ〜分かりました。嘘じゃ無いと信じて許可しましょう…。早く入って下さい。あっ其うそう、防犯用のサイレン切らないと…」
「「ハァ〜!?」」
「隆志、サイレンのスイッチ切ってくれないか?」
「OK!」
「ちょっと待ってくれ!其れじゃ今のサイレン…」
「不審者用の防犯グッズの1つですよ?蓮輝に習って、こんな時用に取り付けたんですよ」
「あっでも其のまま後3分鳴ってたら、本当に警察に通報される仕組みに成ってましたから、危なかったですね〜♪」
「マジか…」
凰哦の説明に便乗した隆志の嬉しそうな言い方に、あの時感じた純粋さと限界の無い優しさは、何処に行ってしまったのかと思うツトツトなのでした。
「其れじゃお邪魔します……」
鍵を開けられた門から疲れた顔をしながら家へと向かう2人。
家に入るなり出迎える凰哦を見て
「…なぁ凰凰…其れ…普段着?パジャマなのか?」
と、引き気味で聞くツトツト。
「えっ…其うですけど…?」
初めて見る、凰哦の普段着のパジャマ。
「…無いわ…幾ら変わり種好きな俺でも…其れは無いわ…」
「エッ!?…」
「いやぁ〜、前々から凰凰がカワイイモノ好きなの知ってるよ?ポンコツになるのもな…」
「!!」
「でも其れは無いわ〜。何時もビシッと決めてる凰凰の素の姿を見られるのは萌モエしちゃうかも知れないが、其れは無いわ〜」
「其うよね…Lovely Qと書かれたカッパのTシャツに、カッパのスリッパって…。何方かって言うと篠瀬さんの其の姿の方が、不審者に思えるのだけれど…」
「!!!」
2人に指摘されて、赤面して膝落ちする凰哦。
「し、しまった…まさかの訪問だったから…其のままで居たよ…」
恥ずかしくて両手で顔を隠す凰哦。
「僕は好きだよ?其のギャップにキュンキュン来たんだから…」
と、変なフォローを入れる隆志。
「…ありがと…」
決して救われないフォローに、取り敢えず礼を言う。
「なぁ…1つ聞いて良いか?」
「……何を…」
「其のパジャマのキャラクター、何だかSHINOSEブランドで似た様なの見た記憶が有るんだが…」
「…自社ブランドで作ってますよ…」
「やっぱり…。で、其れも売っているのか?後キャラデザインは、誰がしてる?」
「コレは非売品ですよ。後…キャラデザインは蓮輝です…」
「やっぱり其うなのか?…絵本の絵のタッチに似てるとは思ったんだが、まさか其うだとはなぁ…」
「アイツの収入の為に1度犬のTシャツを任せたら、何故かコアなファンが付きまして…今じゃ専属デザイナーとしてキャラクターを描いて貰ってます…」
思いがけず、蓮輝の収入源を知る隆志にツトツトと仲上。
「正直、絵本の売り上げより収入良いんですよ…。蓮輝にしたら、複雑だと言ってましたがね…」
確かに其うだろうと思う一同。
「凰凰、そろそろ上がらせて貰っても良いかな?あっコレ手土産の和菓子。大急ぎで作って来たから、完成度低くて悪いが受け取ってくれよ」
其う言って渡された土産の中身を見ると
「ハァ!?コレの何処が完成度低いんですか!?」
と驚く凰哦と隆志。
箱の中は可愛いカッパの細工を施された和菓子だった。
「か、可愛い〜♡」
「ポンコツ化してるよ凰哦…」
「アッ…」
「でも此処迄精巧に作られると、食べるの躊躇っちゃいますね…。本当意外しか出て来ないですよ…ツトツトって…」
少し毒を吐きつつ褒める隆志だった。
「でも何故カッパ何です?」
隆志が其う聞くと
「そりゃアレだけおかしな夢見たんだからさ、こりゃ御信託だろ〜って思えたからなぁ〜」
「確かに其う成りますよね…納得しました…」
「其れじゃ上がらせて貰うわ〜」
「お邪魔しま〜す…ハァ〜門から玄関迄も広くて凄かったけど、家の中の造りも凄いわね〜お部屋幾つ有るのかしら?」
「おおおっ!何て素敵なキッチン何だ〜!…おや?飯未だ食べてる最中だったのか?」
「えぇ…」
「おっ?なかなか美味しそうじゃないか。コレ作ったのもしかして、隆チッチ?」
「俺です」
「マジ!?凰凰なの?ん?未だ沢山残ってるなぁ〜。ヨシッ俺達もご相伴に〜!いっただっきま〜す!」
誰の許可も無く、ズケズケドカドカと事を進めて行き、勝手に未だ沢山残ってる朝食を食べ始めるツトツト。
呆気に取られて何も言えない凰哦達。
「ウマッ!エッ!?マジ?…凰凰!コレマジ上手いんだけれども!あの下手っぴ凰凰が本当に作ったのか!?」
「ウッサイ!このオッさん!蓮輝の代わりに作らなきゃいけないのも有って、蓮輝に仕込まれたんだよ!出来る男は進化するのだ!」
自ら出来る男と言い切る凰哦。
其の凰哦の肩にポンッと手を乗せ首を振りながら
「其れは勘違い、其れは無いからね…凰哦…」
と、毒を注入する隆志だった。
其の言葉に“うんうん”と頷くツトツトと仲上。
「えっ…お前達…酷い…」
泣きそうになる凰哦だった。
「…ってバカな事は此処迄にして…何だかこんなコント久々だなぁ…」
「コント?いや俺達は素直に其う思ったんだが?」
「頼むからコントとして終わらさせてくれよ!折角アヤフヤに出来たと思ったのに!」
「まぁ其れは諦めて貰うとして、ツトツトさん達が此処に来た夢のお告げを如何にかしないとね…」
「あっ忘れてた…其うだったよな…」
隆志の言葉で、ツトツトと仲上が凰哦の家に来た理由を思い出す。
「其うそう、前からよく皆んなの話に出て来てた“キュー”って名前が夢に出て来てさ、気が付いたら和菓子でカッパを作ってて、其れを見たこのミッミ〜が変な夢の話するだろ?で、エッ!?ってなってさ、こりゃ何か有るのかって青柳さんに聞いたら驚いた顔をして、凰凰に会いに行けば分かるって言われたんだよ…」
大体の事の経緯を理解する凰哦と隆志。
「其れでさ、連絡するのスッカリ忘れてて今此処って感じ?」
「連絡忘れないで下さい!ったく、其れだったから不審者扱いされたのだから…」
「いやぁ〜悪い悪い!で、俺達よく分からないまま、此処に居るんだけれどさ、如何したら良いんだ?」
「……ふぅ…まぁ隠すつもりは無かったから、其の“キュー”に合わせますよ…。ただ今の貴方達には見えないので、変に思われるとは思いますが、其れを理解した上で付いて来て下さい」
「?意味が分からないが、分かったよ…。あ〜でも凰凰の飯上手かったなぁ〜、未だ食べてたいんだが〜」
「オッさん何しに来た!」
「オゥッ…す、済まない…。でも俺に引けを取らない何て…凄く悔しい気がするよ…」
「……本当アンタって人は…フフッ、褒め言葉ありがとうございます。其れじゃ此方ですから」
ツトツトに褒められた事が、素直に嬉しい凰哦。
先程迄気が引けてたキューを見せる行為だったのだが、其れにより足取りが軽く案内出来たのだ。
「此方です。其処に子供用のベッドに寝てます」
2人をキューの寝てるベッドを見せると
「?布団だけで、何も無いじゃないか…」
「ですから先程見えないと言ったでしょ?でも俺達には、其処でスヤスヤと寝てるカッパが見えるんですよ…」
「ハァ?ちょっとおかしくなったのか?」
「ねぇちょっとツトツト!こ、この布団…中に何も無いのに…盛り上がって中が見えるわよ…エッ?何?コレ如何言う事!?…」
「アッ!本当だ!…エッ?何だ?ハァ?エエッ?ハアァッ?」
2人が驚いていた其の時
「フアァァァ〜……ムニャムニャなの〜…」
其う言って、キューが目を覚まそうとしていた。
「キュー!キュー!起きたのか!?」
「キュー君!?」
凰哦と隆志がキューの寝呆けた声に驚く。
「キュー!おはよう!キュー!」
急かす様に、キューに話し掛ける凰哦。
「フニャ…あっ…凰哦パパ…おはよう〜なの〜…」
「おはようキュー!ようやく起きたんだな!パパ嬉しいぞ〜!」
「フニャ…ケヘケヘッおやつみ〜」
「おいおいおいちょっと待って待て!起きてくれキュー!」
「フニャ?あっおはよう〜パパ〜…。ん?あれぇ〜?何か同じ事言ったかな〜?…おやす」
「起きなさい!キュー!お願いだから!」
「ん?あっおはよう〜なの〜…あれ?ポカポカさん来ちゃったの?…」
「其うだよ、今ポカポカさんがキューを起こしに来たんだよ…」
「……其うなのねぇ〜ケヘケヘ〜」
「本当におはようキュー…」
「は〜い!おはよう〜パパ〜!」
「寝起きで悪いが、キューにお願いが有るんだ、其のお願い聞いてくれると助かるんだが、良いかな?」
「……うん良いよぉ〜!」
「其れじゃ早速で悪いが、此処に居る2人にも、キューが見える様にしてくれないかな?出来そうかい?」
「…うん出来るよぉ〜…」
「悪いが今直ぐ見える様にしてくれないかな?其の後ご褒美に、美味しいご馳走た〜くさん用意して上げるからな」
「!!うん!僕頑張ってやるねぇ!!」
「アハハッ其れじゃ宜しく頼むよ」
「は〜い!」
其う元気に返事をするなり、ベッドから飛び降りて、ツトツトと仲上に力を使う。
ビリッ!
「アフゥン♡」
「ビッ!イッターイ!!」
反応の違いは有るが、何時もの電撃が2人を襲い、其の後直ぐ
「ハギャアッ!ハア!?…カ…カッパが…」
「キャアァーーーッ!…わ…私にもカッパが…見え…見える…」
何故か何時もより早く見える様になるのだった。
如何やらご馳走が待っていると思うキューの食い意地が、力を増したみたいだ。
「見えました?紹介しますね、コレが夢のお告げに言われたキューです」
其う言って、2人にキューを紹介するのだ。
「ケヘケヘ〜、僕ねぇ〜、キューって言うの〜ん」
「あ…あぁ…初めまして…」
「こここ…こんにちは…」
しどろもどろな2人。
「さぁご馳走用意するから、先ずは顔を洗って来ようか?隆志、キューの事お願い出来るか?」
「OK〜良いよ〜任せて!さぁキュー君、顔を洗いに行こうか?」
「は〜い!」
返事と共に、キューと隆志は洗面所に向かうのだった。
「其れじゃ2人には、コレ迄の経緯を話しますね。取り敢えずご馳走作らなきゃいけないので、作りながら話しますよ」
「あ…あぁ…。其れじゃ俺も、其のご馳走作り手伝うわ。このミッミ、悪いが青柳さん達に、今の事電話しておいてくれないかな?」
「…わ、分かったわ…。あぁ今でも正直信じられない…」
其う呟きながら、正樹達に電話を掛ける仲上。
其々が其々の役割をこなしながら今迄の経緯を話し、ツトツトと仲上もキューの存在を理解するのだった。
全てを理解したと分かった凰哦は、コレでやっと蓮輝を目覚めさせる事が出来るのだと思ったのだった。
後は、起きたばかりのキューの胃を満たす事が出来れば、キューを連れて、蓮輝の元へ向かう事が出来るのだと嬉しくて堪らない凰哦と隆志の2人は、顔を見合わせながら優しく笑い合う。
本当の目覚めの時は、もう直ぐなのだと2人は其う思いながら…。
如何でしたか?
ツトツトの強力おバカなキャラは?
書いてる僕自身、このバカ!と思いながら書いてました。
では次話をお待ち下さいね。
ちなみにサブタイトル、今話で完了です。