目覚めの日…2
…………ん?この声は誰の声?……。
上手く聞き取れないけれど…僕の知ってる声だ…。
えっ泣いてるの…?
如何したの?
何処に居るの?
痛い?
辛い?
…違うのかな?
……えっ?上手く聞き取れなかったけど…僕は一体誰なのかって?
もしかして…自分の事が分からないの?…。
大丈夫、僕が一緒に君が誰なのかを探して上げるよ…。
だから不安にならないで…泣かないで……。
…あれ…何処に行ったの?
君の声が…聞こえ無く成って来たよ?
泣いているのは感じるのに…声が聞こえ無いよ…。
ねぇ何処に居るの?
何処に行ってしまったの?
待って、待ってよ…。
君を助けたいんだ…。
お願い…僕に君を助けさせて欲しいんだ…。
…お願い…。
…アレ?…雨が降って来た?
君が泣いていたから、空も悲しくて泣いてるのかな…。
傘が無いから、このままじゃずぶ濡れに成っちゃうよ…。
でも…如何してだろう…。
この雨…とても暖かくて優しい感じがする…。
ずぶ濡れに成っても、何だか守ってくれる気がする…。
其れに雨の1粒1粒が…優しく抱きしめて、頬に口付けをしてくれてるみたいで、何だか心地良いよね…。
君も其う思うだろ?
だから安心してよ…。
この雨に守られながら…僕が君を助けるからね…。
だから……何処へも……行か……ない……で……。
(う〜〜ん…未だもう少しだけ…眠っていたい…。でも何だろう…僕の頬に…ポタポタと温かい雫みたいなのが…。雫?えっ何で雫が僕の頬に!?)
ソファーで眠っていた隆志は、今見ていた夢に感じた悲しさと守ってくれる心強さが有ったなぁ〜と、未だ寝呆けながら目を覚ます。
寝呆け眼の隆志は、先程から頬に当たる何かを指で拭って、其れが何なのかを確かめる。
「……水?えっ水?…何故僕の頬に水が……!!」
隆志は驚いた。
ソファーで横になっている隆志の手を握りながら、目の前に泣いている凰哦が覗き込んでいたからだ。
驚いて、声にならない。
隆志が起きて、自分に気付いたと分かった凰哦は、慌てて涙を拭い隆志の手を離す。
寝呆けている事も有って、状況を良く理解出来無い隆志。
「あっ…うんと…えっと…其の…」
考えが纏まらず、何を如何して良いのかも分からなくて、言葉に詰まる隆志。
「………」
無言で居る凰哦。
ようやく寝呆けから目覚め、頭が回転し出す隆志。
「あっ気が付いたんですね…」
「あぁ…ほんの少し前に目が覚めたよ…」
「良かった〜無事気が付いたみたいですね、本当に良かったです」
「心配掛けて済まな…済いません…あり…ありがとうございます…」
「?如何したんですか?何だか何時もと違いますが…。あっもしかして、未だ調子が悪いんですか?熱は…」
隆志は熱を測る為、凰哦のおでこに自分のおでこを合わせ
「!!!」
隆志の思いもしない行動に、驚き仰け反る凰哦。
アタフタして
「えっ!?あっ!?なっ!?と、突然…」
驚きパニックに陥る凰哦。
其れを見た隆志は
「ああぁ…すすす、済いません!ぼぼ僕、幼い頃から熱を測る時、このやり方ばかりして来たのでつい癖でしちゃいました!驚かせたのと、気持ち悪くさせたなら済いません!」
「…あっいや其れは無いので大丈夫です…。寧ろ違う意味で驚いただけなので…」
この時、もしかして“天然”なのか?と思う凰哦。
「ん?違う…意味?」
「あっいや…な、何でも無いです…。で、所で幼い頃からって言ってましたけど…」
「あ、其れですか?前に言ったと思いますが、僕本当に病弱でして、直ぐ熱を出して寝込む事が多かったんですよね…。その都度両親や掛かり付けの先生が、慣れて仕舞えば体温計で測るよりも正確で早いからと、何時もこうしてくれてたんですよ…。だから僕も其れが当たり前になってまして、ついしちゃうんですよね…。今は流石に女性とか、男性も気持ち悪がられてやりませんが、僕の気が許せた人や大切な人に対しては、ついしてしまうんですよ…。本当に済いません…」
罰が悪そうに言う隆志に対して凰哦は違った。
隆志が大切な人や気を許した人だけにすると言って、其れを凰哦にした事で、自分は大切な人で在るのだと思え、とても嬉しく思ったのだ。
何せ、隆志にしてはいけない事をしてしまったのだから…。
未だ正式な謝罪も出来て無いのに、許されてしまうのは違うと思う凰哦。
でも今の様子では、隆志の中では既に無かった事に成っている様にも思えた。
其れを差し引いたとしても、隆志にとって凰哦は気の許せる大切な人だと知って、喜びと大切だと思ってくれているのに、隆志にした仕打ちの罪悪感が増してしまう。
凰哦の中で膨れて行く罪悪感に、次第に表情が曇って行く。
如何やって謝罪をすれば良いのか、謝罪をする為のお願いを何と言って切り出せば良いのかと、悩んでしまうのだ…。
隆志の様子から明らかに無かった事か、済んでしまった事として成っているのに、話を持ち掛けてあの時の嫌な出来事を思い出させて、また傷付けてしまわないかと思いを巡らす凰哦。
そんな考えが頭の中で張り巡り、解決策が見出せ無くて更に曇る表情。
隆志は無言に成り、暗い顔の凰哦を見て、凰哦の考えている事を理解してしまう。
ふぅ〜と軽く溜息をして
パ〜〜ンッ!
と凰哦の目の前で、猫騙しをした。
「ビィッ!!」
変な声を上げて驚く凰哦。
驚き過ぎて目を丸くし、ピクリともせず完全に固まって動かなくなる凰哦を見て
「プッ……プハハハッ!アッハハハハハハハハ!」
と、大きな笑い声を上げる隆志。
其の笑い声で、正気に戻る凰哦が
「な、何笑ってるんだ!わわわ、笑い事じゃ無いぞ!ほ、本当ビックリして心臓が止まるかと思ったじゃないか!」
驚いた衝撃で痛む胸を撫でながら、隆志に抗議する凰哦。
「たくっ!蓮輝といい君といい、お、大人を揶揄うんじゃ無い!」
「アハハ」
「笑い事じゃ無いだろ!?」
「いぇ驚かせた事が嬉しくて笑ったんじゃ無くてですね、やっと何時もの貴方に戻ったと思ったら、ちょっと嬉しくなっちゃいまして、気付いたら笑ってました…」
「!!」
「いやぁ〜ずっと気になってたんですよね…」
「な、何がかい?私の何処が気になるんですか?」
「其れ!其れです!」
「そ、其れ!?其れとは…」
「其の口調ですよ!…ったく、皆まで言わないといけません?しっかり者の賢い貴方なら、僕の言わんとする事くらい分かると思いましたけど…?」
「うっ…」
「僕に対して、ずっと畏まった言い方でいたでしょ?」
「そ…其れは当たり前だと言うか…当然しなければいけない事ですか」
「ストップ!マジ止めて下さい!調子狂うので!貴方の其の口調、コッチも畏ってしまって、聞くの辛いんですよね。ですから以前の様に、敬語や畏まった言い方禁止にします!宜しいですか?」
「あ…あぅぅ…」
「如何なんです!?」
「はい…分かり…分かったよ…」
「宜しい…」
「……結構君もズバッとキツい事やキツく言うんだな…意外だったよ…。まるで蓮輝みたいだったよ…」
「アハハ、かも知れませんね〜。何せ彼の親友ですから」
「うっ!…マジか…」
「コレでやっと貴方と話が出来ます…」
「えっ?…其れは如何言う意味なんだい…」
「…正直に言いますね…。僕は貴方に殴られた事、殺すと言われた事は、別に如何でも良かったんです」
「ハアッ?ど、如何でも良いって…いや其れは違うだろ!?痛い思いした上に、其れに…」
「ん?其れに?」
「…其れに、君が大切な人には熱を測る時こうするって言ってただろ?…」
「えぇ」
「って事は、俺の事も大切…だと…思ってくれてると思っても良いんだよな?…」
「…えぇ…はい其の通りですよ…」
「其の大切だと思ってる者から…殺す…と…言われたら…俺なら許せないし、心が裂ける程のショックを受けるよ…。其れなのに君は…其れも如何でも良いって…」
「まぁあの時は僕も気が昂ってましたから、其れに貴方の心が壊れないかと必死でしたし…。実はツトツトにも言いましたが、僕の」
「ちょっと待ってくれ!…其のツトツトって誰だ!?」
「あっ其うでしたね…片平努さんの事です。貴方が倒れた後、着替えとかを持って来てくれた時に、ツトツトで呼ぶ様にと確定事項だと言って笑って帰って行きました…。正直嫌だと思ってますけどねぇ…」
「何故其うなったのか理解出来無いが…本当何なんだあの人は…思考力が違い過ぎて…分からん…」
「全く同感です…」
「あっ済まない…話を折ってしまって…。でツトツト…って恥ずっ!…んんっ…に言った事ってのは…」
「諦めましょ…僕も恥ずかしいですが、ツトツトと呼ばなかったら、絶対拗ねますよあの人…。で話の続きですが、あの時も今も貴方になら、殺されても良いって言いましたよ」
「ハアァッ!?何を馬鹿な事を!!」
「確かにツトツト…さんにも言われましたが、キッパリ言いました。貴方も蓮輝君も、青柳夫妻に仲上さんとツ…トツトさん…やっぱ恥ずい…其れと子供達に、僕の命を懸ける価値が有るんだと、僕にとって掛け替えのないキラキラした宝物何だって。ですから僕がしたい事をしただけで、本当に気にも留めて無いんですよ」
少しツトツト呼びに毒を吐きながら、何でも無いとブレずに真っ直ぐ言う隆志。
ツトツトに話した時より、破顔の笑顔だった。
隆志の造り出す笑顔を見た凰哦は、初めて隆志に戦慄と恐怖を感じた。
其れは、自己犠牲の精神が余りにも強過ぎるからだ。
ツトツトは、隆志の優しさには限度が無いと感じたが、凰哦が感じたのは優しさだけでは無く、いとも簡単に自分の命を差し出す事が出来る隆志の自己犠牲の精神に、狂気すら感じてしまう。
余りにも自分の命を軽視し過ぎているとも思い、其れではまるで、あの時の蓮輝の様だとも思ってしまう。
蓮輝の場合は、自分には価値が無いのだからと思い込み、何度も自殺をしようとした…。
あの時は自分が身を挺した事で自殺願望も消え、今では命を重んじてくれる様になった。
だが彼隆志の場合は、優しさから来る命の軽視。
蓮輝とは違う種類のモノだ。
危うい…危う過ぎる…。
ダメだ…其れはいけない…。
彼に、彼自身の優しさがどれ程危ういモノかを知って、何としてでも其の考え方を改めて貰わなければいけないと、凰哦は心の底から思ったのだ。
「ふざけるな馬鹿野郎!」
とても厳しく真剣な顔をして、隆志に怒鳴り付ける。
「!!」
凰哦の怒鳴りに驚く隆志。
「命を軽んじるんじゃ無い!!」
「えっ…あっ…ぼ、僕は別に軽んじて何て…いませ」
「黙れ!」
「!!」
「俺からすれば隆志、お前の其の自己犠牲の強さが何よりも其う感じるんだよ!俺の為?…ふざけるな!そんなモノは優しさじゃ無い!自己犠牲でも無い!自ら死に向かって如何するんだ!隆志、お前が誰かの為に其の命を捧げても、悲しいだけで嬉しくは無いんだぞ!?何故其れが分からない!殺すと言った俺だが、隆志、君には死んで欲しくは無いんだ!誰の犠牲にもなって欲しくは無いんだよ!……頼むから…誰の犠牲にもならないでくれよ……なぁ隆志…頼むよ…」
「………凰…哦…」
「本当に賢い隆志なら…助けたい人と自分も一緒にさ…助かる道を求めてくれないか…?お願いだ…お前の命も守ってくれよ…。隆志が俺の事や皆んなの事…キラキラした宝物で大切だと言ったが、其れは俺も同じ…お前の事、とても大切な人何だよ…。だからお願いだ…自分の命の事も大切にしてくれよ…なぁ…隆志……」
本気で隆志の事を思い感情も昂ったせいも有り、涙を流しながら叱り付ける凰哦。
自分の事を思って泣く凰哦に、自分が彼にとっても、大切な人だと初めて知る隆志。
凰哦にとって隆志は、蓮輝の親友として接しているだけだと思っていただけに、大切な存在なのだと思われているとは露にも思わず、ツトツトにも言われた自分の優しさは、他人を傷付けるモノなのだと、初めて知り理解する。
凰哦が隆志の事が大切だと言わないでいたのなら、知ったとしても、理解する事は無かっただろう…。
自分が大切な人だと思う者達の言葉でも、相手が同じ大切だと思っていなければ、其れもまた理解する事は無かったと思われる。
今回、凰哦が真剣な眼差しで涙し叱ってくれたからこそ、隆志が当たり前にして来た事は間違いなのだと、心から思えたのだった。
「なぁ隆志…俺の言った事…分かってくれないか?如何か…如何かお願いだから…」
お願いだと言いながら、隆志に頭を下げる凰哦。
謝罪では無く、自分の命を大切にして欲しいと懇願する為に、深く頭を下げる行為に
「や、止めて下さい!わ…分か…分かりましたから…。頭を下げないで下さい…お願いですから…。うぅぅ……ううぅぅぅ……あぁぁ…嗚呼ぁぁぁ……済い…済いません……こんな…こんな僕を思って叱ってくれて……嗚呼あぁぁーー……」
嬉しい反面、申し訳無い思いが心の大半を占めて、声を上げて泣き崩れる隆志。
今度は凰哦が隆志の肩を摩りながら
「分かってくれたなら……其れで良いから……。だから今後は如何か、自分を大切にしてくれよ?…隆志、お前を大切に思ってくれてる人達の為にもな…」
泣いて上手く返事が出来無い隆志は、コクコクと何度も頷くのだった。
隆志が泣き止む間、無言のままの時間が過ぎて行くのだが、晴れやかな気持ちでいられたのだ。
隆志が落ち着き泣き止んでから
「済まない怒鳴ったりして…」
と、凰哦が謝る。
「…いえ…此方こそ済いません…。僕を思って叱ってくれたの、とても嬉しかったですから…。叱られて初めて気付きました…僕が無意識に他人を傷付けていた事を…。ずっと虐められ、他人と関わらない様にして来たのに、本当は誰かに認めて欲しかった必要とされたかったんだと、其う思っていたんだと…気付きました…。其れが皆さんが言う、僕の優しさの本性なのだと言う事も…」
涙を流している間、隆志は自分なりに自己分析し、導き出された答えが其うなのだと言う。
凰哦は隆志の自己分析に、納得したのだった。
彼も未だ、過去の自分の傷を癒やせて無いのだとも、凰哦は思った…。
「蓮輝の時は、本当に苦労したんだ…。何せ俺も一緒に死ぬかぁ〜って思ってしまう程、心が疲弊してしまっていたからな…。でもあの時の辛さや痛さは、2度と味わいたく無い。だから隆志…君にも同じ苦しみや痛みを感じて欲しく無かったんだ…。隆志のやり方は、蓮輝とは違うやり方だったがな…」
「そっか…其うですよね…。身を持って体験してますもんね…。とても説得力の有る言葉だったから、しっかり心に刻みました」
「其うか、其れは良かったよ…」
「あっ其れともう1つ嬉しかったのは、ずっと君とか貴方と呼ばれていたのが、正直ムカ付いていたんです」
「……はっ?」
「口調だけじゃ無く、名前迄言い方変わって、親しくなれて嬉しかったのに、あの1件の事で完全にまた其の他の他人になったかの様に、僕の名前を一切言わないんですもん。だから僕もずっと貴方の名前を呼んでやるものか!って、ワザと名前を呼ばない様にしてました。でもさっき僕を叱る時から名前で言ってくれる様になって、元に戻れたと嬉しくなったんですよ…」
「…………えっ?…」
「其れに、ちゃんと名前とか口調が戻らなければ、謝罪を聞く気にならないし、なれないとも決めてました。ですからずっと謝罪出来る条件を満たす迄、はぐらかすつもりでした」
「……ハアッ!?おまっ…エッ!?其れ冗談だよな?たかだかそんな事で…ハアッ!?マジかよ…」
「マジです。僕にとって、たかだかでは有りません。其れ程大事な事何ですよ。これでやっと謝罪を受け付けられます」
「ハァ〜…何と面倒臭いんだ…。謝罪する方からすれば、キチンとした話し方でしなければと、普通は思うもんだぞ?其れなのに何時もの口調や名前呼びじゃ無きゃダメだって…そんなモン分かるかよ!」
「へへへっ其うですよね〜、でもきっと僕が求めてる事を分かってくれると信じてましたから。でも案外早く条件を満たしたので、安心しましたよ」
「お前…何処と無く蓮輝と似ているよな…。ん?其ういや隆志、お前も俺の事呼び捨てにしてたよな?」
「エッ!?ウソ…マジですか?すすす、済いません!気が昂ってたから…」
「呼び捨て結構!呼び捨て俺は嬉しい!!…未だに誰も呼び捨てしてくれないんだよ…あの蓮輝でさへ…。だから隆志、お前だけは呼び捨てにしてくれよ!コレはツトツトと同じ、決定事項にするから其のつもりで!…ダメか?」
「…ハァ…分かりました凰哦…」
「おっ?良いなぁ〜、初めて呼び捨てにされたぞ〜♪あっ後敬語も無し!そうじゃ無ければ口は聞かない事にするから!拗ねるからな!」
「……このお子ちゃまサド…」(ボソッ)
「お、おまっ!今何て言った!?」
「いえ別に?…ただ蓮輝君の気持ちが分かると思っただけだよ?凰哦」
「〜〜〜お前こそサディストじゃないか!…しまった…此処に蓮輝が1人増えた気がする…」
「自分で決めた事何だから、諦めてよ?凰哦?」
「〜〜〜………はい……」
「フフッ…謝罪はもぅコレで完了!僕、凰哦とこうして話が出来れば、其れだけで充分だから…。其れに、僕の命を軽視する事を2度としないと分かって許してくれるなら、お互いの謝罪は完了にしても大丈夫?」
「其うだな…これ以上お互い謝罪で悩み苦しむ事は、ただ辛いだけだからな…。そうしよう、隆志お前が其れで良いならな…」
「僕はOKだよ?…あっ其う言えばさ、僕が起きた時手を握って泣いてたけど…何故なの?」
「ウギッ…そそそ、そんなの如何でも」
「良く無いから!」
「……本当…蓮輝が此処に居るよ…。あの時のお前はさ…うなされてたんだ…」
「エッ?うなされてた…?」
「あぁ…助けるとか、1人にしないとか…後…僕を助けて、見捨てないでおぅ…皆んなと…何度も繰り返して泣いてたから…傷付けてしまった隆志がこれ以上、夢の中でも苦しまないで欲しくてさ…気が付けば手を握って…俺は見捨てないから…償いからでは無く、お前を助けてやるからって…泣いてた…」
凰哦に聞かされた事で、朧げに夢の内容を思い出す隆志。
「僕…泣いてたんだ…。其う言えば、朧げだけれど…誰かが自分の名前が分からないって…泣いてて…僕が助けるって言って……。其れから泣く誰かの声は聞こえるのに、何処に居るのか分からなくて……。悲しくなって1人になりたく無くて……。そうだ、雨…温かい雨が降って来て、ずぶ濡れになると思ってたけど…何故か守ってくれそうで…優しく抱かれながら口付けされてる様に…思ったんだっけ…。本当…不思議な夢だったなぁ……」
隆志は思い出した夢を話しながら、凰哦に目線を向けると
「そ、其うなのか?…本当不思議な夢だったんだな…だからうなされていたんだな…うなされてた理由が分かったよ…」
何故か遠くを見る様に目線を逸らしていた。
「?」
如何したんだろうと思いながら
「ありがとう凰哦、うなされた僕を気遣って守ってくれたんだね…。本当ありがとう」
「いや…其れ以上に助けられてたのは俺だから、気にしないでくれよ?お互い様何だから…」
「うん……プッ…アハハ…」
「何だ?またいきなり笑って…」
「だって…喧嘩の仲直りみたいだなって思ったら、僕今迄ちゃんとこんなやり取りした事無いなって…。其う思ったら嬉しくて、変なのって思ったら…アハハッハハハッ笑えて来たんだアハハッ」
「フッ…本当変な奴だな隆志って…アハハハハハッ確かに笑える。喧嘩かぁ〜、確かにこんな言い合いは喧嘩みたいだよな?ハハハッ其う思うと笑えるな…。喧嘩出来るのは親しい者じゃ無きゃ喧嘩じゃ無いモノな…。知らない者同士がするのは、ただの暴言と暴力だからな…。其う考えると、隆志との喧嘩も悪くは無いよな…フフフ…」
「凰哦…うん其うだね、其うだよね!嬉しく思える喧嘩が出来て良かった。ありがとう凰哦、家族も友達も居ない僕にまた1つ、出来無かった事が出来たよ。本当ありがとう…」
「!!ハァッ!?エッ!?…た、隆志…其れ如何言う事だ!?家族が居ない!?」
「あっ言って無かった?」
「し、知らないぞ!?初耳だ!…友達は何となく理解出来るとしてもだ、家族が居ないって…」
「あっごめんなさい、既に言っているモノだと思い込んでた…。僕父子家庭なんです」
「父子家庭?」
「母親が子供の頃に蒸発して、レスキュー隊だった父親1人に育てて貰ったんだ…。だから僕も父親に憧れて、消防隊員に成りたかったんだ…」
隆志の消防隊員に成りたかった理由が分かった凰哦。
「でも其の父も、13年前に火災現場で子供を助けた時に亡くなったんだ…。とても悲しかったけど…強く思ったのが僕も父と同じ、1人でも多く誰かを助けたいと言う事だった…。でも僕の其の思いは、間違った方向に在ったんだって、凰哦が気付かせてくれたから、コレからは間違った方向に向かう事は無いけどね…」
次々と明らかになる隆志の過去。
「た、隆志…お前の身内は…誰も居ないのか…?」
「去年迄祖母が居たけれど亡くなって今は1人だよ…」
「13年前にって、幾つの時に父親が亡くなったんだ…」
「15歳、中学3年生の時」
「未だそんな歳に…お前も苦労したんだな…って、ちょっと待て!エッ?アレッ?…隆志、お前今幾つ何だ!?」
「エッ?28歳だけど、言って無かった?」
「に、28〜!?…マジか…蓮輝より4つも若いんだ…」
「エエエッ!ウソ…其れ本当なの!?マジで言ってる!?」
「本当だ…」
「マジかあ〜〜!てっきり僕の年下だと思ってた〜〜!」
「俺も隆志が年上だと思ってたよ…」
「…ああ〜如何しよう…今度から君じゃ無く、さん呼びした方が良いのかなぁ…」
「……引っ掛かる所は其処かぁ〜?…何気に天然だよな…」
「まぁ良いや…変に変えたらギコちなくなるし、このまま通そう…。ん?天然?」
「いや別に何でも無い…」
天然かもと思いながら、隆志に付いて色々と判明して驚く凰哦だった。
コレはもっと掘り下げて聞くのも面白いかもと、思い始めてもいた。
未だ安定して目を覚さない蓮輝に、親友の隆志の事を揶揄いながら教えられそうだと、少しだけ楽しく思えていたのだった。
だからこそ早く、何事も無かった事の様に、蓮輝が目を覚ます事を強く願う凰哦なのだった…。
今話は如何でしたか?
隆志の過去に少し触れ、今後の展開にどの様に影響するのか楽しみにしてて下さい。
では次話をお待ち下さい。




