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新しい家族 その2

落ち着きを取り戻した凰哦。

まだポンコツのままで良かったのにと、思う蓮輝。

ざる蕎麦うまうまサイコーなカッパ。

ちょっと異質な雰囲気を醸し出す、このテーブル席。

落ち着きを取り戻した凰哦は、カッパの存在が気になり、無言でいるのに対し、カッパの虜になった蓮輝は、カッパの行動の一部始終を逃すまいと、デレ顔でカッパを見ている。

カッパは、唯ひたすら蕎麦を堪能しているだけ。

その状態が、しばらく続きそうだった。

…だったと思ったが、全く続かずに叔父さんがそれをぶち壊すんだよ〜、せっかくカッパを堪能してたのにね!失礼だよ!全く…で、この一言だよ…

「なぁ蓮輝…お前こいつをそのヘタレ顔で見ているが、それ程可愛いのか?俺にはそう思わないんだが…」

って!凰哦さん!何を言ってるの?バカじゃない?

何処をどう見たって可愛いでしょうに!

貴方の目は節穴ですか?なんですか?

そんな事言うのなら、もう凰哦さんとは呼ばないぞ!今後も叔父さんって呼び続けてやろうか!?

って悪態を思ってたら

「済まないが、まだ俺にはボンヤリとしか見えないんだよな…たまにハッキリ見えるのに、輪郭がボヤけているし、色も何色なのかもよく分からない感じなんだよなぁ?…だが、声だけは少し、聞き取れて来ている感じなんだがな…」

あっそうだったんだね、ごめんね悪態思うだけじゃなく、言いそうになってて〜。

言わなくて良かった〜!

「えっ?そうなの?それは勿体無い!こんなに可愛いのに〜〜見れないなんて…残念だね…」

少しムッとする凰哦が

「そのようだな!フッ…蓮輝、お前に1つ聞くが…お前心の中で、この店に来てから、何回俺を罵っていたんだ?結構してただろう…?舌打ちもしてたよな?ん?素直に言ってみなさい…さぁほら早く…」

うっわこの人マジ感鋭過ぎて、エスパーか何かと思っちゃうよ…ヤダマジこわ〜いっす!

「どうした?言えないのかな?…そうだなぁ、お前の言い方真似ると、感鋭いエスパーとかマジこわ〜いとか思ってそうだな…」

はいスイマセン!ごめんなさい!

ここ迄言い当てられると、最早何も言えない…。

言えば最後…って感じる…。

「…フフフッ…アッハハハハハー!本当分かり易くて面白いな?お前は…。何年お前の父親、母親代わりをして来たと思う?それに俺はお前が産まれた日から、ずっと見てきたんだぞ?余り俺を甘くみていたら、本当痛い目に合わせてやろうか?」

あぁこれは、本気の怒り爆発前の感じに似てるよ…。

だけど、いつもと違う感じでもあるんだよね?

何が違うんだろぅ…。

「凰哦さん…痛いのは嫌だなぁ〜、出来れば気持ち良いのが嬉しいな!マッサージとか…」

冗談混じりで言ってみたら

「ほぉそうか、痛いの嫌なんだな?分かったよ…それじゃ帰ったらマッサージしてあげようじゃないか!嬉しいだろぅ?今から帰宅がたのしみだろぅ?フフフッ」

と、とても穏やかに優しく素敵な笑顔で、指をポキポキ鳴らし始める。

やめて!それやめて!怖いから!恐怖でしかない!

青ざめていく僕を見て、かなり溜飲が下がったのか

「まぁ冗談はここ迄にしといて」

えっ、冗談じゃ無かったよね?本気でしたよね?

「蓮輝、お前何か勝手に決めてる事あるだろう?大体の予想は付くが、直接お前の口から言ってみなさい」

本当、鋭いよ!これだけの勘の良さと、読みの鋭さに、頭の回転が速いから、事業も成功したんだと納得するよね!

そんな人に、誤魔化しは無駄だと思うので話します。

「叔、凰哦さんにバレてるから言うけ…」

「ちょっと待ったー!お前今、叔父さんって言いそうになったな?」

うわぁマジかぁー、細かいよー!慣れる迄許してって言ったじゃんよー!あぁキレそう!でも我慢!

「で?それが何?えっ!?しばらく言い間違えするかもって言ったよね?…それ許可したよね?…そこんところは、どんな感じで思ってる訳なんでしょうか?お答え頂けますか?…あー先に僕から謝っておきますね、確かに心の中で揶揄ってたりしましたよ。それは本当に申し訳ありませんでした!っで、確かに僕の中で勝手に決定した事も、言わずにいましたがね、言える状況だったでしょうか?あの時確か混乱してて、話を聞ける状態じゃなかった様に思えるのは、僕だけでしょうか?どうなんでしょうか?ねぇ!さぁ!お答え頂いても宜しいでしょうか!」

はい!我慢出来ずに言いたい事言ってスッキリです。

僕がキレると、毎回こんな感じで捲し立てて、一気に言うものだから、凰哦さんもタジタジになるんだ。

本当は今自分が怒って叱る筈だったのに、逆に怒られてるなんておかしいだろ?と、凰哦は思うのだが

「ちょっと怒らないでくれ…蓮輝…謝るから…」

何故謝っているんだろう…と哀しくなるのだった。

「…分かった、それじゃもう良いよね、お互いギスギスしてても意味ないしね!凰哦さん、本当ごめんね」

「いや俺も細かい事言って済まんな…でもこれだけは有耶無耶に出来ないから、今しっかり聞くぞ?」

「えっ、さん付けもやめろっとか?」

「馬鹿タレ!違うぞ!ふざけた事言い続けるのなら、この話やめて、俺1人帰るからな!」

「えっ?あっごめん…今のマジでさん付けのそれかと思ったんだけど、違うんだ…えっ?なに?えっえっ?」

本気で勘違いしていた僕

「あれっ?…本当にそう思ったのか…ったくたまに出てくるよな…その勘違い…」

怒り損だと情け無くなる凰哦が、これ以上話が進まないのも疲れてくるので、直球勝負に出る。

「蓮輝、お前決めたんだろ?カッパを飼う事」

凰哦に言い当てられた蓮輝はとても驚いて

「えー、どうして分かったの?僕がそうしようと思ってる事…」

やれやれみたいな感じで

「だから何年お前の父親と母親代わりをしてるって思ってるんだと言っただろ?お前の考えなんてよく分かるさ…」

そうだった、すっかり忘れてた。

僕も凰哦さんに気付かれてると思いながら、さっきのブチギレで、スッキリと共にカッパの事、すっ飛んでたよ。

「凰哦さんには敵わないなぁ…うんそうなんだ…こいつを飼うじゃなくて、養いたいと思ってるんだよね」

凰哦は蓮輝が養いたいという言葉に直した事で、本気でそう思っているんだと感じとる。

「蓮輝、お前本気でそうしようと考えているんだな?」

「うんそう思ってる」

「一応聞くが、飼うんじゃ無くて養うって言ったが、こいつは本当に、犬や猫じゃ無く、カッパなんだぞ?知識も無いのに、そう簡単にホイホイと出来るものでも無いだろう?こいつがもし、病気や怪我とかしても、病院には連れてはいけないのも分かっているよな?それでも養うっていうのか?病気や怪我したから、面倒みるのやめて捨てるとかしようものなら、それこそ犬や猫をただの玩具にしてるのと変わらないんだぞ!?」

凰哦さんの言っている事は、ちゃんと理解している。

理解した上で、僕は決意したのだから…。

「凰哦さんに言われる前から、それもちゃんと考えていたよ…。それも含めて、僕がこいつを養わないといけないと、何故か強く思えたんだよね…」

「ただ可愛いからって、だけなんじゃないのか?それ以外にも有るのならいいが、それだけで即決意したっていうのなら、俺は反対するぞ!?」

確かにそう思われても仕方ないよね、さっきからずっと、可愛いだけしかいってないからね。

「可愛いという事もそうだけどさ、実のところ自分でもよく分かんないんだけどね、そうしなきゃいけないって、何故か強く感じてるんだ。僕がしっかり守らなきゃって、そうしないとこいつ、直ぐにでも死んじゃう様な気がしてしまって、ほっとけないんだよね…」

凰哦は、蓮輝の気持ちを理解し、ちゃんと考えてはいるのだなと思うが、再度蓮輝が何処まで本気なのかを知る為に

「蓮輝がそう思ったのなら、それが正しい事なんだろうが、俺は反対だ。家には連れて行けない。それにお前には無理だ!大体いつも何だかんだと理由を付けて逃げてる奴が、最後まで面倒見られるとは思えない。そういう事で、俺は反対するぞ?」

蓮輝は、いままで自分のして来た事を言われ、それに対しての反論や弁論の余地は無い事も承知していた。

一応それを言われる事は想定済みなのだが、本当に言われると思ってなく、返答の用意をしていなかった。

もし用意していたとしても、鋭い凰哦に、適当に見繕ったありきたりの答えだと見抜かれていただろう。

だからこそ、いつもの様なオチャラケではなく、真剣な眼差しで凰哦に答える。

「やっぱり反対するよね?それは分かってたよ…」

凰哦も何時もと違う真剣な蓮輝に、自分も真剣に聞かなくてはと、真摯な面持ちで向かい合う。

「ほぅ…分かっていながら、それでも養い面倒をみると言うのだな?」

やっぱり凰哦さん、相手の真剣さに対して、より真摯に対応してくれる。

我が身内ながら、それをいとも簡単に出来る凰哦さんは、本当に凄いと思うよ。

少なくとも僕が出会って来た人達には、真面目な顔付きをしているけれど、フリだけしている感を感じていて、何処か話半分って思えてた人が多かった。

中にはしっかり聞いてくれる人もいたけれど、凰哦さん程の人は、僕は知らない。

こんな人だから、部下や色んな人達に、慕われてるんだなぁと、嬉しくなる。

人に凰哦さんの事どう思うのかと聞かれたなら、凰哦さんは僕の誇りだと、臆する事なく言えるよ。

そんな事思っていたら

「おい蓮輝!何微笑んで嬉しそうな顔をしてるんだ?こっちは真剣に聞いているのに!」

どうやら微笑んでいたみたい。

「あっいやあのね、ごめんなさい…真剣に聞いてくれる凰哦さんを見ていたら、流石凰哦さんだなぁ、僕の誇りだなって…思ってたんだよね…そうしたら笑ってたみたい…」

甥の蓮輝から、誇りだと聞かされ赤面しながら

「な、何を言うんだ…そんな小っ恥ずかしい事を普通に平気な顔をしながら…」

照れてまともに蓮輝を見れなく、目を逸らす凰哦。

「あっごめん!僕の話を本当に、ちゃんと聞いてくれるんだと思ったら嬉しくてさ!有難う凰哦さん!」

「いやこちらこそ有難う、お前から褒められると、何だかこそばゆいな…だがそう言ってくれて嬉しいよ」

「うん…で本題に入るけど、僕は本気だから!今まで我儘沢山言ってやって来たけど、今回のは我儘って言うより、僕のするべき事なんだと思ったんだ…だからこれだけは譲れないし、引かないから!」

「…本当にするべき事だと感じたのか?思えたのか?仮にそうなんだとして、俺が許さなかったら、お前はどうするつもりだ?家を出る覚悟も出来ているのか?そこ迄考えているのかハッキリ聞かせなさい」

凰哦のその問いに、答えは勿論

「凰哦さんが反対しても、家を出る事になっても、僕はやるよ!凰哦さんの足元にも及ばないけど、僕だってそこそこの貯蓄は有るから、それにいざとなれば、余り売れない作家を辞めて、他の仕事してでもこいつの為に稼ぐよ」

自分には、どんな事になっても、どんな事をしてでもカッパを養う覚悟が有るのだと、凰哦に伝えた。

凰哦は、何時も適当にして、中途半端な蓮輝が、ここ迄考えている事に感銘するのだ。

「そうか…蓮輝はちゃんと最後まで、面倒をみる覚悟出来ているんだな…よく分かったよ!ただ、今出会ったばかりのカッパに、どうしてそこ迄しようと思ったんだ?」

確かにそれは気になるところだ。

凰哦の疑問に、少し心境を言葉にしようと整理しながら

「凰哦さんに言われて、今少し考えたんだけど…どう説明していいのか分かんないんだよね…。でもさ…こいつを抱き上げた時にね、脆く儚い感じがして、おこがましいとは思ったけど、僕が助けてあげないと死んじゃう気がしたんだ。今まであんな風に感じた事無かったから、説明しずらいんだよね…」

蓮輝が感じられた命の大切さに、気付いてくれた事が嬉しくなる凰哦。

蓮輝は、過去に起きた()()()()により、何処か命を軽く思う様になっていて、それがとても心配事の1つでもあったのだ。

「蓮輝の気持ちは分かったよ、確かに命に関して感じた思いは、説明するには言葉の表現に悩むものだからな…」

「本当?良かった…本当に言葉が出てこなくて、伝わらなかったらどうしようかと、結構焦ってたよ…。で、凰哦さん、僕の気持ちは伝えたけど、凰哦さんはやっぱり反対?」

蓮輝は、かなりドキドキしながら返答を待つ。

でもなかなか答えてくれない凰哦。

緊張し過ぎて、限界になりそうな蓮輝。

やっぱり駄目なのかと、家を出るしかないと考え、早く部屋を探さしておかないとな…と思うのだ。

凰哦はワザと間をあけていた、直ぐに返答したら、自分の思い通りになったと、直ぐに調子に乗るのが分かっていたから。

でもそろそろ限界が近いと、見てとれたので

「ハハハハハッ、どうやら限界みたいだな」

「凰哦さん?なんで笑ってんのさ!?」

「悪いが、お前を試してたんだ」

「試す?試すって、何それ?どういう事?意味分かんない…」

「悪い悪い…そう邪険になるなよ。ただお前が何処まで本気かと、直ぐ答えたら調子に乗るのが分かってたからな、ワザと無言でいたのさ…でも本当お前は分かり易いな…フフフッ」

分かり易くてすいませんね!でもそう言われてしまうと、今までしてきた事に心当たりがあり過ぎて、反論出来ない…凰哦さんには敵わないよなぁ……。

「そうだったんだね…で、凰哦さんの返答は…」

「フフッ聞かなくても分かるだろ?」

「えっ?それじゃぁ…反対なんだ…」

「…蓮輝、ちょっとこっちに頭を出してみろ…」

ん?なんで?と思いながら、言われた通りにする。

ゴツン!とメニュー表で、(はた)かれた。

「痛っった!何するの!?」

「何するのじゃ無い!俺が反対すると思ってたんだな…心外だ…賛成に決まってるだろ!…それとも反対して欲しいのか!?」

「いやいや反対しないで!って、えっそうなの!?だって凰哦さん、いつも以上に厳しい目をしてたから、反対されるんだと思ったんだよ!…本当に良いの?」

「あぁ良いよ!…それよりそんなに厳しい目してたのか?」

「うん、メチャクチャしてた!あぁ〜でも良かった〜!凄く嬉しい〜!有難う凰哦さん!」

「喜んでくれて良かったよ!でもな、お前は養う気でいるけど、こいつはどうなんだ?俺達と一緒に暮らしたいと思ってるのか?その事確認してないんだろ?」

凰哦の指摘に、そうだよなと、食事中のカッパに話し掛ける。

「ねぇ1つ聞いてもいいかい?」

カッパは“?”となりながら

「いいよ何聞くのぉ?」

「あのさ僕達なんだけど、一緒にお前と暮らしたいと思っているんだけどさ、お前は僕達と一緒に暮らしたいと思う?」

カッパは

「暮らすってなぁに?」

意味を理解出来ない事が分かり、分かり易く説明する。

「えっとね、お前と僕達がね、ずっと同じ家で過ごす事だよ、一緒に寝たりご飯食べたりするって事なんだ」

それを聞いたカッパは、しっかり理解したみたいで、これ以上もないくらいに、満面の笑顔で

「暮らすー!僕暮らすー!一緒一緒〜!わ〜い!」

と、とても喜ぶのだった。

カッパも一緒に暮らしたいと喜んでいる事を伝え、それじゃそろそろ帰ろうかと、凰哦が会計を済ませに行く。

店を出て、家路につく僕達に、新たな家族としてカッパが並んで歩くのだ。

凰哦、僕、僕と手を繋ぐカッパ。

カッパの存在が見えてたら、かなりシュールだと思える。

そんな事を思いながら

「ねぇ凰哦さん、こいつの同居祝いも兼ねて、ケーキでも買いに行こうよ!お前もケーキ食べたいだろぅ?」

「ケーキって、よく分かんないけどね、僕ね、食べたい!」

「食べたいんだって、だから買いに行ってもいいよね?」

「ったく、しょうがないなぁ〜、食欲無くても残さないのならな!…お前…最近本当に、食べなくなったからなぁ…もう少しは食べないと…」

「ちゃんと食べるよ!それじゃ決まりだね!ではケーキ屋さんにGO!」

「ゴー!」

意味も分からずに、僕の真似をするカッパに癒されながら、暗くなって街灯が灯り始めた街並みに、2人と1匹が並んで歩くのだった。

蕎麦屋で繰り広げられる、カッパとの出会いと家族に迎えるまでの話が、やっと一段落しました。

ここ迄の話の内容で、皆さんBL系の話だと思われてるでしょうが、決してBL系では無いって事をお伝えしておきますね!

ただ普通の人達よりも、かなり特殊な2人ってだけなんですが、その辺は今後の話にも関わってくるので、内緒とさせてもらいますね。

では次話をお待ち下さい。

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