表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
21/64

願い事 その3

いや〜冷えて来たねぇ〜。

飲みかけのホットココアも、微温さも無くなってしまって、ちょっと冷たくなってます。

体が冷えてはいけないと、屋上から個室に戻って来た僕達。

如何しても聞かなきゃあ〜、あっいけない事があ〜有るのですよ〜!

ちょっとふざけて歌舞伎口調で言ってみました…。

その聞きたい事を聞くには、長くなりそうだったし、キューも寒さでウトウトヘロヘロになってたからね…。

部屋に戻ると、やっぱり暖かいや。

思いの外、結構体が冷えてたんだね…。

ぬくぬくで休まるね〜!ホッとするよ…。

ホッとしたからなのか、部屋に着くなりベッドに入って爆睡するキュー。

「凰哦パパ…」

「おっ?何だ?俺の夢でも見てくれてるのか〜!」

と、嬉しそうにするのだけれど

「パパのご飯…不味いの…」

と、寝言でディスるキュー。

「アガッ………」

まさか愛しのキューに、今迄とは違う意味で、心撃ち抜かれる凰哦さん。

目を大きく見開き、開いた口が塞がらないまま、固まって動かなくなってます。

「凰君、如何したんだ!?」

「ちょっと凰さん、大丈夫!?」

心配して声を掛ける2人に、僕は

「あっ大丈夫ですから〜、そっとしてあげましょ〜!…まぁ当分は立ち直れないだろうけどね…。フヘヘヘッオモロ!」

「また蓮君は!…でもそうだね、しばらくこのままにしておくかね…」

「取り敢えず、椅子に座らせましょう。こんな一面も有ったのね…」

「だから飽きないでしょ?僕、凰哦さんのこう言う所、大好き何だよね〜!エヘヘェ〜」

そんな感じで、和やかになったのだけれど、ただ1人置いてけぼりの隆志さん。

「あっ、ごめん!僕達のコントみたいなやり取りで、困惑して無い?」

「…ちょっとだけ…」

「本当ごめんね〜!でも大体何時もこんな感じなんだ〜」

「そ、そうなのか?…何てギャップの有る家族何だ…」

「嬉しいじゃないっすか〜、そんな褒めなくても〜ね〜」

「いや、褒めてないから…」

「だね!…バカな事は此処迄にして、隆志さん、開いてる椅子に座ってよ」

「あっうん…」

「それじゃ僕ちょっと、皆んなの飲み物買って来るね」

そう言って部屋を出ようとしたら

「ダメダメ!貴方は此処に居なくちゃ!そんな事は、私がするからね?少しでも休んでて、お願い」

と美砂お婆ちゃんが、売店に買いに行くのでした。

「あ〜、気を遣わせちゃったなぁ…。後でちゃんとお礼しておこっと」

「そんな事しなくても、あいつも分かってるから、ただ笑顔で居てくれれば良いんだよ、蓮君…」

「…うん、そうするよ」

このやり取りを見ていた隆志が

「蓮輝君、君は強いね…。さっき聞いた過去、僕だったら今の君みたいには、出来そうにも無いよ…」

「今度こそ、褒めてくれてありがとう!でもね、こうなれたのはね、そこでポンコツ化してる凰哦さんのおかげだし、人を大切だと思える様になったのは、爆睡してるキューだし、血は繋がって無いけど、本当の家族だと思える様になったのは、正樹お爺ちゃんと美砂お婆ちゃんのおかげなんだ〜。だから本当の僕は、そんなに強くは無いよ?」

「それでもやっぱり僕は、蓮輝君は強い人だと感じるよ」

「そんなぁ〜、照れる〜」

「フハハッ…蓮輝君って、やっぱり強いよ。嫌な思いをしたり、他人嫌いだって言うけれど、そうやって笑いに出来る力が有るよね、それは凄い力だよ。だから惹かれたのかな…」

思わずポロッと、本音が漏れた事に気が付かない蓮輝と隆志。

だが、キューによって生きた屍となっていた凰哦が、何故かそれを聞き逃さなかったのだ。

「惹かれただと!?それは如何いう事だ?」

まるで威嚇するかの如く、目の奥から光を発する凰哦。

それに怯える隆志。

ガルルルル…

そう聞こえそうな感じだよね?この凰哦ワンコさんは…。

ったく、せっかく友達になれそうなのに、ブチ壊す気ですか?

スマホにキューのドアップ写真を表示して、それを手の平に乗せ、そっと凰哦ワンコさんの前に出し

「はい、お手!」

「ワンッ!」

「グッボーイグッボーイ!良く出来たね〜!偉いよ〜」

「ワンッ!」

「ってバカ!何でそんな怖い顔して、人を怯えさせるのさ!」

今回、一手間入れました。

そうしないと、怒りたいの僕なのに、逆に怒られそうだからね〜。

「…わ、悪かったよ…だがな!人前で犬扱いするんじゃ無い!恥かいたじゃ無いか…」

「それはごめん!でも、いきなり怯えさせた罰だからね!」

「…はい…」

「ったく…キューに不味いって言われて、落ち込んだと思えば、これだもの…。凰哦さんも料理の腕上げて、キューに美味しいと言わせたいでしょ?今度料理教えてあげるから、今日は大人しくしててよ?良い?」

「それ約束だぞ!それなら大人しくしてるよ」

「はいはい…本当ごめんね〜、これも何時もの日常なんだよね〜」

「ハハ…ハハハ…」

ただ笑うしか出来ない隆志。

正樹は、既に慣れてしまい、このやり取りを楽しみにしているのだ。

それは美砂も同じだった。

「改めて紹介するね、こちら宮津隆志さん。そしてこっちが迷惑掛けた叔父の凰哦さん。で、こちらが正樹お爺ちゃんで…」

「お待たせ〜、飲み物適当に買って来たわ」

「丁度良いタイミングで来た、この方がね、美砂お婆ちゃんです」

「?…美砂です」

「美砂お婆ちゃん、こちら宮津隆志さん」

「宮津隆志です、如何ぞ宜しくお願いします」

「まぁ丁寧に、此方こそ宜しくお願いしますね」

てな感じで、紹介は完了です。

其々に、買って来た飲み物を手に取り、聞き取り調査開始!

「さて隆志さん、貴方…カッパのキューがお見えになると仰いましたが…はぁて…それは一体…如何いう事…何でしょうか?ねぇ…」

パチコーン!

ジュースの缶で、凰哦さんに殴られました!

「いっつつ…」

「お前こそ、何ふざけてんだ!?何だそれ?2流か3流の刑事か探偵のマネしてないで、ちゃんと聞きなさい!」

「…はい…でね?本当に見えてるの?」

「切り替え早っ!…あっうん…見えてるよ…」

「えっ!それじゃまさか、隆志さんも何か病気とかしてるの…?」

「いや全く…子供の頃から、見えてたよ」

「あっ、そっちの方…そっか、それなら良かった」

「えっ?それ如何いう事?…」

「あっ何でも無いよ!気にしないでね〜…」

“?”となりながら

「…まぁそのおかげで、僕も変わり者として、蓮輝君程の事は無かったけど、虐められてたんだ…」

隆志も衝撃事実を話し、驚く蓮輝達。

「ええっ!それマジなの!?」

蓮輝が驚いた顔で聞くと

「本当だよ…」

「そんな過去、良く教えようと思ったよね…。聞いても大丈夫なの?」

「僕の前に、僕以上のブチ込んだ君が言う?」

「だね〜」

此処で“ドッ”と、全員が笑うのだった。

「でも本当に良いの?」

僕が確かめると

「ああ、勿論良いさ」

「それじゃ悪いけど、聞かせてくれる?」

「そのつもり…。でもそうだね…僕の幼い頃からになっても良いかな?」

「僕達は大丈夫!」

「それじゃ…僕が幼い頃、何故か他人には見えないモノが見えて、今でも続いてるんだけど、その事周りの人に言ったらさ、気持ち悪いとか、そうやって人の気を引こうとしてるとか、色々言われたんだよ…。それが何時迄経っても続いてさ、中学迄の僕を知ってる奴が居ないと思って、わざわざ遠い高校を選んでも何故か僕を知る奴が居て、結局高校でもバカにされたよ…。だから僕も蓮輝君と同じ、人を好きになる事は無かったんだ…」

まだ隆志さんの話は続くと思って、僕らは静かに隆志さんの話を聞く…。

「子供の頃から憧れてた消防士になりたくて、頑張って大学出て、消防士の試験を受けたんだけど、見事落ちちゃったよ…」

「えっ?何で?」

僕が聞くと

「見ての通りガタイは貧弱だし目も悪いしね、こんなひ弱な奴は、余程の事が無い限り受からないよ…。でも、少しでも携わりたくて、何とか消防関係の仕事には就職出来たよ。だけどやっぱり今でも夢は諦められなくて、トレーニングとか頑張って、再度試験受けたんだけど結果は同じ…。やっぱり僕には向いて無いのかと落ち込んでた日が続いたある日、仕事帰りに立ち寄ったオープンカフェで、蓮輝君、君を見たんだ」

「あっ、それって告白されたあのカフェ?」

「そう…」

「僕あのカフェ、タバコを吹かせながらボーッと出来るから、お気に入りなんだよね」

「そうなんだ」

「って事は、前に言ってた4年前に、僕を見付けたんだ…」

「ううん、違う。その1年前の約5年前」

「えっ!?更に1年前なの?…」

「うんそう…。最初の頃は、綺麗な女の人だと思ってたんだ…」

「隆志さんも、そうだったんだ…」

「あっごめん!」

「良いよ別に、何時もの事だから、気にして無いよ」

「そう?ありがとう。でさ、僕もあの店を仕事で嫌な思いした時とか、ちょくちょく利用してたらさ、蓮輝君を度々、偶然見かける様になって、見てるだけで少し癒される気がして、すっかり常連客になってたよ。そのうちキツい事とかあった時、つい癒されたくて、君を一目見たさにお店に行ってたんだ」

「うんうん、それで?まだ続きは有るんでしょ?」

「うん有る…。何度も君を見てたらさ、タバコを吸う時、何故か物悲しそうな表情をしたと思ったら、隣の席の子供が泣いてたら、必ずスケッチブックに絵を描いて、簡単な絵本を読み聞かせて泣き止ませたり、店の前の横断歩道で、渡り切れないお婆ちゃんとかをさ、荷物を持ってあげたりしながら、安全に一緒に渡ってあげてるの見て、何て素敵な人なんだろうって、胸の中が暖かくなってたんだ。だけど、やっぱりタバコを吸う時は、物悲しい顔になるのを見たら、堪らなく切なくなってて、何とかしてあげたいって感じた時、あっこれ…僕は初めて人を好きになったんだって、思ったのが4年前。その後、ナンパされてる君を見て、止めに行こうとしたら、“僕男だよ?”って胸を見せたりして、初めて男の人だと知ったよ…」

「あはっ…面倒い奴らの撃退法を見たんだ…」

「そうみたいだね、その時正直ショック受けたよ…。僕は勘違いして男を好きになったのかって…。だから初恋は叶わないモノだと諦める事にしたんだけれど、何故かちょくちょく店に行ってしまって、4年後のあの日、君がナンパされてるの見たら、これ以上誰からもナンパされて欲しく無いって、衝動的に告白してました…。しかも、いきなり結婚を申し込むという、バカをしてしまいました…」

「ふ〜ん…なる程ねぇ〜、そうだったんだぁ〜。…だそうだよ?凰哦さん」

「ああ、良く分かった…」

「えっ!?それで終わり!?」

「?…えっ?うん、そうだけど…。如何したの?」

「……いや、反応薄いと言うか…軽いと言うか…。気持ち悪いとか、その他の事は思わないの?」

「ううん別に…これと言って、特に何も無いよ?えっ?如何して?」

「いやだって、告白した時…君が…言っただろ?…気持ち悪い変態って…」

「言いました!本当にごめんなさい!!」

猛スピードで、頭を下げる僕。

「いや、それは本当に良いんだ…僕もそう言うかもしれないからね…」

「それなら良かった〜、でも本当にごめんね…。あの時は、そう言っておけば、次言われる事無いだろうと思って、簡単に言ってしまった言葉何だ…。だから、今は言わない言葉でも有るよ…。とても汚くて酷い言葉だもんね…」

「そう、そうだよね、傷付ける言葉は、どれも汚くて酷い言葉だよね…。僕も気を付けなくっちゃ…」

「そうだな、特に蓮輝は肝に銘じておかなきゃな!」

何故か便乗する凰哦さん。

お叱りの方向へと向かってません?

気のせい?

「は〜い分かったよ…」

「本当にだぞ!?」

「分かったって!…で隆志さん、話は変わるけど」

「んん!?…フッ…君は、本当コロコロ切り替え早いね…で何の話に変わるのかな?」

「隆志さんの仕事、聞いても良かったら何だけど、聞いても大丈夫かな?」

「えっ?仕事?」

「うん、仕事!僕は売れない絵本作家、隆志さんは?」

「絵本作家だったんだ、だから子供をあやす時に、即席絵本を見せてたんだね、納得。あ、僕は緊急時のオペレーターだよ」

「緊急時のオペレーター?」

「ああオペレーター、救急車とか消防車の電話受付のやつだよ」

「あれっ…もしかして…ちょっと聞きたいんだけど…」

「今度は何?」

「いや…僕が隆志さんを振った日の事なんだけど…」

「あの日ね…あれ以上に、まだ何か有るの?」

「うん、気になってた事有りまして〜、あの日の仕事の最中にさ、酔っ払いのイタズラ電話の対応…何てしてないよね?」

「あの日の事は全て覚えてるよ…。何せ、心底ダメージ受けたからね…」

「あぅ…ごめんなさい…」

「あ、ごめん!そんなつもりは無いから!…うん、確かに有ったよ」

「ありゃ…」

「確か…無事帰宅したとか、酔うと誰彼構わず電話するとか…。それが如何したの?」

それを聞いた僕と凰哦さんは、顔を見合わせ、2人揃って頭を下げた。

「重ねてごめんなさい!」

「本当に申し訳ない!」

これ以上ない程に、深々と頭を下げる僕と凰哦さん。

それに困惑する隆志さんと、青柳夫婦。

「如何したんだい凰君に蓮君」

「えぇ2人して、突然頭を下げて…」

「僕…謝られる事、何か有りましたっけ?…」

と、其々口にする。

「それが有るんです〜〜」

「誠に申し訳ない!」

更に謝る2人。

「えっ?本当に何に謝ってるんです!?」

「…その電話…僕達なんです…」

「はあぁっ!?…あの電話…それ、本当に…?」

「うん本当…」

「エエエエェーー!?」

「隆志さんの声、告白の時以外にね、何か聞き覚えが有るよなぁ〜って思ってたらさ、消防士になりたいって、でもなれなかったから、携わる仕事に就いたって言ってたから、まさかぁ〜、でも一応聞くだけ聞いてみようかな?って…聞いてみました…。そしたらビンゴ!!だったから、僕達、今メッチャ驚いてるし、懺悔の気持ちでいっぱいです…」

「まさか、こんな偶然が重なるなんて…本当に申し訳ない!」

此処にきて、更なる新事実発覚で、変な空気が漂って来ましたよ…。

「あぁ〜そうだったんだぁ…。あの電話、蓮輝君達だったんだ…」

「重ね重ね、ごめんなさい!」

「あっ良いよ!大丈夫だから!本当に!」

「えっ?…何で…?」

「確かにあの電話の後、またこの手のイタズラか!って思ったんだけどさ、何故かあの電話以降、あの日緊急通報の電話が鳴らなかったんだ。とても不思議な事だったから、イタズラ電話がもたらしたのかな?って、そう思えたからね」

「それ本当?」

「ああ本当!関係者以外には教えたり、見せたり出来ないけど、ちゃんと記録されてるから、嘘じゃないから安心してくれて良いよ」

「そうなの?…あぁ良かった〜、でも迷惑掛けたのは、紛れも無い事実だから、それだけはキチンと謝らせて?」

「そこ迄言うのなら…」

「「済いませんでした」」

「はい!」

「あ〜やっとスッキリしたぁ〜!」

「だな!」

凰哦さんも、安心した顔をしていた。

「それは僕としても良かったよ」

「ありがとうね、隆志さん!もっと前に、こんなに良い人だと知ってたら、もっと早く仲良くなれたのにね〜、残念…。それにもっと沢山、隆志さんの事知りたいなぁ〜」

その言葉を聞いた隆志は赤面して無言になるが、それとは打って変わって、悲痛な思いを出さない様に、無言になる凰哦達だった。

「でね、此処からは僕の我儘なんだけど、皆んな聞いてくれるかな?」

「何をだ?」

そう聞き返す凰哦。

「出来れば隆志さん、貴方にも聞いて欲しいんだけど…」

「えっ僕にも?僕は良いけど、一体何を?」

「それはね、春が訪れた時にしたい事何だ〜」

「「「「春?」」」」

「うん春!その時にしたい事を皆んなにお願いしたいのと、後は相談ってとこ」

そうほんの少しだけ、何かを匂わせながら、僕は如何話せば良いのかを考えていた。

何故なら、僕の…最後の願い事になりそうだから…。

さて今回で、隆志が蓮輝を好きになった経緯がメインで書きましたが、如何だったでしょうか?

此処数話、暗い話になりましたが、次話は明るい話になれば良いのですが、如何なるのでしょうね…。

では次話をお待ち下さいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ