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新しい家族

いやぁ〜人生って、いろんな事に出会え経験出来るものなんですね。

美味しいお蕎麦を食べに来て、まさかこんな事が待ち受けてるなんて、誰も思いませんよ。

僕自身、現実を眼の前にしながら、現実を全く受け入れて無いですから。

と言うか、受け入れたく無いのだよ!

目の前に居るカッパが、僕を直視している現実を…。

何故か僕だけが、このカッパが見えているみたいで、凰哦叔父さんだけじゃ無く、周りの誰もが見えていないようなのだ。

その上カッパも僕が見えている事を理解したのか、後に着いてきてからずっと、僕だけをガン見して動かないんだ…。

正直怖い…。

取り敢えず、君の事など見えてませんよ〜、ここにカッパなんている訳ないですよ〜と、完全無視する事にして、さっさと食べ終えて、何事も無かったかのように無事帰宅しようと決意する。

一刻も早くこの場から逃げたい思いで、再度店員を呼ぶ。

「あぁスイマセン…お待たせしました。ご注文お決まりでしょうか?」

「天ざる蕎麦2つ!以上!お願いします!」

「!…あっは、はい。天ざる蕎麦ですね、ではしばらくお待ち下さい…」

僕の気迫に少し驚いたようだったのだが、こちとらそれ以上に驚いてる真っ最中なのだから、許して欲しいのです。

でも…

「蓮輝、どうしたんださっきから?店に入った辺りから、何か変だぞ?」

そりゃ変にもなるよ!架空の生物じゃ無かったのか!?カッパって!それが目の前に居るのに、変にならない方が凄いよ!と言いたいが

「そうかな?僕は至って普通なんだけど、何処かおかしい?変?」

と、無難に答え

「それならいいけどな…」

ちょっと首を傾げながら、納得してくれたみたい。

カッパがこっちを見ているせいで、叔父さんとの会話、全く内容が入ってこない。

何度もチラチラと、カッパを見ているうちに、カッパの表情が何となく分かってきて、最初の頃の表情じゃなく、段々と何か悲しそうな表情になってきていた。

その表情を見て、何故か胸が痛い…。

そう思った時

「お待たせしましたー、天ざる蕎麦お2つ。…ではごゆっくり…」

やっと来たよと思った時、何故かカッパも目が輝いているのが分かった。

しかも蕎麦をじっと見ている。

(うん?蕎麦?…もしかして、蕎麦が好きなのか?それとも食べたいのかな?)

そう思いながら

「それじゃ食べようか、頂きます!」

凰哦が手を合わせて言うのに続いて

「さぁ食べよ〜、頂きます♪」

さっさと食べ終え帰宅しようと、蕎麦に箸を伸ばした時、カッパも箸を目で追う。

蓮輝はそのまま蕎麦を食べると、カッパは目を大きくし“あっ!”みたいな驚いた表情の後、目から涙を流しながら悲しそうに俯くのだった。

それを見ていた蓮輝は、何故か悪い事をしているような気になってしまう。

カッパのその様子を見ていて、気のどくに思えてきた矢先、突然カッパがその場に倒れ込んでしまう。

ビックリした蓮輝は、思わずカッパに寄り添ってしまう。

そしてついカッパに話しかけてしまうのだ。

「おい!おい!大丈夫か?突然倒れて…」

蓮輝のその行動が、数は少ないが数人の客と店員が、不思議そうに見る。

凰哦も、突然何も無い所で、独り言をする蓮輝が心配になり、小声で

「おいおい蓮輝!どうしたんだよ!?本当お前今日、凄く変だぞ?何してる…早く席に座らないと…」

その言葉に苛ついて、人の気も知らないでと思い

「少し黙っててよ叔父さん!あっ違う凰哦さん!もぅ五月蝿いんだから!今取り込み中なの!」

凰哦は、蓮輝の言葉にかなり動揺して

(あ…あの蓮輝が…俺の蓮輝が…俺に対してこんな言い方するなんて…今まで反抗した事ないのに…今頃反抗期なのか?…あぁ俺の可愛い蓮輝は何処にいったんだ…蓮輝…)

とピクリとも動けなくなり、ガラガラと心が音を立てて崩れていく。

「お前、もしかしてお腹が空いているのか?さっきから僕の蕎麦を食べたそうに見てたけど、蕎麦食べたいのかい?」

一応凰哦に気を遣って、小声でカッパに問いかける。

すると蓮輝の言葉がちゃんと分かってるみたいで、弱々しくコクンと一度頷くのだ。

それを見た蓮輝は、1つ大きめのため息を吐き

「分かった…それじゃ僕の残りで良かったら、食べるかい?嫌なら別のを頼むから、遠慮しなくて良いからね」

その言葉に、歓喜の表情になるカッパ。

それを見ている凰哦が堪らず

「蓮輝!…本当にどうしたんだよ?お前は一体何と話してるんだ?」

その質問に

「信じないだろうけど、カッパ…」

「ハァッ!?……カッパ!?おいおいお前…本気で言っているのか?」

「本気だよ…まぁその反応…無理はないけどね…」

その後も凰哦が何か言うのだが、相手にせず

「さぁここに座りな〜、ヨイショっと!」

自分の席に、カッパを持ち上げて座らせた。

「さぁ早く食べなよ…」

だが食べようとしない。

「あっ嫌だった?僕の食べ残しは?別の頼もうか?」

その問いに、違うと首を振る。

「違うの?…それじゃどうしたのかな?」

すると、蓮輝と蕎麦を交互に指すので

「あぁなる程〜、お前が残りを食べると、僕の分が無くなる事気にしてたんだね…食べても大丈夫だよ!僕最近食欲が無いから、余っちゃうなぁて、思ってたからさ」

それを聞いたカッパは、ニコッと笑い残りの蕎麦と天麩羅を食べ始める。

「どう?美味しいかい?」

蓮輝に聞かれ、満面の笑顔で大きく頷くカッパ。

それを見て

「良かったな…足りないならお代わりしても良いからね!ドンドン食べなよ…」

そのやり取りを見ながら凰哦は、目の前で次々と消えていく、蕎麦や天麩羅に、驚きを隠せなくなっていた。

「な、なぁ蓮輝…これはどうなってるんだ?…蕎麦や天麩羅が勝手に消えていくぞ…何が起きてるんだ?…」

確かに、カッパの姿が見えない者にしたら、怪奇現象が目の前で発生しているとしか、思えないだろう。

僕の心の中で、勝手に決めた事なのだが、その確定事項の為、これじゃ今後も何かと不便だなぁと

「ねぇ聞いても良いかな?僕はお前が見えるけど、見えない人に見える様にする事は、出来るのかな?」

馬鹿な事聞いているなぁと、しかもカッパの言葉が分かる筈がないのにと、期待はしていなかったのに

「出来るよ!」

「!!」

カッパが日本語を話す事に驚く。

「お前話せたのかよ?…なら何故さっきは、話さなかったんだい?」

「お腹が空いてね、力が出なかったの…」

(ほぅなる程ね…それくらい何も食べてなかったのか…だから倒れ込んだんだな…)

カッパとのやり取りで、置いてけぼりの凰哦が、限界になりそうだと

「あの…ちょっと蓮輝…お前、今何かと喋ってるんだよな?…今微かに、お前の横から声が、聞こえた気がするんだが…」

段々と青ざめていく凰哦を見て

「悪いけどお前の姿、叔父さんにも見える様にして欲しいんだけど、叔父さんヤバくなってきたみたいだから、出来れば今直ぐ!」

するとカッパが手招きしてくるので、近付いてみると、カッパは僕の手に触れてくるのだった。

その瞬間、また先程感じた静電気の様な痛みが流れ、声にならない声を出した僕に、カッパが

「そのまま、その叔父さんって人にね、触れてみてぇ…今のね、僕のね、力じゃね、出来ないの!だからね、お兄ちゃんにね、手伝って欲しいの」

本当に3歳児の様な喋り方が可愛い上に、お兄ちゃんって言われて、思わずキュンときちゃった。

「分かったよ、力が足りないんだね?だから僕を通して、力を使うんだ?…でもどうして、僕を通さないといけないのかな?」

「えっとね、うんとね、お兄ちゃん僕の事見えてるでしょ?だからね、お兄ちゃんの力をね、使うの!…後はよく分かんないの…」

3歳児が一生懸命説明する時って、こんな感じなんだろうなぁと思いながら

「う〜ん何となく理解したよ、それじゃこのまま叔父さんに触ればいいんだね?」

「うんそう!」

屈託のない笑顔をして言うものだから、思わず抱きしめたくなっちゃった。

こんな気持ちになるなんて、初めての経験かも…。

「ーーそれじゃ触れるから…」

そう言い終えて、凰哦に伝えようと見ると、青ざめているのがバッチリ見てとれた。

どうやら、見えない所からする声に、怯えてしまっているみたいっすね。

ありゃ遅かったかな?まぁいいや…こんな叔父さん見るの初めてだし、面白いし、いつもとのギャップがあって、何処か可愛くも思えるから、しばらくこのまま眺めて、放置していようかな?…写真か動画を撮りたいけど、流石にそれは可哀想だからやめとこっと。

そんな事を考えていたら、更に酷くなっていく様がわかり、残念ここまでかぁ…と

「ねぇ叔父…凰哦さん、手を出して」

無言のままピクリともしない凰哦。

あっ手遅れかも…

「ねぇ凰哦さん!ねぇ凰哦さんってば!聞いてる?」

少し強目に話し掛けると、ハッと意識が戻る凰哦。

「なっ何だ蓮輝?ど、どっどうした?」

意識は戻っても、動揺はそのままなんだ…ちょっと面白くて良いねぇ〜。

「どうしたじゃなくって、凰哦さんの手!出してって言ってるの!」

その言葉に凰哦は

「おっ俺が手を出して、ななな何をする気だ!?…変な事とか、怖い事しようとしてるんじゃないだろうな?」

おぉっと、相変わらず勘のいいお人っすね…へへへっその通りっすよん。

でも悪いけど、僕の為に犠牲になって下さいまし!凄く面白くなりそうだもん〜。

「えっ?まさか!凰哦さんにそんな事しないよ〜!ただちょっと凰哦さんの手に触れたかっただけなんだ。ちょっとここ冷房効いてて、少し温もり感じたいなぁと…ダメかな?」

こんな感じで言えば叔父さんは何故か、何時も嬉しそうにして、お願いを聞いてくれる。

今回もいけそうだと、確信しています。

そう思われている当の本人は

(蓮輝が俺を頼ってくれてる…それも俺の温もりが欲しいとは、何とも可愛い奴だな…フッまだまだ子供だな…)

と蓮輝の事になれば、ポンコツになってしまう凰哦。

少し頬を赤くし、周りを気にしながら

「しょうがないな…蓮輝の頼みだから聞いてあげよう!ほらっ、手を握ってやる。…蓮輝、温まるのは手だけでいいのか?他は大丈夫なのか?」

今し方、周りを気にしていた人が、他も温めなくても良いのかと聞く事が、蓮輝にしてみたら面白いのだ。

一体どんな風に温めるつもりなのだろうか、聞いてみたいが、それは聞かないでも、想像しただけで面白いから聞かない事にする。

「手だけで充分だよ、有難う凰哦さん、それじゃお願いね!」

「あぁ、それじゃ蓮輝の手、握るぞ…」

そう言って握った瞬間に襲う、静電気の様な痛みが流れた。

「ファグッ!…うぅん!?何だ今の……蓮輝…さてはお前…何かしたんじゃないのか?」

あっこれ、本気で怒る手前のヤツだ…その前に先手!

「ごめんね騙しちゃって…でもそうしないと、叔父…凰哦さん嫌がって、絶対させてくれないでしょ?」

「お前今、言い方間違えそうになったな!叔父さんって言いそうになったの何回目だ?それに当たり前だろう!嫌な事させられるの分かってて、誰が好んでするんだ?」

「うん、本当にごめん…」

「ごめんねじゃない!」

「はい…でも凰哦さんの手の温もり、本当寒くて欲しいと思ったのは事実だし、温かくて良かったよ」

「おまっなにっそんな…ったく、分かった許してやるよ…」

蓮輝の言葉が嬉し過ぎて、言葉に詰まりながら結局許してしまう、激甘過保護の凰哦。

蓮輝は、凰哦のそういった事を充分把握しているので、毎回チョロいと思っている事など知らない凰哦。

「でね、今のビリってきたのをしないとさ、こいつが見えないし、話が進まないんだよね…だから本当ごめんね!」

蓮輝が言うこいつとは、誰の事だと考えて

「こいつって、お前もしかして…さっきから言っている例のアレか?」

「うんそう!カッパのこいつ、凰哦さん見える?」

蓮輝が指差す所を見るが

「んん?いや俺には何も見えないぞ…一体何…ん?」

話をしていくうちに、何やらボンヤリ見えてきた。

よく見える様に、目を細めてじっと見てみる。

すると段々と、カッパの姿が濃くなってきて

「うわぁっ!なんだ!?」

思わず大きな声で驚くと、店内がそれに驚き一斉に注目する。

店員も何かありましたかと、聞いて来るので

「あっすいません…大きな声出して…静電気で驚いただけです。お騒がせしました…」

と、ちゃんとフォローする蓮輝だった。

「凰哦さん、こいつの事見える様になったよね?」

「おぉぉぉぉ、見えるぞ…なぁ蓮輝…こ、これ幻覚とかじゃ、ななな、ないよな?」

あー、これはしばらく、まともに話せないなぁ…。

叔父さんが、もう少し落ち着くまで待つとしよう。

それよりこいつ、余程お腹が空いていたのか、物足りなさそうにしてるみたいだなぁ…。

「まだ足りない?足りないのなら、遠慮しなくて良いから、もう一杯頼もうか?どうする?」

僕の言葉に、即座に反応するカッパの目は、キラキラと輝いていた。

あぁー本当こいつ可愛いわぁ〜、メッチャキュートだよ〜。

僕も笑顔で

「食べたいんだね?それじゃ蕎麦だけ追加しようなぁ〜!」

カッパは、何度もウンウンウンと言うように、頭を縦に振って万歳をする。

その行動を見るだけで、癒される蓮輝。

「すいませーん、ざる蕎麦1つ追加でお願いしまーす」

「ざる1つ追加ですね?承りましたー!ざる1追加ー!」

店員さんのよく通る声が、店内に響く。

蕎麦が来るまで、僕はカッパを観察する事にした。

空想生物の筈のカッパが目の前に居るんだよ?観察しなくてどうします?それにメッチャ可愛いんだよね!後もう1つ、まだポンコツから立ち直ってない叔父さんの、正気になる迄、手持ち無沙汰だからね。

叔父さん、もうしばらくそのままポンコツでいてね、お願いだから!その間に、僕は僕でカッパの観察に専念するから、頼むからポンコツのままでいてよね!

そんな事考えながら、カッパの行動や仕草などを観察していたら

「追加のざる蕎麦、お待たせしました」

と、蕎麦が届いた。

カッパは両手を上げて、全身で喜びを表現するものだから、可愛くてもぅキュン死しちゃいそうだ…。

あぁ可愛い…と思ってたら

「ふぅー…少しは落ち着いたぞ…よし!大丈夫!」

チッ!正気に戻りやがったぞ…、まだポンコツで良かったのに…。

「…凰哦さん、どう気分は?少しは話出来そう?」

蓮輝の問い掛けに、凰哦は

「正直まだ混乱しているが…あぁ何とか落ち着いたから、心配する事はないよ!…済まないな、心配掛けて…有難うな!」

いや心配なんてしてないよ?全くもってしてません。

「落ち着いたから良かった!別に謝らなくても良いからね!取り敢えず、お茶でも飲んで一息付けようよ」

「あぁそうだな…」

本当僕って、叔父さんの扱い上手くなったよなぁと、我ながら感心しました。

叔父さんを弄んでる僕だけど、やっぱり叔父さんを見ると、まだ混乱してるのに、叔父さんの仕草は様になってて、格好いいなぁ〜と、モテてる筈なのに何故結婚しないのだと思ったりする。

本当不思議…。

そこら辺の事は、今度聞いてみよ〜。

今はこのカッパの事を考えなくっちゃね。

さて如何するかな…。

カッパ好きですか?と聞かれたら、取り敢えず相手を見てから、返答しようと思います。

突然そんな事を聞く人に、マトモな方が居るとは思えないので…。

僕も突然そんな事を聞くタイプの人なんですがね。

取り敢えず、カッパは好きだと思います。

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