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冬が来る前に…

青柳さん夫婦と、僕と凰哦さん、それとカッパのキューが、血縁や種族の違いを超えて、お互い大切な家族として、これからもずっと共に、支え合っていこうと、そんな素敵な絆が生まれた日から、早くも1ヶ月が経つのでした。

その間、ちょくちょく店に顔を出しては、すっかり孫扱いされる僕とキュー。

青柳夫妻が、僕の事を

「蓮君」

「蓮ちゃん」

と呼び、キューの事は

「「キューちゃん」」

と、それだけなのだが、ちゃん付けが気に入ったのか、青柳夫妻に名前を呼ばれると、とても嬉しそうに返事をするんだよね〜。

僕とキューが、青柳夫妻を其々呼ぶ時

「正樹お爺ちゃん」

「美砂お婆ちゃん」

って言うと、とても幸せそうな顔をしてくれるから、その顔見たさに、ついつい通ってしまうんだよね〜。

大切な人増える事って、幸せも沢山増えて、とても良いものなんだと感じてる自分に、少し驚いてるけどね。

凰哦さんも

「正樹父さん」

「美砂母さん」

が、定着して嬉しそうだし

「凰君」もしくは「凰哦君」

「凰さん」もしくは「凰哦さん」

と青柳夫妻も、凰哦さんをそう呼ぶ事に、幸せを感じてるみたいで、本当に良い出会いだったんだと、心の底から思えてますね!

それと土地開発の件も、かなり動きがあったみたいで、ここ最近、とても慌ただしくしてる凰哦さんは、社泊する事が増えてきて、なかなか大好きなキューに会えなくて、かなりストレスが溜まって来てる感じなのですよ…。

ってな訳で、僕がキューの入ったリュックを担いで、運動不足解消も兼ねて、自転車で凰哦さんの会社の近くに在る、喫茶店に向かい、この喫茶店にてしばし凰哦さんを待つ僕達。

家に居る時は、暖房が効いてて元気いっぱいなキューだけど、こう寒くなった外に出ちゃうとウトウトしだすんだよね〜。だからキュー専用の毛糸の帽子とマフラーに、セーターと手袋を装着させて、お出掛けしてます。

これ全て、美砂お婆ちゃんの手作りなんだよね!

何も無い所から物を作り上げる事って、本当凄い事だよね?

それもこんな細かい細工を施すなんて、僕には出来そうも無いよ…。

特に凰哦さんには、ムリ!だろうね…。

後それにね、セーターと帽子を繋げたら、縫いぐるみみたいになって、キューの存在を感じさせない仕様になってます。

まぁそのおかげで、縫いぐるみ好きなヤローとして、定着しつつ有るんですがね…。

でも感謝の方が大っきいから、気にならないけどね〜。

縫いぐるみのフリして、大好きなホットミルクを飲むキューを抱えたまま、ボーッとしてたら

「悪い…待たせちゃったな…」

そう言って、渋メンの面影も無い凰哦さんがやって来た。

「その姿見たら、遅い!とか言えないよ…。まぁ本当に気にして無いから、先ずは席に座って、人知れず、キューを堪能しなよ…」

「そうか?…それじゃそうさせて貰うな!…ああぁキュー!会いたかったよ〜〜〜!」

と、猫や犬のお腹を吸う感じで、凰哦さんがガバッとキューを思いっ切り吸い尽くすのでした。

「……………気は晴れた?…どお?少しは癒えた?……」

「…………」

「キュー、凰哦パパをペチィーンとして上げなさい!」

「?」

言われたまま、凰哦さんの頭を平手打ちするキュー。

「おおっ!キューに叩かれた!おおぅ!これはこれでとても良いぞ!」

「あ、ありゃ?」

ここに来て、変な趣向を開花させたみたい…。

「よし!キュー!もう1回お代わり!なっ!?もう1回!」

パァーーー………ン……

キューの代わりに、僕がお代わりを差し上げました♪

こんな所で、ポンコツ魔人になって貰っては困ります!

そう思って、メニュー表で一喝しましたよ!

「……最近…容赦無いな…」

「当たり前でしょ!何バカやってんだよ!?今キューもメッッッチャ困ってたんだから!」

「…済いません…余りにもストレス溜まってて…理性が効かなくなりました…」

「ったくもぅ!…だからこうやって労いに来てるのに、また理性を無くす様なら、キュー連れて来ないからね!」

「…そんな事言わないでくれよ〜……まだまだ帰れない日が続きそうだし…思ってる以上に、ストレス溜まってるんだよ……」

「だからこそ、こうやって来てるんじゃない!僕だって凰哦さんを心配しているから、あれこれ用意して持って来てるんだから…。でもそんな風になるのなら、渡さないよ?」

「!えっ!?何を用意してくれたんだ!?」

「…はい、先ずはこれ…」

別に持って来ていたトートバッグから、キューの形をした手編みの縫いぐるみを出す。

「!!!これっ!キューそっくりの縫いぐるみじゃないか!凄く良く出来てるな!!」

「それ、美砂お婆ちゃんがね、凰哦さんの為に作ってくれたヤツなんだよ。美砂お婆ちゃんも、凰哦さんの事、キューが居なくて寂しいだろうからと、何日も夜鍋して作ってくれたみたい」

「それ本当か!?」

「うん本当…。2人共、凰哦さんが可愛い物好きな事、そして直ぐポンコツ化する事、バッチし理解してるからね…」

「えっ!?…それもマジか?…」

「うんマジ!…僕から言った訳じゃないからね!普段の凰哦さんを見てて、理解したって言ってたから!だから普段から気を引き締めてくれないと!分かった!?」

「……はい…分かりました…」

「それと、これはキューが描いた凰哦さん」

そう言って、キューが描いた絵を渡すと

「!!!!!」

パァ〜〜〜パパァ〜〜〜……

凰哦さんの頭上から、光がさしてるかの様に思えるくらい、歓喜の表情をして、言葉を失くすのでした。

「ちょっと、何か感想は無いの?」

「こ、これ…キューが俺を描いてくれたんだよな?」

「だからそうだって言ったでしょ?」

「しかも此処に、おうがパパって…ああ!嬉しい…」

満面の良い笑顔で、滝の様に涙を流す凰哦さんに、少し引いてしまいました…。

「……ハハ…喜んでくれたのは良かったけど、こんなに情緒不安定になるんだったら、これは止めておこう…。これ見せると、危険過ぎるからね…絶対不審人物の、怪しさ1000%になりそうだからね……」

そう呟いたのを聞き逃さない凰哦さんが

「何!?それはどんな物なんだ!見せなさい!早く見せなさい!早く早く!!」

「ダメ!情緒不安定な貴方には、見せられません!」

「そんな事言わないで、お願いだから見せてくれよ〜!」

「…それじゃ、見ても不安定にならないって、今後もしっかりやって行く事を約束するのなら、見せてあげるけど、その約束守れる?」

「ああ!約束する!絶対守るからさ!だから見せてくれよ〜お願いだぁ〜!」

「……分かったよ…それじゃ()()()けど、少しでも不安定になりそうだったら、即終了するから、そのつもりで気を引き締めて観てね!」

「あぁ分かった!」

「じゃ、はいこれ…」

と、僕は自分の携帯を出して、凰哦さんに動画を観せる。

その動画は、蓮輝が撮影した、此処最近のキューの動画だった。

その動画には、今し方凰哦に渡したキューが描いた絵の、作成動画だった。

画面の中から

「ねぇキュー、それ誰を描いてるの?」

「これねぇ、凰哦パパだよ!」

「えっ?凰哦パパなの?…また何で?」

「凰哦パパ、お仕事忙しいんでしょ〜?」

「そうなんだよね…とても忙しくて、キューになかなか会えないから、寂しく思ってるみたい…」

「だからねぇ、僕も寂しいからね、凰哦パパ沢山描いてね、僕の寂しいの無い無いしてるの!こうすればた〜くさん、凰哦パパが居てくれるもん!」

「そっか!それは良い考えだね!出来ればキュー、自分と凰哦パパが一緒の絵も描いてくれる?」

「?…僕と凰哦パパが一緒の絵?」

「そう!描けるかな?」

「うん!僕描くねぇ〜!」

「それ描けたら、凰哦パパにあげても良い?」

「良いよ〜!」

「それじゃ宜しくね、キュー!」

「は〜い!」

そこで動画が終わったのでした。

無言でキューを抱き寄せ、必死にバカな行動になりそうなのを堪え、何とか耐える凰哦。

だが、キューと蓮輝の優しさに触れた凰哦の顔は、涙目になりながら、菩薩の様な穏やかな笑みを浮かべ、幸せを噛み締めていた。

その姿に心から、やってあげて良かったと思う蓮輝だった。

「如何?…心は癒された?」

「……ああ、とても癒されたよ、ありがとう…」

「それなら、僕としても良かったよ。はいこれ、今動画に出て来たキューと凰哦さんの絵。それとこの動画、凰哦さんの携帯に送るから、ストレス溜まりそうな時にでも、また観てね〜!それに、動画はこれ1つだけじゃ無いから、新しい動画も、ストレス溜まりそうになったら、また送るよ」

「そうなのか?その全てを今直ぐ観たいが、取り敢えず今後の楽しみにするよ!…さぁ〜て、心のエネルギーも充電出来た事だし!頑張って来るかぁ!」

「おっ!?気合い充分みたいだね?」

「ああ!お前達のおかげでな!それじゃ戻って頑張って来るよ!」

「うん!頑張って来てね〜!」

「凰哦パパ〜、頑張ってね」

「あぁありがとう!後美砂母さんと、正樹父さんにも、ありがとうって伝えておいてくれないか?」

「了解〜!」

「それじゃ!」

気合い充分な後ろ姿は、何時もの渋メンの凰哦さんに戻っていた。

凰哦さんを見送った後、青柳さんのお店に向かい、凰哦さんがとても喜んでいた事を伝え、店を後にした。

その時、後ろの方から

「ママ〜、あの人の背にねぇ、カッパが居るよ〜」

と、ドキッとする様な言葉が聞こえてきた。

そっと振り向くと、そこには母親と買い物帰りの小さな女の子が居て、僕を指差してそう言っていたのだった。

「こらっ!人を指さしちゃダメでしょう!?それにあれはカッパの縫いぐるみよ?」

「えぇ〜、でも目が合ったよ〜」

「それは気のせいよ?ただそう思えただけよ…。さぁ早く帰って夕食の準備しないとね…」

「ん〜…」

腑に落ちない感じな女の子。

でも母親に違うと言われて、素直に納得して僕達の横を通り過ぎて行く。

良かった、グッジョブお母さん!

でもあの女の子には、悪い気がするね…。

だって、本物のカッパなのだから…。

そのまま家に帰るのを変更して、近くの神社に行く事にした。

其処は、少し長めの階段があって、階段を登り切ると、街が一望出来る場所なんだよね。

しかも余り人が来ないから、たまにボーッとしたい時に、此処で街を見下ろしたりしてる、お気に入りの場所なのです。

ハァハァ言いながら、最上段迄登り、其処に腰を掛けて、キューを抱きながら街を見下ろす。

「キュー、あの女の子には、キューの姿見えたね…何でかな?」

その質問に、キューは

「えっとね、たまにねあるの…」

「えっ?そうなの?僕達みたいに、キューが見せようとしなくても、見える人居るの?」

そう驚きながら、聞くと

「うん!居るよ〜。ずっと昔にね、お山にいた時は、よく見つかってたよ…」

「そうなの!?…で、どんな人がキューの事見えてたりしたのかな?分かるのなら、教えて欲しいんだけど…」

「…えっとね、とても力が強いお坊さんっていうの?そんな人とかね、ちっさい子供とか、とても歳をとったね、お爺ちゃんとかお婆ちゃんも、僕達の事見えてたと思うの〜」

「へぇ〜そうなんだ…。あっでも正樹お爺ちゃんと美砂お婆ちゃんは、見えて無かったよね?」

「うん!だって、とても元気なんだもの〜」

「んん?元気?…それ如何いう事かな?」

「僕も良く分かんないけどね、人里に降りた時にね、僕が見えたお爺ちゃんとか、お婆ちゃんって、お布団でずっと寝てた人ばっかりだったの…」

なる程ね…そういった元気って事なんだ…。

「後ね…」

「えっ?まだ続きが有るの?」

「うん、有るの〜。僕が見える人、もう直ぐちんじゃう人が見えるみたいなの…」

それって、死んじゃう人って事!?

それマジ!?

「…ねぇキュー、そのもう直ぐちんじゃう人ってさ、どれくらいでちんじゃうのかな?」

「う〜〜〜ん…確かね、僕が前に会った人はね、僕が会ってからね、1年くらいだったと思うの…」

1年…そんなに短いんだ…。

これは凄い情報を聞いた事になるよね…。

それじゃ病院とかは、なるべく避けた方が良いかもね…。

「ハァ〜、思いの外、凄い事聞いちゃったなぁ…」

そう思ってたら、キューが周りを見渡して

「ねぇ蓮輝お兄ちゃん、此処どんな所なの?とても澄んだ綺麗な感じする!」

「ん?あっ此処はね、神様を祀ってる神社って所だよ」

「神様?」

「そう、神様。僕達には目に見えない、とても偉い、凄い力を持っててね、沢山の人を守ってくれる存在なの」

「それが神様?」

「うんそうだよ、とても凄く偉い存在なんだ」

「…それ僕達にもねぇ、居るよ〜!」

「そうなんだ!僕達はね、神様って言ってるけど、キュー達は、何て言ってるの?やっぱり神様?」

「うぅん違うよ、キュー達はね、キューっていってるの!」

「………はいっ?…えっ…キュー達は、神様の事…キューって…言ってるの?…」

「うん!だからね、とても怖い時とかね、驚いた時にね、助けてってキュー!キュー!って、お願いするのぉ〜」

「…あはっ…あぁだからトイレの時、キューキューって叫んでたんだ…ハハハ……」

「だからね、蓮輝お兄ちゃんとねぇ、凰哦パパがねぇ、僕の名前決めてくれた時にねぇ、僕キューで良いのか考えちゃったぁ〜!でも蓮輝お兄ちゃんとねぇ、凰哦パパにねぇ、キューって呼ばれると嬉しくてねぇ、僕の名前キューにしたの〜!」

となるとさ、僕達はずっと今迄、カッパ語でキューの事を神様神様!って、言ってたんだね…。

まぁキューは、僕達にとっては天使で有り、福の神でも有るのだから、それでも別に良いよね?

でもキューが神様かぁ…それはそれで、とても純粋な神様なんだね…嬉しいなぁ〜。

そうだ、この事凰哦さんと青柳さん達にも、教えておかなくっちゃね!

きっと驚くだろうなぁ〜。

気が付けば、だいぶ日が暮れて、街明かりがポツポツとつき始めていた。

「そろそろ帰らないとね〜、でも今から帰っても、夕食の準備はして無いし、如何しようかなぁ…」

そう思いながら、キューを担いで階段を降り、自転車に跨った時

「あああああっ!!」

突然襲う、全身の痛み。

ガシャァーン!

カラカラ音をたてて車輪が輪わりながら、倒れる自転車。

僕はその場に倒れ込んでしまう。

何とか常備していた痛み止めを飲み、痛みが和らぐのを待つつもりだったけど、なかなか治らない痛み。

如何しよう…このままじゃキューが凍えてしまうよ…。

しかもキューの事見える誰かに見られたら、とても不味いよね…。

ごめん、正樹お爺ちゃん、美砂お婆ちゃん、悪いけど2人に助けて貰おう…。

この直ぐ近くだから、電話すれば助けに来てくれるよね?

そう思って痛みに耐えて、何とか電話を掛け

「もしもし、蓮ちゃん?如何したんだい?」

「……ま…さき…お、お爺…ちゃ……」

其処で力尽きた僕は、またあの日の様に、意識を無くす。

「蓮ちゃん!?蓮ちゃん!!如何した!如何したんだ!?」

必死で蓮輝を呼ぶ正樹なのだが、蓮輝からの返事は無く、ただ虚しく、蓮輝の携帯から正樹の声だけが聞こえるだけだった。

「蓮ちゃん!蓮ちゃん!!」

焦る正樹なのだが、それ以上如何する事も出来ず、蓮輝が倒れている場所も、人気は無く、蓮輝が倒れている事など、誰も気付かずに時は流れて行くのだった。

今話の凰哦パパが新たに変な方へと、開花してしまいそうになりました。

キューの世界ではキューとは神様だという事など、色々分かった内容でしたが、如何でしたか?

では次話をお待ち下さい。

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