それから
今朝は少し寝坊してしまいました。
慌てながらも、洗面所に行き、顔を洗ってキッチンに向かう蓮輝。
もう凰哦さんは起きてるかな?と、思っていたけど、リビングには居ないから、未だ起きてないのかな?
まぁいいや、その方が助かるからねぇ〜。
さっ、昨日海老の蒲鉾を蒸してる間に作った、うどんの生地を切り分けて麺にしますか。
その間に鍋にお湯を沸かして、具材を冷蔵庫から出しておこう。
「ふっふふっふっふ〜ん♪」
鼻歌交じりで、朝食の用意をしてたら
「おはよう…なんだか機嫌が良さそうだな?ゆっくり眠れたのか?」
と、凰哦さんが起きてきた。
髪ボサッボサになりながらも、しっかり目の下にクマを作ってのご登場です。
「おはようって、凰哦さん寝てたんじゃないの?目の下のクマ、凄い事になってるけどさぁ、まさか朝迄キューを眺めてたんじゃないだろうね?」
「ハハハッ…そんなまさかぁ〜…」
「見てたね!」
「…はい…見てました…」
「ったく、少しは我慢覚えなさいよ!体が持たないよ?…でも寝てないのに、どうすればそんなボサッボサの頭になるのさ?」
「いや、一応寝たんだよ?本当!1時間くらい…ただ起きてから、キューのベッドに顔を乗せて、キューを見ていたらな…あいつの寝相が悪くて…髪の毛わしゃわしゃされてしまって…こんな感じに仕上がった…」
良かった、ここに良い見本が居てくれて。
僕はそうならない様に、気を付けようっと。
「で、今日はどうするの?」
「ん?どうするって?…」
「青柳さんの事だよ!」
「あぁっ、青柳さんの件かぁ…」
「青柳さんの件かぁじゃないよ!そんな調子で会社とか、青柳さんに会いに行くのは失礼なんじゃないの?そこんところ、どう思ってるの?」
「…だよな…」
「しばらく休むって言ってたけどさ、それはまさかこんな事有るとは思って無かったから、会社は良いとして、青柳さんだけはしっかり凰哦さんが対策しないとダメじゃん!」
「そうだよな…」
「キツイ事言って悪いけどさ、凰哦さん、もっとしっかりした大人だと思ってたけど、キューが来てからダメになってんじゃんよ!もっと自覚を持ってよね!余り酷いと、僕が対応するよ?しかも凰哦さんと違って、僕のやり方で、エゲツないやり方でやっちゃうよ?それでも良いの?」
「…返す言葉が出て来ないよ…しっかり反省します…」
「ったく、カッコいいところ見せてって言ったのに…。まぁ過ぎた事は良いとして、反省はしても次に活かせば良いんでしょ?凰哦さんが、部下にそう言ってたんだからさ…」
「…そうだよな、俺自身もそうしないとな…」
「だからさ、朝食食べたら一旦寝なよ?それからでも遅くはないからさ、どうせ優秀な部下が今頃頑張ってくれてるだろうから、ちょっとは甘えても大丈夫だと思うよ…」
「そうだな!そうするよ!…おっ?今朝はうどんなのか?」
「うんそう!麺も手作りなんだ〜。上手く出来てたら良いんだけれど、初めて作るから味は保証しないけどね〜」
「いやお前の作る料理は、お世辞抜きに言っても美味いから、大丈夫だろ!それじゃキューを起こして一緒に顔を洗ってくるよ」
「分かった〜、それじゃ宜しくね〜。その間に作っておくから」
そう言って凰哦さんは、キューを起こしに向かうのだった。
さぁ朝食も準備出来たし、後は凰哦さんとキューが来るのを待つだけ。
………………………おっそいな…もしかして、凰哦さんキューの寝顔見てんじゃないの?…ったく!ポンコツ魔神は変わらないのか?
そう思って、凰哦さんの部屋に行くと、必死にキューを起こしている凰哦さんがいた。
「起きてくれよ〜キュー…朝ご飯出来てるぞ〜!…お〜い!キュー!…」
「…ねぇ凰哦さん…キュー起きないの?」
「あっ蓮輝!…そうなんだよ…。正直メチャクチャ困ってるんだ…」
「ずっと起こしているんだよね?」
「ああ、早く一緒に食べたいから起こしてはいるんだが、叩いて起こす訳にもいかないし…だから揺さぶってみたりしたんだけどな、ケヘケヘ笑うだけで起きないんだよ…」
「キュー見てたら、何か良い夢みてるみたいだよね…メッチャヨダレ垂らして笑ってるもんね…しょうがない、ちょっと代わってくれる?僕が起こすからさ…」
「そうか?それならお願いするよ…」
僕は両手でガッチリキューの顔をホールド!する。
「お、おい蓮輝!何しようとしてるんだ!?」
凰哦さんの疑問をムシして
「ずっとこのまま寝てるつもり?起きないのならこれから先、キューのご飯全部、凰哦パパが食べちゃうけど良いのかな?もぅ食べられなくなるけど良いの?」
と、僕が言うと
「お前!俺を悪者にするなよ!」
って言ってきたが、僕のその言葉でパッチリと目を覚ますキュー。
「や〜!僕ご飯食べるもんー!」
しっかり目を覚ましてくれました!
それを見た凰哦さんは
「キュー…お前ってヤツは……トホホ………」
と、肩を落とすのでした。
「さ!凰哦パパと顔を洗って、早くご飯食べるよ!」
「うん!凰哦パパ、早く顔を洗いにいこー!」
と、ベッドから飛び降りるキューでした。
キューと顔を洗って来たのだけれど、ボサボサのままの凰哦さん。
「気にするな…頼むから…どうせ1度寝るからこのままで良いんだ…」
と、何も言ってないのに、僕の目線で言い訳をするのだ。
「いや僕何も言ってないよ?それより早く食べよ?うどん伸びちゃったからさ…」
「そうだな…それじゃ食べようか。キュー、宜しく!」
「うん!い・た・だ・き・ま・す!」
「「はい、い・た・だ・き・ま・す!」」
スズーッと音をたてて伸びたうどんをすする。
キューには、食べ易くカットしたうどんを用意していたので、キューはすする事はなかったが、満足そうに食べてくれていた。
「やっぱり伸びてるね、このうどん…」
「でも美味いぞ!麺に出汁が染みてて、その上これ手作りの蒲鉾だろ?これも美味い!それに出汁もやっぱりアゴ出汁が効いてて良いよなぁ〜」
と、此方も満足そうに完食してくれました。
「あぁ〜、甘辛のお揚げも良かったし、温泉卵も乗ってて、凄く贅沢な朝食だったなぁ〜。ありがとうな蓮輝!ご馳走様!」
「喜んでくれて良かったよ!…取り敢えずもぅ寝なよ。後片付けとか、その他色々やっておくからさ。お昼には起こすから、ちゃんと寝てなよ〜」
「分かったよ、そうさせて貰うわ…。それじゃ一旦お休みするな…キューもお休み!」
「?凰哦パパァ〜寝ちゃうの〜?」
「あぁ悪いけど、ちょっとだけ寝ちゃうから…遊んでやれなくてごめんな…」
「キュー、凰哦パパはね、ちょっと疲れてるからさ、少し寝かせてあげようね」
「そうなの?分かった!それじゃ凰哦パパおやつみね〜」
「あぁお休みキュー、それじゃ蓮輝後頼むな〜お休み〜」
「はいはい、ゆっくり休んでね〜」
そう言って、自分の部屋に向かう凰哦さんだった。
凰哦さんを起こさない様に、なるべく静かにやりますか!
取り敢えず、凰哦さんがちゃんと寝たかを確認してっと……よしちゃんと寝てるね!
それじゃソッとドアを閉めて、物音たてずに作業開始しますか!
キューにお絵描きさせながら、僕は食器を洗って、掃除機は五月蝿いから、モップで拭き掃除だけして、洗濯物はお昼からで良いかと、取り敢えず午前の家事は終了です。
ちょっとだけ物思いにふけりたくなったから、タバコを持って庭に行くと、キューも付いてきたのでした。
「どうしたの?お絵描きつまらなくなった?」
僕の問いに首を振って
「違えよ、蓮輝お兄ちゃんと一緒に、日向ポッポするの!」
「日向ポッポ?…あぁ日向ごっこだね、今日は良い天気だからそれ良いかもね〜」
キューが日向ポッポと言うので、あれ?日向ぼっこだっけ?ごっこだっけ?と思いながら、取り敢えずごっこと言ってみた。
後で調べてみよう…。
日本語難しいな〜のと、地域によって言い方変わるのかな?とか、そんな事思いながら日光浴をキューと一緒にするのでした。
お日様の暖かさでウトウトして寝ちゃうキュー。
キューが安心して寝ちゃったから、少し離れてタバコを吸う僕。
安心しているんだろうね〜。
普通ならさ、ずっと野生で暮らしていたのだから、警戒心とかで、無防備な姿は見せないのだろうけど、キューにはそれが無いのか、僕達と出会ってから1度もそんな素ぶり見せないんだよね。
ただ単に純粋なのか、それとも僕達を信用してくれて、安心し切ってるのかどっち何だろう?
やっぱり物思いにふける時、タバコが有るとボーッとしながら、色々と考えがまとまるんだよね〜。
本当不思議…。
今の所、タバコ一箱吸い切るのに4日程掛かるんだよね〜。
それなら辞めろよと言われそうだけと、物思いにふけるアイテムだし、人を寄せ付けない為でもあるからねぇ。
キューが嫌がったなら、ちょっと考えるか…。
そんな事も考えていたら、そろそろお昼の時間になっていた。
凰哦さんを起こさないといけないし、その前にお昼ご飯の用意をしておこう。
検索して分かった“日向ぼっこ”で爆睡しているキューをそのままにして、僕はお昼ご飯を作りにキッチンへと向かう。
さぁ〜て何にしようかな?
ランチとしては“?”となりそうだけど、フワッフワのパンケーキにしようっと!
これ、デザートか朝食だよね?
まぁいっかぁ〜!深く考えてもムダ!だもんね。
食べたい物食べたい時食べないとねぇ〜、ストレス溜まるもんね〜。
先ずは卵をメレンゲになる迄泡立てまして〜、そこに〜甜菜糖を混ぜた小麦粉を振るいながら〜切る様に混ぜて〜、後はフンワリ焼くだけ〜っと♪。
フゥ…この一手間が、フンワリ美味しくなるんだよね〜。
後は〜、メープルシロップ用意して〜、この時期旬の桃をカットして〜…よし!完成です!
さて、凰哦さんを起こしに行きますか〜。
あっそうだ!気分良く起きて貰う為に、キューを連れて行こう!
「キュー、起きて〜!お昼ご飯出来たから〜」
その一言で、即座に起きるキュー。
「その前に、凰哦パパを起こしに行こうね」
「…うん!…」
まだ寝ボケてるが、素直に返事をするキュー。
キューと一緒に凰哦さんの部屋に行くと、余程疲れてたのか、此方も爆睡しております。
「………………えいっ!」
僕は凰哦さんの顔の上に、キューを乗せるのでした。
“?”となりながらも凰哦さんの顔に、思いっきりしっかりしがみ付くキュー。
「………………!!!!!!」
息が出来なくなって、ジタバタしながら慌ててキューを引き剥がす凰哦さん。
ケケケッオモロい…。
「プハッア!殺す気か!……息が出来んわ!…あっ…」
凰哦さんのその一言で、怯えるキューを見て
「キュー…キューに怒ったんじゃ無いからな?ただ驚いただけだよ〜。こんな可愛いキューに起こされて、何だか嬉しいなぁ〜」
と、キューをあやす凰哦さんでした。
「どう?気持ち良いお目覚めだったでしょ?」
悪びる事もなくそう言うと
「……蓮輝…」
「ん?何?」
「後でしっかり調教してやるからな…覚悟しておけよ…」
「うぇっ!な、何で〜!?凰哦さんの事思ってやってあげたのに〜!喜ぶと思ったんだよ?キューに起こされたら、絶対嬉しいでしょ?」
「…そうだが、それならこんな風にしなくても、良かったんじゃないのか?…」
「…そうだけどさ、色んなパターンがあった方が、凰哦さんも毎回楽しめるでしょ?…ダメだった?」
「…ダメじゃないが、このやり方はダメだ!…ったく、キューに免じて許してやるよ…」
「分かった、ありがとう。今度は別パターンで起こしてあげるから、楽しみにしててねぇ〜」
と、取り敢えず危機は回避出来ました!
凰哦さんの調教という名のお叱りは、かなりエゲツないんだよね…。
辞書50ページ分をキチンと書き写す迄ご飯抜きだとか、町内のゴミ掃除やり終える迄、付きっきりでやらされるとか、後は何だっけ…あっそうそう、片道分だけの電車代で10駅分で降りて、そこから歩いて帰るってのがあったっけ…。
その時も、凰哦さんが一緒に付き添ってくれてたけどねぇ。
今の時代なら、体罰だー!って言われそうだけど、どれも一緒にしてくれてたっけ。
そう思うと感謝だよね…。
よく考えたら、どれも僕の身に付く事ばかりを考えての、凰哦さんなりのお叱りだもんね。
ありがたやありがたや〜。
「凰哦さん、お昼出来てるから直ぐ食べる?それとも、一旦シャワー浴びてからにする?髪ボッサボサなんだけど…」
「…取り敢えず、顔を洗ってから昼にするよ。シャワーは後にする」
「そう?それじゃ食べようか〜。キュー、先に行ってようね〜」
「うん!」
「じゃ、待ってるから」
「分かった、直ぐ行くよ」
それから食卓にて、凰哦さんを待つ僕達。
顔を洗ってやって来た凰哦さんが
「何だ?お昼はパンケーキなのか?」
「うんそう、食べたくなったのと、凰哦さん、食べたら会社か青柳さんの所に行くんでしょ?それなら少し軽めが良いかな?って思ったんだよね〜」
「そうかそうだな〜、その方が動くのに丁度良いかもな〜」
「それなら良かった、じゃキュー、挨拶宜しくね!」
「は〜い!い・た・だ・き・ま・す!」
「「い・た・だ・き・ま・す!」」
美味しそうに食べる2人を見て、一手間掛けて良かったと思いました。
2人、ペロッと完食です。
僕は相変わらず、半分くらい残したのだけれどね…。
パンケーキを食べ終えた凰哦さんは、身支度を整える為に、シャワーを浴びに行った。
僕は残したパンケーキを欲しそうに凝視するキューに
「食べたいの?まだ食べられるなら、僕の食べ掛けだけれど、良かったら食べる?」
と聞くや否や
「食べるー!」
と、即座に答えるキューでした。
僕の食べ掛けをソッと渡すと、うまうまと食べるキュー。
本当、食欲旺盛だよね〜。
キューが食べ終えて、片付けしてたら
「それじゃ、会社と青柳さんの所に行ってくるよ。帰りは分からないから、遅くなりそうだったら連絡入れるな」
「分かったよ、取り敢えず夕食は作っておくけど、青柳さんの所に行くのなら、部下連れて行って、絶品天ざる蕎麦食べさせてあげてね!その方が青柳さんも喜ぶだろうからさ…」
「…そうだな、それじゃそうするかぁ〜。そう言う事にするから、俺の分は作らなくても良いぞ?…でも作ってくれていたら嬉しいなぁ…絶対食べるからさ!」
「分かったよ、それじゃ頑張って来てね〜」
「ああ!それじゃ行ってくる!キュー、行ってくるな〜」
「うん!いってらっさい!」
凰哦さんが絶対食べると言ったのは、キューと同じ物を食べたいと思ったんだろうね〜。
だから多分青柳さんの所では、ざる蕎麦のみにして、少しでもお腹に余裕を作って帰宅しそうだね…。
よしっ!分かった!
そんな凰哦さんの為に、別の物用意してあげよう!
しかもタップリとね!
さぁ何を作ってあげようかなぁ〜。
今話では、完全に蕎麦屋の青柳さんをほったらかしの内容でした。
次話は如何なんでしょうか?
そんな感じで、次話をお待ち下さい。