出会ったモノは◯◯◯でした。
輪廻家族を書きながら、こちらはゆっくりと書き上げるつもりで、同時進行ですが、書き進めようと執筆しました。
こちらの作品は、軽い感じに読めればと、文章も軽い感じに仕上げるつもりです。
キューと僕の思い出日記を楽しんで読んで頂けたら、とても嬉しいです。
では、キューと僕の思い出日記をどうぞ。
僕は売れない絵本作家をしている。
名前は、河橋 蓮輝。32歳のO型。
今日は、仕事道具を調達がてら、唯一の肉親である叔父さんと、夕食を外で食べる予定なのだ。
9月もそろそろ終わりだというのに、まだまだ暑さが厳しく、必要な道具を早々に買い揃えてしまい、暇を持て余したので、喫煙の出来るオープンカフェで、叔父さんとの集合時間まで、凉む事にした。
僕はそよ風のとおる日陰の席を確保し、アイスコーヒーをミルクとシロップをたっぷり入れ、タバコを吸いながらゆっくり過ごす。
こんな風に街の片隅から、行き交う人々や建物、少し曇りになりつつある空、颯爽と走るバイクや車を見ているのが好きだ、見ているだけならね。
色々と物思いにふけて、絵本のアイデアを考える。
買ってきたばかりのスケッチブックにペンを走らせ、幾つかのイラストを描いてみた。
そんな風に時間を潰していたら、叔父さんとの待ち合わせの時間になった。
場所を何時ものカフェに居ると、メールを入れてたので、そろそろ来る頃かなとペンを置き、タバコに火を付ける。
するとやはり
「蓮輝、待たせたな!」
と、手を上げながらやって来た。
「お疲れ様〜、ねぇ取り敢えず何か飲む?叔父さんの事だから、どうせ急いで走って来たんでしょ?一息付いてよ」
「よく分かったな、それじゃ一息いれようか…」
「叔父さん、何時ものアイスのブラックで良いよね?買って…ゴホッ…くるよ…ゴホッゴホッ…」
「また咳をして、大丈夫なのか?最近咳するの多くなってないか?」
「大丈夫大丈夫!季節の変わり目で、風邪ひいたのかもね。でも本当咳以外何ともないから平気だよ!」
「そうかぁ?まぁそれならば良いが…」
「それじゃ買ってくるね〜」
「あぁスマン有難う!ちょっと此処でへばってるな〜」
そんなやり取りも、何時もの事なのだ。
僕の叔父さんは、大学生の時に起業して成功し、今やかなり大きい規模の企業の社長をしている。
名前は、篠瀬 凰哦。42歳。A型。
叔父さんは母さんの弟で、僕が6歳の時に事故で亡くなった両親の代わりに、未だ16歳の若さで僕を引き取り、育ててくれた人なんだ。
叔父さんと母さんの両親も、叔父さんが未だ9歳の時に1人は事故、1人は病気でほぼ同時に亡くなったそうだ。
未だ9歳で家を守るからと言って1人で全てをこなし、僕の両親や周りの人達に助けを求めた事はないらしい。
そのせいか、心許し愛情を注ぐ事が出来るのは、姉夫婦と僕だけの特殊人間となり、とてもユニークな人。
僕の父さんは孤児だったので、父方の親族は居る筈もなく、母方も親族が絶えていたらしく、たった2人の肉親となってしまった。
最初は両親の死で、とても悲しみ落ち込んだけれど、この凰哦叔父さんが居てくれたから、僕はここまで大きくなれた。
正直、叔父さんが僕の全てで、叔父さんさへ一緒に居てくれたなら、それだけで充分なんだよね。
恋愛などというより他人の事全てが、僕にとってどうでも良い事なんだよね。
今までウンザリする程、僕の容姿によって、死ぬ程嫌な事があり過ぎたんだから…。
他人に言わせると、僕は幼い頃から男の子に見られなく、女の子と間違われる程の美顔と体型みたい。
その為幼い頃はよく、男子に"女"とか"何処のオッサンの嫁に行くのか?"や、何故か勝手にゲイとか言われ揶揄われた。
女子には凄くモテてはよく告白され、誰とも付き合えないと断ると、何故か女子全員から"可哀想、付き合ってあげなよ!"などと、逆恨みや文句を言われ続けていたんだよね…。
人間不信になって、人と関わるのが面倒になり、他人大っ嫌い人が見事完成したんだよね。
だから職業は、人と関わるのが少なさそうだと、絵本作家になりました。
無事絵本作家になってみたら、結構人との関わりが多くて、自分の勘違いにマジかとショック受けてました。
今は天職だと思ってるから、辞める気はないけどね。
ただそうなると、やはりモテる僕。
打ち合わせや、取材で知り合う人の大半に言い寄られ、大人になってからは何故か、男女問わず告白されるようになってきたり、未だに女性に見られるみたいで、女性扱いされる事も増え、こりゃダメだ…もう少し男らしさを身に付けなくてはと、安易な発想からタバコを吸い始めたんだよね。
でもタバコを吸うようになってから、勝手に美化されてた僕のイメージが悪くなったようで、言い寄る人も激減したんだ。
ただギャップが良い!っていって、言い寄るのが止まないから、ヒゲを伸ばそうかとも思ったけど悲しいかな、体毛がほぼ無く、ヒゲを生やすのはムリだと悟り、それならモヒカンか丸坊主にしようかと考えてたら、凰哦叔父さんに、それだけはやめてくれ!と懇願されて、結局出来ず終い。
他に何か良い案がないかと模索中なのだ。
ーーピヨピヨーー10分経過ーーピヨピヨーー
アイスコーヒーを買い、席に戻る。
「お待たせ〜、叔父さん買って来たよー!」
テーブルに片膝をたて、物憂げに頬を支える姿はとても様になっていて、誰から見ても色気のある渋メンを醸し出す凰哦。
それを見ながら、蓮輝が
「相変わらず道行く人達を悩殺させてるね〜、叔父さんは…」
「何をバカな事言ってるんだよ!それにしても遅かったな?アイスコーヒー買うだけなのに、何してたんだ?…もしかして、また何時ものやつか?」
蓮輝の茶化しに軽く笑いながら、遅くなった理由を聞く凰哦。
「そう、ご明察〜。今回もナンパされてました!」
「またか…それで今回はどんな奴だった?」
蓮輝がナンパされるのは毎度の事なので、普段の会話並みに聞く凰哦。
氷の溶けかけたアイスコーヒーを手渡しながら
「今回は3人だったよ、1人は何処か遊びにって奴、もう1人は気持ち良い事しようぜ!って、笑うよ」
それを聞いた凰哦が
「何だとー!?その気持ち良い事をと抜かした奴、今何処にいる!沈めてやろうか!!」
と、激怒りの凰哦。
「あっ大丈夫だよ!その2人は僕の事女だと思ってたから、いつものように"僕は男"だと胸とか見せてやったら逃げていったから!」
楽しそうに笑いながら答える。
そのまま続けて
「あっでも最後の1人は違っててさ、以前から男って知ってたみたいでね、何とずっと前から好きでした結婚して欲しいって…凄くない?いきなり付き合いすっ飛ばして、結婚してって言えるなんてさぁ」
面白かった〜みたいに、軽く言う蓮輝に
「はぁ!?いやちょっと待て!…それ真面目なやつか…?」
思わず聞き直す凰哦。
それをまた軽いトーンで
「そうそうマジなやつ!結婚してって言われた時さぁ、流石にビックリしたけど、よ〜く考えたらさ、ただのストーカーじゃね?みたいな…」
蓮輝の話を顔をしかめながら更に聞き直す凰哦。
「ストーカーぁ!?どうしてそうなる?」
「いやだって、前からずっと好きだって言っててさ、僕に初めて話し掛けるの、恋して4年経った今日なんだよ?その間、ずっと僕の事を見続けてたんだよ?それって、既にストーカーじゃない?」
その考えに辿り着いた蓮輝に呆れてしまうが
「そいつはストーカーじゃなく、ただの奥手のチキンヤロウってだけだろう…」
ため息混じりに言う凰哦だった。
「え〜、そうかなぁ〜?」
ストーカーだと決めつけてしまっている蓮輝に、これ以上何を言っても無駄だと思い
「で、そのストーカーはどうなったんだ?」
ストーカーとして話を進める。
「好きな人がいるから無理!って言ったよ。そうしたらさ、その人は誰かと聞くから、そこに座ってる叔父さんだよって言ったら、泣き崩れて店を飛び出して行ったよ」
あっそういえば先程、“同じ男なのに僕じゃダメなのか?やっぱり顔なのか?”と言いながら俺を睨みながら泣いてた奴いたなぁと思いながら、蓮輝の好きな人が自分だと言われた時、心臓が止まりそうになっていた凰哦だった。
凰哦もまた、蓮輝が産まれた時から溺愛していて、姉夫婦が亡くなって蓮輝を引き取った日から、人生の全てを蓮輝だけに捧げてきた。
今の会社も蓮輝を育て上げる為だけに創った会社で、それがいつの間にか、かなりの規模を誇る企業となっていた。
なので凰哦も蓮輝以外に興味は無く、その他は全てどうでもいいのだ。
出来るだけ蓮輝と一緒にいる為に、蓄えも数百億も有るので、会社をたたむか譲るか本気で迷っている。
その凰哦が、これ以上蓮輝を誑かす様な輩の話など聞きたくも無いので
「それくらいで話を止めておこう、そろそろ夕食食べに行くか…」
と、席を立つのだった。
「え〜、これからが面白いのに〜」
「やかましい!ほら行くぞ!」
いつもこんな感じで、たった2人だけの肉親なのだが、楽しく日々を過ごせていた。
「で、叔父さん。何食べに行こうか?」
「そうだなぁ…まだ暑いからざる蕎麦とかが良いな」
「そうだね、そうしよう!それじゃいつものお店で良いよね?」
「あぁ良いよ。あの店の蕎麦とつゆ絶品だからな…天麩羅も美味いものな!」
そのやり取りで、何度も通っている蕎麦屋に行く事に決定した。
着いた蕎麦屋には、下まで届きそうな大きな暖簾が掛けてあり、手で払いながら店に入ろうとした時、一瞬全身に電気が走り
「うわっ痛っ!」
「どうした!蓮輝!」
「…なんか静電気が溜まってたのかな?ビリってきたよ…」
「何だそうなのか?いきなり大きな声出すもんだから、無駄に驚いただろう…ビックリしたよ…」
凰哦に驚かさないでくれよと言われたが、蓮輝はしょうがないだろうと思うのだ。
(にしても、僕って静電気溜めやすい体質だったかなぁ?)
腑に落ちないけれどもお腹がペコペコなので、気持ちを切り替えて店内に入る。
今日は何蕎麦にしようかなぁ?と、考えて入った瞬間に目に飛び込んできたのは、3歳児程の大きさのカッパだった。
「!!!!!?????」
少しの間を空けて、カッパの存在に驚く蓮輝。
思わず、凰哦と店内とカッパを何度も繰り返して見てしまう。
その行動に凰哦が
「どうした蓮輝!?お前見事な挙動不審者になってるぞ?」
確かに他から見れば、そう映るのだろう…。
だが蓮輝にしてみれば、そこに居るカッパの存在に気付いていない事が信じられなかったのだ。
なので
「叔父さん…これ…見えてないの…?」
カッパを指差しながら、恐る恐る聞いてみるが
「?…何をだ?…俺には普通に店内に有る物しか見えないが…本当にどうしたんだ!?今日ちょっと変だぞ?大丈夫なのか?」
返ってきた返答は、期待したものではなかった。
(えぇーマジかぁー…皆んなコイツの事見えてないの?…えっあれっ?もしかして見えてるの僕だけ?)
そう思いながらカッパを見ると、目が合ってしまう。
(あっヤバッ…目が合っちゃったよ…僕が見えてるの気付かれたかな?…どうする?……よし!無視しよう!そうしよう!!)
カッパの存在に気付いてない風を装い、店員に空いている席へと案内されながら席に着くのだった。
さぁ美味しい蕎麦を堪能するぞー!と思いたかったのだが、真横にカッパが付いてきて、蓮輝の視界にガッツリ入ってくる。
落ち着かない…全く落ち着かない…。
しかもガッツリ僕をガン見して、一切目を逸らさないんですよ!
どうします?そこの貴方!?どうします?この状況…。
僕ですか?そうですね〜…心落ち着く様に、何か楽しい事でも考え…られるかぁーーー!
心落ち着くかぁーーー!!
……そんな事を頭の中で、1人悶絶しているのですが、それを人前で晒す事は、いい大人の嗜みとして必死に我慢してます。
「叔父さん、何食べるか決まった?」
「悩みどころなんだが、やっぱり天ざる蕎麦だな。っておい!さっきから何度も言おうと思ってたが、いつになったらその叔父さんっての止めてくれるんだ?前から凰哦って呼んでくれと言ってるだろう?叔父さんって呼ばれるの嫌なんだよ…!」
実のところ、蓮輝に家族の証としょうして、自分の名前で呼ばれたいだけなのだ。
「え〜…そうしないとダメ?」
「ダメ!絶対ダメ!今度から叔父さんって呼んでも返事しないからな!たった2人だけの家族なんだから、お互いを尊重する為にも今後禁止だからな!」
「は〜い、了解…でもしばらくは癖抜けないから、その時は許してよ?凰哦さん」
「本当はさんも要らないんだが、それくらいは許そうか…」
自分から言わせておいて、蓮輝に名前を言われてドキドキしてしまう凰哦。
おぉ名前で呼ばれるの、うん悪くない!良いものだなぁ…と、頭の中で反芻するのだった。
「うんOK〜!それじゃ注文するね、店員さーん!」
蓮輝の心の中では、叔父さんの呼び方なんて、目の前に居るカッパの存在より大した事では無く、"良し!ここまでカッパを意識せずにやり過ごせたぞ!"と安心する。
だが、この後に起こる出来事により、2人と1匹の日常が変わる事になる。
その事には、まだ予測出来ていない蓮輝。
そして、思いもよらないこの出会は、2人と1匹にとって、とてもかけがえのないモノとなる。
主人公が軽い奴になってますね…。
こんな軽いノリのキャラで大丈夫なのかと、少しだけ思ってたりしてます。
一応、ラストまでのストーリーは、決まってます。
ストーリーが逸れないように、話を膨らませて行こうと思ってます。
ラストまでお付き合い頂けるよう、頑張って書き上げますね。
応援の方、何卒宜しくお願いします。