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時空系公務員の受難  作者: 林海
江戸で政策自主研

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第14話 自殺点


「さも見てきたように話されますな」

 うん、このお母ちゃん、腹芸を嗜むらしい。

 僕、言葉のやりとりは穏やかでも雰囲気が張り詰めていて、ひろちゃんが不安そうな顔になっているのに気がついた。

 笹団子を1つ、縛ってあるのを解いてからひろちゃんに渡してあげる。


 ひろちゃんが笑顔でかぶり付く背中をぽんぽんと叩いてやると、ひろちゃんはおひささんの膝の上に陣取った。

「いえいえ。常世にいると、先ほどの乗ったからくり以外にもいろいろなものがありましてね。

 知ることができるのですよ、そう、いろいろと」

 煙に巻きっこなら、僕、負けないよ。


「失礼ながら、お歳は?」

 お、年齢マウント取りに来たかなー。

「27歳ですよ」

「これはまたずいぶんとお若い」

「そうですね。

 常世の神にお使えしている者は、年寄りは200歳を越えますから、私なぞ若輩で」

 ほら、反応できないだろ。


 お母ちゃん、「若いのに本当にわかるのか」と言いたいわけだ。

 そこは否定しないけど、僕は僕たちの背景について話したんだ。

 200歳の人の経験が聞ける環境にいる27歳に、45歳くらいの人が年齢でマウントがとれるか、さぁ、やってみなよ。


「では、この先の我が家の行末えについては……」

「わかりませんよ。

 常世の神ならわかりますけど、俺たちはいろいろなからくりの使用を許され、常世の生活を許されている人に過ぎませんから。

 常世の神にお聞きすることはできますし、この世界との関わる上で何度もお聞きしておりますが、それが『本人に聞かせるため』という理由だと許されません。

 いろいろと細かい取り決めがありまして」

 と是田。

 さすがに上手いなぁ。


 つまり、わかることとわからないこと、教えられることと教えられないこと、こちらの情報統制を神様と細かい取り決めのせいにしちゃった。そして、それなのに未来がわからないとは言ってないんだ。

 つまり、主導権はこれっぽっちも手放していない。


 ま、お母ちゃん、勝てない喧嘩を売っているんだ。

 神を持ち出す相手とは、論理のある議論はできない。最後は神の意志を持ち出されるし、その証明は第三者にさえもできないからだ。

 それでも、「神を持ち出す詭弁だ」って反論の余地はありはするけれど、越後から江戸へ瞬間移動してきたあとじゃ、その反論もできない。神は実在しているという経験だからね。


 つまり、お母ちゃんがしたいのは、自分の家族のことに対して、どこまでも土足で踏み込まないで欲しいってことなんだろう。

 ま、僕も嫁姑戦争はしないで欲しいって、余計なことを言ったからね。

 

「言っておきますけど、僕たちは『はずれ屋』のために、おひささんを強奪しようとは考えてませんよ。

 おひささんにはとても助けてもらっていますし、おひささんがいなくなっただけでお店は閉店になりました。でも、それでも、おひささんの不幸の上にお店を経営しようとは思いません」

 いいこと言うなぁ、僕。

 普段、真逆の扱いを受けているから、こういうときに出ちゃうよね、理想論が。


「それは、本心でございますか?」

「ええ、偽らざる、でございますよ」

「ただ、事情が変われば、そうも言っていられなくなるのではございませんか?

 先ほど、『頭で考える(ことわり)と人の心は別のものにて、時の流れが立てば立つほどに当初の見込みから(うつ)ろい、かけ離れたものになる』と申されました。

 お店が開けないということは、金子(きんす)のこととなり申します。

 それでも、変わらず、偽らざる、と申されますか?」

 くっ、マジか。

 そーくるか。


 思わず是田の顔を見ると、「この失言大王が、余計なこと調子に乗ってぺらぺらと」と表情が言っている。

 すっごく雄弁だな、その表情。

 ちきしょー、まったくのとーりだっ。

 今回に限っては認めるよ。

 さて、どう応えようか?

 なにを言っても墓穴が深まりそうだ。


「ええ、偽らざる芯からの真情でございますよ」

 えっ、佳苗ちゃん……。

 アンタ、横からなに言ってるんだ!?


「なんと、常世の方の真情がおわかりになられる?

 卒爾(そつじ)ながら……?」

「品川の在、加藤佳苗と申します。

 おひささまのご尽力あっての『はずれ屋』、それは動きませぬ。

 とはいえ、だからといって常世の方の広大無辺な知恵が及ばぬということも、これまたありませぬ。

 おひささまの腕に頼れなければ、他の手段を採るまでのこと」

 おいおい、マジか。

 そんな啖呵切っても、僕、広大無辺どころか裏庭程度の広さの知恵もないぞ。


「では、おひさの助力なくても、その『はずれ屋』は回っていくと?」

「いよいよおひささまの助力が得られぬとあらば、当然でございます」

 うわうわ、マジかよ。

 ってか、ただでさえ弱みを見せられないのに、僕がここで謝っちゃって、「自力では儲けられないからおひささんをなんとか」と言うわけには行かないよね。

 ただこの話、そもそもの論理に無理があるぞ。


「ただ、今の話、おひささんが必要である証明に、おひささんがいなくてもいいということを示すことになってしまっています。

 大前提として、『はずれ屋』の安定的持続的発展におひささんは欠かせません。

 佳苗殿が知恵と申されましたが、知恵で片付く問題とおひささんの腕で片付く問題はその質が違います」

 強弁だろうか。


 筋は通っているとは思うけど、これで説得できるとは思えない。

 お母ちゃん、予想以上に強かったわ。

 って、僕の自殺点のせいかもだけど。

去年から見れば成長してますが、それでも失言大王……

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