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時空系公務員の受難  作者: 林海
僕たち、江戸の置き去り……

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第13話 時間整備局の守りは鉄壁……


 ま、ともかく……。

 生宝氏は極めて危ない橋を渡っていて、しかも成功の見込みがまったくない。

 それが僕と是田の共通認識だった。

 なのに、さっきの盗み聞きの際にも悲壮感はまったくなかった。ということは、その橋を危なくなく渡れるってことなのだろうし、そうなると僕たちがなにかを見落としているってことだ。


 でも、だ。

 一応僕たちはプロだ。

「マジでさぁ、法学家、弁護士といえども、直截にこの法律を管轄している俺たちには敵わないはずだぞ」

 と言う是田に、僕は一も二もなく全面的に同意する。

 僕が是田の言うことに全面同意ってこと、あんまりないんだけどね。でも、実際問題として、僕たちを出し抜くのは無理だし。


「じゃあ、なんか……」

「そうだ、『改正時間整備改善法』の外側からなら、なんか方法があるのかもしれない」

「と言ったって、『改正時間整備改善法』の上位法なんて、ほぼ憲法と民法しかありませんよ。それ以外は『改正時間整備改善法』ができてから、みんな下位法になっちゃいましたからね」

 と、僕。


 上位法ってのは、たとえばだけど、どんな法律も憲法に沿う形でないと作れない。そういう意味で、憲法は最上位にいる。でないと、新しく作った法律自体が憲法違反ってことになっちゃうからね。


 一つ例を挙げよう。

 男女差別を法律で明文化したとしても、その法律は無効だ。

 なぜなら、憲法で男女平等を謳っているからだ。

 だから、基本的にそういう法律は作られない。法律の辻褄は、基本的に合っているものなんだ。


 でもって、「改正時間整備改善法」は、歴史は浅くても憲法に次ぐ極めて上位にいる法律だ。

 本来は憲法の次には民法がくるはずではあるんだけれど、その民法で取り決められている人や物の定義、そして人と人との関係という根源すらリセットができちゃうんだよ、時を超えるということは。

 だから、「改正時間整備改善法」は最上位に近いし、これを他法を使って出し抜くのは極めて難しいってことだ。


「俺たち、正面から考えすぎているかもな。

 その法律を所管するがあまりに……」

 是田がつぶやく。

「つまり、どういうことですか?」

 是田が言いかけていることの意味が僕にはわからない。


「例えば、時間管理部の更新世のベース基地は、片道切符のみでしか行けないし、だからテロの対象になり難いんだよな?」

「ええ、そうです」

 是田の問いに、僕は素直に答える。


「じゃあ、おっきな核弾頭を無人の時間跳躍機に積んで、更新世のベース基地に片道切符で飛ばしたら……」              

「そのために、ベース基地は各種センサーで鉄壁の守りがされているんでしたよね?」

 少なくとも、僕はそう研修で聞かされたぞ。

 だから、その是田のアイデアは即、却下したよ。


 だいたい、そんな簡単な作戦に対して、手が打たれていないはずがない。

 ベース基地は、異常な時間跳躍機が接近してきたら、どこか遠くの宇宙空間にでも角度を変えて放り出せばいい。静止軌道外の遠いところで核弾頭が爆発したって、何も起きはしない。

 もしも核弾頭が誤認で、中に無害の人が乗っていたというのならば、確認後に時間跳躍機を呼び寄せればいいんだし、時間跳躍機には生命維持装置が載っているし、なんの問題もないんだよ。


 だからといって、より大規模な飽和攻撃を更新世ベース基地に仕掛けたら、いくら人類以前の時代とはいえ、人類史に対する影響が大きすぎる。つまり、「そもそも人類が生まれなかったらどうするんだよ」って話だ。

 人類に進化していく1匹の原始哺乳類が死んだら、それで人類は終わりなんだからね。

 テロも戦争も意味がなくなってしまう。


 つまり、法解釈で切り抜けるのでははなく、具体的なテロを行って成功させるためには、まずは更新世ベース基地へのテロを成功させるという二段構えの計画が必要になるし、当然ベース基地はそれに対して対策済みということだ。


「でも、逆に人類滅亡が目的のテロだったら、更新世に超大型核弾頭を打ち込んでもいいですよね。重核子(ハイペロン)爆弾とか……」

「それ、うっかりすると人類だけじゃなくて、地球全部の生命が滅びちゃうだろっ!」

「でも、生宝(いほう)氏が、そこまでの破滅思想を持っていたら、そして江戸からの時間跳躍を繰り返して何度でもトライする気だったら……」

「いちいち、『でも、でも』って、うるせーな!」

 面白れぇ。もっと言ってやろ。


「あ、でも、生宝氏は『まぁ、これで生類憐れみの令も終わりだな。忠臣蔵もなくなる。本当にせいせいするぜ』って言ってましたね。人類滅亡が目的なら、この言葉は可怪しいです」

「独りで話を完結させてんじゃねーよ!」

「あ、でも、ベース基地は、特大のデータベースサーバーを持っていて、かつての歴史から今のすべての改変に至るまで、全データを持っているんでしたよね。

 そこに手を加えられたら、なんでもありじゃないですか?

 綱吉が暗殺されるのが正史だって、データベースが書き換えられれば……」

 ことごとく、一人で完結させてやった。

 で、そうしたら、こんな答えに行きあたりはしたけれど……。


「お前な、わざわざ『でも』って言うなっ。

 で、それはいくらなんでも無理だろー。

 いい案だけど、スーパー・ウィザード級のハッカーがいたって、更新世ベース基地のデータバンクの守りは抜きようがないぜ」

 まあ、それは是田の言うとおりなんだ。


懐かしの重核子爆弾、なのです。

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