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時空系公務員の受難  作者: 林海
僕たち、江戸の置き去り……

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第9話 見つけちゃった?


 そのおかげで……、だけど。

 太陽は沈みきっちゃったけど、かろうじてまだ物の見分けが付く程度には明るい時分に新宿に着いた。もう30分遅く着いていたら真っ暗だっただろう。


 僕たちの時代の新宿からは想像もできないほどの小さな宿場、それが今僕たちの前にある内藤宿だ。

 宿を取るのは簡単だけど、下手にそこで寝ちまったらしたら、生宝(いほう)真正(しんせい)氏とすれ違ってしまう恐れがあった。

 だからまずは、彼のいそうな場所を探さなきゃだ。


 とはいえ、おおよその目処はついている。

 セオリーってのがあるんだ。

 時を超える時、結構めんどくさいのが、というより確認しないと命に関わるのが土地の高さだ。

 基本的には、時の流れとともに平地はどんどん高くなり、山はどんどん低くなる。

 だから、遺跡ってのは地面に埋まっているんだ。


 激しいときは100年で5mも埋まることだってあるから、なにも考えずに時間跳躍したら、いきなり転落ってことにもなりかねない。もっと厳しいのは、土中に生き埋めになるとか、その際に原子間干渉が起きて核爆発なんて可能性すらある。まあ、原子間干渉なんて大気中なら無視できるし、土中でさえも確率としちゃめったにないほど低いんだけどね。

 だからさ、昔も今も土地の高さが変わらないところが、時間跳躍をする際に利用地とされることが多いんだ。


 で、ここ新宿であれば、西向天神社がベストポイントじゃないかと思う。

 神社は、建て替えるにしても、ものすごく長いスパンだからね。地面の高さが変わらないんだよ。

 法隆寺なんかだったら、斑鳩時代から高さが変わっていない。

 つまり、1500年近くの毎日の掃除の威力だ。


 それと西向天神社の立地はちょっと高くて、甲州街道を一目で見渡せる。

 つまり、馬を走らせる松本藩士を発見しやすいんだ。

 そして、暗くなったあとの神社ってのは、祭りでもやっていなければ基本無人。杜があるから身も隠しやすいし、宮司はいるだろうけど、夜中に境内をうろうろしちゃいないだろう。

 だから、たまたま今晩「丑の刻参り」なんてやらかそうって人がいない限り、最善の立地なんだよ。


 近くに自證院という寺もあるけど、こちらはできたばっかりで、人の出入りも多いだろうから、生宝氏に選ばれることはないだろうな。


 ただ、彼らにも「察知回避義務」は課せられているから、僕たちがうっかり近づいて「現時人」と誤解されたら身を隠されてしまう。時間跳躍機で空間転移されて身を隠されたら、二度と助けを求められない。だから、そーっと忍び寄らないとだ。

 だから、僕たち、わざわざ大回りして、街道の反対側からこそこそと近づいたんだ。


 もちろん問題は、救った女の子、佳苗ちゃん。なんか、武家の娘らしい名前だな。

 で、佳苗ちゃんから見たら、僕たちの行動は異常にしか見えないだろうな。

 神社にこそこそ忍び込むだなんて。


 本来なら、まともな言い逃れもできなかったけれど、さっきの7両がここで効いた。金にそうは困っていない人間が、ことさら悪事を働く事はないだろうってね。

 あとはまぁ……、ちょっとムカつくけど、僕があまりに貧弱だから、悪事を働くタイプには見えなかったってのもあるんだろう。


 で、僕たちの苦労はすぐに報われた。


 LEDの光は、なにかを燃やすことによって得られる光とは大きく違う。揺らぐことがなく、冷たさを感じるほどシャープな光。それが僕たちの時代の光だ。

 だから、神社の木々から漏れるかすかな光であっても、見間違えようはずもない。


 僕たちは、抜き足差し足忍び足と、音を立てないように近づいていく。そして、生宝氏が時間跳躍機に乗り込んでいないのを確認してから声をかけるんだ。


 で……。

 なんで3人いるんだろう?

 申請書類に添付された計画では、時間跳躍機及び空間転移のオペレーターとしての1人と生宝真正氏の2人が時を超えるって計画だったはずだ。

 そもそも計画に記されていた時間跳躍機は、小型の2人乗りだったはず。なんで4人乗りの大型なんだろう?

 ちょっと訳がわからなくて、だからどうしていいかわからなくて、そのまま立ちつくしてしまった。



 そこへ聞こえてくる、3人の会話。

 車座になって、この時代に持ち込んだなんか美味そうなものを食べながら、だ。

 僕たちだと考えられないことだ。

 時間跳躍の痕跡を残すことになりかねないから、食うものを持ち込むにしても包装の不要な極めて簡易なものに限られる。そうなると、いっそ行った時代で入手してしまったものを食べる方が、話が早くなってしまう。


 是田も僕も、考えてみれば佳苗ちゃんだって空腹だろう。だから、すでにこれだけのことで、観察する眼差しが好意的なものではなくなってしまう。

 ああそうさ、僕も是田も、人間がちっちゃいんだ。


「ともかく、これで明日、偽装計画に沿って塩尻の先まで人1人飛ばしたら、自分の時間に戻るタイミングさえ間違えなきゃ、いくらでもこの時代にいられるわけだ」

「おう。

 ようやく、計画を実行する時が来た」

 なん、だと?

 ……計画ってなんだ?

 申請のあったヤツのことじゃないだろ、ソレっ!!


きっと、こういう時、警察の人は嬉しいのでしょうね。


でも、そうでもなきゃ、やれやれ感なのです。

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