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78話 30過ぎの告白

「えーっ。本日のイベントはダンジョン内でのイレギュラー発生の為今並んでる人で終了させていただきます。撮影もこれにて終了になります! ご視聴ありがとうございました!」

「――お父さん。私、宮下君のところに行く。このままじゃ、一緒に働く、生きてく、それが、その約束が駄目になっちゃう。大切な人が死んじゃうかもしれないの!」

「お、おい景!」


 放送終了の合図を聞いて私は店の事を他のみんなに任せて、走ってダンジョンに向かった。

 

 たまたまトイレでスマホを見たら宮下君が明らかに大変な状況で……いくら最後の無茶だからってそれは無茶し過ぎ。


 持てるだけのポーションを抱えて、地下にある階段からダンジョン裏に向かうと流石に私だけじゃ無理と思ったのか一ノ瀬さんも付いて来てくれた。

 早い段階で息を切らす一ノ瀬さん。でもそれを待ってる余裕はない。


 あのドラゴン、あの炎。

 いくら宮下君でも……。


「一緒に……って言ったのに。――すみません退いてください!」


 探索者じゃない人間がダンジョンに潜ってしまうのはいけないこと。

 そんなことは重々知ってるけど今はそれどころじゃない。

 モンスターも無視して私は【NO9】を突き進む。



「――はぁはぁはぁはぁ……宮下君。宮下君……」

「え? 何でここに?」

「景さん……。もしかしてって思いましたけど。本当に来るなんて……」


 10階層の階段が目の前に見えると、そこから細江君とコボ、それに見覚えのない人達がぞろぞろと登ってきた。


「細江君! 宮下君、宮下君は!?」

「え、えっとここに――」


 細江君に担ぎ上げられていた宮下君。

 意識はないみたい。これもしかして……。


「い、いや……逝かないで宮下君。私、まだ宮下君に言いたい事言ってない。ずっと好きだった。そっと講義中に教科書を貸してくれたあの日から。コボルトの焼き肉屋なんていうニッチで馬鹿にされてた店を素直に褒めてくれた宮下君。元気なフリして心配させまいとしてくれる宮下君。誰に何と言われても探索者として頑張る宮下君。一生懸命な姿に私はいつも……」

「――過保護、なんですよね。こっちからすればそうやって心配するから余計に繕っちゃうんですよ」

「み、宮下君!?」

「えーっと。体はまだだるいんですけど、生きてます。ははっ」


 私は直ぐに細江君を見た。

 でも細江君はそっと視線を逸らして知らんぷり。

 これは後できつく言っておかないと気が済まない。

 

 それにしても私、なんて恥ずかしい事を……。


「その、えっと、今のはね、あのね……」

「俺も好きですよ。正直最初話しかけたのも景さんの事ずっと気になってたってのもあって……。すみません。ロマンチックなそれじゃなくて、最初は下心だったんです」

「え?」

「でも、景さんと話せば話す程いい人っていうのが分かって、自分の恩人になって……なんかその、踏み込めないというか、大切にしたいというか、自分って奥手なんだなって気付かされて……。ははは、きもいですよね俺」

「そんなことない。格好いい。戦ってるところ格好良かった。無茶し過ぎだけど。宮下君から好きって言って欲しかったけど……」

「それは……すみません。これからは無茶せず店優先で頑張ります。それと一緒に、その、良かったら俺とこの人生を一緒に歩んでくれませんか? ずっと言ってくれてた一緒って意味に今度はプロポーズの意味も含ませてください」

「あの、えっと、その……」

「駄目ですか?」

「駄目、じゃないです」


 顔が熱い。

 さっきまで絶望の淵に居たのに、こんな真逆の……もう頭がおかしくなりそう。


「そのお、お取込み中悪いんですけど俺の背中の上ではちょっと……」

「「ご、ごめんなさい」」


 細江君の言葉に宮下君と私で謝る。

 声が綺麗にかぶってそれが何となく面白くって。

 2人で顔を見合せて笑ってしまったのだった。


「いいわね。私もそんな告白されてみたいものだわ」

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