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秘密




 割れんばかりの歓声も、狂った様な熱気も、この場所では気にならない。


 ここはレンガ村の外れ。道具屋の奥の押入れの中。


 そこにはひっそりと二つの箱が佇んでいた。


「……ハニー、起きてるか?」


「…ええ、あなた」


「ミミは今…戦っているのかな?」


「戦っているんじゃないかしら。…そして、()()()()()


「はっはっは…ゴホッ……それは…まだ難しいんじゃないかな?」


「そんな事ないわ。私は確かにミミの中にある、私の魔力を見たもの。」


「…そうか」


「…私達もそろそろ限界みたいね」


「ああ…ミミには申し訳ないが…」


「……あの子ならきっと許してくれるわ…優しい子ですもの」


「ミミ…親の勝手ですまない。だが、お前にはもっと広い世界を見てほしいんだ…」


「あなた…もうそろそろで試合が終わるわよ…行きましょう」


 そう言ってもう殆ど使い物にならない口の中から一枚の手紙を取り出し、そっと置いた。そしてその上に自分のリボンを重ねた。


「あなたも何か持っていたら良かったのに」


「いいや、俺はもう渡せるものは全て渡したから、いいんだ」


「ふふっ…そうね…」


 重い足取りで二人は家を出た。


「いい天気…」


「ミミの門出には申し分ないな」


 今は大会中。門番も大会を見る。よって誰もこの二人を見つけられはしない。








「…行くのか?」


 道具屋の店主を除いて。



「ああ……今まで世話になった」


「……ああ」


 その投げやりな言い方に、二人は目を見合わせて笑った。


「じゃあ行ってきます」

「さようなら」


「じゃあな」



「ミミを…よろしくお願いします」



「…………ああ」





 山を登る。昨日ミミが調整を行っていた場所の更に上。


 体はもう殆ど言う事を聞かない。影の手も出せない。でもひたすら登る。


 体力の限界に、体が悲鳴を上げた。転んでしまってもう立ち上がることも出来ない。


「ハニー」


「私…もう…」


 その時、ひょいと道具屋の店主が二人を担いだ。


「店主…」


「退職金だ…運んでやる」







 頂上に着く。


 店主に下ろしてもらう。


 二人で火口を見下ろす。


 そして…






 二人は火口に飛び込んだ。









 後ろで店主はじっと見ていた。


「ミミ…お前は本当に愛されている。」




「あの儀式を、まさか二度も目にすることになるとはな…」




 小さく見える村を見て、呟く。




「全てお前次第だ。名もなき箱よ…」

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