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女神(妹)と気ままに異世界生活  作者: 月之住人
学校
40/44

就任

「あ、おにーちゃん、お帰りなさい。」

「ごめん、遅くなっちゃった。」

「別に、気にしてませんし。早く帰ってきてくれなかったからって、怒ってませんし。」


 やばい。

 これは絶対に怒ってる。

 どうにかして機嫌を直しておかないと...

 とりあえず、怒られてしまう前に、時間稼ぎをしよう。

 

「す、すぐにご飯を作ってくるから、茉莉はゆっくりしててよ。」


 俺はキッチンに走って向かった。

 ずっと同じ部屋にいてしまうと、茉莉の怒りが爆発してしまうかもしれない。

 それは避けなければならない。

 一応、茉莉の好物だった料理をいくつか作ってみよう。

 それで機嫌を直してくれたらラッキーなんだがな...

 直らなかったら、また別の手段を用意しないとな。

 茉莉の好物はなんだったっけ?

 確か、甘い物はたいてい好きだったはずだ。

 デザートをいくつか作っておこう。

 とびっきりのやつをだ。

 まずは、普通にご飯を作る。

 だが、いつもよりは少なめにだ。

 デザートが多くなりそうだから、あまり多く作ってしまうと、食べきれなくなってしまう。

 食べきれるくらいがちょうどいいのだ。

 このぐらいの料理なら、すぐに作る事が出来る。

 十分ほどで簡単に料理を作り、机に並べる。

 茉莉には先にご飯を食べてもらって、俺はデザートを作りに、キッチンに戻る。

 どんなものを作ろうか?

 茉莉が、ご飯を食べ終わる頃に完成するような物がいいと思うのだが、今からやるには、時間があまりない。

 簡単なものしか作れないだろう。

 まあ、やれるだけやってみるか。

 たぶん茉莉は、十~二十分で食べきってしまうだろう。

 それぐらいで作れるものは...

 よし、あれを作ろう。

 まず自作のボールに、加熱(ヒート)を少しだけ使い柔らかくしたバター、砂糖、卵、牛乳を混ぜる。

 次に、摘出(エクストラクション)で、小麦粉からたんぱく質を適当に抜き出したものと、茉莉がどこからか取ってきた重曹を振りかけて、ひたすら混ぜ続ける。

 それで出来た物をカップに移す。

 だいたいカップの半分よりも少し多い位だ。

 ここまでくれば、何を作るのか解る人は多いだろう。

 最後の仕上げには、カップの中の生地全体に加熱(ヒート)をかける。

 すると、生地は膨らんでいき、完成となる。

 そう、正解はカップケーキである。

 今回は魔法を使ったため、すぐに完成することが出来た。

 とりあえず、毒味を兼ねて味見をする。

 おお、結構いい感じに出来ている。

 中はふんわりしていて、味もほんのり甘めになっている。

 よし、いい感じに出来ているから、このカップケーキを量産しよう。

 魔法で一気に作ることが出来るから、二人分ぐらい、すぐに作れるだろう。

 先ほどと同じ工程でカップケーキを作り、出来た物を食卓へと運ぶ。

 茉莉はちょうどご飯を食べきったようだ。

 完璧なタイミングである。


「茉莉、カップケーキだよー。」

「カップケーキ!?」

「きっと、おいしいと思うなー。」

「本当だって、カップケーキでごまかそうとしてるでしょ。」


 げっ、もうばれた...

 こんなに早くばれてしまったのか。

 普通に食べてくれれば、すぐにごまかす事が出来たのに。

 まあ、仕方がない。

 ちょっとだけ頑張ってみますか。


「じゃあ、このカップケーキはいらないのかな?はぁ、しょうがない。丹精込めて作ったけど、茉莉の分も、食べちゃおうかな?」

「えっ、ちょっと待って!分かった、分かったから頂戴!」


 ちょろいな。

 これで怒っていることは、きれいさっぱり水に流してくれるだろう。

 我が家の平和は保たれた。

 そういえば、最近は強くなるために頑張り続ける日々だったから、久しぶりにゆっくり出来た日だと思う。

 毎日こんな日々が続いてくれたらいいのに。

 まあ、無理だとわかっているから別に良いのだが。

 近いうちに、戦争が起きるかもしれないのだ。

 それも、こちら側が不利な状況にある。

 今はそんなこと考えずに、今は茉莉とゆっくり過ごそう。

 



 そんなゆっくり?出来た日から三日後。

 本当なら、仕事をしなくて良かったはずの俺が、軍事大臣に任命される日が来た。

 俺はニートでは無くなるのだ。

 いや、元々学生だから、ニートではないか。

 だがとりあえず、仕事が出来たのだ。

 きっと喜ばしいことなのだろう。

 そうでなくては困る。

 まあ、ある程度の事ならば、秘書さんがやってくれるらしい。

 さらに、副大臣になる人もいる筈だ。

 仕事は、その二人に任せることが出来るだろう。

 だったら、学校の方にもしかっリいけるだろうから、普段の生活にはあまり支障はないはずである。

 まあ、引き受けた事だから、いまさら考えたって意味が無いのだが。

 とりあえず、俺はきっと分からない事ばかりで仕事が出来ないだろう。

 誰かに頼められるというのは、とてもありがたいことだ。

 しかし、秘書と副大臣には、頼められるぐらいの人材が必要だ。

 そこは王様が、しっかりとした人選をしてくれたことを願うしかないだろう。

 今俺は、セバスチャンと茉莉と一緒に、王城に向かっている。

 お披露目会は王様に懇願してなしにしてもらえた。

 だが、秘書と副大臣の紹介があるからと言われ、王城に行く事になった。

 セバスチャンがそれについてきてくれるのはわかる。

 だが、茉莉まで付いてきた。

 不思議である。

 家でゆっくりしていればいいのに。

 まあ、茉莉が付いてきてくれると助かることもたくさんある。

 だから、特に問題はないだろう。 

 しかし俺も、馬車に乗るのが当たり前になってきた。

 一部例外を除いて、移動手段はすべて馬車になってきている。

 例外は...

 あれしかないよな...

 俺がこっちの世界に来てから、二年の月日が流れた。

 こっちの生活にもいい加減慣れた。

 こっちの世界の町はとても広いが、路地裏などが多くあり、治安が悪い場所も多数存在する。

 普通に大通りを歩いていると、そっちの方に引きずり込まれてしまう可能性があるらしい。

 だから、こっちの世界の身分が高い人は襲われないように、馬車に乗って襲われないように早く移動しているみたいである。

 そんなに怖いのなら、転移(ワープ)を覚えてしまえばいいのに。

 この世界では、魔法はどんな人でも使える。

 全員、一定値以上の魔力を持っていて、魔力の動かし方さえ分かれば、あとは想像力次第だからだ。

 使おうと思えば、赤ちゃんでさえ使えるのだ。

 そんな赤ちゃんは、いないと思うが。

 とりあえず、転移(ワープ)は原理は分からないが、かなり創造しやすい魔法である。

 魔力も動かしやすい。

 自分の体内から、空気中に放出するようなイメージを持って動かせばいいだけだからだ。

 消費魔力も少ない。

 前の世界に居た時のイメージとは違い、かなり低級な魔法なのだ。

 皆すぐに覚えることが出来るだろう。

 でもなんでみんな使わないのだろう?

 知っている人が少ないのか?

 それとも、何かデメリットでもあるのだろうか?

 そんなことを考えつつ、見慣れてしまった風景を横目に、茉莉と話しながら馬車に揺られていると、王城が見えてきた。

 何度めの風景だろうか?

 入り口の門が開くと、そこにはルルが待っていた。

 そこで俺は降りた。

 セバスチャンはそのまま、馬車の駐車場へと向かい、待機していてくれるみたいだ。

 茉莉も一緒に待機...

 するわけもなく、俺の後に続き馬車から下りてきた。

 そんな茉莉を見てルルは、


「はじめまして、ですね。」


 と言っただけで、そのあとは、


「付いてきて。」


 と言っただけで、特に気にしていない様子。

 茉莉が付いてきていても、特に問題はないようである。

 ならば、俺も黙認しておいて大丈夫だろう。

 そのままルルの案内に着いていく。

 何度も通った王城の廊下を通り、案内されたのは応接間だった。

 応接間にはすでに三人、人がいた

 一人は、王城に行くと、用事が無くても毎回あってしまう、神出鬼没の王様である。

 あとの二人は初めて見る。

 きっと秘書さんと、副大臣になってくれる人だろう。

 

「おや、そちらのお嬢さんは、ここに来るのは初めてだね。さあ、みんな揃ったね。とりあえず自己紹介をして行こうか。まずは私から。クハダ王国の国王をやっている、エスフォード・クハダだ。」


 そういえば、王様の名前をしっかり聞いたのは初めてかもしれない。 

 最初に会ったときに、宰相さんと一緒に名前を言っていたはずなのだが、しっかり聞いていなかったため、名前を覚えていなかった。

 王様の名前は、今覚えておかなければ。

 しかし、やはり王族か。

 名前の中に、国名が入っている事から、建国してからずっと同じ一族で国を統治してきているのだろう。

 それでここまで国を大きくしてきたのだ。

 きっと皆、良い人たちで善政をしいてきたのだろう。

 ということはルルは、ルル・クハダということになるのだろうか。

 まあ、ルルはルルだから、特に何かあるという訳ではないから、気にしないでいいかな。

 

「次は君達の番でいいかな。」

「分かりました。私は軍事大臣に任命されました、八坂井葵です。まだまだ未熟ですが、宜しくお願いします。」

「妹の八坂井茉莉です。」

「よし、次はこちら側の番だね。まずこっちの女性が、君の秘書官になる、ナタリア・ブロンズだ。物静かで、表情もあまり変わらないが、仕事はキッチリとこなしてくれる筈だ。こっちの若い男が、副大臣のカーリス・カーターだ。彼もかなり優秀な人材だ。これから君を補佐してくれる二人だ。信頼して頼ってやってほしい。さて、本当なら互いに挨拶して、あつい握手を交わすところだけど、あいにく今は時間が無いのだ。何せ、共和国から大臣が来れているからな。これからみんなで協議をするんだよ。君たちの最初の仕事だよ。私は参加できないけど、結果を楽しみにしているよ。」

「何を話し合えばいいんですか?」

「話す事なんて一つしかないじゃないか。これから起きると思われる戦争についてだよ。じゃあ私はそろそろ行くよ。」


 王様はそのまま、部屋から出た。

 そして、入れ替わる様に二人の男の人が入ってきた。

 共和国の人なのだろう。

 

「君が新しい軍事大臣か。話をしようじゃないか。」

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