門番さん
「大きな壁だね。」
「そうだね。」
茉莉に先導してもらいながら、森を抜けると、一気に開けた場所に出るかと思ったが、そんな事はなかった。
城壁があったのだ。
本当に大きな城壁である。
まだ少し距離があるのに、見上げなければ、一番上が見えない。
高いだけでなく、横にも長く長く続いている。
地球でもこんな大きな壁はないだろう。
長さも万里の長城の数倍は有るだろう。
全体を見たわけではないが、そうだと思わせるぐらいの横への広がり方である。
そこまで曲がっていないはずなのに、果てが見えないのである。
何からこの町を守っているのだろうか?
まさか、茉莉が言ってた、”災害”と呼ばれている奴らがこんなところにまで来るのだろうか?
もしもそうなら、城壁を作ってもすぐ破壊されてしまいそうな印象を受ける。
こんな巨大な城壁にするのも納得だ。
「そろそろ着くね。ここは、今いる国、クハダ王国の首都、アンビアーノ。人口は一億人を超える超巨大都市なの。日本と同じくらいに人口ね。この超巨大都市だけで国が成り立つ事が出来るわね。ここの王国は、アストロンの中でも、かなり発展している国なの。とりあえず、ここを拠点にする。アストロン一の王立第一学校もあるしね。アストロンの中でも、一番の学校なんだから。この学校が、アンビアーノの発展の理由の一つでもあるの。それくらいすごいんだから。」
「家はどうするの?て言うか、町の中に入れるのか?俺は始めてくるんだけど、茉莉はもう来た事あるのか?」
「もう何回も来てるし、家はもう準備終ってるよ。町の中に入るのはおにーちゃんが少しの間黙っていてくれれば、問題なく入れるよ。ああ、あとこれを持っておいてね。」
「黙るって言うのに、ものすごく説明してほしいくらい納得できないけど、理解する事は出来たよ。なんでこのバックを持たなきゃだめなの?」
「町に入るため人は、検問を通らなくちゃいけないんだけど、アンビアーノの検問は、ものすごく厳しいの。結構前に、市外の人が、アンビアーノ内にある国の重要機関を攻撃したからなんだけど...だから、なにも持っていないと、門番さんに怪しまれちゃうでしょ。さらに、ここは森に面している門だから、基本的に森を探索しに行った冒険者とかしか使ってなくて。ここの門使う人が少ないから、門番さんはたいていみんなの顔を覚えているの。だから、顔を覚えられていない私たちはかなり怪しまれるの。だけど、私が入れるようにちょっ細工しておいたから、きっと入れると思う。だけど、おにーちゃんが何か口を滑らしちゃうとすべて台無しになっちゃうの。絶対にそうなるの。だからそれを未然に防ぐために、絶対に一言もしゃべらないで。」
「なら、別の門を使えば良いじゃないか。」
「別の門はみんな込んでいるの。元々アンビアーノに入ろうとしている人がいっぱいいるのに、検問が厳しくなっちゃたから、入るために、数日間待たなきゃいけないの。さらに、たまに捕まる人もいるから、そんな人が何人も一日に出ちゃったら、さらに待たなきゃいけない日数が伸びちゃうの。それに比べて、ここは冒険者しか使わなくて、この時間の利用者はほぼいないの。だから待ち時間は短くて済む。待たなきゃいけないよりも、すぐに入れる方がいいと思わない?」
まったく、俺はどんだけ信用されていないんだよ。
俺が口を滑らす確信があるって、何を根拠に...
やばい、心当たりがありすぎる。
一瞬で大量にも思いついてしまった。
これは信用されている方がおかしいな。
これからは日々の言動を少し気をつけていかねば。
早急に信用を回復せねば、これからが危ないような気がする。
今回の検問では、絶対に一言もしゃべらないぞ!
門がすぐ目の前のところまで来た。
門の前で二人の門番さんがたっている。
おじさん門番と若い新人っぽい門番の二人である。
「アンビアーノの町に何の用だ。」
二人のうち、俺達から見て右側の方にいる、おじさん門番が声をかけてきた。
「この前、家族を捜しに出かけた茉莉です。無事に家族を見つけたので、帰ってきました。帳簿にも載っていると思いますよ?」
ほう、家族を捜しに行ったという設定で、門を出た事にしたのか。
確かにこれなら怪しまれないだろう。
帳簿は、色々な記録なのかな?
それに乗っている事で、さらに信頼度が増して、信じてもらいやすいのか。
これだったら、おらが口を滑らせる事はないんじゃないか?
例え、口を滑らせたしても、ごまかす事が出来るんじゃないだろうか?
俺が黙っている必要はないんじゃ...
まあ、信用の回復の為だ。
ここは我慢して、頑張らねば。
「ちょっと待っていろ。おい新人、帳簿を確認してくる。俺が戻ってくるまでの間に、荷物のチェックなどは済ませておけ。」
「はい!」
おじさん門番は、左側に居る新人らしいほうの、新人門番に指示を出してから、帳簿を確認しに、門の方へ走って行った。
今なら聞いても良いかなと思い、茉莉にしゃべりかけよう押したら、
「しゃべろうとしないで。」
と注意されてしまった。
これも神様の力なのだろうか。
俺がしゃべりかけようとしたこともわかってしまうのか。
という事は、もしかしたら、今まで思っていた事はすべて筒抜けだった可能性もあるわけだ。
そんなことはないと信じつつ、これからは少し注意をしようと心に新たに刻んだ。
それから十分ぐらい、荷物チェックなどをして、あとはおじさん門番が戻ってくるのを待つだけだ。
数分ぐらい待っていると、。おじさん門番が戻ってきた。
「帳簿に載っていたのを確認した。新人、チェックなどは済ませたか?」
「はい!」
「良くやった。しかしお前ら、無事に戻ってこれてよかったな。魔物に遭わなかったか?」
「魔物は見てないですね。」
「そうか、それは良かった。最近、魔物が大量発生しているところが多くてね、困っているんだ。さらに、その魔物のレベルが高いんだよ。だからみんな、森の方で、ユニークか魔王が出現したんじゃないかって大騒ぎなんだよ。まあ、そうじゃないとこの現象の説明がつかないんだけどな。」
魔物が大量発生?
やばくない?
俺達ちょっと危険だったってこと?
やっぱり危険な場所じゃないか。
魔王って、絶対に強いじゃないか。
ユニークの意味は特殊とかだったから、魔物の中でも特殊な個体が出現した可能性があるのか。
もしかしたら、早速ゲームオーバーのなるところだったのか。
危ない危ない。
「そうなんですか、魔物退治頑張って下さい。では、そろそろ行きます。」
と言い、茉莉が歩きだした。
俺は置いていかれないようにしっかりついて行く。
するとおじさん門番さんが、すれ違う際に、
「お譲ちゃん、頑張れよ。」
と、言ってきた。
俺は、性別違うけどと考えながら、とりあえずお辞儀しといた。