ソロウディザスター
今回は、霧が良いところまで話をす済まさせていただきたいので、かなり長くなっております。
はぁ、俺はなぜ他のやつを黙らせたりする仕事が多いのだろうか?
そのせいで、俺は貴族にならなくてはいけなくなったのだ。
まったく、いい加減にしてほしい。
さらにその仕事は、今回で三回目だ。
普通ならば、こんな事をするのは、一度や二度だろう。
そもそも、こんな事をしなければならない人は、少ないはずである。
しかし、俺はやらなくてはならない。
最初の二回は自主的だったので、正直文句を言える立場ではないのだが...
まあ、そんな事はどうでも良い。
王様公認で、思いっきりやってくれと言われたのだ。
きっと、俺の実力を見てみたいとかの思いもあるのだろう。
ならば、遠慮なんてする必要なんてないだろう。
逆にやってはいけないだろう。
というわけで、全力であまりたまっていないストレスを発散してみる。
ならば、どんな事をやってやろうか?
前の二回では、極大魔法を使って地竜を倒すのと、馬鹿を眠らせて悪夢を見せる、と言う事をした。
今回は、前二つとは少し違う事をしたい。
魔法を使うのだが、誰も倒さず、眠らせずに終わらせたい。
何をするのが、一番のストレス発散になるのだろうか?
そうだな、盛大に、王城を破壊しないようにしながらか。
王城と人命を守るために、拒絶防御を使えば良いし、極大魔法は使えない事はない。
そうだな~
良い事を思いついた。
自分で何をするか考えるのは大変だ。
ここにいる人達に、何をしてほしいのか聞いてみよう。
「そうですね、あなたたちは、何をすれば私を認めてくれますか?」
「責任を果たす事が出来る事を証明すれば良いぞ。」
「わかりました。私が頼まれている仕事を果たせる事を可能性を示せばいいのですね。では、準備するので少しお待ちください。」
普通なら、仕事を果たせる事を証明するのだろうが、俺の場合は、仕事が仕事なので、可能性しか示す事が出来ない。
そんな事を知らない人達には、可能性と言う言葉はここで使わない方がいいのかもしれない。
まあ、そのうちに俺の仕事の内容を知る事になるのだろうから、これで良いか。
とりあえず、俺の力を示せばいいわけか。
だが、これでは一回目の時とかぶってしまう。
まあ、しょうがないか。
黙らせる事が出来ればいいのだ。
びっくりさせて、言葉が出ないようにしてしまえば良いのだ。
まず最初は、予定通りに拒絶防御を使うために、邪魔ものたちを後ろに下がらせる。
そして、スペースを作るのだ。
さあ、場所の確保が出来たので、三分なんとかのスタートだ。
まずは、人命と王城の安全の為に、拒絶防御で、蓋のない箱を作る。
その箱の中に、何を突っ込もうか?
もういっそのこと、何も入れなくて良いか。
別に何も入ってなくても、威力はきっと理解してもらえるだろう。
理解してもらえなかったら、その時に何かを突っ込めばいい。
使う魔法は何にしようか?
こちらも、貴族どもにお任せしようか。
「準備が終わりました。さて、これから仕事をできる可能性を示していきたいのですが、あなた方が知っている魔法の中で、一番強い魔法を教えてください。もちろん、極大魔法を含めてです。その魔法を使って見せましょう。」
「それなら、我が代表して答えよう。」
王様が代表して口を開いた。
「一番強いかどうかは我にはわからないが、王家に伝えられている極大魔法がある。それは、悲しき大災害と言う魔法だ。もちろん、安全対策はしっかりするように。」
「わかりました。それではみなさん、それでよろしいですね?」
一応全員にそれで良いか確認をしてから、魔法を使わせてもらう。
名前からしても、王家に伝わっているという話からも、たぶん国を守るための最終手段なのだろう。
そうなのだとすれば、もしかしたら国も破壊してしまうぐらいの強力なものかもしれない。
少し楽しみだ。
しかし、そんなに強力な魔法なのだとしたら、一つ間違えれば、この国を終わらせてしまうだろう。
そうなってしまっては困る。
なので今回は、魔法陣を使用して時間差を利用して、魔法を発動させようと思う。
そうすれば、しっかりと箱に蓋をすることができて、安全もしっかり確保できるだろう。
「魔法陣 悲しき災害、拒絶防御!」
魔法のアイディアもいただき、安全の確保もできる事が確認できたため、早速実行する。
箱の中に魔法陣を出現させた瞬間に、箱に蓋をする。
無事に安全は確保できた。
後はくつろいでいても良いだろう。
ゆっくりリラックスしながら見ていて大丈夫だろう。
箱の中の魔法陣は、魔力を循環させることで増大させ続けている。
その影響で光を放ち始め、その光はだんだん強くなっていっている。
光が最高潮に達したと思った時、魔法陣が起動した。
魔法が発動したのだ。
さあ、何が起きるのかとわくわくしてみていると、魔法陣の中から手が出てきた。
この魔法は、召喚魔法の一種のようだ。
その手の持ち主は、その姿を現した。
馬に似たような姿であり、翼やしっぽを生やしていて、冠をかぶっている。
まるで悪魔である。
いや、悪魔なのだろう。
その悪魔は、宙に浮いている。
たぶん、防御結界には気が付いていないだろう。
そのまま悪魔は、自身の周囲に魔法陣を展開し、その魔法陣から黒い何かを出していた。
黒いのは小さすぎて、何なのかはわからない。
だがきっと、大きさ敵意に虫か何かなのだろう。
大量に出ているから、近くでは見たくないな。
その何かは、魔法陣に接触すると、火花をまきちらし、消滅していった。
消滅させる事が出来ていなかったら、あの黒い虫で大変な事になっていたところだろう。
助かった助かった。
そして、その事にようやく築いたのか、悪魔は魔法陣を消した。
すると、四方八方に爆裂魔法を放った。
箱の中ではものすごい轟音と衝撃波が発生しているだろう。
しかし、こちら側には少しの音も揺れも伝わる事はない。
すべてを拒絶して、空気すら遮断しているのだ。
だから、あんな魔法を連発していたら、すぐに酸欠になって大変な事になるだろう。
呼吸しているのならの話ではあるのだが...
まあ、どっちにしろ、そろそろ十分だろう。
この悪魔を処分してしまおう。
いま、この箱のどこの部分を取り外しても、無視しきれない被害が出てしまう可能性がある。
ならどうするか。
俺が取れる手段はたった一つ。
箱をだんだん小さくしていき、拒絶防御で押しつぶしてしまうのだ。
悪魔が、拒絶防御に触れた瞬間、ダメージを受けていく。
これで倒す事は簡単だろう。
しかし、これはとても大変な作業だった。
隙間を作らないように、少しずつ縮小していくのだが、スキル 魔神の化身があっても、少しでも気を抜くと失敗してしまうかもしれないのだ。
気を抜かなければいいだけの問題なのだが、この作業は、魔力をごっそりと持っていかれる。
その虚脱感のせいで、集中が途切れそうになる。
たぶんこのまま極限まで小さくしていくと、魔力切れになってしまいそうだ。
本当に、気の遠くなる作業だ。
だが、後半分とい言うところまで来ると、悪魔は、まだ開いていた召喚の時に使用した魔法陣を通って帰った。
そのおかげで、魔力切れになる事は回避できた。
無事に終わったので拒絶防御を解除した。
すると、終わった時に気が抜けてしまった為、その場に座り込んでしまった。
はぁ、今までで、一番大変な仕事だった。
もう二度とこんな状況で、こんな魔法は使いたくない。
後処理が大変すぎる。
これからは、少し自重しなきゃな...
魔力を使いすぎると、体に力が入らなくなってしまうようだ。
立ち上がる事が出来ない。
仕方がないので、そのまま周りを見渡してみると、ほとんどの人が、さっきまで悪魔がいたほうを見て、固まり続けている。
あの王様もだ。
しかし、何事にも例外はつきものだ。
今回の例外は、ベルとダンテである。
ダンテは、目をキラキラ輝かせていて、ベルはこちらの方に駆け寄ってきている。
ルルは...少しの間は固まっていたが、すぐに再起動して、ベルと同様こちらに駆け寄ってきた。
こちらに駆け寄ってきたベルとルルは、二人で俺の肩を支えてくれて、俺はようやく立つ事が出来た。
ここで、俺の小さくて軽い事が役に立ったようだ。
そのまま俺は、王様の前に連れて行ってもらった。
すると、王様もようやく再起動し、
「すばらしい。見事に魔法を成功させ、あの”災害”である悪魔、蝗害のヴァドムを召喚し、さらに撃退する事も出来た。君の力は本物だ。」
と、声をかけてきた。
さらに、
「君は十分貴族になる資格があると思う。皆ははどう思う?」
と、周りに問いかけていた。
それにより、他の貴族たち全員も再起動した。
そして、俺が貴族になるのに異議を申し立てるものは誰一人としていなかった。
満場一致で、俺が貴族になることが決定したのだ。
まあ、あんなのを見せられた後で、反対するなど、何をされるかわかったもんじゃないから、腰ぬけな貴族たちには、出来るはずもないか。
無事に決まったのなら、こっちのものだ。
俺は、もう貴族に絡まれる事はない。
なんてよい事だろう。
今まで起こしてしまった問題は、貴族がらみの事であった。
その問題は、これからは起きる心配がないのだ。
何て幸せな事であろうか。
ついに念願の、問題児脱却が出来るのだ。
これからの人生は、きっと薔薇色だろう。
ようやく気ままに異世界ライフを満喫できるのだ。
良かったよかった。
その後も、無事にお披露目会?は進み、お開きとなった。
俺はその後1年に渡り、問題を起こしながらも、学校で頑張りつつ、着々と力をつけて行った。




