異議
メイドさんに案内してもらって、会場に着いた俺とルル。
今は集まった貴族たちから見えない位置にいる。
もちろんこっちからも見えないわけなのだが、貴族たちがいる方が少し気になってしまう。
だから、少しのぞいてみると、たくさんの人が綺麗に並んでいた。
まるでフィギュアみたいである。
まあ、近くの人と話したりしているので、フィギュアっぽさが半減しているのだが...
本当のフィギュアでもないし、こんな気も良フィギュアはいらないので、どうでもいいのだが。
しかし、貴族の数が多い。
さすがは、世界一の大国と言ったところだろうか?
まあ、広大な国土にいる貴族全員を集めたらしいから、人数が多いのは、当り前なのだろうか?
その中で、俺が関わる事になりそうなのは、ほんの一握りだけだろうから、どうでもいいか。
そんな多くの貴族の前に、一段高くなった場所があり、そこには、かなり豪華な椅子があった。
きっと、あの一段高くなっているところに、王族が来るのだろう。
まだ貴族の方を覗いていると、たくさんの貴族の中から、右の奥の方の手前側に、ベルとダンテがいた。
伯爵で、爵位がそこそこ高いから、手前側にいるのだろう。
なら、後ろの方にいるのは、爵位の低い人たちか。
そう考えながら覗いていると、ベルと目があった。
すぐに隠れるが、完全に目があってしまったため、気のせいだとは思ってもらえないだろう。
まあ、他の人に、俺がいると騒ぎ立てる事はないだろうから、しょうがないと割り切るか。
しばらくすると、ルルがお父様の方に行くと、この場から離れて行った。
また、覗いていると、さらに多くの人と目があってしまうかもしれない。
そのまま、さらにしばらく待っていると、王族の入場という声がした。
先ほどの事から何も学習せず、また覗き込む。
すると、反対側の方から、王様やルルが出てきた。
知らない女の人もいるが、それはルルのお母さん。
王のお妃さまなのだろう。
初老気味の王に比べると、若々しくて、この王にはもったいないぐらいだ。
世のクリボッチを体験した事のある、未婚の若い男性達がかわいそうだ。
まあ、そんな事はどうでもいい。
世のクリボッチ男性諸君には、自分の力で何とかしてほしい。
努力は大切だ。
他にも知らない人が何人かいる。
ステータスを確認すれば全員の名前を知る事が出来るだろう。
でも、正直そんなの興味がないのでスルーする。
そして、予想通り王族の皆さんは、一段高くなった場所に行き、経ったひとつの椅子に王様が座った。
しかし、貴族が一斉に、臣下の礼とやらを行った時は壮観だった。
俺もこの中に加わるのはちょっとごめんだと思ってしまったのは秘密だ。
見るだけで十分と思ってしまった。
まあ、今はそれよりも重大な事がある。
あとちょっとで俺の出番が来てしまうのだ。
ため息が出てしまいそうだ。
不可抗力なので、止める事は出来ない。
面倒くさいな。
でも、世の中はとても残酷だ。
あっという間に俺の番が来てしまった。
俺の名前が呼ばれてしまったのだ。
これから、たくさんの人の前に出ると思うと、緊張してくる。
そんな緊張を吹き飛ばすように気合を入れる。
そして、胸を張って王様の前まで堂々と歩いく。
その後、俺は何をすればいいのかがわからない事に気がついた。
王様の前で仁王立ちするわけにはいかないだろう。
仕方がないので、臣下の礼をする。
どうせこれから、飽きるほどやる事になるであろうから問題はないはずだ。
何かあったら、ルルが指摘してくれるだろうし...
まあ、もうやってしまった事だ。
きっと何とかなるだろう。
すると、王様が、
「我が忠実な臣下たちよ、面を挙げよ。」
と言ったので、他の貴族たちと一緒に、頭を上げる。
すると、ルルと目があった。
まあ、こんなに近くにいるんだから、目ぐらい合うか。
ルルは、おれに対して微笑んできた。
俺は、吹き飛ばしたはずの緊張が、急にまたのしかかってきて、微笑み返す事は出来なさそうだ。
頑張ればできるかもしれない。
でも、その顔はかなり強張っているだろう。
そんなになるぐらいなら、無理に返す必要もないだろう。
俺はそこまで頑張り屋さんではないのだ。
許してほしい。
俺は、王の方を見る。
すると小声で、
「貴族たちの方に振り向くんだ。それをしてくれるだけで、後はこっちに丸投げで大丈夫だから。」
と言ってきた。
俺は、言われた通り貴族の方に振り向いた。
何人か、口をポカーンと開けている人がいる。
いや、何人かではなく、結構いた。
まったく、貴族なのに情けない。
こんな短時間も集中して王の話を聞いている事も出来ないのか。
普段とは、一人少女がいるかどうかの違...
あれ?
まさか、ポカーンとしている人達がいるのは、俺のせい?
まあ、まさかそんなはずはないか。
そんなのは自意識過剰だろう。
ただ単に、貴族どもの中に、情けない奴らが多いだけだ。
王様は、そんな人たちは無視して、俺が伯爵になる事を宣言した。
今この種雲から、俺が、ここにいる半分以上の人よりも地位が高くなったのだ。
この宣言により、さらに口をポカーンと開けている人が増えた。
ベルやダンテも、目を点にしている。
言われいている事が理解できていないようだ。
理解できていても信じられていない人もいるだろう。
このあとも、特にリアクションがなければ、すぐに帰れるだろう。
しかし、世の中はあまり甘くない。
そう簡単に帰らせてくれないようだ。
「王よ、どういう事ですか。伯爵が必要なら、子爵から選べばよいではありませんか。」
異議を唱える者が出てきた。
まったく、なぜ異議を唱えようとするのだ。
そんなに張り切る必要はないじゃないか。
張り切ったて疲れるだけなのに...
さらに、俺が伯爵になると言ったって、たった一つだけ仕事をするだけで、特に何もしないのだ。
権力を乱用するつもりもないし、別に問題はないじゃないか。
それとも、そこが問題なのか?
まあ、そんな事、異議を唱えた奴はまだ知らないから、仕方がないか。
しかし、奴は後ろの方から出てきた。
そこまで爵位は高くないようだ。
その人の話はまだまだ続く。
「そもそも、こんなちびっ子に貴族の責任が果たせるとは思いません!」
「我からすると、このちびっ子、アオイがこの国を救う事になるだろう。」
しかし、王様は、それをばっさばっさと切り捨てていく。
と言うより、事実を突き付けている。
まあ、たぶん理解できないだろうけど...
理解できているのなら、異議なんて唱えないだろう。
その理解できていない人達は、意外と数が多いようだ。
だんだん、最初の人に同調する人が出てきて、同じく異議を唱え始めた。
しかも、そう言う人達は、手前側ではなく奥の方から来ている。
みんな爵位が低い。
どうせ、急に現れた小娘が、自分よりも高い地位にいるのが気に入らないだけなのだろう。
それだけでこんな事が出来る何て、その行動力にある意味尊敬に値する。
まあ、ある意味なんだけどね。
しばらく、王様と貴族のやり取りは続いた。
しかし、貴族たちはかなり食いさがってくる。
正直かなり面倒くさそうだ。
すると、王様は俺に
「奴らを黙らせる事は出来るかい?」
と聞いてきた。
「出来ますけど、いろいろ問題がありそうですよ?」
「そんなものは、こんな状況に比べれば些細なものだ。さっさと邪魔ものを黙らせて、君を貴族にしてしまえば、何も言われずに済むようになるからね。盛大にやっちゃっていいよ。でも出来たら、建物は破壊しないでほしいな。」
ほう、要するに面倒くさくなったのか。
仕方がない、力を貸してあげよう。
今回は、魔法は使わない。
じゃあ何をするのか?
それは実行してからのお楽しみである。




