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女神(妹)と気ままに異世界生活  作者: 月之住人
学校
28/44

ルル

 ルルは無事に目覚めた。

 しかし、俺の怒りの火に油を注がれた。

 俺の怒りは、ピークに達しようとしている。

 確かに、ルルとは長い時間一緒にいたわけではない。

 ベルの時もそうだ。

 しかし、この世界に来てから、初めての他人とのかかわりや、初めてできた友達である。

 どちらも、一緒に過ごした時間は関係なく、大切な人である。

 俺はとても甘い人間である。

 大切なものはすべて守りたい。

 犠牲が、いくら大きくともだ。

 そんな俺が、大切な人を気づつけられそうになった時の感情はただ一つ。

 怒りなのだ。

 理不尽かもしれないがしょうがない。

 それが俺なのだから。

 そして、その怒りは、相手に向けた物だけではない。

 今の俺には力がある。

 確かに、世界最強の力ではない。

 しかし、今までに会った、俺より強い力を持っていそうなのは、茉莉しかいない。

 と言う事は、俺の力で、危険なく過ごせたはずなのだ。

 それでも、危険にさらしてしまったという自分への怒りもある。

 と言うか、それが大半である。

 かなりやつあたりに近いような気がするかもしれないが、相手が悪いのだ。

 相手が何もしなければ、こちらも何もしなかったのだ。

 そう、相手が悪いのである。

 俺は、もう気持ちの面では、犯人をつぶす準備は十分できている。

 しかし、俺は今から王城に向かわなくてはいけない。

 すぐには行動できないのだ。

 だからと言って、何も行動しないというのは、嫌だ。

 せめて情報収集だけでもしたい。

 しょうがない。

 さっきは、頼らないとか何とか言ってたような気がするが、そんな事は忘れてしまえ。

 茉莉に手伝ってもらう。

 

「茉莉、お願いがあるんだけど。」

「どうしたの、おねーちゃん?」

「魔法をかけてきた、犯人の事を知りたいんだけど...」

「いいよ、調べといて上げる。だからおねーちゃんは、早く王城に行ってきて。帰ってくるまでには、調べ終えとくから。」

「ありがとう!」

「別に大丈夫だよ。おねーちゃんの為なら、いっぱい頑張っちゃうんだから!」

「あはは...無茶しないようにね?」

「行ってきまーす。」


 はあ、最後のは全く聞いてないな。

 まあ神様だから、無茶しなきゃいけないような出来事は、あまりないと思うんだけどね。

 まあ、それはそれで良い事だから、特に何か言わなくても良いのかな?

 何事もないのが一番なのだが。

 それは良いとして、情報は、茉莉が収集してきてくれるので、安心だ。

 俺よりも確かな情報を、より詳しく集める事が出来るだろうし、俺に伝わる時も、情報を取捨選択してくれているのだろう。

 そうすれば、おれは混乱する事はないだろう。

 混乱する事がなければ、物事をしっかり判断でき、冷静に行動できる事につながるのだ。

 それはとても大切なことである。

 焦ってしまっては、正しい判断を下す事が出来ない。

 それは、油断と同じくらい駄目な事である。

 もしかしたら、油断以上にやばいことかもしれない。

 それは避けなくてはいけない。

 まあ、茉莉がうまくやってくれるだろう。

 俺は、茉莉が情報を集めてくれるのを、待つだけである。

 とりあえず、やらなくてはいけない事に専念しよう。

 



 茉莉が出かけて行ったあと、ルルと校長について行き、馬車に乗り込む。

 学校が用意したにしては、かなり豪華である。

 まるで、どっかの貴族の馬車だ。

 まあ、ルルをぼろい馬車に乗せる事は出来ないだろうがな。

 こっちも得できるので万々歳だから、特に何か言うつもりはないが。

 馬車の騎手は、校長が直々にしてくれるようだ。

 そこまで頑張らなくても良いのに。

 まあ、俺が頑張るわけではないから、特に問題はないのだが。

 馬車の中には、俺とルルの二人だけだ。

 俺は、一応の為に、馬車に強化魔法をかけた。

 ミサイルが飛んできても、防ぐ事が出来るだろう。

 この世界の魔法でも、ミサイル以上の魔法は、意外と多いが、その分消費魔力量や、詠唱が長くなる等、いくつか問題があるため、使用できる者は少ない。

 だから、これである程度は安心していいだろう。

 逆に、これを破ってくるような攻撃をしてくる相手に、俺が勝てるかが疑問だ。

 まあ、その時はその時だ。

 きっと何かあったら、茉莉が飛んでくるだろう。

 茉莉と一緒に対処すれば、何とかならない問題の方が少ないはずだ。

 そうであると信じたい。

 そんな俺の考えはお構いなしに、馬車はどんどん進んでいく。

 馬車の揺れは、予想していたのよりも少ない。

 しかし、予想よりは、と言うだけであり、かなり揺れている。

 馬車酔いしてしまいそうだ。

 目の前に座っているルルは、うとうとしている。

 ルルにとってこれは普通なのだろう。

 魔法の効果が切れたとはいえ、一応ルルは寝起きの状態である。

 まだ眠いのは仕方がないだろう。

 しかし、揺れる馬車の中でうとうとしているルルはすごいな。

 俺も早く、この世界に慣れていかなくては。

 それにしても、暇である。

 馬車についている、小窓をのぞいてみるが、風景が一向に変わらない。

 自分で歩いてみているのならまだしも、揺れる馬車では、外の風景に余り集中できず、見入る事が出来ない。

 気分転換しようにも、やる事はないし、何か相手してくれそうなルルは、うとうとしていて、もうじき完全に寝てしまいそうだ。

 それを起こしてしまうのも、悪いだろう。

 しょうがないので、全然変わらない風景にうんざりしながらも、小窓を覗く。

 そんな俺をのせた馬車は、速度を変えず、国の中心地へ向かって、ゆっくり進んでいくのであった。

 



 王城につくころには、ルルは完全復活していた。

 その理由は、あのまま、外を見続けていると、眠気が襲ってきたため、俺もうとうとしだすと、それを見たであろうルルが、急に眼を見開いて、すごい物を見た時の表情になり、


「かわいい天使だなー。」


 と、小声でつぶやく。

 頑張って声は抑えていたようだが、しっかり聞こえてきた。

 これは、急いで逃げたほうがいいのではないか?

 と、考えていると、ルルがこちら側に移動してきた。

 途中よろけて、転びそうになっていた。

 笑いをこらえるのに、かなり苦労した。

 それで少し和んでいると、隣に座ったルルが、


「さあさあ、かわいいかわいい天...アオイちゃん、おねむの時間ですよ。」


 と、言って膝枕してくれた。

 かなりどきどきしたが、これは頑張ったご褒美だと自分に言い聞かせ、ゆっくりと体の力を抜いて行く。

 今ここに茉莉は居ないのだ。

 ある程度の事をしても、許されるだろう。

 少し、ルルの顔を見てみると、微笑んでいた。

 何を考えているかはよく分からない。

 しかし、今は至福の時間を楽しむ時である。

 ぬくもりと柔らかさを感じつつ、ゆっくりと意識を手放していった。

 そして、そのまま王城につき、至福の時間が終わりをつげ、馬車から下りて、今に至る。

 今のルルは、とても機嫌が良い。

 そんなに、俺を膝枕で来た事が良かったのだろうか?

 まあ、本人が良いと思っているのなら、それでいいとしようではないか。

 それよりも、俺は今から一大イベントが待っている。

 王様に謁見するのだ。

 王様はやさしくて、心が広い人だといいな。

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