貴族
「久しぶり、ルルおねーちゃん!」
俺はたまたま見つけたルルに、久しぶりと挨拶する。
実際は久しぶりではない。
数日ぶりだ。
だが、その数日の間に色々ありすぎだ。
そのせいで数日が、数週間にも感じられた。
今までになかった体験だ。
まあ、楽しい事もあったのでよしとしている。
そうしなくては、これからやっていけない気がうすうすしているせいでもあるが...
そんな事はどうでもいい。
ルルは俺があいさつすると、目を見開いて驚いてくれている。
予想どおりである。
「相変わらず破壊力が...そんな事はどうでもいいわ。久しぶり?ね、アオイちゃん。」
少し怪しい事を言いそうになっていたような気がするが、きっと気のせいであろう。
俺は心が寛大である。
スルーしてあげよう。
小さい事を気にしていたら、この世界ではやっていけないのだ。
「ルルおねーちゃんは、魔術科にいたんだね。」
「そういえば、前に会った時には教えてなかったわね。まあ、また会えてよかったわ。」
「私も!」
ルルは、魔法を使えるのか。
一般的に、どのような魔法が使えるのか、聞いてみるのも良いかもしれない。
そうすれば、王城に行かなければいけない用件が減る可能性がある。
完全に無くなるとは思えないのが残念だ。
早めになんとが出来なければ、ちょっとヤバいかな?
何度も何度も王城に行っていたら、完全にやばい奴になってしまう。
とにかく気をつけなければ。
この世界の常識を早く身につけなくてはならない。
急がなくてはいけない、重要案件である。
しかし、最初から聞いてしまうのは非常識と思われてしまうだろう。
それも少し避けるようにしたい。
だから、他のちょっとした事から、質問していく。
しかしそんな中、俺が転移して固まっていた人たちがようやく再起動したようで、今度はルルごと囲みこんできた。
はあ、せっかくルルと話していたのに邪魔してくるなんて...
全員、極大魔法でたたきつぶしてやりたい気分である。
そんな気分になってしまうおれに、さらに火に油を注ぐ奴が、各場所に一人は居るのだろうか。
もしそうなのだとしたら、早いうちに全員処分してしまいたい。
邪魔してくるのが悪いのだ。
この場所にいた、火に油を注ぐ奴は、またまた貴族である。
「おやおや~。国の第一王女様にため口で話をしている、悪い子ちゃんがいるぞ~。ここはお子ちゃまが来る場所じゃないんだぜ。」
そう言って、後ろにいる二人組と一緒に、俺を馬鹿にしてきた。
見た目だけで人を判断してしまう、頭のおかしな人だ。
処分対象として申し分ない。
どうやって処分してしまおうか。
と言うか、ルルって王族だったんだ。
ものすごい偉い人ではないか。
よく、おれだけじゃなく、ルルも一緒に囲む事が出来たな。
どうなっても俺は知らない。
そう考えていると、
「あなた、自分で何を言っているか分かっているのかしら。たかが子爵の子供風情で王の客に無礼な態度を取るとは、恥を知りなさい!」
ルルが言った。
王の客って、俺はここの国の国民に一応なっているのだから、客と言うわけではないはずなのだが、まあ、そんな些細なこと、今はスルーしておこう。
目の前ので起きている問題への対処が、優先事項である。
まあ、武術科でやったような事をやれば、必ず黙るはずだが、今回は別の方法を取ってみたい。
そのやり方は...
「姫様、こんなチビガキが、王の客なわけがないじゃないですか。そんな嘘はさておき、私達と一緒にいたほうが楽しいですよ?いかがですか?姫様。いや、ルル様。」
「気安く名前で呼ばないで。私はあなたに、姫様って呼ばれるのも嫌なの。あなた達と一緒にいたほうが楽しい
?うぬぼれるのも良加減にした方が良いのではなくて?」
「あなたは、子爵よりも平民を取るというのですか?どっちの味方をした方が安全か良く考え直した方がいいと思いますよ。」
「そんなことどうでもいいわ。あなた達といたって楽しくないもの。どうせあなた達も、あなた達のお父さんと同じで、すぐにぺこぺこするようになるんだから。そんな人たちと言ってもつまらない!」
世の女の子は、人を挑発するのが得意だそうです。
これでは、相手もそのうち怒ってしまうだろう。
これでも、ルルは先輩のはずなんだけどな。
護衛の人たちも今は居ないようだし、かなり不用心なのではないだろうか?
一人ぐらい誰かいても良いだろうに。
問題が起きた時にどう対処するのだろうか?
学校だから大丈夫だと考えているのだろうか?
その考えは、甘いとしか言いようがない。
もしも先生がグルだった場合、助けてくれる人が、いない場合があるのだ。
いや、そもそも王族相手にこんな態度をすること自体がおかしいのだろうが...
命知らずなのかな?
まあ、どうなったとしても俺のあずかり知らぬ事だから、どうでもいい。
もう少しだけ、見守っていよう。
攻撃されそうになっていたら、魔法を使えば良いだけの話だから。
しかし、そんな考えも杞憂に終わる事になる。
「こんなくそチビで、どうせ家に帰ったら、ママー!って言ってお母さんに泣きつく奴の、どこが良いって言うんだよ!」
「よくもこんなに可愛い天使...じゃなくて、アオイちゃんの事を馬鹿にしたね!許さないんだから!」
ルルは、もはやスルーのしようがない事を大声で叫ぶと、結界内部に、重苦しい空気が充満し始めた。
決して比喩表現ではない。
実際にそう感じるものなのだ。
俺は、少し違和感を感じるだけなのだが、子爵の子供野郎からすると、相当の恐怖のようだ。
顔が、ものすごくひきつっている。
少し笑いそうになってしまった。
少しだけであるから、許してほしい。
しかし、俺はなぜこうなったのか、少し疑問に思った為、ルルのステータスを確認してみる。
名 ルル・ナスタリア
種 王族
魔 200000(増加中)
総合力 24000(増加中)
ランク B+
スキル 王家の血筋
称号 クハダ王国第一王女 天使の味方
はぁ、称号でふざける必要はないだろ。
先ほどのセリフから、天使とは俺の事だろう。
もうちょっとましな称号にして挙げてほしいものだ。
それはどうでもいい。
今この状況は、ルルのスキル 王家の血筋によるものだろう。
だが、どういう能力なのだろうか?
このまま能力が上昇していけば、Aランクになるかは分からないが、少なくとも、人類最高ランクのA-にはなれるだろう。
これはものすごい能力である。
どういう原理なんだ?
と、疑問に思っていると、急に新しいミニパネルが出てきて、スキルの詳細が表示された。
その説明によると、
王家の血筋
王族の者のみが獲得できるスキル。
感情をエネルギーに、強力な身体強化等が行われる。
スキルの発動は、制御できない。
スキル発動後は、体力の消耗により、疲れっ切ってしまうのが弱点
スキルの使用を止めるには、感情を抑える必要がある。
感情をコントロールすることができれば、最強のサポートスキルになりえる。
だそうだ。
この空気が重苦しくなるのは、ルルが強化されたため発生した、力のゆがみが原因なのだそうだ。
このスキルが発動すれば、どこかそこらへんにいるような奴は、恐怖で動けなくなってしまうだろう。
くらった人は、ドンまいとしか言いようがない。
子爵の子供率いる馬鹿三人衆は、完全に戦意消失している。
しかし、ベルは、そんなことも一切お構いなしに、子爵たちにとどめを刺そうとしていた。
殺傷事件はいい加減まずいだろう。
ルルは詠唱を開始する。
この魔法の詠唱は、かなり長いようだ。
詠唱が長いという事は、それだけ強力な魔法と言う事だ。
詠唱を長くすることで、細かく想像できるようにし、膨大な魔力制御の補助をする役割があるのだ。
このままだは、周りの傍観者が危険だ。
さて、どうするか




