ダンテ
レベルが一定値まで上がると何があるか、茉莉が説明してくれた。
そしてさらに、なぜ俺のレベルがこんなに高いのかも説明してくれた。
「スキルの所に、神の加護ってあるでしょ?あれってね、神がいろんな力を与えるスキルなの。そしてその力を与ええたのは私じゃない。与えたのは、最上位神”三大天”が一人。かつて三十もの国を滅ぼした大災害。絶対神 支配のゼディオンなの。あのバカが与えた加護はレベル十だったでしょ?私が与えた能力+ゼディオンの加護で、おにーちゃんは、人ではありえない力を持っちゃっているんだよね。それが、レベルに反映されちゃってるから、あの数値になっちゃうんだよね。」
だそうだ。
面倒くさそうな名前が出てきた。
なんだよ大災害って。
完全にやばい奴じゃないか。
そもそも、神て言うよりも、自然現象じゃないか。
三十の国を滅ぼしたって、太刀打ちできるわけない。
まあ、そんな事をしていたら、災厄って呼ばれるわけだ。
そんな奴にバカって、茉莉は命が惜しくないのかよ。
関わらないのが一番だ。
加護をうけっちゃってるから出来るわけないだろうけど頑張ろう。
色々説明をしてもらっていると、時間がなくなってきた。
そろそろ学校に行く準備をしなくては遅刻してしまう。
今日行こうと思っているところは、午前中は武術科に。
午後には、魔術科に行こうと思っている。
武術科にはベルがいるが、まあ何とかなるだろう。
きっと問題は起きるはずないさ。
着替えなどの準備も終わり、馬車乗り込み出発。
何事も無く学校に到着した。
少しはやめについたせいか、この時間に来ている生徒は少なめである。
今年入学した生徒は千人くらいいたはずである。
学科が多いっからと言って、この数は異常に思えてしまう。
六学年あるから、この学校には六千人も生徒がいる事になる。
この国子供の数多すぎだろ...
校舎の中に入り、まずは校長室に向かう。
今回は迷わずに行く事が出来た。
「今日は早いではないか。それは良い心がけである。さて、君は今日はどの学科に行こうと思っているのかな?」
「午前中に武術科に、午後は魔術科に行こうと思います。」
「そうか、頑張りたまえ。どこでやるかは、この前案内したから覚えているな。では、そろそろ行くといい。」
校長との話が終わったので、武術科の授業が行われる場所に向かう。
その場所は外にある。
迷路のような校舎とは違って、外は開けた場所が多い。
だから迷いにくいのだ。
さらに武術科の授業が行われる場所は、外で一番広い、第一競技場が使われる。
そのため、かなり場所は覚えやすかった。
第一競技場にも一度も迷わずに到着すると、中にはまだ数名の生徒しかいなかった。
その中にはベルがいた。
ベルは誰かと話していたが、こちらに気づくと話しを中断して、こちらにかけてきた。
「アオイちゃん、おはよう!昨日は本当にありがとう!とてもかっこよかった!すごい感動した!」
「あ、あはは、ベル様?少し目立ってしまっているようですよ。もう少し、落ち着いてください。」
「あっ。」
目立っている事にやっと気付いたベルは、顔を真っ赤にして下を向いた。
かなり恥ずかしかったのだろう。
ベルの反応は見ていて面白い。
少しいじめたくなってしまう。
少し我慢せねば。
だれかは分からないが、先ほどから、鋭い視線を(睨まれているのを)感じる。
その人に怒られてしまうだろう。
まあ、本当は誰なのかは分かっている。
マップ情報で、ステータスを表示させる事が出来るからだ。
こんな事を考えつつ、それがばれないように気をつけながら、ベルと話していると、先ほどベルと話していた人(俺をものすごく睨んでいた人)が話に入ってきた。
「お前が昨日べル姉が言っていた王子様か。こんな俺と変わらないような子供に、そんなことできるわけないだろ。俺よりも華奢な体だぜ。さらに、性別が違うだろ?こんなの王子様なわけないじゃん。出来たとしても、どうせクズマの野郎と手を組んでたに違いないぜ。こんな変な奴の所にいないで、あっちの方見に行こうぜ、ベル姉。」
「こら、ダンテ。私の恩人になんて事言ってるの!」
「ならこいつがすごいってことを、ここでしっかり証明してみろよ。」
ベルの弟らしき奴、ダンテに強さを証明しろと言われた。
この生意気ボーイをぎゃふんと言わせてやろうではないか。
さて、どうやって証明してやるか。
証明する方法はいくらでもある。
全力でたたきつぶしたり、下級魔法を連発しまくって数の力で圧倒したりと出来る。
大人げないし、すごい力を持っていて自重してないのはやばいと、理解はしている。
だが、一人の(元)男として、後ろには下がれない時が数多くある。
今がきっとその中の一つだ。
照明の方法と、本気でやって良いという理由を考えていると、ダンテの方から方法を提示してきた。
「今日の授業で模擬戦をやる予定になっている。そこで俺とお前、どっちの方が強いのか、勝負だ。」
「やめときなさいよ、ダンテ。ダンテじゃ勝ってこないからね。私とは比べ物にならないくらい強いんだから。私にすら勝てないのに勝てると思ってるの?怪我する前にやめときなさい。」
「安心しろよ、ベル姉。ベル姉を助けられるのは世界で俺だけだって、すぐに証明してやるからな。」
「はあ、人の話を全く聞いてない...ねえ、アオイちゃん。この馬鹿なダンテに、現実を教えてあげて。」
「ほどほどにやらせてもらいます。」
そんな話をしているうちに、かなりの人数が、第一競技場に集まってきた。
およそ、千名ほどだろうか。
なるほどだからここはこんなに広いのか。
だが、千名ほど入っても、第一競技場にはかなりの余裕がある。
何を想定して作ったんだよ...
「そろそろ時間だ。これより授業を始める!全員、注目!」
急にこのように大きな声で話すい人がいた。
きっと先生だろう。
先生じゃなかったらかなりやばい人ってことになるんだけどね...
やばいって言うか、頭のおかしい人?
になってしまう。
「まず最初に模擬戦で体を動かす。訓練はそれからだ。近くにいるものとペアを組め。周りと少し距離を取れ。魔法の使用は禁止だ。五分で済ませろ。行動開始!」
先生から指示が出た。
この模擬戦もダンテとやらなくてはいけないみたいだ。
はあ、最初から本気を出してしまってはいけないだろう。
それこそ本当の怒られてしまう。
まずは何も攻撃せず、すべてよけたり、いなしたりしていれば良いか。
ダンテは木刀を持ち、構えの姿勢を取る。
俺は自然体のままだ。
「初め!」
開始の合図が出された。
ダンテは開始早々攻撃を仕掛けてきた。
さすがは姉弟といったところだろうか。
踏み込みがとても似ている。
姉弟というより、流派的な何かだろうか?
姉弟で同じ流派の名は普通にあるだろう。
それか、踏み込みなどの基本動作は、どの流派でも同じなのかのどちらかだろう。
しかし、超基本的な踏み込みであるがゆえに、技量の違いが表れてきてしまうのだろう。
ベルの踏み込みに比べると、ダンテの踏み込みは、すごく甘いのだ。
踏み込みが遅いし、予備動作が大きすぎる。
だが、剣さばきには、多少良い動きがある。
まあ、それだけなのだが。
正直俺にとって、こんなものでは、子供の遊び程度にしかならない。
真剣対木刀でも、俺が勝ててしまうだろう。
しかし、そんな状況であっても、実力差のわからない馬鹿は調子に乗る。
俺は、最初に考えていた通り、攻撃は一切せず、防御に徹している。
そんな俺を見たダンテは、何を勘違いしたのか、
「どうしたんだ?俺に手も足も出ないのか?はっ、所詮は俺の足元にも及ばないほどのかすだったんだよ。実力差って言うものを見せつけてやる!」
俺はそんな挑発になんとか耐えきり、五分間さばききった。
次はいよいよ本番だ。
どうやってたたきのめしてやろうか。
俺が、本当の実力差というものを思い知らしてやる。
きっと、ダンテにとって貴重な体験だろう。
これに懲りて、調子に乗るのはやめてもらいたいものだ。
どうやってつぶしてやるか。
腕がなるぜ。




