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女神(妹)と気ままに異世界生活  作者: 月之住人
異世界転移
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最後の日常

少し長いです(千字ほど)

 俺は八坂井葵(ヤサカイアオイ)

 高校生だ。

 しかも、優等生(自称)である。

 成績は普通だがな。

 歴史と科学が得意分野で何とかそれでやっていけている。

 よくある、都会って言うほど栄えていないけど、田舎ってほどでもない微妙な場所に住んでる。  家は二階建てだ。

 父、母、妹と四人でだ。

 父は普通の会社員で、母は専業主婦。

 普通の家庭である。

 家族の中で一番仲が良いのは妹の、八坂井茉莉(ヤサカイマツリ)だ。

 茉莉は中学生なんだが、すごく俺を慕ってくれるかわいい妹だ。

 最近は普通になり始めているがな。

 普通になるだけならまだしも、毒舌に鳴り始めている。

 それに少しさびしい思いをしている。

 それでも俺はとても幸せだったんだ...大切なものを奪われたあの日までは。


「起きておにーちゃん」


 俺の一日は、茉莉が起こしてくれることで始まる。

 目覚ましをかけてもどうしても起きれないのだ。

 気づいたら目覚ましを止めていることもよくある。

 だが茉莉は、俺が起きるまで根気よく粘ってくれるので助かっている。

 途中から面倒くさくなって、適当に叩かれているのも知っているが、俺が起きた時の笑顔がとてもかわいいので良しとしよう。

 起きた後は二階にある俺の部屋から一階のリビングに移動をするのだが、うちの階段は、狭くて急である。

 一段に、足を一つのせられるぐらいの広さしかない。

 まあ、それだけ狭ければ、階段から落ちるのも仕方がない。

 だから寝ぼけながら階段を下りるとなおさらだ。。

 階段が急なため、落ちるとかなりの段数を下るため、毎回頭を打ったり、腰を打ったりとかなり痛いのだ。

 さらにその痛みは次の日まで続くのだ。

 骨折するよりはましだが...

 今日は落ちなかった。

 一安心である。

 長くもなく短くもない。

 そんな、良くアニメとかで出てきそうな、歩きなれた廊下を通って、無事にリビングに着くと、


「おはよう。」


 と、両親が挨拶をしてくるので、適当返事をして、椅子に座る。

 だいたい椅子に座ったぐらいのタイミングで、母が朝食を持ってきてくれる。

 毎回、どこかのホテルにいるような気分になる。

 今日のメニューは、食パンに卵焼きとハム。

 普通である。

 朝食メニューの、定番中の定番である。。

 なんで俺の周りでは、こんなにも普通が多いのだろうか。

 ここはアニメの世界かなんかなのだろうか?

 まあ、もしもそうだとしても、ごく普通の日常生活が映し出されるだけだから、すごいつまらない作品になるだろう。

 そしてそんなものは、誰も見たがらない。

 すぐに打ち切りになるだろう。

 朝食を食べ終えたら、自室に戻り、着替えをする。

 朝食のあと、すぐに歯磨きをする人も多いだろうが、洗濯機と洗面台が近くにあるため、先に着替えたほうが効率がいいのだ。

 階段を往復する回数が少なく済むのだ。

 危険な階段は通る回数を減らした方が良いだろうし。

 そのままパパッと制服に着替え、また一階に下り洗濯物を洗濯機へ突っ込んだ後、十分間きっちり歯磨きをする。

 十分間きっちりやるのは、幼稚園の時からの習慣だ。

 そのおかげか、生まれてから一度も虫歯になった事がない。

 これは、俺の数少ない自慢の一つだ。

 俺が歯磨きしている間に、父が出勤する時間になったので、歯を磨きながらいってらっしゃいを言った後、やっと学校に行く準備を始めるのだ。

 普通の人は帰ってきてから、その日のうちに済ませるのが普通だと思うが、俺は面倒くさがりなため、家を出る直前に済ませる。

 そんな怠惰な俺とは違い、きっちりしている妹の茉莉は、準備などはいつも早め早めにしているので、俺よりも準備にかかる時間が少なくなるため、茉莉の方が登校の時間が少し早い。

 とはいっても、そこまで時間に差があるわけではない。

 俺がちょうどかばんの準備をし始めたころに出発している。

 かばんの支度は、三分あれば終わるので、俺も茉莉が出発した数分後に出発する。

 ゆっくり準備を終えて、今日も普段となんら変わらず出発する。


 いつも通りだったのはここまでだった...


 今日は珍しく、いつもより早い時間に家を出た。

 だが、雲行きが怪しい。

 これは雨が降ってきそうだ。

 ちょっと憂鬱な気分になる。

 その憂鬱な気分を晴らそうと、鼻歌を歌いながら歩いた。

 が行への道のりはそんな長いわけではない。

 七分ほどあれば、学校につく。

 三分ほど歩いたところにT字路があり、そこを右に曲がり、四分ほどまっすぐ進めば学校につくのだ。

 そのT字路が見えてきた。

 T字路を右に曲がると、普段と違う光景が目に入ってきた。

 人だかりができていたのだ。

 何だろう珍しい。

 誰か有名人でもいたのだろうか?

 でもそれにしては、黄色い悲鳴が聞こえてこない。

 騒然とした感じだ。

 人だかりの中から、数名が急いで抜けて走り去って行ったりしている。

 何人かは、携帯電話でどこかへ電話をかけている。

 これは、確実に有名人ではないな。

 では、何の人だかりだろうか?

 落書きでもされていたのだろうか?

 人だかりの中を軽い気持ちでのぞいてみるとそこには...


 塀に突っ込んだ青色の乗用車とその間に挟まれつぶれている茉莉がいた。


「えっ」


 思わず声が出た。

 乗用車は前の部分が完全に潰れていて、運転手はかなり危険な状態、または手遅れな状態が容易に想像できる。

 だが、それはそれほどの問題ではない。

 今この場での一番の大問題は、茉莉が潰されている事である。

 車が突っ込んだ衝撃で塀が崩れたため、茉莉の姿がよく見える。

 お腹のあたりがぺしゃんこになっていて、本当に、おなかと背中がくっついている。

 茉莉の周りには、血だけでなく、固形物も飛び散っている。

 これはもう手遅れだろう。

 顔は無事な為、誰だかわかるが、首から下は、原形をとどめていない。

 この中で生きていたとしても、相当な苦しみである。

 さっきまでいつも通り元気で明るかった茉莉が今はつぶされている。

 目の前の光景が信じられない。

 現実が受け止められない。

 頭が真っ白になった。

 もう何も考えられない。

 足に力が入らなくなり、膝をついた。

 声は出なかったが、なにだが止まらなかった。

 どこかから、救急車のサイレンが聞こえてきた。

 救急車が来たところで、意味などないのに。

 茉莉はすでに死んでいるのに。

 



俺はその日から、学校をちょくちょく休むようになった。

 後日わかった事だが、この事故で茉莉だけでなく、乗用車を運転していた男性と、助手席に座っていた女性の夫婦も死亡したらしい。

 事故の原因は、飲酒運転。

 ひどく酔っった状態で運転したため、正常な判断が出来ず、塀に突っ込んだそうだ。

 そして茉莉は運悪く、たまたまそこに居合わせただけだった。

 なぜ茉莉が巻きん込まれなくてはいけなかったのだろうか。

 単独事故なら、犠牲になるのは、飲酒運転をしていた人たちだけなのに。


 


あれから一週間たった。

 茉莉がいなくなったここ一週間の生活ははとてもつまらなかった。

 数年間続けてきたものが、たった一週間で飽きてしまった。

 なかなかの事である。

 学校に行っても、ろくに集中できず、授業でやった事が身に入らない。

 勉強だけならまだしも、ゲームも、友達との遊びも、家族とのだんらんも、部活も、学校も。勉強以外はすべて大好きだったのに、すべて飽きて嫌になってしまった。

 食べ物の味ですら、どうでも良い物の一つになってしまった。

 さらに、体がものすごくだるい。

 動くのが嫌になってしまい、学校も休むようになった。

 いわゆる、不登校である。

 俺はこの世界のすべてが嫌になった。

 思い返せば、たいていのことを、茉莉と一緒にやっていた。

 当り前だと思っていたので特に気にしていなかった。

 なぜ、失ってから気付いてしまうのだろうか?

 もっと早く気づいていれば、もっと時間を大切に過ごせたのに。

 なのにもう茉莉がいなくなってしまった。

 だから、すべてが飽きて嫌になるのは当たり前のことかもしれない。

 俺は今、この町で一番高い建物、五階建てマンションの屋上にいる。 

 ここのマンションに住んでいは居ないが、簡単に侵入することができた。

 マンションの住人に鉢合わせしなかったのだ。

 屋上へと続く扉には、かぎは掛かっていなかった。

 かなり不用心だな。

 まあ、確かに誰かのプライベートルームというわけでもないのだが。

 その不用心で、今回とても助かった

 なぜ俺がこの場所に居るか。

 簡単に想像がつくだろう。

 そう自殺しに来たのだ。

 すべてが嫌になったのだ。

 生きることもその中には入っている。

 死後はどうなるかは分からない。

 だが、これからの最悪な人生をやめることができる。

 何の楽しみのない、この人生を終わりにすることができる。

 さらに、もしかしたら茉莉にもう一度会えるかもしれない。

 もしも会えたなら、今度は、一瞬一瞬を大切に。

 時間を大切にして過ごしていきたいな。


「さよなら、父さん、母さん、みんな...今からそっちに行くからな、茉莉。待ってろよ。」


 最後にそう呟いて、飛び降りた。

 だんだんと地面が近付いてきた。

 次の瞬間、頭に強い衝撃が来た。

 痛みが来る、そう思った瞬間、目の前が真っ白になった。

 死んだな。

 直感が、俺にそう伝えてくる。

 成功したのならそれでよし。

 痛みがないならなおさらだ。





「起きて、おにーちゃん」


 あれ?

 頭の中で声が響く感じがする。

 茉莉の声だろうか?

 死んだはずだから、そんなの感じるのはできないはずなのに。

 俺は自殺したはずなんだけど。

 そうか、すべて夢だったんだ。

 妹は死んでいないし、俺は自殺していない。

 そうだったのか。

 そして俺は目覚める。


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