腐りかけた心の浄化
「そう頼みたい事?」
「それはいったいなんなの?」
「通称カッサライである首狩り族の長をやっつけてもらいたいの」
「首狩り族の長を倒してどうするの?」
「メグさんは首狩り族を野放しにして良いの?」
「野放しにするも何も、この混沌とした時代にいくら首狩り族を殺しても仕方が無いことなのよ」
「みゆきの・・・クルミの仲間達は首狩り族に囚われてしまった。
しかも大人達はくい殺されて、子供達は首狩り族の仲間として教育をさせられている。
あいつ等さえいなければ、みゆきは・・・クルミはメグさんの所まで訪ねて来なかったよ。
だからお願い」
切実な思いで私に訴えてくる。
でも私は「それは出来ないね」
「どうして?どうして出来ないの?」
「私達は私達で生きるのに精一杯なの、それに首狩り族の長を倒しても第二第三のカッサライの長が出来るだけ。私達は私達自身の事で手いっぱいなのよ」
「知っている?カッサライに殺された人間はあの世にも成仏できずに苦しみながらこの世を漂い続けるのよ」
その惨さを知ったからと言って私の意見は変わらず「そんな事知らないわ」
「どうして?どうしてメグさんはそんな冷たい人間になっちゃったの?」
「知っての通り私とエイちゃんは人間じゃないわ、第三次世界大戦で核戦争となった人間達の愚かさにはもうつき合いきれないわ」
「でもメグさんと英治さんは両親を亡くした子供達を引き連れているんでしょ」
「もう私達は何歳になるんでしょう?あれから百五十年がたった今、私達はそうして暇を潰しているのよ。禁忌を犯した吸血鬼として。
人類が滅亡した時に私達は消える運命となっている。
だから私達にとって人類が滅びる事が私達にとって好都合だわ」
「じゃあ、メグさんが保護している少年少女達がカッサライに奪われて殺されたらどうするの?」
「・・・」
私はみゆきちゃんの質問に答えられずに本当にそうなった事を考えた。
いくら暇つぶしとは言え、私達が保護しているかわいい子達にカッサライに殺されたら、私は許せない。
でも私は、「みゆきちゃん。私達はそういう人間を何人も見てきたわ、あの第三次世界大戦の事を思い出すと人間のする事にはつき合いきれないわ。
みゆきちゃんも覚えているだろうけれど、私達が素敵な世界に創造して、世界を作り替えたのに、人間はその世界を自ら壊した。
それにそのカッサライも自ら、自滅していく運命にさらされるわ」
「どうしちゃったんだよメグさん。それに英治さんも。メグさんの力なら、カッサライなんていとも簡単に倒せるはずなのに」
みゆきちゃんはそういって、お風呂も入らずに、そのままアラタトの外に出て行ってしまった。
その姿を見て、昔の私なら、すぐに引き留めてカッサライをやっつけに行ったんだろうな。
もう二百年近く生きた私とエイちゃんはその感情が薄れかけている。
「メグ、そろそろ夜明けだ」
アラタトからモニターで映し出されて見ると、日が射している。
「子供達を起こしに行かないとね」
アラタトから出て、子供達の所に行くといつものように粗末な朝ご飯を食べて私達が栽培している野菜やお米などの田植えをしている。
そうだ。そうして生きていくしかないのだこの子達は。
農業は過酷だ。
でも耕して収穫しないと子供達は生きていけない。
それに家は牧場も営んでいる。
私は心を鬼にして、さぼる奴がいたら容赦なく戒めのピンタをする。
そうやって私とエイちゃんは子供達を陰で見守っている。
この現況にこの子達は食べて生きていくことで精一杯なんだ。
昔のような飽食時代は終わってしまったのだ。
賢明に働くこの子達は恵まれている方だ。
働き、食べて、服も下着も着ることが出来る。
他の施設は働かない者は追い出されて飢え死にするか、カッサライの的となって死んでいく人もいると言われている。
私はこんな世界を望んだんじゃない。
でも世界は正しさを主張するあまり核戦争となってしまった。
どうして人間は愚かなのか?
出来るのであれば私とエイちゃんはこの子達にすばらしい未来を見てもらいたい。
それに出来れば先ほどのみゆきちゃんが言うカッサライの長を倒しに行って上げたいと思っている。
でもそんな事をしたって何も変わりはしない。
核の原点となる発明をしたアインシュタインは言っていた。
核戦争が起これば、私達人類は混紡や木の棒で戦うことになるって。
それってつまり、原始時代に戻ると言うことだ。
今は魂の時代は終わった、そして争いの時代に人間達は正しさを主張しながら戦争を起こす。
今はどんな時代かと言うと、歴史上にある戦国時代みたいな野蛮な時代だ。
力のある者が弱者を殺し、その土地や財産などを奪う時代。
でも私には力がある。エイちゃんにも。
その力を今賢明に働いている子供達を守ることが出来る。
先ほどみゆきちゃんに子供達に暇つぶしで子供達を守っていると言ったが、それは半分嘘で半分が本当と言った方が適切だ。
人は一人では生きられない。
優しさだけでは生きられない。
この力こそが正義と言う時代に私達は便乗して、世の中をもっと平和にしたいと思うが、人間は同じ過ちを繰り返し、そういった気持ちも失せてくる。
私とエイちゃんに残されたアラタト、それに二十名の子供達。
それを守っていく事で私達は生きていられる。
そう考えながらも日が暮れる。
「あなた達、今日はこれぐらいにしてよるご飯にしましょう」
「はーい」
とみんな素直で元気がいい。
私はみんなが働いた後のやりきった感を見るのが一つの楽しみとなっていた。
そんなみんなのやりきった感を見ると私は笑顔になれる。
食事はエイちゃんが作る事となっていて、今日は特性カレーライスだ。
カレーライスを嫌いな子供はこの中にはいない。
みんないつものようにガツガツと食べるので、「働いた後のご飯はうまいでしょ」
「じゃあ、ご飯を食べた者から、シャワーを浴びて、勉強してから眠るのよ」
「はーい」
とみんなから笑顔の返事が待っていた。
私達が育てている子供達はみんないい子ばかりだ。
たまにおいたをする時は戒めのピンタを食らわせるがそんなに強くした覚えはなく、みんなピンタされた後、ごめんなさいとちゃんと謝る素直な子達ばかりだ。
時には厳しく、時には優しく、この子達を育ててあげたい。
まさしくここは孤児院みたいな所だ。
さてみんなも寝た事だし、エイちゃんとアラタトに行きカッサライの的となっている人はいないか、アラタトの生命反応で検知する。
私は検知しながら考える。
昨日のみゆきちゃんのカッサライの長を倒しに行くことを拒んだが、倒しに行ってもまた第二第三のカッサライの長が生まれるだけ。
そこで生命反応が検知された、森の中で一人の女の子が出歩いている。
みゆきちゃんだな、森の中に一人で潜入するなどカッサライの的になりに行くようなものだ。
カッサライ達の生命反応が女の子に向けられて、狙われている。
仕方がない助けに行くか。
「エイちゃん。多分みゆきちゃんだと思うけれど、カッサライから女の子一人助けに行くよ」
「みゆきちゃんも懲りないね」
本当にみゆきちゃんは本当にバカな子だ。
でもカッサライにみゆきちゃんが殺されることを思うと何か嫌だ。
百五十年前共に戦った仲だ、助けに行ってやるか。
アラタトを降りて、生命反応がしたみゆきちゃんの所に向かう。
だがみゆきちゃんは聖なる力ホーリープロフェットで戦っていた。
ホーリープロフェットとはみゆきちゃんの怒りが頂点まで行き覚醒したみゆきちゃんのパワーだ。
外套から首を出して、みゆきちゃんはホーリープロフェットを駆使して賢明に戦っている。
相手は五人、首狩り族のカッサライはみゆきちゃんの喉元をねらい弓矢を放つがそれを片手で握って、邪悪なカッサライをホーリープロフェットの炎を放ち、カッサライ達をみんな燃やし尽くした。
カッサライ達は断末魔を上げて燃え尽き灰と貸していった。
みゆきちゃんは「ふん。この外道どもが」
私は拍手する。
「見事だったわよみゆきちゃん。それなら私の手を借りずともカッサライの長を倒しに行けるんじゃないの?」
「私の第三の目であるチャクラは言っている。長は妖術使いでみゆきのホーリープロフェットでは歯が立たないと」
「それで二度も私の所に訪ねて来たの?」
「メグさんは変わってしまった。以前のメグさんなら、そんな奴を野放しにしない」
「百五十年も生きていれば人間は嫌でも変わるわ」
「メグさんは人間じゃないでしょう」
「人間じゃなくても、百五十年の時を経て行けば、吸血鬼だって変わるわ」
「変わらないでメグさん。あの時のように共に戦いましょう。きっとダンデライオンやリリィやその他の人間の生まれ変わりも見つけ出せるかもしれない」
「ダンデライオンもリリィもその他の人間はみんな年をとって死に、その生まれ変わりを探しても見つかりっこないわ」
「チャクラは言っている。みんなメグさんや英治お兄ちゃんに会いたがっていると」
「何を根拠にそんな事を言っているの?」
「このチャクラが言っている」
みゆきちゃんは第三の目を額から広げて輝いている。
みゆきちゃんの言っている事は本当だ。
かつての仲間達も私に会いたがって共に戦いたいと願っている。
「でも人間は愚かだ」
「そうだよ。人間は愚かだよ。戦争が繰り返されてもまた私達も立ち上がろうよ。何度争いが繰り返されても共に戦おうよ」
「それは何の為に?」
「それは正義の為にさあ」
「愚かな、その正義がまた争いの種をまき散らす事になるのよ。正義は悪、みゆきちゃんもそれは良く知っているはずでしょう」
「でも私達の正義は違う」
「どう違うの?」
言葉に詰まるみゆきちゃん。
そんなみゆきちゃんに対して「話にもならないじゃない」
「メグさん、ごめん」
そういってみゆきちゃんは私にホーリープロフェットの炎を浴びせられた。
熱い、どうして私がみゆきちゃんのホーリープロフェットに焼き尽くされているの?
私には百五十年の間で心を黒く染めてしまった部分が会った事に気がつく。
「私は、私は・・・」
「お願い目覚めて、メグさんにはこの百五十年の間に心を黒く染めてしまった物があるの。だから目覚めて」
「うわああああああ」
と私は絶叫する。
そうだ。私はどんな時でも、人を憎むことではなく、罪を罰してきた。
その心が私の心の中に長年になって蘇ろうとしている。
炎の勢いが増していく。
私の中に悪魔が存在していたそうだ。
私は人間を憎み続けてきた。
争いを繰り返す人間達に対して。
いや人間が愚かなのは当たり前。
その人間を助けるために私達は戦ってきた。
やがて炎は止み、私は真っ黒に染まってしまったが、心は穏やかだった。
そうだ。私達はどんな時でも人間の愚かさに戦ってきた。
私は人間の為ではない、自分が自分であるために人々を救ってきた。
「みゆきちゃん、共に戦おう」
「分かってくれたんだねメグさん」
私は改心した物のここはカッサライの的となる森の中だ。
共に私達は力を使い果たした。ここでカッサライにあったら私は禁忌を犯した吸血鬼で死にはしないが、みゆきちゃんが危ない。
みゆきちゃんが私にホーリープロフェットの聖なる炎を浴びて、力つきそうになっている私をおぶる事は出来ないが、肩を貸してくれた。
「みゆきちゃん。とりあえずアラタトに行こう」
「うん」
森の中を出ようとして互いに力を使い果たした私達はアラタトまでゆっくりと進んでいった。
そして、カッサライの集団が現れた。
「よくも俺達の仲間を・・・」
カッサライは先ほどみゆきちゃんの炎で絶命した仲間のことを言っている。
やばい、私は死ななくてもみゆきちゃんの命が危ない。
「みゆきちゃん、逃げて」
「逃げられるわけないじゃない。みゆきはやっと改心してくれたメグさんを見捨てる訳には行かない」
「みゆきちゃん・・・」
みゆきちゃんは最小限の力を駆使して、ホーリープロフェットの力を駆使した。
「みゆきちゃんも力が残っていないじゃない」
「大丈夫、みゆきはメグさんが改心してくれた事で嬉しいから、今ではその百倍もの力を発揮できるよ」
そんな力がみゆきちゃんに?
だがみゆきちゃんの言っていた力ははったりだった。
みゆきちゃんは自分が犠牲になって戦うつもりだ。
「みゆきちゃーーーーん」




