新たなる物語
あれから百五十年の時が過ぎた。
かつての仲間だったみゆきちゃん、ダンデライオン、豊川先生、麻美ちゃんに、その他の人達は年をとり、やがて亡くなって行った。
そして愚かな人間達は戦争と言う、大きな戦いに巻き込まれて、世界の大半が亡くなっていった。
今私が立っている仙台タワーからの景色は、青々とした緑で埋め尽くされている。
私とエイちゃんは死ぬことの出来ない禁忌を犯した吸血鬼としてこの仙台タワーからの景色を眺めている。
大半の町の光は無くなり、その代わりに、空は幾千ものガラスを散りばめたような輝きを誇っている。
私とエイちゃんは歴史の傍観者だ。
それでも私とエイちゃんは生き残った人達と力を合わせて生きている。
それにフリースクール英明塾は今年で二百年の節目を迎えている。
「そろそろ戻ろうかメグ」
「そうだねエイちゃん」
私とエイちゃんは仙台タワーから飛び降り着地した。
そして私達が暮らしている英明塾へと帰っていった。
英明塾の建物は百五十年たった今でも、外観はかなり色褪せてボロくなって入るが、まだ人が住める程の形は残されている。
特に私達塾生達と作らせた英明塾の旗が揺らめいている。
それにリリィが残してくれたアラタトも健在である。
アラタトは今は兵器ではなく移動手段として英明塾の頭上に浮かんでいる。
私とエイちゃんが帰ると、親を亡くした子供達が待っている。
子供は丁度二十人くらいいる。
私とエイちゃんは孤児を見つけては私達で保護している。
第三次世界大戦が起きたのは丁度二十年前、その時核戦争が起こり多くの人々は文明の利器を無くして消えていった物が多々多く存在している。
私もエイちゃんも核の脅威にさらされたが何とか生きている。
私達は死にたくても死ねないのだ。
姿形も十七歳のままである。
私とエイちゃんは百五十年前に結婚して、その時祝福してくれたみゆきちゃんやリリィに豊川先生や見事東大受験に成功した徳川さんや色々な人がいたが、今は私とエイちゃんを残してみんな年の力には勝てずに死滅していった。
私に残されたのはエイちゃん、エイちゃんに残されたのは私事メグである。
第三次世界大戦が行われたこの世界では、私は一人でも良いから、両親を亡くした子供達を救いたいと思っている。
それが私とエイちゃんの使命でもあるような気さえしてくる。
私とエイちゃんが英明塾に帰ってくるとみんなが総勢二十人の子供達が出迎えてくれる。
「ただいま、みんなご飯にしましょう」
私が言うとみんな「はーい」と返事をしてくれる。
食料はお米と野菜を私達と子供達が育ててくれた物だった。
私とエイちゃんは食料が無くても生きていられるので、いつも好き嫌いの激しい子供達の為にご飯を提供しているだけであった。
火はまだ文明の利器があり、ガスが使える。
でも電気はない。
「はーいみんな、ちゃんとご飯を残さず食べるのよ」
みんな好き嫌いはあるが、みんないい子でちゃんと最後まで残さず食べてくれる。
食事の出来るところはそう滅多とない。
だから子供達もその事を知っているのでしっかりと食べてくれる。
子供達は年齢は四歳から十八歳の子供達がいる。
みんな二十年前に起こった第三次世界大戦の核戦争で両親を亡くした者達ばかりだ。
まだ世界には生き残った人達がいる。
それにこの近くに町が存在している。
みんなお金ではなく物々交換で食料を得ている。
みんなに歯を磨かせて、まだ磨き方を知らない子供には十八になる優斗に磨かせている。
優斗は最年長の子供で面倒見が良い。
それに子供達に畑を耕させている。
消灯は十時、テレビではなくラジオにみんな夢中である。
「はいはい、みんな十時よ。ラジオはここまでで、みんな寝る時間よ」
「後もう少しだけ、ボクシングの世界チャンプが初防衛戦で戦っているんだよ」
「ダメよ」
と私は心を鬼にしてラジオを切った。
「何だよもう少しだけ良いじゃん」
「ダメったらダメ、子供は早く寝ないと育たないし、カッサライの元へと送り込むわよ」
「カッサライには勘弁してよ」
みんなカッサライに引き渡すと言うとたいていの子供は言うことを聞く。
カッサライとは人の首を切って食べる首狩り族である。
文明の利器が無くなり、そういった野蛮な人が本当にいるから怖い。
でもまあ私とエイちゃんがついていれば大丈夫だけどね。
みんなが寝て私とエイちゃんは眠らなくても大丈夫だから、禁忌を犯した者通し二人でエイちゃんと話し合う。
私とエイちゃんはアラタトで話し合う。
「また生命反応が出たわ」
「またカッサライかもしれないぞ」
「でも、森の中だからとりあえず、行ってみる価値はあるかもしれないね」
生命反応が出た地域へと私とエイちゃんはアラタトで生命反応が出た森の中へと向かう。
アラタトを動かす球体にふれて、森の中に生命反応が出たところに移動する。
そこで私達は降りる。
そこにはローブを纏った人がカッサライに狙われている。
「エイちゃんカッサライに人が狙われているわ」
カッサライは「ひゅーひゅー」と雄叫びをあげながら、ローブを纏った正体不明の人に襲いかかってくる。
「これは助けるしかないでしょ」
「あなた達ちょっと待ちなさい」
「何だ貴様は?」
カッサライは六人そのボスが私に向かって釜を首もとに狙ってきた。
でも私にはそんな攻撃は効かない。
それどころかモロいその釜は折れてしまった。
「お前達何者だ」
とボスは狼狽えながら言う。
「私は川上メグ」
「俺は豊川英治」
「ボス聞いた事があるぜ、俺たちカッサライの軍勢を一度に消滅させた奴らだ」
「まさかこいつ等が吸血鬼の川上メグに豊川英治」
「勝てるはずがない、いったんここは引くぞ」
カッサライ達は森の中へと消えていった。
それで良い私たちは無益は殺生はしたくない。
それよりも暑そうな黒い外套にくるまった人は誰だろう?
「もう大丈夫よ」
私が優しく声をかけてあげると外套の頭を脱いで、銀髪の美しい少女であった。
「助けてくれてありがとう」
「あなた名前は、大塚クルミと言います」
よく見るとこの少女どこかで見たような気がするのは気のせいか?
「私は川上メグよ。それでこの人が豊川英治よ」
「川上メグ、豊川英治」
静かに私達の名前を復唱すると「あなたメグさんね、それに英治さんも」
私達の事を最初から知っていたようだ。
「あなた何者なの?」
「何者と言いますと私はみゆきの生まれ変わりです」
「嘘でしょ。生まれ変わりの人は記憶がリセットされてまた世に出てくるのに」
「メグさん。私を誰だと思っているの?」
そうだ。みゆきちゃん事くるみちゃんには占いとチャクラの技が使える。
そんなみゆきちゃんとの出会いに感極まって涙をこぼしてしまった。
「とにかくみゆきちゃん、じゃなくてくるみちゃん。話は後で語り合おうよ」
みゆきちゃん事くるみちゃんは私達の信頼を得るために予言の源であるビー玉のような小さな玉を持っていた。
「本当にみゆきちゃんなんだね。今はくるみちゃんと呼ぶべきか?」
「みゆきの事はどちらでも構いません、でもよろしければみゆきと呼んでいただけると私は嬉しいです」
私達はアラタトに入ってみゆきちゃんといっぱいお喋りしたいがみゆきちゃんは疲れているらしく、アラタトの仮眠室に連れていき、そこで眠らせた。
「びっくりだねエイちゃん。まさかみゆきちゃんの生まれ変わりに出会えるなんて」
「そうだね。もう記憶に薄れてしまっていたが、俺達の仲間として、あの時、共に戦ってくれたのがみゆきちゃんだもんな」
「素敵な世界にしたのに、人間達は争いが絶えないほどの愚かさに邁進してしまうんだからね」
「本当に人間は愚かだ、しかしそれを言うなら俺達も同じ事だろう」
「そうね。私達は禁忌を犯した吸血鬼、死ぬことも出来なければ輪廻の輪をくぐる事さえ出来ない」
「あれから百五十年、生きることにもうんざりしているところだ」
「それを豊川先生は一万年物時を経て、その禁忌をエイちゃんが受け継いだ」
「そうだな、俺達は愚か者だ」
そう私達は輪廻の輪をくぐるために、つまり死にたいのだ。
でも私達には使命がある。
第三次世界大戦で両親を亡くした子供達の為にこうして生きている。
私達は眠ることさえ出来ない。
手も冷たく、心臓も止まっている。
さらに私達には子供も作るのに抵抗があった。
八十年前私達は子供を作ったが、子供は普通の人間として生まれ、そして消えていくように私達よりも先に死んでしまった。
でも子供には何不自由させた覚えはない。
かわいくて、ちょっとわがままだけど憎めない存在だった。
そんな子供は巣立ちまた新しい子を産んで孫が出来て、さらにさらにまた孫が出来て、今は行方を知らない。
いずれにしても私達よりも先に死んでしまう。
そう私達は生きることにうんざりしているのだ。
姿形は幼い十七歳のままだが、本当に生きる事に私達はうんざりしている。
豊川先生は一万年もの間、良く耐えて生きられたものだ。
でもそんな私でもエイちゃんがいる。
そしてエイちゃんには私がいる。
でもそんな暮らしにも私達はうんざりしている。
だから私達はこの壊れかけた世界で両親を亡くした幼い命を救おうとしている。
それが私達の使命だと勝手に決めつけている。
もしかしたら、みゆきちゃんはそんな私達を探して、カッサライの的になりそうになっても私達をその予言の力でここまで来たのかもしれない。
そういえばみゆきちゃんはもう百年はたつのか?私達の前から忽然と消えていった。
みゆきちゃんだけじゃない、みんな大人になったら、忽然と消えていった者何人かいる。
そんなみゆきちゃんの生まれ変わりが私達を訪ねてきたのはもしかしたら、私達が輪廻の輪をくぐるための方法を伝えに来たんじゃないかと私は少々期待していた。
今日も日があがるのをエイちゃんと見つめる事になっている。
私達は眠ることの出来ない吸血鬼なのだから。
エイちゃんはイスに座ってテーブルに足を乗っけて、その朝日を迎えていた。
「行儀悪いよエイちゃん」
「おう悪い悪い」
エイちゃんも言葉には出さないが生きることにうんざりしているのかもしれない。
私もうんざりしているが、若さを保ったまま生きるのも悪くないと思って、とにかく前向きに考えたりしている。
「さてみゆきちゃんを起こさないとね」
「みゆきちゃん起きて朝だよ」
仮眠室で眠っているみゆきちゃんを起こしに行くと、外套をかぶったまま眠っている。
それにみゆきちゃんは何日お風呂に入っていないのか少々臭い。
みゆきちゃんは起きようとはしない。
そういえばあの頃のみゆきちゃんもそうだった。
みゆきちゃんは朝弱いのを思い出し、起こすのに苦労した記憶が舞い起きる。
「みゆきちゃん」
布団をはぎ取ると、外套の中身はすっぽんぽんのみゆきちゃんだった下着さえつけていない。
とりあえず見なかったことにして、アラタトにある私の下着のタンスにある、みゆきちゃんにこっそりとパンツとブラをはかせた。
ようやくみゆきちゃんは起きてくれて、その寝ぼけ眼を私に向けた。
するとみゆきちゃんは私を抱きしめて、「百年ぶりだねメグさん」
「みゆきちゃん。ちょっと臭うから、お風呂入ってきて」
「お風呂なんてずいぶん贅沢な物を持っているんだね」
そうだった。文明が半壊したこの世界では、お風呂なんて贅沢だと言われている世界だ。
そこでエイちゃんが「何だみゆきちゃん。起きたのか?」
「エイちゃんも久しぶり、あの頃と全然変わってないね」
エイちゃんに抱きつくみゆきちゃん。
「おいおい、みゆきちゃんお前ちょっと臭うぞ」
「今の文明ではお風呂なんて贅沢な物はないよ」
「とにかくみゆきちゃん。私と一緒にアラタトにあるお風呂に向かいましょう」
とりあえず話は後にして、みゆきちゃんとお風呂に入った。
脱衣所で、「私、外套の下は何も着ていなかったのに、どうしてパンツとブラが」
「私が着せて上げたのよ。感謝しなさいよ」
「メグさんはこの半壊した文明でもパンツとブラと言う贅沢な物をはいているの?」
「着るのもは私達の畑で栽培した物をブツブツ交換で買ったものよ。
それよりもみゆきちゃんはどうして私の所まで訪ねて来たの?」
「そうだった。私はメグさんに頼みたい事があって来たの?」
「頼みたい事?」




