表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第3章
48/89

誰にも見えないリリィ



「おい、リリィ起きろ」


 思い切り揺さぶるが、彼女は揺り動かせるが、その強靱な馬鹿力は健在で私の腕をしっかりと掴んで眠りながらも離そうとはしなかった。


「離れろ」


 そういって腕を振り動かして、彼女は軽々と持ち上がったが、相変わらずの馬鹿力で、その私の手を離そうとせずに眠ったままだ。


「藤沢さん達も手伝ってくれないかな?」


 藤沢三姉妹は私の顔を見ておかしな目で見ている。

 この時の藤沢三姉妹が何を考えているのか私には分からなかった。


「リリィ」


 そういいながら、リリィを勢いよく降り投げようと思ったが、離れる事はない。


 さすがの私も疲れてきた。

 少しだけ息を切らしている。


 すると藤沢三姉妹が私の所に寄ってきて、「おひふいて」と言っているが、その言葉の意味は理解できた。

 彼女達は「落ち着いて」と言っているのだ。


「落ち着きたいけれども、こいつを何とかしないとね」


 私の腕にしがみついているリリィを藤沢三姉妹に見せる。


 すると藤沢三姉妹は訳が分からないと言った感じの表情で私を見つめる。


「こいふ?」

『こいつ?』と言っているようだ未来さんは。


「そうこいつ?」


 私の腕にがっちりとしがみついているリリィを見せる。

 だが様子がおかしい。彼女たちの視線を見ると、リリィではなく私の腕をじっと凝視している様子だ。

 分からないけれども、このまま腕にしがみつかれると、本当にうざい。マジでこいつ子泣きじじいかよ。


「離れろ」

 

 と叫びながら、しがみついてリリィを振り払おうと勢いよく、手を振ったが離れない。


「何を騒いでいるの?」「そろそろ朝食だよ」


 アスターの二人が私の部屋に入ってきて、丁度良い、「あんた達、こいつを引き剥がすのを手伝って」


 腕にしがみついているリリィをアスターの前に向ける。


「こいつって誰?」「何を言っているの?」


「こいつだよ。見えない?私にしがみついている私に似た女性が」


「僕には見えない」「僕も見えない」


 そこで私は確信した。このリリィって言う女の子は私にしか見えないことに。

 この旅行で何かあるとみゆきちゃんの予言ではあると聞いたけれども、もしかしたら、この私にしか見えないリリィと何か因縁の何かがあるのかと考えるのが打倒だと思う。


 こいつは私にしか見えない。 

 じゃあ、みゆきちゃんなら見えるかもしれないと期待して、丁度その時、みゆきちゃんとスミレちゃんが私の部屋にやってきた。


 するとみゆきちゃんはリリィの存在に気がついたのか?私を見て目を丸くしている。


 さすがはホーリープロフェットを司るみゆきちゃん、それと私と心が通じあえるほどの親密な仲だ。


「やだメグさん。パンツ丸見え」


「へ?」


 気がつけば私はネクリジェがはだけていて、下着が露わになっていた。

 堪忍袋の緒が切れて、私は気持ちよさそうに私の腕にしがみついているリリィの頬をかなり本気ではたいた。


「ひゃあ」


 リリィは驚いて、ようやく私の腕から離れて目覚めたみたいだ。

 最初からこうしていれば良かったんだよね。


「リリィ、とにかく起きろ」


「眠い」


 床に寝そべってしまった。


「メグさん。いったいさっきから何をやっているの?」「もしかして一人漫才」


 相変わらずに癪に触る発言だが、それはスルーして、「あんた達こいつが見えないの?」

 床に眠っているリリィを指を指して言う。


「何もいないけれども」「床にゴキブリでもいるの?」


 みゆきちゃんの目を見ると、彼女も見えないが、何か私に不可解な出来事に遭遇したと理解した目をしている。

 心で語ろうと思ったが、それはかなりの力が必要とするので、みんなもいることだし丁度良いと思って、みゆきちゃんも含めてみんなに私にしか見えないリリィの存在を理解して貰う。


「みんなは見えないかもしれないけれども、今ここに私に似た女性が間抜けな顔をして眠っている」


「一人漫才?」「笑えないよ」


 そんなアスターの二人に威圧的な視線を向け、二人はおののいて話を素直に聞く体制になってくれた。


「みゆきには見えないけれども、またあったみたいだね」


「何があったって何があったんすか?」


 いつの間に悟子君がいた。


 するとみゆきちゃんが私の前に立ちふさがった。


「どうしたのみゆきちゃん」


「悟子さんは男性だから」


「何が言いたいって・・・」自分の姿を見ると下着姿のままで、思わず「キャー」としゃがみ込み叫んでしまった。


「悟子さん」


 みゆきちゃんが一喝して、


「不可抗力だけど、ごちそう様です」


 部屋からピューと出て行ってしまった。


 ごちそう様って私の事を想像していかがわしいことはしないよね。

 エイちゃんは私の事を想像して性欲処理のために、やっているみたいだけれども。


 とにかくすべての現況はこいつ(リリィ)だ。


 みゆきちゃんは理解してくれたけれども、アスターも話せば理解してくれるだろうけれども、その他の子達に理解させるのは難しいし面倒だ。


 いっその事、こいつ(リリィ)を追い出すしかないのかもしれない。


 リリィを持ち上げて、窓から放り投げようと考えたが、リリィの寝顔を見て、それはいささかかわいそう何じゃないかと思って思いとどまった。

 でも本当にどうしよう。


 こいつ(リリィ)はみゆきちゃんの予言にも私の予知夢にも出てきた存在だ。

 何か私達に意味があるのだろうと思う。


 とりあえずリリィをベットの上に移して置いて、朝食に行こうと思ったが、その時リリィはその目を開けた。


「メグ」


 私を恍惚とした表情で見つめてきて、私は悪寒が走って、ここにとどまらせようと考えた私自身後悔する事になった。

 こんな奴、早く窓の外へと叩き出していれば良かったんだ。


 私しか見えないリリィ。

 そんなリリィは私の腕にしがみついて、食堂までついてくる。


「リリィ気持ち悪いから離れろ」


「いや。リリィ、メグと一緒。ずっとこの日、待っていた」


 そんな事を言われても私には迷惑だ。

 でもリリィはすごく嬉しそうにしていた。

 その表情を見た時、私は思い出す。

 エイちゃんと出会った時の事を。

 安心できる人の側にいる時の感情に似ていた。


 とにかく事情は何にせよ。リリィは私にしか見えないんだ。

 それは考えると私以上の孤独に陥っていたのかもしれない。


「メグさん。事情は分かったけれども端から見て変質者にしか見えないよ」「ホントホント」


「うるさい」


「メグ、さっきから誰と話している?」


「誰って、後ろのアホみたいな二人だけど」


「何だよ。アホって」「アホはないだろ」


「ほら、今怒っているじゃん」


「リリィ、メグに言っていなかった。リリィ、メグ以外の存在何も見えない」


「えっ?」


 私以外の存在が見えないって。

 つまりリリィは私にしか見えなくて、リリィは私の存在しか見えない。


 そこでみゆきちゃんが、「メグさん。私とアスターはメグさんの言っている事を信じられるけれども、そのメグさんが言うリリィって言う人の存在って言うか気が感じられない」とみゆきちゃんは淡々とした口調で言う。


 じゃあリリィも同じように私の気しか感じられなくて、リリィの気は私にしか感じられないって事?


 私の腕にしがみついているリリィを見つめると、何か不憫に思えてきた。


 でも私には関係ない事だと割り切ろうとしたが、やはりみゆきちゃんの予言や私の予知夢もあるから、それはすべきではない気がした。


 リリィの事情を知り、一階の食堂に行くと朝のバイキングが用意されていた。

 ホテルの係員が私達の人数を確認して、見ていたが、リリィの存在には気がついていない。


 見えないって言うかその存在すら気がつく事が出来ないって事か。


 バイキングの食材を目にしたリリィはその瞳をキラキラと輝かせて、おいしそうに見つめていた。

 リリィは私の手を引いてバイキングの料理へと駆けつける。

 そのまま手で食べた所を「おい。やめなさいって」って言ったけれども、周りの人はそんな行儀の悪いリリィに気がついていないみたいだ。

 周りは私が一人芝居をしているようにしか見えておらず、私がおかしな仕草をしている人だと思われている感じだった。

 リリィが手づかみで取った料理が減っていく様子も、気がついていない。

 きっとリリィは人に気づかれず、人にも気がつく事のない存在だから、そういった作法を教えてくれる人はいなかったのだろう。


 とんだ面倒事に巻き込まれてしまったのかもしれない。

 でもみゆきちゃんの予言と私の予知夢。


 その手づかみで食べているリリィをそっと手で制して「リリィ、めっ」と優しく叱った。

 するとリリィは食べるのをやめて、私の目をじっと見つめる。

 私もリリィの目を叱るように威圧的な目で見つめる。

 するとリリィに私の気持ちは伝わったのか?落ち込んだようにうつむいて「ごめんなさい」と謝った。

 そんな素直なリリィを見て私は安心する。


 とりあえずリリィを席に座らせて、適当にお皿に料理を乗せて、リリィの元へと行く。

 私がフォークを持ち、魚のフライをさして食べ「こうして食べるんだよ」と教えてあげる。


 するとリリィも見よう見まねで私と同じようにちょっとぎこちないが、ちゃんと出来た。

「偉い偉い」

 頭をなでてあげる。

 ちなみにアスターの二人も行儀悪いので、その点は明日にも言っておこう。

 まあアスターの二人はいつものように行儀が悪いがそれを何度言ってもわからないから。

 明日にでも素直に言うことを聞いてくれるリリィを見習わせよう。


 豊川先生にもリリィは気づいておらず、一応事情は説明しておいた。


 朝食も終わって、リリィは私の手をずっと離さずに握って歩いている。

 私もそれを拒みはせずに、なぜかそんなリリィがかわいく思えてきた。



 今日はこれからスキューバダイビングで自然のイルカとふれあう予定だ。

 私も参加したいが、今日はリリィと共にいたいので豊川先生に事情を説明して、リリィと一日過ごす事になった。


 とりあえずみんながスキューバダイビングするボートに乗るところまで見送って、私はその後リリィと砂浜で二人きりになった。


「リリィそんなに手を握らなくても私はいなくならないよ」


 するとリリィは上目遣いで私を見つめて、ゆっくりとその手を離した。


「リリィ、私はリリィの事が知りたいんだけど話してくれないかな?」


「メグ、何かにぎやかだった」


「にぎやか?」


 リリィの言っている意味が分からなかった。


 リリィは頷いて「でも今静か」


 リリィの言葉を吟味してみる。

 リリィは人に気づかれる事も気づく事も出来ない。

 もしかしたら私の心が仲間とふれあっている感じを自然と読みとったのだと思えてきた。


 そのように思った私は正直に話す「仲間と一緒にいたんだ」


「仲間」


 と呟きリリィの表情が曇りだしていく。

 

 そんなリリィがいたたまれなくなって、「大丈夫だよリリィ。私がついている」とその手を握り元気を鼓舞する。


「ラン姉さん、リリィだけの仲間。リリィ、ラン姉さんだけの仲間」


「そのラン姉さんは?」


 するとリリィは悲しい顔をして黙り込む。

 そんなリリィを目の当たりにして私はいたたまれなくなり、どんな言葉をかければいいのか分からなくなる。

 きっとラン姉さんは何かしらで生き別れたのだと気がついた。

 きっとリリィは人に気づかれる気づく事も出来ないので、唯一のお互いに存在を分かりあえる人だと私は思った。

 そんな掛け替えのない人と二度と会えなくなる事を考えると悲しい気持ちになる。


 でも私はそんなリリィには明るくいて欲しいと思い、リリィの腕を掴んで良い事を思いついた。


 藤沢三姉妹はリリィと一緒にいる時、心が穏やかになったと豊川先生を通じて聞いた。


 だから私がリリィを感じれば、藤沢三姉妹に伝わり・・・・何だろう?


 とにかく私がリリィを感じれば、藤沢三姉妹に関わらずにそんな私がリリィを感じている心を読みとり・・・何だろう?


 つまり私はリリィを感じた心をみんなに伝われば何か起こるような気がした。


 そんなリリィを両手で抱き上げて、いわゆるお姫様だっこして、みんなの所に行こうと思った。


「メグ、どうした?」


「リリィ、みんなの所に行こう」


「リリィ、みんなの事、分かり合う事、出来ない」


「リリィ、言ったよね。私がみんなといた時、心がにぎやかになったって」


 頷くリリィ。


「その時私はみんなといて楽しく思ったんだよ。その気持ちがリリィの心に伝わった」


「何、言いたい?」


「うまく説明出来ないけれども、とりあえずみんなの所に行こう」


「みんなの所?」


「リリィ、私の仲間は船に乗って自然のイルカと戯れている」


「リリィ、イルカ、言葉分かる」


「そうなのか?」


「良く、寂しいときリリィ、呼びかける、寂しい気持ち、答えてくれる」


 今はみんな船に乗ってかなり沖の方へ行き、今頃スキューバダイビングでイルカと戯れている所だろう。

 もしかしたらイルカの気持ちを経由してリリィの存在をアピール出来るんじゃないかと考えた。


「リリィ、泳げるか?」


 頷くリリィ。


「じゃあリリィ、私が泳いでみんなの所に行くから、私について来い」


 私は海に飛び込み、続いてリリィも私に続くように飛び込んだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ