リリィ登場。
絵に没頭して、何か楽しくなってくる。
私は自分から進んで絵を描く事はしたことがない。
学校で図工の時間に絵を描いていたが、楽しいと思ったことはなく、あの時は仕方なく先生の指示に従っていたからだ。
でもこうして自分から進んで描く事は本当に楽しい事で、描いていて私は大言壮語だが、絵描きになりたいと思ったりもする。
描き終わって、初めて自分から描いた絵は自画自賛だが何か良い感じに仕上がったと思ったりする。
その証拠に私が描いたイルカの絵をアスターやみゆきちゃんとスミレちゃんは絶賛してくれた。
本当の教育とはこれ何じゃないかと思う。
私の塾の生徒で徳川さんがいるが、彼は高齢になり、勉強して東大に行く事を目標としている。
東大に限らずにどこの大学でも良いと思ったりするが、その人がしたい事を尊重して、そのしたい事に対してそれをバックアップするのが私や豊川先生の仕事の一つだ。
人それぞれ才能と言う物があるかもしれないが、それよりも自分がしたい事を積極的にやる。
学校で強制的な勉強をするよりも、自分がしたい物を積極的に探して、そして見つけて、その事に対して少しずつのばしていく。
才能があるのかどうかなんてやってみないと分からない。
仮に才能がなくて諦めざるを得なくなっても、その努力は無駄ではない。また何かに生かせると私は思っている。
何か自分に楽しい事をして、それを喜んで貰ってお金にする。
これが真のプロだ。
でも私たちはまだ未熟だ。
どんな道に対してもプロを語るのは十年早いのかもしれない。
私たちは色々な事をして、真のプロになるための戦いをしているのかもしれない。
スミレちゃんの絵と比べて私やアスターやみゆきちゃんの絵ははっきり言って雲泥の差だ。
でもスミレちゃんは無口だが、そうは思っていない。
人を見下した態度とかは言葉にはしなくても、体からにじみ出て来るものだ。
それが見えない人もいるが、見えない人は一生見えないのかもしれない。
それに私は見えるつもりでも、慢心したり、おごり高ぶると見えなくなる時がある。
でも人間は不安定で完璧な物じゃないから、そういった気持ちになる時もある。
だからアスターがいる。みゆきちゃんがいる。そして昨日今日出会ったスミレちゃんがいる。
こうして集まった仲間達で私はいつかすごいことが出来るんじゃないかと思ったりする。
アスターは人を魅了する歌の力を持っている。
みゆきちゃんもホーリープロフェットという未来を予言する力を持っている。
そしてスミレちゃんは手腕な芸術家が描いたような素晴らしい才能を持っている。
今はここにはいないが藤沢三姉妹も言葉を持たないが、その眼力で人の心を読む力がある。
悟子君はわからないけれども、みんなすごい物を持っているけれども、私だって自負して良いほどの吸血鬼の尋常じゃない力を持っている。
力を合わせる。
今回の件で何か大切なキーワードのような気がした。
まあ今回の件って言ってもその内容の趣旨は見つかっていないのだろうけれども。
それと予知夢に出てきたリリィと何か関係があるのか?
いやありそうな気がする。
でも今の所はその詳細は分からない。
リリィは私がリリィを見つけなくてはいけないって言っていた。
それに時間がないとも言っていた。
これがどういう訳なのか今の私には分からず、時間がないと思い出した時に焦る気持ちが沸々とわき起こったが、焦ったら何も見えなくなる事を知っている私は深呼吸して焦る気持ちを落ち着かせた。
さてみゆきちゃん達四人はどうやら仲良くやっているみたいだ。
最後に悟子君と豊川先生の様子を見に行くことに。
豊川先生と悟子君のいる部屋にノックをして入ると、何が起こっているのか悟子君が豊川先生に土下座をしていた。
豊川先生はその姿を穏やかな表情で見下ろして「そんな事しなくても分かれば良いんだよ」
「いや俺が悪いんですよ」
そこで豊川先生と目が合って、私は目で『何があったんですか?』と言う感じで訴えたが、豊川先生は穏やかな笑顔を保ちながら、私を見て黙っていた。
どうやらこの状況に至ったのは豊川先生にも悟子君にも知られたくない事だと分かった。
だから私は空気を読んで、部屋を出ようとした所、後ろから「メグちゃん」と呼び止められて「はい」と返事をする。
「そろそろ夕食の時間だから、夕食は一階のロビーでバイキング形式で食べられるからね。それをみんなに伝えておいて」
「はい」
部屋を出て、私はどのような経緯で悟子君が豊川先生に土下座する程の事があったのか、すごく気になったが、知りたいし、知ったら知ったでまた恐ろしいと思うので、この事は公言しないように、私の胸にとどめて置くことにしよう。
詳細を見て悟子君は参加するメンバーの中で一番手を焼きそうだと思ったが、その心配は無くなった感じがして何かほっとしてしまう。
私はみんなに食事と伝えて、みんなで一階の食堂に向かった。
悟子君と豊川先生はお取り込み中なので、食堂の前のロビーのイスに座って待つことに。
「盟、梓、バイキング形式で食事が出されるって言うけれども、バイキングって何か分かる?」
「そんな事も知らないのメグさん」「僕たちよりも長く生きているのにそんな事も知らないなんて」
ドヤ顔の二人を今すぐに殴りつけたい気持ちを抑えて、続きを聞くことに。
「バイキングって色々な料理が並べられて、その中から自由自在に好きな物をとって食べる事が出来るんだよ」「バイキングも知らないなんて」
二人の威張った説明にはいらだちを覚えたし、こんな思いをするなら聞く相手を間違えたかもしれない。
でも勉強にはなったな。
スミレちゃんはスマホのアプリでペンタッチを片手に絵を描き、みゆきちゃんもアプリをダウンロードしたのか?みゆきちゃんもスミレちゃんと同じようにスマホのアプリで一緒に絵に没頭している。
藤沢三姉妹はイスには座らずに、テラスから見える夜の海の景色を三人で仲むつまじく見ていた。
そして豊川先生と悟子君の二人がやってきて、これでメンツはそろった。
悟子君の行動を見ていると、豊川先生の舎弟みたいな感じで付き添っている。
それに悟子君の顔を見てみると、心なしか?何か落ち着いた表情をしている感じだった。
それに悟子君と出会った時にあれ程、怯えていた藤沢三姉妹も悟子君と打ち解けている。
藤沢三姉妹は言葉は喋れないが、相手の心を読むエキスパートと言っても過言じゃない。そんな藤沢三姉妹と普通に打ち解ける人はもしかしたら良い人なのかもしれない。
だから悟子君は豊川先生に何かしらのちょっとした因果があり、改心したんだな。
これでますますこの旅が楽しくなってきそうな予感がして止まない。
早速食堂に入ると、アスターの二人にドヤ顔で教えられたバイキング形式の食卓を目の当たりにした。
想像よりも遙かにすごく、どうやらこの並べられている料理を好きなだけ食べても良いらしく、胸がときめき、私はお盆の上にお皿を乗せて、おいしそうな物を片っ端からお皿に乗っけていった。
さすがは外国のアメリカ、食べた事のない食材がたくさんある。
ここは海に近いホテルなので海産物が多く、それも新鮮でおいしい。
「こんなおいしい物、初めて食べた」
本当に手と口が止まらない。
「メグさんも行儀悪いじゃん」「藤沢さん達の事を見習えって」
アスターに言われて、ハッと気がつき、自重する。
おいしすぎて我を忘れてしまった。
引率者の私がアスターのバカ共に注意されるなんて・・・「って言うか盟、梓、あなた達も汚い食べ方しているじゃない。口の周りも服も汚れているじゃない」
「ってへ?」「そうかな?」
「あんた達、大概にしないと本当にぶっ飛ばすわよ」
そこで豊川先生が「まあまあメグちゃん。とにかく食事は楽しく食べよう」と言われて、「はい。すいません」と謝った。
食事もおいしくいただき、部屋に戻り、明日に備えて、お風呂に入り、歯を磨いて、ベットに横たわった。
「今日もお疲れ様」
藤沢三姉妹にそういうと、にっこりと笑って私に手話をした。
その手話の意味が私の中で何となく分かって『お休み』って意味だろうな。
三人の心の声を聞けば、彼女達が使う手話はあまり必要ないんじゃないかと思っていた。
それで手話の勉強にもなる。
明かりを消して、藤沢三姉妹は先ほど眠ったにも関わらずに、健やかな寝息を立てて眠っていた。
「友達。お休み」
ベッドの上に仰向け状態でそういって彼女達が会話する今日覚えた手話を見よう見まねで真似して、私も眠くなってきて、その目を閉じて眠りに入った。
良い夢が見れればこれ以上の喜びはないと思うのだが、そうは行かないだろう。
きっとリリィは予知夢として私の前に現れる。
目覚めると、夜中で夢を見た覚えは無かった。
「どうして?」
人知れずに呟き、時計を見ると、午前三時を示している。
「メグ」
声が聞こえて辺りを見渡すと、誰もいなかった。
藤沢三姉妹が私に語りかける事はできないし、彼女達は深い眠りについている。
「メグ」
どうやら夢の中ではなく、リリィが現実世界に私の前にお出ましって予感がした。
テラスの方に歩み寄り、カーテンを開けて、外を見ると、「メグ」と声が聞こえて、どうやら外でリリィが待っているような気がした。
私は窓をそっと開けて、外に出てそっと閉めて、テラスから飛び降りて、声の気配が感じる海の方へと向かった。
浜辺に通じる街頭が並んだ道を走っていくと、浜辺にたどり着き、浜辺には光を照らす街頭も灯台もなくただ真っ暗で、空に不気味にきらめく赤い月明かりをタヨリに見渡すと、だんだん視界が露わになってきて、ポツンと遠くに人影が見えた。
多分普通の人間には見えないけれども、私は人間でもあり吸血鬼で、その吸血鬼の能力を駆使すれば見える。
その人影は夢に見たリリィだった。
遠くからでもその姿は確認できて、彼女は私の方をじっと見て待っている。
私は急がずに駆け足でリリィの方へと行く。
そして彼女の元へとたどり着く。
激しく風邪が吹き、スカートを裾を押さえていた。
リリィもスカートだが、激しい風邪でスカートの中身の赤いパンツは丸見えだが、彼女はそんな事も気にしていない様子だ。
でもそんな事を気にしている場合じゃないのはお互いに分かった事だ。
「リリィだね」
「メグが来るのを待っていた」
「とにかくリリィ、時間がないって言っていたけれども、焦るとろくな事ないし、この楽しい旅行を台無しにはしたくないんだよね」
「その心配、ない」
するとリリィは私の方へとゆっくりと歩み寄ってくる。
そしてリリィはうっとりとした瞳で私を見て、私はぞっとする。
「リリィ?」
「リリィ、もう一人じゃない」
そういってリリィは私を抱きしめる。
「ちょっとリリィ、私にはそういった趣味はない」
と罵り、彼女を軽く突き飛ばすようにちょっと力を入れたが、リリィの力は尋常じゃなく、離れない。
「離せ。気持ち悪い」
徐々に力を入れて、その包容を外そうとしたがまるで、鋼に縛られている感覚で、彼女の抱擁が外れない。
仕方なく本気を出して、もがいて見たが、ビクともせず、私は「離せ変態」と罵ったが、彼女の耳に届いているかも分からない。
そしてリリィは私を抱きしめたまま、じっと私の顔を見つめて、「リリィもう一人じゃない」と良いながら、目を閉じてその唇を重ねようとした。
「やめろー」
思い切り大声で叫ぶと、辺りはホテルの私が宿泊しているホテルの部屋だった。
すごい汗をかいている。
どうやら私は妙な夢を見てしまったみたいだ。
何あの夢。
思い出すだけで全身に悪寒が走る。
ハッと気がつき、目の前に私の大声を聞いて、驚いている藤沢三姉妹がいた。
『どうしたの』と言いたげなちょっと心配そうに見ていた。
「大丈夫だから、ちょっと変な夢を見ちゃって」
夢で良かった。
予知夢に出て来たリリィは私に何がしたいのか?それと何を伝えたいのか、訳が分からなくなって、ベットから起きようとすると、すさまじい力に牽制されているようで、腕を頑丈な枷をつけられているかのように思い。
「何?」
と見てみると、夢であったはずのリリィが私の腕をつかんで、心地よさ層に眠っていた。
「何をやっているだ。お前は?」
と、我を忘れてつい罵ってしまった。




