旅立ちの前に4
飛行機は大空を舞い離陸する。
空からの景色は圧巻だった。
青い海が見渡せて、本当に眺めていて飽きない。
「ねえ、メグさん」「僕達も見たいよ」
盟と梓は私が座っている窓際の席に身を乗り出して来ている。
「分かったからあんた達、ちゃんと座っていなさい」
ブーブーと文句を垂れている。
まあ空からの景色も満喫したことだし、座席を変わってやろうか。
「じゃあ、二人とも座席は変わって上げるけれども、大人しくしているのよ」
私はゆっくりと席を立って、二人は言った側から、ギャーギャーと僕が先だとか二人で窓際に座ることに喧嘩している。
本当に頭が痛い。
「殴る事ないじゃないか」「ごめんなさい」
二人に少し強めに拳骨を喰らわせた。
「とにかくおまえ達、そこに座って反省していろ」
本当は正座をさせたいところだが、ここは機内だし、周りに迷惑がかかるからそれは出来ないだろう。
じゃあ、座席の上に正座をさせるのは・・・やめておこう。
とりあえずアスターの二人には一時間大人しくしていたら窓際を譲ってやろうと思っている。
私はそんな二人を席に座らせて反省させて、とにかく私は引率係としての責務だと思いみんなの様子を見に行くことにした。
「藤沢さん達、調子はどう?」
私がたずねると三人はにっこりと笑って、大丈夫だと言わんばかりに私に気持ちよくアピールしてくれる。
「気分が悪くなったら、私後ろにいるから声をかけてね」
三人ともにっこりと笑って頷いている。
三人は補聴器をつけているため私の言葉は通じるが、私たちに伝える事は手話を通さないと伝えられない。
何だったら手話を勉強しておくべきだったが、三人の事情を聞いたのは昨日だし、それは間に合わなかった。
でも彼女達は私の言葉に笑顔で答えてくれるので、それが私に対する気持ちの良いメッセージだったりする。
さてその前の席の列を見てみると、スミレちゃんはメモ用紙に鉛筆でデッサンをしている。機内でスマホを使ってはいけないルールを遵守している。何を描いているか気になったが、本人と目が合った瞬間にメモ用紙を引っ込めてしまった。
「別に隠す事でもないでしょ」
「・・・」
スミレちゃんは無表情のまま、目を閉じて黙ってしまった。
「気分はどう?」
「問題ありません」
淡々とした口調で、そう言ったので、そうならそうと別に問題はないと思って、みゆきちゃんを見てみると、みゆきちゃんはアイマスクを着用して音楽を聴きながら眠っているようだ。
みゆきちゃんあれだけ楽しみにしていたのに、何かテンション低いな。
まあ、起こすのも悪いので、そっとしておげようと、その隣の席に目を向けると、手元に何か隠しながらやっている。
「悟子君、何をやっているの?」
「まあ、えーと、その」
「ちょっと何を隠しているの?」
身を乗り出して布で隠された物を引っ剥がして見てみると、スマホを起動させて何やらゲームをやっている。
機内の中はスマホの電源は切るようにと言われているのに、にも関わらずに、起動させている事に、怒りを覚えたが、ここはその怒りをこらえて、とにかく優しく注意して上げようと思う。
「悟子君、機内の中はスマホは厳禁だよ」
「良いじゃないですか。堅いこと言わないでよ」
スマホの続けるゲームをする悟子君。
こいつ本当だったら、その下品な顔をピカソのように変えてやりたいと思ったが、とにかくこらえて、今度分からなかったら・・・。
「悟子君、ルールを守ろうよ。君がこうしてルールを破って何かあったら楽しいはずの旅が台無しになってみんなに迷惑がかかる事になるんだよ」
「・・・ごめんなさい」
悟子君はスマホの電源を切ってくれた。
私はほっとした。
どうやら言って分からない子じゃない。
言って分からない子だったら、本当に私はどうなっていたかわからない。
とにかく悟子君は問題のある子だと分かっていたが、ちゃんと言えば分かる子だと安心した。
最後に豊川先生の様子を見に行くと、先生は本を広げてゆったりと落ち着いた感じで読んでいる。
フライトから二時間、とりあえず問題ないことを豊川先生に報告しようと思ったが、その必要もなく、私は自分の席に戻った。
アスターの様子を見てみると、ちゃんと落ち着いて反省している。
反省しているようなら、今度こそ窓際の席を譲ろうと思う。
二人に窓際の席を譲ると、ちゃんと今度は落ち着いた感じで順番に交互に交代しながら見ている。
本当にやんちゃで世間知らずだけど、ちゃんと学習しているんだよな。
そんな落ち着いた二人を見て、人知れず、ちょっと嬉しい気持ちになった。
私も暇つぶしに本でも読もうと思って鞄から取り出そうとすると、一枚の手紙が入っていた。
何だろう?と見てみるとエイちゃんから私からへの手紙だった。
何かドキドキして封を開けて見てみると、『無理しすぎるなよ』と一言書いてあった。
その一言は私の胸に焼き付き、心の中で呟く。
『分かっている』
エイちゃんからの一言のメッセージに心が潤い、エイちゃんが来られなくて残念だが、おみやげをたくさん買ってくるし、今度のデートの時に語り尽くせないくらいの楽しい思い出話を語ってあげようと思う。
そこで私は思いついてここでデジカメでみんなを撮影しようと思う。
機内での撮影はフラッシュやシャッターの音に注意すれば撮れるって聞いた。
景色に夢中になっているアスターの二人に、「盟、梓」と呼び、振り向いた直後にシャッターを押して二人を写真に収めた。
「藤沢さん達」
そういってカメラを向けると本当に気持ちの良い笑顔でみんなピースしてポーズを取り、私は写真に収める。
「悟子君、スミレちゃん、みゆきちゃん」
三人を呼びカメラを向けると、スミレちゃんは一瞥して興味がない感じにまた絵を描くことに没頭して、みゆきちゃんはアイマスクをとってにっこりと笑って、悟子君はニカッとした両手でピースでポーズをとり三人まとめて写真に収めた。
「豊川先生」
カメラを向けると「フフ」と笑ってこっちを見てくれたので、その瞬間を見逃さずに撮る。
私は自分の席に戻り、今さっき撮った写真を見てみると、本当にみんな良く撮れている。
そんな時にアスターの二人が「メグさんも撮ってあげるよ」「カメラをかしてよ」と言って来たので是非ともと思ったが、何か二人の顔に疚しい感じの笑みを浮かべたことに何かいたずらを思いついたんじゃないかって感じた。
「ほら、早くかしてよ」「ねえ撮ってあげるから」
別にいたずらなんてないだろうと思ってアスターの二人にカメラを貸した。
「じゃあ、撮るよ」「笑って」
私は立ち上がり、にっこりと笑って片手でピースをした。
するとシャッターを押した瞬間に盟が私のスカートを思い切りめくって見事私の下着は撮れてしまった。
「やったー」「メグさんのピンクのパンツ」
****** ******
私は窓際の席に座り、デジカメで盟と梓のそれぞれ青いしましまのパンツ姿にピンクのしましまパンツ姿を眺めていた。
拳骨だけではこいつらは懲りないことがこの時分かった。
私は下着を撮られた瞬間に思わず手が出てしまって二人の頬に往復ピンタをかましてやった。
それにこいつらのスカートの中身もばっちり撮ってやったし、それに機内のシートの上に私は二人を正座させた。
私の腹の鬱憤がはれた瞬間に大きなため息をもらしてしまった。
こんな奴ら連れてくるんじゃなかった。
出来るなら飛行機から海にたたき込みたい気持ちである。
二人のパンチラ写真を眺めて、座席のシートで正座している二人を見つめると半べそ状態だ。
とにかくこの写真は消そう。とっておいたって何の意味もないからな。
消した瞬間にまた大きなため息が漏れた。
丁度その時に機内食が運ばれて来て、二人は正座を許してもらいたいと懇願したが、私は許さずに「正座しながら食べろ」と言っておいた。
メニューはステーキにコンソメスープにサラダにライスだった。
すごくおいしそうだった。
何かおいしそうな物を見ていると私も気分が良くなり、アスターの二人に「足くずしても良いよ」と言っておいた。
すると二人は現金な子達で早速足をくずして「「いただきます」」と言って早速食べ始める。
本当にこいつら反省しているのかな?
それはともかく私もお腹が空いているので、早速「いただきます」と言ってフォークとナイフを持って食べた。
お肉をナイフで切って、一口サイズに切り分けて口にして本当に幸せを感じてしまうほどのおいしさだ。
アスターの二人はおいしいおいしいと良いながら、フォークを手に肉をさしてそのまま口にして食べている。
本当に行儀が悪い二人だが、もうこれ以上注意するのも気が滅入るので大目に見てやろうと思った。
でも二人には「もっと上品に食べなさいよ」と言っておいたが、二人の耳には届いているが、その反対側の耳から私の声がすり抜けていく感じで、届いていない。
その証拠にぺちゃくちゃと音を立てて食べている。
お腹いっぱいになった所で眠くなってきた。
眠る前にみんなの様子を見ようと思って席を立って、とりあえず藤沢三姉妹は問題はなく、三姉妹の姉である未来さんが三人の代表でメモに私に『私達は大丈夫です。良い旅にしたいですね』と見せてさらに三姉妹の笑顔も見れて気分が良かった。
三姉妹はまだ食事の最中で、その食べ方を見てみると、本当に上品でアスターの二人に藤沢三姉妹の爪の垢をせんじて飲ませたい気持ちにもなる。
さてスミレちゃんとみゆきちゃんと悟子君の様子を見に行くと、どうやらスミレちゃんは食事にはあまり手をつけていなかったので、その残り物を食いしん坊の悟子君がいただいて食べてくれたみたいだ。みゆきちゃんはちゃんと間食して、音楽プレーヤーを起動させてアイマスクを着用して眠っている。
豊川先生も間食して、ハンカチを顔にかけて眠りについている。
問題はないな。
そう思って、席に戻ると、アスターの二人組はゲームで遊んでいた。
まあ機内はネットのつながったゲームは大丈夫みたいだから、二人に「お前等程々にしろよ」と言って私は席に戻り、アイマスクを着用して音楽プレーヤーを起動させて目を閉じた。
眠る前に時計が気になって時刻を見てみると日本は十五時を示し、アメリカでの時間は丁度真夜中の零時を示している。
アメリカン空港に到着するのは時差もあって午前五時に到着する予定だ。
日本から離れて五時間か、アスターのおかげで何か気が滅入る。
本当に連れてくるんじゃなかった何て思うけれども、こうして、彼女らのいたずらやおいたして叱り、その時は本当に憎いと思うけれども、こうしてやすらいだ時間にたたずんでいると、なぜか憎めずにむしろ愛しくなってしまうんだよね。
アスターの二人はやんちゃだけど、本当にかわいいだよね。
でもいつかアスターの二人が大人になるまでは私が面倒を見てあげないといけないと思っている。
本当に二人はバカだけど、考えてみれば嫌っている人はいないよな。
みゆきちゃんも聡美ちゃんもエイちゃんも里音も、その他のみんなも嫌っている様子はない事を思うと何か安心して嬉しくなったりする。
前言撤回かもアスターの二人を連れてきて良かった。
何だろう?また私は夢を見ているのだろう。
この感覚は予知夢的な何かだ。
気がつくと、夜空にガラスをちりばめたような煌びやかな星が舞っている。
浜辺の前に立ち、私は鏡を見ているのか?
もう一人の私がいる。
いやよく見ると、それは鏡に映った私ではなく、私とそっくりな女性だ。顔立ちは私にそっくりだが、青い髪に青色の瞳、それに服も私とお揃いのワンピースだが、色が黄緑の鮮やかな色合いである。
この人は誰なのだろう。
人間だろうけれども、私のように半分吸血鬼で半分人間なのか?
穏やかな風にさらされ、髪とスカートの裾が激しくなびいている。
そして私の方をじっと見ている。
英語で私に呟いている。
英語を勉強していたので少しなら受け答え出来ると思って、彼女の言っていることを慌てて頭の中で日本語に訳した。
彼女の名前はリリィ、すべてを・・・何?
こんな事になるなら英語をもっと勉強しておくべきだった。
するとリリィは日本語を喋りだした。
「私の名前はリリィ、すべてを司る者」
「すべてを司る者?」
「リリィはあなたを見つける。そしてあなたはリリィを見つける」
そして私はまばゆい光に包まれて、その目を開けると、機内で私は目覚めたみたいだ。
リリィ。




