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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第3章
42/89

旅立ちの前に2



 階段を上がり、アスターの双子の部屋の前でノックをして入る。


「入るよ二人共」


 中に入ると、アスターの二人の荷物を見て仰天してしまう。


「何この荷物?」


 私は一人一台のキャリーケースに収まる荷物をまとめてと言ったのに、また他にも大きなリュックに得たいのしれない物を詰め込んでいる。


「明日から二週間でしょ」「キャリーケース一台では収まらないよ」


「ところであんた達何を詰め込んでいるの?」


 私が確認すると、本当に得たいの知れないものでゲーム機、それにマンガとか、将棋にオセロ板、その他にも必要のなさそうな物を適当に詰め込んでいるが、本人達は本当にバカでそれが必要のないものだと理解していない。


「見てよ。これは熊よけスプレー」「それとこれがゴキブリスプレー」


 二人はそれぞれ持ち出して、噴射させる。


「ちょっと何をやっているの?そんな物必要ないし、第一こんな所で使う必要はないでしょ」


 私はアスターの二人に一発ずつげんこつを食らわせる。

 そしてその場で正座させる。


「もう、あんた達の荷物は私がまとめるから、そこで反省しながら黙って見ていなさい」


 本当にこいつ等面倒がかかる。

 私は二人が詰め込んだキャリーケースの中身を見てみると、どこに何があるのか分からないと言う程むちゃくちゃだった。

 育ちが悪いと言いたいところだが、それは私は二人を理解しているから言わない。

 でもアスターの二人は本当に学習能力がなく、いつも手を焼いている。

 でも何かこいつ等本当にほおって置けなくて、手を焼くのも面倒とは思わなくなってきた。

 でもアスターの二人は本当に学習能力がなくていわゆるバカだが、少しずつだけど、大人に成長しているところが見受けられる。

 そんな二人を見ていると、つい嬉しくなったりする。

 まあ私がアスターの親分で二人は舎弟だ。

 私はいわゆる路頭に迷った人のお世話をする仕事をしている。

 はっきり言ってそういった人の気持ちを変える事は安易な事じゃない。

 本当にしんどいと暴走族の龍平君達の事で思い知らされている。

 でも龍平君達は素直で良い子だった。

 まあ私が吸血鬼として尋常じゃない力を持った事もあり、それに龍平君達とは何か昔の私と重なる部分が合ったので、この人は変えたいと私のそう言った気持ちが伝わったからかも知れない。

 今でも龍平君達とは週に一度、私がその総長を勤めて夜にバイクで海に行ったりしている。


「これでよし」


 アスターの荷物は必要な物だけを入れて何とか終わった。


「メグさんこれは」「これも」


 明らかに必要じゃない物を手に取り、私に見せつける。


「そんな物必要じゃない」


 時計を見るとそろそろ夕食だ。


「とにかくあんた達の荷物は私がまとめたから、今日は夕飯を食べて、お風呂に入って、明日に備えて寝なさい」


「寝る前に少しだけゲームは?」


 盟がぼそりとしゃくに障る事を言ってきたので、威圧的な視線を向けたら二人は「ひっ」と言っておののく。


「とにかく食堂に行きなさい」


「分かったよ」「うん」


 二人は足を崩して、しびれた足でおぼつかないおしどりだったが、そのまま食堂へと向かわせた。


 本当にまともに荷物の整理も知らないなんて正直頭が痛くなってくる。


 私も食堂に行って食事をとりたいが、その前にしなくてはならない事がある。


 勉強室に入って、東大を目指している型破りな高齢者の徳川さんの所に行く。

 徳川さんは今日の所は勉強を切り上げて、参考書などを鞄に入れて帰り支度をしている。


「徳川さん、明日から私は二週間ここを離れますけれども、引継は豊川先生の息子さんのエイちゃんがやってくれますから。とりあえず大丈夫ですよね」


「大丈夫だよ。メグさんがいない間に学力をグングン上げていって、少しでも東大に近づけるようにするからよ。とにかく楽しんできな」


「ありがとうございます」


 徳川さんを玄関まで見送り、さようならと言うことで帰って行く。


 思えば徳川さんの学力はものすごいスピードでアップしていて、そろそろ私の学力では教えきれないかもしれない。

 だからそろそろ私の所から離れて、ちゃんとした予備校に通った方がいいのかもしれないと私は思っている。

 でもそう思うと喜ぶところだが、寂しくなるんだよな。

 徳川さんの東大に行こうとする意欲は本気だ。

 だから私はそんな徳川さんのサポートを私は毎日している。


 さて、徳川さんにもちゃんと言っておいたし、私もお腹が空いてきたので、食堂へと向かう。


 食堂に行くと、アスターの二人とみゆきちゃんがそろって食事をしていた。


 そこで由美子さんが。


「あら、メグちゃん。いよいよ明日だね」


「はい」


「明日に備えて食べたら、すぐに休んでね」


「はい」


 メニューを見るとカレーライスだった。

 由美子さんのカレーライスは凄くおいしんだよね。

 早速座って、手を合わせて「いただきます」と言って食べる。


 おいしい。


 何となく三人からいつもと違う嬉々に満ちた感じのオーラが伝わってくる。


「みゆきちゃん。いよいよだね」


「みゆき凄い楽しみ」


「僕たちも楽しみだよ」「本当に」


 聞いてもいないのにアスターの二人は食事中に行儀悪く立ち上がる。


「分かったから落ち着け、それと食事中に行儀が悪いぞ。また正座させられたいか?」


 大人しく座る二人。

 本当にこの二人はバカだが、何か憎めないんだよな。

 私もこれまでに塾で言っても分からない人間を相手にして、嫌気がして来た事があった。

 もし生徒じゃなかったら、私はその相手を見捨てていただろう。

 でもアスターの二人はバカだけど、大切な物を持っている。

 それは歌の能力ではなく、慈悲の心だ。

 だからそれを育みながら、世間や一般教養などを教え諭したいと思っている。

 とにかく何事も一歩一歩進む事が何よりも大事だと思っている。 


 さて食事も済んだ事だし、お風呂に入って明日の荷物の確認をして眠ろうと思う。


 お風呂をみゆきちゃんと入って出て、部屋に戻るとエイちゃんは帰宅していた。


「エイちゃん帰っていたの?」


「ああ」


「何度もお願いするようだけれども、私がいない間、徳川さんや塾の事をお願いね」


「もう何度目だよ。分かっているよ。とにかくメグもみゆきちゃんも明日に備えて寝な」


「エイちゃんはこれから勉強?」


「ああ、バイトがかなりのブラックでな、俺の大学の都合を考えてくれなくて、とにかく今日中にこのレポートを仕上げなくちゃ」


「大変だね」


「まあ、お前に比べたら大した事はないよ」


「そんな事ないよ。私もエイちゃんもお互いに忙しいでしょ」


「そうだな」


 私とエイちゃんは恋人同士でまだお互いに一線を越えた中ではないが、苦労はそれぞれしている。

 こうしてエイちゃんとは苦労をお互いにして、いつか結婚して同じ生活の中苦労を共に出来る間柄で幸せな家庭を築きたいと私は思っている。


 気が付けばみゆきちゃんはもう眠ってしまっている。

 私もそろそろ寝ようとベットに入ってエイちゃんの勉強している背中をちょっと見つめて心の中でお休みと言って目を閉じた。



 ******   ******



 目覚めて私はまた妙な夢を見て目が覚めた。


 体を起こして私は夢で語りかけられた言葉を人知れず口にする。


「私は選ばれし者?」


 また予知夢か?分からないけれども、別に気にすることないし、気にしている余裕もない。

 でも私が何に選ばれたのか気になるが、以前のような激しく苛まれるような夢ではなかったのであまり気にすることはないとベットから出る。


 時計は午前五時を示している。


 さてアスターの二人とみゆきちゃんで出発に向けて朝のジョギングと行きますか。



 ******   ******



 ここ数日でみゆきちゃんはともかく、アスターの二人も私の軽い運動にも付いていけるような体力も備わってきている。


 私達はいつもの河川敷の隣町が一望できる景色を見つめてふと思う。


 この街ともしばらくはお別れだと。


 アスターもみゆきちゃんも私と同じ事を感じているような気がして、感慨深く隣町の遠くの景色をじっと見つめていた。


「メグお姉ちゃん。いよいよだね」


 みゆきちゃんが私の顔をのぞき込むように語りかける。


「そうだね」


「僕達もこの日をどれだけ楽しみにしていたか」「だね」


「とにかく盟、梓、あまり羽目を外さないようにしなさいよ」


 いつも言っている事だが、ここで念を押すように言っておく。


「大丈夫だよメグさん」「僕達の事を信じていないの」


 信じていないと言いたいところだが、旅行初日から、二人に不快な気持ちになって欲しくないので「そろそろ帰って、八時に出発だから、それまでに荷物の最終チェックでもしておこう」と流しておいた。


 帰りもいつものようにランニングで帰宅する。


 到着して、パソコン室に入ると、出発前だと言うのにパソコンで引きこもりの生徒達にアドバイスやらエールを送っているようだ。


「豊川先生、そろそろ支度した方がいいんじゃないんですか?」


「僕の方は大丈夫。もう準備は出来ているよ」


 豊川先生の視線の先を見てみると、キャリーケースがあり、準備万端のようだ。

 まあ引率するリーダーであり、私が心配する必要などないようだ。


 まあ心配なのはアスターの二人だ。


 でも様子を見に行くとちゃんと大人しくベットに座って落ち着いた様子で出発時刻まで待機している様子だ。

 

 みゆきちゃんの様子を見てみようと思って、部屋を見てみると、みゆきちゃんは目を閉じている。

 ホーリープロフェットを使っているようだ。

 みゆきちゃんは何を見ているのか気になってみゆきちゃんにふれて確かめようと思ったがやめておいた。

 みゆきちゃんは水晶玉を握りしめてホーリープロフェットを発動している。

 そういえば久しぶりにみゆきちゃんがホーリープロフェットを使っているところを見るな。

 きっとみゆきちゃんは今回の旅を案じて予言しているのだろう。


 そしてみゆきちゃんがその目を開け、「選ばれし者」と意味深な発言をした。


「みゆきちゃん。選ばれし者って?」


「あっメグお姉ちゃん居たの?」


「さっきからいたよ。所で選ばれし者って?」


 気になるので再度聞いてみる。


「よく分からないけれども、みゆきや盟さんや梓さん、そしてメグさんの行く先には常に何かあるとみゆきは感じている。

 だから今回の旅で何かまたあると思って念の為にホーリープロフェットで予言しておく事にしたんだけど・・・」


「何か不吉な事でもあるの?またメビウスとか」


「いや今回の件でメビウスの気配は感じられないけれども、何かある事は確か見たい」


「何かあるって、だったら今回の旅行はキャンセルした方がいいのかな」


 するとみゆきちゃんは真摯な瞳を私に突きつけ、「私達は行かなきゃいけない」


「それってみゆきちゃんキャンセルされるのが嫌なんじゃないの?」


「確かにキャンセルは嫌だけれども、みゆきはだだをこねているわけじゃない。ただ・・・」


「ただ?」


「みゆき達は何かに引き寄せられている」


「何に引き寄せられているって言うの?」


「分からないけれども、今回の旅で・・・うまく説明できないけれども、何かある。でもそれは不穏な気配と言うのは感じられなくて、私達四人にとってとても重要な事だと思う」


「それがもしかしたらメビウスを打倒して節子ちゃんを助ける事に繋がるとか?」


「言われてみれば、繋がるかもしれない」


 思えば里音の悲劇以来メビウスの気配はホーリープロフェットでさえも見つける事は出来なくなり、今、メビウスはみゆきちゃんの友達である節子ちゃんを連れ、その行方をくらましている。

 いつもみゆきちゃんは明るく気丈に振る舞っているが、その心の奥底には常に節子ちゃんの思いが存在している事を私は知っている。

 久しぶりにみゆきちゃんのホーリープロフェットを間近で見たが、もしかしたら私の居ない所で密かに使い、メビウスの所在を確かめているかも知れない。


 私の予知夢にメビウスは存在しない。


 メビウスは私たちにとって災いそのものだ。


 昔の人が言ったように災いは忘れた頃にやってくるって言う。

 忘れたって言うか、その災いさえ感じられないのは忘れるよりも危険な感じがする。

 そう思うとのんきに旅行なんてしている場合じゃないと思ったが、ホーリープロフェットによると今回の旅でメビウス打倒に繋がる何かを得られるんじゃないかと私もみゆきちゃんも感じたことだ。


 でも確信はないが・・・。


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