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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第3章
41/89

旅立ちの前に



 明日は予定していた通りのイルカセラピーでフロリダに行く日だった。


 里音の件から二週間が経過して、里音も次第に元気を取り戻しつつ会った。


 それと麻美が退院したらしい。


 明日から二週間日本を離れるので、顔を合わせておきたいと思っているが、どうも麻美の精神状態が良く分からないので迂闊に近づくのは本人にとって良くないかもしれない。


 私は今、麻美の家の前に立っているが、麻美の家の前の塀に隠れて、どうしようか後込みしてしまっているのだ。


「どうしよう?会っておきたいけれども、麻美私を見て、動揺したりしないかな?」


 人知れず呟きながら、かれこれ麻美の家の前で三十分くらいはいる。


 しばらく様子を見ると言っても明日日本を発つので、一目見て、元気にしているかどうかを確認したい。

 スマホは入院していたので繋がらないし、だったら直接会って確かめたい。

 何か麻美が動揺しないように会う方法はないか?

 いや動揺されるのもあるけれども、久しぶりに会うのだから、何か気まずいというか何というか、とにかく顔をあわせづらい。

 

 って言うか別に私は麻美に対して疚しいことはしていないし、でもいざこうして久しぶりに会うのも何か・・・。


 顔を合わせる事が出来ないなら、人目顔を見て元気かどうか確かめるだけでも良いかもしれない。


 でも麻美の家の外観を見ると、窓もカーテンが閉まっており、完全にシャットアウトの状態だ。


 本当にどうしよう?

 だったら次の機会にしておく?

 でも明日は日本を発つのだし、何かもやもやした気持ちで出発するのも何か気持ちは良くはない。


 自然とため息がこぼれた瞬間、徳川さんに教わったため息をすると幸せが逃げると言うのでその対処法はため息を吐いた瞬間にその息を幸せを逃さないように大きく吸い込む事。

 それを実行して幸せは逃げないような気がして、何とか落ち着いた。


 えーいだったらもう強行突破だ。

 勢いでドアまで行ったが、そこでまた後込みしてしまう。

 何をやっているんだよ私。

 私はまた麻美の家の塀に隠れてしまう。


「ちょっと君、急に声をかけられて、振り向くと警察だった」


「はい。何でしょう?」


「君、こんな所で何をやっているの?」


「別に私は怪しい人物じゃありませんよ」


「じゃあ、何をやっているの?この民家には不審者が多いようでね。先ほど、この家の前で長い時間うろうろと不振な人物がいるって通報があってね」


「別に私は・・・」

 やばいな、こうしてうろうろしていて、この周辺の近所の人にそんな目で見られてしまっていたようだ。

 それに私ってそんなに怪しく見えるかな。

 でも私のとっていた行動は怪しく見えてしまったのだろう。


「何も疚しい事がないなら、質問に答えたらどうかね?」


 言うべきか別に言っても差し支えはないので、「この家に友達が居て、その友達に会うのがちょっと気まずいんですよ。それで後込みして」


「何か事情がありそうだね」


 私の話に興味を持つ目だが、事情を説明して、何か面倒な事になりそうだから黙って私は思いきって、ドアの前まで行き、その呼び鈴を鳴らした。

 私を不審者扱いした警官が私に背中を押してくれたみたいな感じだ。

 でも感謝出来ないし、気持ちが複雑だが。

 警察官は私の背後で様子を伺っている。

 うわー凄い気持ちがドキドキする。

 ただ元気かどうか確かめたいんだよね。

 でも色々あって、顔を合わせづらいんだよね。疚しい事は何もないけれども。

 ・・・・あれ?何も反応がないぞ。

 諦めて日本から帰国してまた後日といきたいところだが、背後を見ると警察官はまだ私の後ろ姿を見ている。

 何なんだよお前、本当にぶっ飛ばすよ。

 とにかくもう一度呼び鈴を鳴らして出なかったら、引き上げるしかないな。

 だから私はもう一度呼び鈴を鳴らした。

 しばし待っていたが何も反応がない。

 仕方がない引き上げようとしたら、扉が『ガチャ』と音を立ててゆっくりと開いていく。

 根拠はないのだが麻美の気配がする。

 そして現れたのが麻美だった。

 麻美はすっかりやせてしまって、その瞳には輝きがともっていなくて元気そうではなさそうだが、私は一目見て嬉しさがこみ上げ、「麻美」と言って思わず抱きしめてしまった。


「メ、メグちゃん?」


「とにかく私は会えて嬉しいよ」


「ちょっとメグちゃん苦しいよ」


「ゴメンゴメン」


 と言って麻美から離れた。


 改めて麻美の顔を見ると、ちょっと表情が綻んでいて、少しだけ元気が宿った感じだった。


「どうしたのメグちゃん?」


 私とその視線を合わせられずに泳いでいる状態だが、何か私に出会えて嬉しそうな感じがしている。

 だから私は自然とにじみ出る笑顔で「麻美が元気にしているか気になってね」


「・・・」


 麻美はあの時からまだ気持ちの整理が付いていない状態のような気がして、そんな暗い過去の事を思い出せないように明るい話題を私は提供する。


「実を言うと私、明日日本を発つんだ。・・・まあ立つと言っても二週間フロリダで豊川先生が率いるイルカセラピーに参加するんだよね。それで麻美は今日退院するって聞いて、一目見てから出発しようと決めて・・・その・・・あの・・・」


 やばい言葉が続かない。

 すると麻美は自然と表情が綻んで私に笑顔を見せてくれた。


「ありがとうメグちゃん」


 と。続けて、


「それと心配かけてゴメンね。入院している時思ったの。あの時・・・」


 あの時と聞いて、ビルから飛び降りた時の事を思い出そうとして語ろうとしているので、私は話題を逸らそうと色々と頭を巡らしたが、「おみあげ買ってくるからな。楽しみに・・・」待っていてと言いたかったが、麻美は真摯な瞳を私に突きつけて毅然とした態度で「聞いて」と言われて私は麻美の言葉に耳を傾けた。


「入院して頭の中が冷えるように分かったの。あの時、私は思い詰めてしまった時にメグちゃんやみんなを頼るべきだったって。

 今日こうしてメグちゃんに会えてうちは嬉しいよ。

 何で私はあんな事をしちゃったんだろうって凄く反省させられた入院生活だった・・・」


 とにかく立ち話も何だから麻美の家に上がらせてもらって、麻美の部屋に入り改めて麻美の気持ちを聞く事にする。


 麻美の部屋に入って壁には今流行の女性アイドルのポスターやら、ラッセンの絵が飾られている。机もきちんと整理されており、この部屋で勉強すればとても集中できるんじゃないかと思ったりして、麻美の精神状態は回復に向かっているんじゃないかと何となく思い安心した。

 ベットの上に腰をかけて、今麻美のお茶のおもてなしを待っている。

 とにかく麻美は私に謝りたいことやたくさんあってつもる話も合るだろうけれども、こうして麻美が元気を徐々に取り戻してくれている事を思うと私は何かほっとして、先ほど麻美の家の前で入ろうかどうか後込みしていた事がアホみたいに思えてきた。

 本当にとんだ取り越し苦労だったな。


「お待たせ」


 お盆に透明なコップに白い液体が入ったのを見て、カルピスらしきものを私におもてなしをしてくれるみたいだ。


「カルピスで良かったかな?」


「麻美、気が利くね。私は実を言うとカルピスが大好きなんだよね」


「良かった」


 カルピスの入ったコップを私に差し出して、私はかなりのどが渇いていたので受け取った瞬間にゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ。


 麻美はそんな私を見てクスっと笑って「ストロー合ったのに良い飲みっぷりだね」と言われてちょっと恥ずかしく思ってその舌を出してお互いに微笑み合った。


 その後、私は麻美の正直な気持ちを聞いた。

 それは玄関で話した事と同じで、とにかく私はもう良いよと気にしないでと言ってあげた。

 そして色々と話し合って、盟や梓の事、みゆきちゃんの事、里音の事、その他にエイちゃんや聡美ちゃんの事、色々と大変な事が合ったがとりあえずみんな元気だし、みんな麻美に会いたがっていると気持ちを伝えた。

 でも大変な事って麻美にとって衝撃的な事は避けておいたが、本人に刺激が強すぎる事は気をつけたつもりだが、実際どうなのだろう?

 でも麻美は私の話を聞いて楽しそうに聞いてくれた。

 そして話している私も楽しく思って、こうしていつまでも麻美と語り合いたいと思ったが、かれこれお邪魔して一時間半位が経過して、そろそろ明日の旅行の準備もあるので帰ることにする。

 麻美ももう少し私と話がしたいと思っていたみたいだが、でも私にはやらなければいけない事がたくさんある。

 そんな私を見て、麻美は寂しそうにしていたが、こればかりは仕方がなく、でも麻美も素直な子で私の気持ちも分かってくれて、帰る時、玄関まで私を見送ってくれた。


「メグちゃん。今日はありがとう」


「うん。私は明日日本を発つけれども、また二週間後には帰ってくるから、その間に気が向いたら、塾の方にも顔を出しておきなよ。私と先生はいないけれども、その間にエイちゃんが変わりに塾長を代理で勤めるみたいだから」


「うん。ありがとう」


「じゃあね麻美」


 靴を履いて玄関の扉を開くと、空は黄金色に染まっている。

 もう秋で空には赤トンボが飛んでいる。


 本当に麻美に再会して良かった。

 これで明日には気持ちよく旅行が行けそうだ。

 麻美のおみやげも考えて置かないとな。

 麻美の家の庭を越えて塀を曲がると、私を警戒していた警察官がまだ居たので私は驚いて「ひゃ」と思わず声を上げてしまった。


「何ですか?まだいたんですか?私は怪しいものじゃないよ」


 と思わず怒り混じった声で言ってしまう。


「いや、実を言うと・・・君に・・・謝りたくて」


 何この警官泣いているの?気持ち悪い。


「話は玄関で聞かせてもらったよ。・・・疑って・・・悪かった」


「分かってもらえたなら良いです」


 今度は私よりもこの警官の方が怪しいし、何か怖いし気持ち悪い。

 だから私はそそくさにかけ足でその場を去って帰って行く。


 何あの警官。


 まあとにかく帰って明日の旅行の支度をしなくてはな。


 塾でもあるし我が家でもあるエイちゃんの所に帰り、豊川先生がいるパソコン室に入る。


「豊川先生、ただいま」


「うん。お帰り」


「麻美の様子を見に行きましたけれども、とりあえず元気そうでした」


「そう」


 ちょっと嬉しそうに反応しているのが分かって、それだけで何か喜びを分かち会えた気がする。


「ところで先生は明日の支度はしなくていいんですか?」


「うん。とりあえずメグちゃんに話して置かないとね」


「イルカセラピーに参加する生徒さん達ですか?」


「生徒達はみゆきちゃんや盟ちゃんや梓ちゃんを合わせて八人になるかな。それで前もって言って置くけれども、明日会う人達は僕も初対面なんだ。でもここに明日会う子達の詳細をここにまとめておいたから後でざっくりで良いから目を通しておいてくれないかな」


 テーブルの上に置いてある白い用紙を指さした。

 角にホッチキスが止められており、枚数は五枚で一人一枚の内容でまとめられているみたいだ。


「分かりました。後で目を通しておきます」


「よろしく」


「はい」


 と言って私は部屋を出た。

 そうだよね。私も明日は楽しみだが、引率係でもあり、明日初対面の子達の面倒も見なくては行けないんだよね。

 面倒とも思うし、でも責任感じてちょっとプレッシャーだが、とにかく楽しんで行きたいと思うので、私はパソコン室の前で、明日初対面の子達の詳細を見てみる。


 一人目


 長月スミレ(十四歳)女性


 絵が上手な女の子で、とにかく絵以外の事には何の興味もなく、学校にも行かずにいつも部屋に引きこもって絵を描いているという。

 親はスミレちゃんがイルカに興味を持ち、ぜひ参加させて上げて、人とのコミュニケーションをとれるようにさせたいと参加させた。


 この子の詳細を見てみるとサヴァン症候群と言う名前が頭に浮かんだ。


 サヴァン症候群とは大まかに言うと一つの事に没頭しすぎて、周りが見えなくなり、他人とのコミュニケーションが困難な人に見られる症状だと英治メモリーが言っている。


 二人目


 長塚悟子(十五歳)男性


 何事にも集中する事が出来ず、周りを振り回し、気に入らない事があると興奮して怒る。


 もしかしたら今回の件でこの子に手が焼きそうで何か気が重くなってきた。


 三人目 藤沢舞(十三歳)女性

 四人目 藤沢未来(十三歳)女性

 五人目 藤沢京(十三歳)女性


 後の三人は三姉妹で、どの子も性格がほとんど似ていて、いつも三人一緒にいる子だ。

 アスターの盟と梓みたいな子達だな、もしかしたらアスターの二人と気が合うんじゃないかな?

 三人共聴覚障害で、補聴器を通して言葉は態度で伝わるが、ちゃんと会話をするには手話が必要だと書いてある。

 性格は三人とも優しく穏和で親しくなりたければ、すぐになれると書いてある。


 どうしよう。私は手話なんて全然知らないし、今から勉強するにはちょっと時間がないから、とにかく明日会って臨機応変に対応するしかないな。


 一番手が焼きそうなのは、この長塚悟子君だ。

 私はこの手の子に凄くいじめられた経験がある。

 でも私は豊川先生の助手的存在だし、とにかくしっかりしなきゃな。


 一通り明日参加する五名の子達を目を通して、みゆきちゃんはともかくだらしのないアスターの二人はちゃんと支度は出来たか様子を見に行くことにする。


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