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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
39/89

一輪のコスモス

前回のあらすじ。


 自分は必要のない人間だと思った里音は妹の呪われし紫音と心中を図ろうとするが、メグ達の思いに心打たれた里音は思いとどまる。

 そして完全に里音に裏切られたと知った呪われし紫音はその牙をメグ達に襲いかかる。

 はたしてメグ達の運命は⁉


 里音編クライマックス。


 ドレスを纏った白骨化した呪われし紫音は空間が激しく歪ませ、そのサイコキネシスを満身創痍の私達に牙を向く。


 本当にもうダメかと思った。


 だが、人体に何も影響がない。

 みゆきちゃんと里音の様子も見られる。

 二人とも無事だ。


 ・・・いったい何が?


「みんな無事?」「メビウスが現れて、とっさに僕たちは隠れたんだ」


 背後からアスターの二人が現れ、どうやら無事であった事に安心した。


 二人はサイコキネシスを緩和させ歌う。


 そうだ。今のうちに・・・。


 満身創痍の私は呪われし紫音にゆっくりと歩み寄る。


 アスターの二人が歌で緩和しているからと言って、呪われし紫音との至近距離では、サイコキネシスの攻撃を僅かながら受ける。

 もしアスターの二人が緩和していなかったら、私はもう心も体も壊されているだろう。

 でも私は今まで受けたダメージはかなりあった為、立っているのがやっとだ。

 呪われし紫音の元へ距離を縮める事で、サイコキネシスは強力さを増していく。


『シネシネシネシネシネシネシネ』 


 後もう少しなのに。


 アスターの二人も歌うのもそろそろ限界だ。


 早く呪われし白骨化した紫音が纏ったドレスを引き裂かなくては行けない。

 そうしないとみんなお陀仏だ。


 でももうダメ。


 体に力が入らない。


 神様。お願い。私にほんの少しの力をください。

 と私は願いよりも脆く儚く頼りない思いである祈りを込め、心で訴えた。

 

 私の最後のあがきだ。


 薄れそうな意識の中、もはや祈る事しかできない。


 期待なんか出来るはずがなかった。

 そんな事わかっている。


 わかっていた。


 意識が遠のいていく。


 ここで私が意識をなくせば、みんなが・・・。


 だが、その時、


「メグ」


 私を呼ぶエイちゃんの声が耳に届いた。


 振り向くと、エイちゃんと聡美ちゃん豊川先生がみゆきちゃんが蹴破ったドア付近に立っていた。


 三人も無理してここまで来たのがわかる。


 三人とも本当に苦しそうな表情をしている。


 祈りは神様に届いたかのように僅かな力が芽生えて、呪われし紫音の元へと一歩一歩ゆっくりと歩み寄る。


 もう少しもう少し。


 そして私はもうたてなくなり、地面に這い蹲りながら、呪われし紫音の元へと進む。


 そして、ドレスに手をかけ引き裂こうとした時だった。


 すべての時がとまった。


 またメビウスが節子ちゃんを利用して、タイムトリップを発動させたのか?


 いや違う。


 サイコキネシスの効果は切れたのか?這い蹲っていた私はゆっくり立ち上がり、辺りを見渡してみると、一面黄色いコスモスがたわわに咲いた夢のような場所だ。


 アスターの歌の力か?


 いや違う。


「ねえ」と後ろから声をかけられて振り向いてみると、里音に似た女の子が立っていた。


「里音?」


 でも女の子は違うと言わんばかりに、ゆっくりと首を左右に振った。

 じゃあ誰だと見ると、里音にしてはかなり幼い感じがした。

 そこでピンと来て、


「紫音?」


 すると女の子はおもむろにほほえみ、両手には大量のコスモスを束ね持っている。

 私は彼女が紫音だと知り、怒りがこみ上げてきたが、彼女の無垢な顔を見ていると、悪意は感じられず、憤る気持ちに翻弄されることはなかった。

 

 でもこの光景は目の前にいる紫音の力か何かじゃないかと思って紫音を見たら、目を閉じてゆっくりと首を左右に振った。

 その仕草を見て、私の心の声が聞こえているような気がした。


『そうだよ。私は喋る事は出来ないからお姉ちゃんの心の中に訴えているんだよ』


 と目の前にいる紫音はにっこりと笑って心で訴えているみたいだ。


「ところでここはどこなの?とにかくみんなを解放して」


『解放して欲しかったのは私の方だよ』


「どう言う事?」


『このドレスは私の悪い心を引き出して私を・・・呪われし存在へと変貌させお姉ちゃんに迷惑をかけてしまった。

 それにお姉ちゃんのお友達のみんなにも』


 紫音ちゃんの顔は曇る。

 続けて、


『でももう大丈夫だよ』


 とにっこりと笑う。

 その笑顔は何か寂しさをにじませた感じに見えた。

 そんな紫音ちゃんがいたたまれなくなった私の心を読み。


『ありがとう。心配してくれているんだね。

 出来れば、私もお姉ちゃんとそのお姉ちゃんとのお友達と仲良くなりたかった

 お姉ちゃんのお友達を感じていたけれども、みんなとても良い人ばかりだった。

 本当に心はこのコスモス畑のように鮮やかに澄んでいる』


 紫音ちゃんの心の声と共に朗らかな笑顔で訴えて幸せそうだった。


 ドレスがなければ・・・。


『確かにドレスを持ってきた里音お姉ちゃんを憎んだけれども、それは私の悪い心がそういう気持ちにさせた』


「いや、誰にだって人を恨んだり誰かのせいする気持ちはあるよ。だからそれで良いんだよ」


『でも私が憎しみにかられるとドレスが呼応して邪悪な力を発揮する。それで里音お姉ちゃんもそのお友達もみんな不幸になってしまった』


 確かにそうかもしれないけれども。私の目の前にいる紫音ちゃんは悪い人じゃないんだ。

 だから悪いのはドレスだったんだ。

 そのドレスをまとった事で、優しい紫音ちゃんは呪われし者へと変貌してしまった。

 そんなかわいそうな紫音ちゃんを幸せに出来ないかと思って、涙がこぼれ始めた。


『優しいんだね。名前はメグさんって言ったかな?』


 頷く私。


『メグお姉ちゃんって呼んで良い?』


「もちろん」


『じゃあ、メグお姉ちゃん。お願いがあるの聞いてくれるかな?』


「私が出来ることなら」


『これを受け取って』


 と大量に束ねた持っていたコスモスを私に差し出す。


 私が黙って紫音の元へと行き、その束ねたコスモスを受け取った瞬間だった・・・・・・・。



 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



 気が付くと、私はベットの上で眠っていた。

 体を起こして辺りを見渡してみると、誰もおらず部屋には私が今使っているベットしか置かれておらず、窓から太陽の光が私の瞳をくすぶっていた。


 それに私は手に何かを握っていた。

 見てみると、黄色い一輪のコスモスの花だった。


『メグさん気が付いた?』


「誰」


『私だよ。紫音』


「紫音」


 その心に響く声の発信源は私が持っている一輪のコスモスだと言うことが分かった。


『私はこのコスモスの花が枯れるまで、メグさんとだけ、会話が出来る。

 それまで私のわがままだけど、お姉ちゃんとそのお友達を感じていたい。

 良いかな?』


 私は紫音ちゃんの思いを聞いて悲しくて涙がこみ上げてきた。


「良いよ」



 こうして里音に関する一件が終わった。



 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



 私はあの時、紫音のドレスに触れた瞬間までは覚えている。


 その後の話を聞くと、ドレスに私が触れた瞬間に呪われし紫音が放つサイコキネシスが治まったみたいだ。


 そしてドレスを処分して、呪われし紫音の憎しみは完全に絶たれた。


 危篤状態に陥っている私は病院に搬送するのは、あまり良くないみたいなので、豊川先生の以前試練を受けた時に出会った裏の世界の番人の流霧さんに私の治療を頼んだみたいだ。


 そして気が付き、ベットから降りると、流霧さんは私にその姿を見せ、相変わらず、淡々とした表情で「もう大丈夫ね」と言われて、私は流霧さんの小屋を後にした。私はまる一日眠って、吸血鬼である私は人間のおよそ十四倍の回復力を持っているみたいだ。


 そして手にしている紫音の魂が宿っているコスモスを傷つけないように丁寧に持って運んだ。


 みゆきちゃんはかなりの重体だったが命に別状はないと言う知らせを聞いて、私はホッとした。

 

 それと里音はそれほど大した怪我はなかったが、病は気からか?精神病院に搬送される事はなかったが、ひどく落ち込んでしまっている。

 多分、紫音の事、私達に多大な迷惑をかけてしまった事に対してひどく蟠り気持ちの整理が出来ていないのだろう。

 だから今はそっとしておこうとみんなで話し合った。


 紫音の魂が宿ったコスモスをコップの水で生けて、太陽の光が当たる窓の側においた。

 そんな紫音の心の声が響き、私はそれに答えている。

「里音もその仲間達も元気だよ」って。

 紫音はみんなが無事で幸せならそれで良いみたい。


 それよりも分からない。

 どうしてドレスに触れた瞬間に、鮮やかなコスモス畑で紫音に出会ったのか?

 しかも目覚めた時に、紫音の魂が宿った一輪のコスモスを持っていた。

 そう思って私は以前試練の時に渡された指輪を見つめた。

 この指輪はパラレルワールドであるもう一つの世界に誘われる。

 もしかしたら私はその世界に誘われた。

 はっきりとした事は分からないが、今はそれぐらいの事しか想像付かない。


 とにかく私は紫音の魂が宿った一輪のコスモスと心で会話をこの一週間した。

 私が紫音と会話をしている時に突然扉が開いて、アスターの二人に「何独り言を言っているの?」とおかしな目で見られて言われた。

 でも気にしなかった。


 その花を枯れないように、私は毎日水を入れ替え、そしてその日の事を紫音に語りあげてあげるのだ。


 アスターの事。徳川さんの事。みゆきちゃんの事。エイちゃんの事。聡美ちゃんの事。今は元気がないが里音の事。後最近心が元気になってきた麻美ちゃんの事。豊川先生の事。

 毎日が大変だけど、私もみんなも幸せな事を伝えると紫音は喜ぶ。

 そんな紫音ちゃんが喜ぶと私は嬉しい。

 でも私はもっと紫音の喜びを感じたい。

 日に日に紫音の魂がやどったコスモスは徐々に枯れていく。

 いつまでも紫音を感じていたいと思ったが、それも時間の問題だ。

 ちなみに紫音の心の声は私でしか聞こえないみたいだ。

 能力者であるみゆきちゃんやアスターに花の側に来ても聞こえていないみたいだ。

 だから紫音の事は私は秘密にしているんだ。

 でも紫音の心の声を吟味してみると、お姉ちゃんを感じたい。

 もしかしたら紫音の魂が宿ったコスモスの声を里音なら聞こえるんじゃないかと思った。

 でも里音は傷の方は大したことないが、心に相当ダメージを受けてまだ立ち直っていない。

 紫音の心の声を私が里音に伝えてもあまり意味がないし、そもそも信じてもらえないかもしれない。

 だから直接コップに生けた日に日に枯れていく紫音の魂が宿ったコスモスを里音の元へと持って行ってあげたいと思う。

 里音に紫音の心の声が聞こえるかは分からない。


 ・・・でも。


 そして今にも枯れそうな紫音の魂が宿ったコスモスを持って、里音が入院している病院へと出かけた。


 豊川先生に聞いたところ、里音は今、心の相当ダメージを受けていて、自閉症に陥ってしまったみたいだ。

 私はそれを聞いて、ショックを受けたと同時に、紫音の小さな心の嘆きを心で感じた。


 紫音の心の声が聞こえるかどうかは分からないが、とにかく・・・。


 里音が入院している病院にたどり着き、里音の病室へ。


 そして里音に出会ったが、私が見たのは本当に里音なのかと疑ってしまう程、里音はひどく変貌していた。

 ゴボウのようにやせこけ、肌の艶がなく真っ白で、目は完全に死んでしまったような精気の感じられない目をしていた。


「里音」


 と声をかけたが、里音は振り向きもしない。


 そして新聞紙に丁寧にくるんで持ってきた、紫音が宿ったコスモスを里音の手元に置いた。


 すると・・・。


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