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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
38/89

泣いて、そして笑って下さい!

前回のあらすじ


里音を諦めるしか、ないと言った豊川にその事をモットーだと思って諦めようとしたが、メグの里音を思うその気持ちがそれに抗うように行く手を遮るサイコキネシスに降りきるように里音の元へと向かう。

サイコキネシスの餌食になりそうなメグの後にアスターの歌声が響き、それらを緩和し、先へと進むことが出来た。

メグは諦める前に仲間に相談する大切さを胸にいざ里音の元へ!


 私達の行く手を遮るサイコキネシスは、アスターの歌声で緩和されている。

 これなら行ける。

 私を先頭に後ろから歌いながら付いてくるアスターの二人と、立ち上がって間もなく満身創痍になりながらも、私とアスターに続いて付いてくるみゆきちゃん。

 慎重に慎重に、豊川先生の第二の書庫とされる里音の行く先へ。

 

「あの中に里音さんはいる」


 みゆきちゃんの肉眼でも建物が見えるところまで近づけた。

 里音を心配して思う気持ちは私や豊川先生だけじゃない。

 みんなも同じなんだ。

 私はもちろんの事、達観者である豊川先生も過ちを犯したことに気が付く。

 それは何でも一人で抱え込もうとする傲慢な思い。

 傲慢は七つの大罪の一つで、その気持ちに陥れば死に至る事がある。

 そう、私と豊川先生は傲慢だったんだ。


 確かに世の中には諦めなくてはいけない事はある。

 でも今回の件は諦める前に、アスターの二人とみゆきちゃんの三人に相談するべきだったんだ。だからまだ諦めるのは早い。


 慎重に目的地に歩み寄り、サイコキネシスの力が増し、私の後について、それを歌で緩和しているアスターも苦しそうな顔をしている。

 そんな二人に『無理しないで』と言う頑張っている人を励ます言葉は、この場合は適切ではない。

 だから、


「二人とも頑張って」


 すると二人に私の声が届き、辛そうに歌っている二人は、次第に気を引き締めた表情で歌い、さらに私は、


「二人ともリラックスリラックス」


 そう。歌は気持ちを落ち着かせて楽しい気持ちで歌わないと、その効果は発揮されないことを私は知っている。

 だからリラックスさせて、二人に気を引き締めながらも、楽しく歌えるように私は言葉で後押ししたのだ。

 そして二人の表情はほころび、本来の力が発揮されたかのように近づく度に強まるサイコキネシスを緩和させた。


 行ける。


 建物まで後二十メートル位。


 アスターの二人の歌と行く手を遮るサイコキネシスが拮抗している。


 もう少しもう少し。


 ここはもうアスターの二人の力に頼るしかない。


 そして建物まで十メートル位までにたどり着く。


 国道のガードレールの柵を越えたときに、正面から電信柱が倒れて来て、私はとっさによけたのだが、私に続くアスターの二人の事を考える余裕がなくて、終わったと思って目を閉じた。


 行く手を阻むサイコキネシスの餌食になる事を覚悟した。


 しばらくして私の人体に何の影響もない。


「メグさん。諦めるのは早いよ」


 みゆきちゃんの声が聞こえて、その目をおもむろに開くと、倒れた電信柱の横に倒れたアスターとみゆきちゃんがいた。


 みゆきちゃんはホーリープロフェットで電信柱が倒れてくるのを予言して、とっさにアスターの二人を体当たりして回避したのだ。


 そうだ。みゆきちゃんもいたのだ。


 目の前の空間が歪んでいるのが見える。

 サイコキネシスだ。

 アスターの二人が倒れて歌えなくなってサイコキネシスを緩和出来なくなり、私達四人を襲おうとしている。

 でも私はもうその目を閉じて諦めたりはしなかった。

 サイコキネシスに寄るその空間の歪みをじっと見つめて、立ち上がる。


 私は一人じゃない。


 私の思ったとおりだった。


 再びアスターの二人も歌い、サイコキネシスによって歪んだ空間が見えなくなり、緩和されたことが分かった。

 そこでみゆきちゃんが、


「盟さんと梓さんはこれ以上は進めない。だから」


 そういってみゆきちゃんが私の所に駆け寄ってきた。


「メグさん。説明している暇はない。だから・・・」


 みゆきちゃんは私の手を取り、建物に向かって走り出した。

 みゆきちゃんの手を取って心通じて、分かったが、時間勝負だ。

 この空間を歪ませるほどの強烈なサイコキネシスをアスターの歌で緩和できるのはわずか一分。

 そしてこの建物の中に里音はいる。

 

 ここで分かったが、以前みゆきちゃんが里音を予言して倒れたのもサイコキネシスのせいだった。

 でもアスターの二人の歌によってそれは緩和され、サイコキネシスにホーリープロフェットを妨害されることはない。

 みゆきちゃんはビー玉サイズの水晶玉を握りしめ、一寸先の未来を予言しながら私の手を掴み進む。それに私も続く。


 建物の前にたどり着き、みゆきちゃんが乱暴にもドアを蹴り破り、私はみゆきちゃんの手にひかれてみゆきちゃんに続く。

 明かりも灯っていない真っ暗な部屋を、みゆきちゃんのビー玉サイズの水晶玉の輝きを明かり代わりにして、突き進む。


 そして、里音の後ろ姿があった。


「里音」


 私が叫ぶと、里音はおもむろに振り向き、その目には精気は感じられない。


 里音は何を見ていたのか?

 みゆきちゃんに続く水晶玉の輝きを、その先に照らすと、目にした瞬間私は背筋が凍った。


 里音が面と向かって見ていたのは、ドレスをまとってイスに座っている白骨化した遺体だった。

 それは里音の双子の妹の紫音だと言う事が分かった。


「ひどい」


 思わず涙がこぼれたが、みゆきちゃんは躊躇せずに、私の手から離して、その先へ行き、


「感傷に浸っている場合じゃないよ。とにかくそのドレスを引き裂くんだ」


 そういって、ドレスをまとって座っている白骨化した紫音の元へ走る。

 そしてみゆきちゃんがそのドレスに手をかけ引き裂こうとした瞬間だった。

 すべての時が止まるように、みゆきちゃんと里音の動きが止まった。


 これはみゆきちゃんの親友の節子ちゃんの能力であるタイムトリップ。

 それが分かった時、私は叫んだ。


「メビウス」


 と。


「クックックッ」


 不敵な笑いを漏らしながら、背後からやってきた。

 漆黒のマントをまとい、腕にみゆきちゃんの親友の節子ちゃんを抱えている。

 その姿を見た時、体が勝手に動くかのようにメビウスに向かっていった。


「メビウス」


「フン」


 と声を出し向かってきた私を手で軽く払われ、私は吹っ飛び壁にたたきつけられた。


「くっ」


 と漏らししばらく動けそうもない。

 メビウスは時を止めて、無防備のみゆきちゃんと里音が殺されてしまう事を私はひどく恐れた。


 体が動かない。


 だがメビウスは無防備のみゆきちゃんと里音にまるで眼中にないかのように何もせず、メビウスの関心はドレスをまとって座っている白骨化した紫音にあるみたいで、そんな紫音に手を振れた。


 その様子を見ることしか出来ない私は、体は動かないが言葉を発するまで回復して、


「メビウス。お前、何を・・・」


「クックックッ、これから死ぬ人間に、喋ったところで意味などない」


 そういい残してメビウスは小屋から出ていった。


 そしてみゆきちゃんと里音が動いて、時が動き出したみたいだ。


 みゆきちゃんはそのドレスを引き裂こうとしたところだった。

 だが、空間を激しく歪ませるサイコキネシスがみゆきちゃんを襲い、私も全身が潰されそうな感じだ。


『リオンオネエチャン ト ワタシノジャマ ハ ダレニモ サセナイ』


 紫音と思われる不気味な声が鼓膜が破れる程の耳に響く。

 メビウスは紫音の能力を奪い、そして紫音を私たちに仕向け殺そうともくろんだことが分かった。


 それよりもこのままでは紫音のサイコキネシスの餌食だ。


「ああああああああああ」


 みゆきちゃんの悲痛の叫びが木霊する。

 アスターの歌声が聞こえない。

 もはやここまでかもしれない。

 失われそうな意識の中で、里音は黙って目の前の紫音を抱きしめていた。


「紫音、お姉ちゃんはここにいるよ」


「・・・オネエチャン」


 紫音のサイコキネシスが弱まってくる。


「紫音はもう独りぼっちじゃないよ」


「ホントウニ?」


「だからもうやめて」


「・・・」


 里音が共に居る事で、ドレスをまとった白骨化した紫音は満たされたのか?紫音が発するサイコキネシスの力が完全に途絶えられた。


「私も紫音と同じ独りぼっちなんだから・・・」


 里音は何を言っているのだ?独りぼっちって?


「だからお姉ちゃんも紫音の元へ連れて行って」


 里音が言っている事は紫音と心中することを意味する。

 阻止しなきゃと思って体を動かそうとしたが、動かない。

 白骨化した紫音のサイコキネシスに相当ダメージを受けてしまったみたいで。


 そこでみゆきちゃんが立ち上がり、覚束ない足取りでドレスをまとった白骨化した紫音の元へと歩み寄って、そのドレスを引きちぎろうとして手をかけた瞬間に、里音がみゆきちゃんを突き飛ばして、それを制止した。


「邪魔しないでよ。私は紫音と行くんだから」


 里音はおぞましい形相で私たちに言い掛ける。


 ようやく私も体力が回復してきて、かろうじて動けるようになり、里音に「正気か里音」と訴える。


「わ・わ・私は・・もういらない人間なんだから・・・私なんて必要の・・・ない人間なんだから」


 里音の言っている事が意味が分からず「何を言っているんだ里音。そんな事ある訳ないだろ」そういって、私は壁づたいにゆっくりと立ち上がる。


「みんな・・・みんな・・・私を置いて大人になるんだもん。

 聡美も盟も梓も・・・」


「大人?」


「そうよ。特にメグ、あなたまで私を置いて大人になるつもりなの?」


 里音の台詞を吟味すると、私達に大人になってほしくない。私は吸血鬼になる前の弱虫な子供のままでいろって言いたいの?


「あなたまで大人になったら、私は誰にも必要とされない。ただの呪われた人間。呪われた私はみんなと大人になる事なんて出来ない。だから紫音と行くしかないの」


 そこでみゆきちゃんが、


「行きたくないんでしょ。本当はその紫音と決別させたいんでしょ」


「あなたに何が分かるのよ」


 奇声じみたかすれた声で訴える。


「分かる訳ないじゃん。そんなの」


 里音は侮蔑を含んだ笑みをみゆきちゃんに向けられて、里音は憤り、倒れたみゆきちゃんを本気で殺すつもりで、その足を思い切り踏む。


「ああああああ」


 悲鳴を上げるみゆきちゃん。


「やめろー里音」


 と叫んだが私の声は届いておらず、里音は我を失い鬼のようなおぞましい形相で倒れたみゆきちゃんを思い切り地団駄を踏む。


 そして完全に気を失ったみゆきちゃんを里音は見下ろして、


「このガキが、汚いねえ、ションベンまで漏らして」


 里音の言動に私は心の底から得たいのしれない怒りがこみ上げてきて、「里音」と叫びながら、立ち上がり、里音に思い切りその頬を叩いた。


 里音は吹っ飛び、壁に激しく激突した。

 やりすぎたと思ったが、どうやら私には怒りに翻弄され手加減をする余裕もなかった。


 そんな里音を見るとダメージはかなりあったが、死ぬほどではなく気を失うほどでもない、意識がまだある。

 もし私が万全の状態で里音を本気で叩いたら、命はなかっただろう。


 それよりもみゆきちゃんの元へとかけより、「みゆきちゃん」と軽く揺さぶった。

 気は失っているが、息はしている事に安堵した。

 

「みんな死んじゃえば良いのよ」


 里音はふてくされているのが分かる。

 もう私は呆れて物も言えなくなったが、みゆきちゃんが意識を取り戻し。


「助けて・・・欲しいなら素直にそう言えば良いじゃない」


 覚束ない意識の中、言葉を引き絞るように里音に訴える。

 続けてみゆきちゃんは、


「みゆきみんなに迷惑を・・・かけたくないから・・・みんなを巻き込みたくない・・・・とかそういう気持ちは分かる・・・・でも里音さんは・・・助けを求めるべきだったんだよ・・・」


 みゆきちゃんは完全に気を失ってしまった。

 みゆきちゃんの心の声は里音に届いている。

 その証拠に里音は咽び泣いている。

 私は里音が泣いているのを初めて見て、里音が私やみゆきちゃんに甘えている姿に私はホッとした。

 きっと里音はこの件に関して、心の奥底にずっとしまいしまい続けて、豊川先生以外に話して甘える事が出来なかった。

 でも豊川先生もこの件に今まで、真摯に向き合ってきたが、もはや体力的にも精神的にも限界が来たのだろう。

 そして里音は自分は頼られる存在ではないと思い込み、紫音の誘惑に誘われ心中を覚悟した。


 そうだよ。私は豊川先生にも里音にも心を鬼にして叱らなくてはいけない。

 誰も巻き込みたくない。誰にも迷惑をかけたくない。

 それは幸せに生きる事を望むのなら、不可能な事だ。


 だから里音、私たちの前で今は思い切り泣いて、そして甘えても良いから。そしてこの約束は必ず果てしてもらう。

 

 それは私たちの前で思い切り笑う事。


 だが忘れていたが、まだ呪われし紫音は健在だった。


「ミンナ ウソツキ オネエチャン モ ワタシ ヲ ウラギッタ ミンナ ミチズレ ニ シテヤル」


 激しく空間が歪むほどのサイコキネシスがドレスを纏った白骨化した紫音の不気味な声と共に私たちに襲いかかる。


 満身創痍となった私達はもう為すすべもない。


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