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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
30/89

お互いの怒り




 メビウスが放った邪悪な気がみゆきちゃんに迫ろうとしている。


『みゆきちゃん。私は信じているから』


 刹那的な時の中で、みゆきちゃんの心に訴える。


 信じているから。信じているから。


 私はみゆきちゃんを信じているから。


 祈る気持ちを込めて、私はみゆきちゃんに訴える。


 するとみゆきちゃんから何か凄まじい力を感じた。


 おもむろにその目を開けみゆきちゃんの方を見ると、みゆきちゃんは白く輝き、ホーリープロフェットを発動させた。


 そうだ。忘れていた。みゆきちゃんには隠された力、ホーリープロフェットを発動させる力があったのだ。


 その力は以前メビウスの戦いの時に拝見させて貰ったが、メビウスの力をも上回る力。


 でもみゆきちゃんはその力を自在に操れない。


 どのような時に発動されるか分からないけれども、とにかく形成は逆転した。


 ホーリープロフェットの力を引き出したみゆきちゃんはメビウスが放った邪悪な気を軽々と打ち消した。


「節子ちゃんを返せーーー」


 と叫びながら、邪悪な物だけを燃やし尽くす白い炎をメビウスに浴びせる。


「くっ」


 メビウスは白い炎に包まれながら、悶えている。


「ならば、これならどうだ」


 メビウスは肩に乗せた節子ちゃんを片手で抱き、もう一方の片手を上げて、マネキンと化した観客達に邪悪な気を霧散させる。


 私もこれは防ぎきれないと、誰かが死ぬ事を覚悟してしまった。


 しかし、みゆきちゃんは邪悪な物を燃やし尽くす炎を、時が止まりマネキンのように化した人たちを包み、霧散して放った邪悪な気を防いだ。


「こしゃくな」


 それでも片手を広げて邪悪な気を霧散させたが、まさに悪足掻きだった。


 そして観客の人達が動き出して、どうやらタイムトリップの効果は溶けたようだ。


 観客達は白い炎に包まれて、唖然として、私は観客のみんなに言い掛ける。


「みんな逃げて」


 ざわめく人々。観客はメビウスに恐れて逃げていった。


「メグ?」


 背後から声が聞こえて、どうやら舞台に立っていた盟と梓が私に気がつき、その盟が私に声をかけた。


 その時、みゆきちゃんの心の声が聞こえた。


『メグさんここは任せて、盟さんと梓さんと逃げて。みゆきはメビウスと決着をつけて絶対に節子ちゃんを取り戻して見せる』


『分かった』


「盟、梓」


 二人は状況が飲み込めていない感じだが、今は説明している暇はないので、二人を抱えた瞬間だった。


 邪悪な気を感じた。


 そして再び時が止まった。


 だが止まったのはメビウスと交戦しているみゆきちゃんだけだった。


 私が抱えた盟と梓の時は止まっていない。


 そこでみゆきちゃんの危機を感じた。


 メビウスは即座に時を止めマネキンのように化したみゆきちゃんに手を加えた所、みゆきちゃんに指一本触れる事が出来ない。


 心臓がはらはらしたが、どうやら時は止まっても、みゆきちゃんが放った白い炎は邪悪なメビウスを強く拒み触れさせない。


「ならこれならどうだ」


 メビウスは全身から衝撃波を放ち、それでも時が止まりマネキンと化した観客達に衝撃を与える事すら出来なかった。

 みゆきちゃんの聖なる炎が邪悪なメビウスから守られている。


 するとメビウスは何がおかしいのか私の方を見て、瞬間移動して私の前に現れた。


「まあ良い。目的はおまえ達なのだから」


 私が抱えている盟と梓に目を向ける。


「させない」


 メビウスを威圧的な視線を向けた。


「みゆきのいないお前ごときにやられる私ではない」


「なめるな」


 メビウスに拳を突きつけたが、メビウスは人差し指一本で私の拳を受け止めて、


「ふん。やはりその程度か」


「負けない」


 もう一方の拳をメビウスに向け、顔面にヒットしたが、メビウスにはダメージは受けていない。


 これは本当にヤバいかも。


 だったら。


 私は連続でメビウスめがけて、拳を突きつけた。


 だがメビウスにはダメージすら与えられていない。


「学習能力のない女は嫌いだ」


 私を手で軽く払って私は舞台に設置されていた、ドラムに激突して、もはや勝ち目が無いけれども、せめて節子ちゃんは助けられないかもしれないけれども、盟と梓を。


 すると盟と梓は私の前に立ちふさがった。


「メグを傷つけるな」


「その女の命が欲しければ、私の言うとおりにしろ。さすればその女の命は助けてやる」


「誰がお前の言いなりになるか」


 と盟。


「僕達を甘く見るなよ」


 と梓。


 すると二人は歌った。


 何だろう。力が漲ってくる。


 そしてセイレーンの私の頭上に実体化して、まるで私に力を貸しているような感じだった。


 私の背後で歌っている盟と梓を見ると、歌いながらウインクして、『邪悪なメビウスをやっつけちゃって』とでも言っているような感じだった。

 私は力強く頷き。メビウスを見上げ威圧的な視線を向ける。


「行くよ。メビウス」


 拳に聖なる気を集めて、空中で佇んでいるメビウスめがけて、放った。


「こしゃくな」


 メビウスは邪悪な気を私に放つが、まさに赤子に触れられたかのような貧弱さに感じて、これなら、節子ちゃんを助けてメビウスの野望を打ち砕く事が出来ると確信した。


 メビウスと接近戦になり、その懇親の拳をメビウスの顔面に突きつけようとした時だった。

 瞬時に抱えている節子ちゃんを盾にして、私は懇親の拳を打つことが出来なかった。


 そして私に隙が出来、メビウスはその隙を逃さないと言わんばかりに、目から邪悪な気を放ち・・・動けなくなる。


 私は一人じゃない。


 確かに私は強大な力を持つメビウスに対しては無力かもしれないけれども。何とでも言う私は一人じゃない。


 今こそ力を合わせる時なんだ。


 メビウスがアスターの二人である盟と梓にどうして近づいたかは分からない。


 でもそれを阻止しなければならないと思う。


 そうしないととんでもない事になりそうで怖い。


 体が動かない。


 でも私の意識はある。


 遠のきそうな意識の中、盟と梓が不敵に笑うメビウスに追いつめられている。


 助けなきゃ。助けなきゃ。


 みゆきちゃんの方を見ると、ホーリープロフェットの炎に包まれながら、節子ちゃんのタイムトリップで動けない状態だ。


 メビウスはアスターの二人に何をするつもりなんだ?


 体が動かない。


 お願い動いて。


 懇親の力を振り絞って体を動かそうとするが、体が鉛のように重くて動かない。


「あああああああああああああああああああああああああああ」


 思い切り叫びながら、懇親の力を振り絞って立ち上がる事が出来た。


 私の視線の先には盟と梓に迫ろうとするメビウス。


「まだそんな力が残っていたか?」


 メビウスが手を広げ私に向け、私はメビウスに全身を鷲掴みされた感じだった。


 メビウスが手を上空へと掲げると、私は空中へと張り付けられた。


「メグに何をするんだ」


「メグを放せ」


 盟と梓はそれぞれ言う。


「この吸血鬼の命が惜しければ、私の言う通りにしろ」


 メビウスの力で全身が潰されそう。


 私はまだ死にたくない。助けて欲しいと思う。


 格好悪いけれども、私は命乞いをしている。


 助けて・・・。


「分かったよ」


「僕たちが言うとおりにすれば、いいんだろ」


 盟と梓はそれぞれに言う。


 私の意識が遠のいていく。


 ダメ・・・今更だけど、それはダメ。



 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



「メグさん。メグさん」


 誰かが私を揺さぶる。


 私は意識を取り戻し、私を揺さぶり起こそうとしているのは、みゆきちゃんだった。


 ゆっくりと体を起こして、あれだけメビウスにこっぴどくやられたのに、私はけが一つない。


 それよりも私は盟と梓の事が気になり。


「盟と梓は?」


 みゆきちゃんの顔が曇り心配は募り、立ち上がると、渡辺さんと片山さんが。


「アスターの二人なら、担架に運ばれて病院に送られたよ」


 渡辺さん。


「何か発見された時は首に噛まれた後が合ったって言っていたわ」


「二人はどこの病院に?」


「まあ、アスターは表沙汰にはなってはいけない存在だから、闇医者に運ばれたんだと思うけどな。

 それよりも当分はアスターの歌を聴けなくなる事は確実になった訳だ」


 渡辺さんは寂しそうに言う。


「その闇医者って」


 そこでみゆきちゃんが、


「それはみゆきが案内する」


 みゆきちゃんはビー玉サイズの水晶玉を握りしめ、ホールの外へ出て私もその後を追う。


 みゆきちゃんは見慣れないスラム街を水晶玉を握りしめ、何の迷いもなく進み、私はその後に付いていくだけ。


 すると先を行くみゆきちゃんが転び、私は心配でみゆきちゃんの元に駆け寄り「大丈夫みゆきちゃん」と声をかける。


「平気」


 みゆきちゃんはそう言っているが、すごく疲れていてやつれているような表情をしていた。

 思えば、メビウスの戦いで潜在的な能力であるホーリープロフェットを発動させ、相当に疲れているはずだ。

 それに節子ちゃんを助ける事は出来なかった事に、みゆきちゃんにどんな言葉を言えば良いのか私には分からない。


 みゆきちゃんはすぐに立ち上がり、「こっち」と言って見知らぬスラム街を迷いなく進む。


 そして路地の突き当たりに到着して、その先に下に降りる階段が、あり、みゆきちゃんはそこで立ち止まり、「この先に盟さんと梓さんはいるって」


 私はみゆきちゃんに言われてすかさず入ると、みゆきちゃんは「ちょっと」と待つように言われたが、私にはもうそんな心の余裕はなく、その先へと進んでいった。


 階段を下りて、扉がある。


 その向こうに人の気配がする。


 盟と梓がこの扉の向こうにいるのだと思って、その扉をゆっくりと開けると、中は薄暗く、病院特有の消毒液の匂いが漂っていて、盟と梓は長いすに座って、その闇医者に診察を受けている様子で、その応急処置でもしてもらった見たいで首には包帯が巻かれていた。

 

「メグ」


 盟が振り向いて私を見て目を丸くして驚いている様子だった。梓も同じく。


「何だ君は?今診察中だ。勝手に入られると困るのだが?」


 そこで梓が立ち上がり、


「もう診察は終わっているんでしょ」


「そうだが・・・」


 闇医者の言葉を無視して、梓が私にその鋭い視線を向けながら、歩み寄り、私の頬を思い切り叩いた。


「何をしに来たのよメグ」


 梓は怒りを露わにして私を見た。側にいる盟も梓と同じ気持ちでその鋭い視線を私に向けた。


 叩かれた痛さはまさに赤子に触れられたような感触だが、二人の怒りが心に浸透して、それはメビウスの攻撃よりもぐっと来る衝撃だった。

 でも二人の怒りは私に伝わったが、その怒りはお互い様だと思って、私も鋭い視線を梓に向け軽く手の甲で叩いた。

 少しよろけて、叩かれた頬を押さえて俯く。

 二人は能力者でも普通の人間とさほど変わらないか弱い人間だ。


「君は病人に何て事をするんだ」


 闇医者が言って、私は、


「大した事はないんでしょ」


 闇医者は私とアスターの二人の盟と梓に何か事情があるのだと悟って、黙っていた。


 そして梓は顔を上げて、おもむろに微笑み、


「久しぶりだなメグ」


「うん」


 私もつられて微笑んだ。


「やっぱり以前から気がついていたけど、メグも何かしらの力を持ったみたいだな」


「それよりも事情を説明してくれないかな?」


 丁度その時、みゆきちゃんがそっとドアを開いて中に入ってきた。


 私の予兆とみゆきちゃんの予言では二人が危険にさらされている事だけを知ってここまで来て、その通り、メビウスとの一戦を余儀なくされた。

 

 二人にいったい何があったのか闇医者は二人をここで一日安静にさせなくてはいけないと診断を受けたので、私とみゆきちゃんは強引だが、診療所に事情を聞く為に一晩泊まる事にした。


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