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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
29/89

メビウスの野望再び!


 私とみゆきちゃんは手を繋いで精神を集中させ、ダンスホールに蔓延る邪悪な気配を察知している。


 アスターの二人の舞台を待ち望んでいる観客のざわめきをよそに私とみゆきちゃんはこの状況に油断してはいけないと肝に銘じている。


 邪悪な気配が消えた。


 もちろんみゆきちゃんもその事に気が付いている。


 私は目を開いて、みゆきちゃんの方を見ると、みゆきちゃんも私の顔に目を向け不審に思っている。


 何が起こったのだろう。


 そしてダンスホールが真っ暗になり、アスターのコンサートが始まる合図だ。


 邪悪なメビウスの気配が消え、安心してしまいそうになった直後だった。

 みゆきちゃんが私の手を取り、『ダメだよメグさん。油断してはいけない』と心に訴えてくる。


 そうだ。みゆきちゃんの言う通り、油断してはいけない。


 もしかしたら頭の切れるメビウスの事だから私達が邪悪な気配を察知したことに気が付いたのかもしれない。

 そしてその気配を完全に消し去ったのかもしれない。


 だからもっとみゆきちゃんと手を繋ぎ共鳴して、精神を集中させる。


 もっと。


 もっと。


 アスターのライブが始まる。


 彼女達の歌声が私達の心に響き、集中出来なくなる。


 私はその目を開けると、アスターから何か得たいのしれない羽を生やした美しい女性が舞い踊っていた。


「何?」


 私が言うとみゆきちゃんが「セイレーン」


「セイレーンって・・・」


 アスターから発せられる美しい歌声から、実体化したみゆきちゃん曰くセイレーンを見て、何やらそのセイレーンは観客を魅了するために舞い踊っている感じで悪意を感じない。


 そのアスターの二人から発せられ実体化したセイレーンは私とみゆきちゃんにしか見えていないみたいだ。


 どうやら私とみゆきちゃんはこのセイレーンの出現によって邪悪な気配を遮ってしまったみたいだ。


 みゆきちゃんと私はもう一度精神を集中させ、その邪悪な気配を見ようとするが心はセイレーンの歌声に魅了されて集中できない状態だ。


 予想外だ。


 このままセイレーンに魅了されてしまえば良いんじゃないかと思ったが、そうも行かない。


 ・・・でも・・・でも。


 このままセイレーンに魅了されてしまったら、何かヤバい感じがして気が気でなくなる。


 本当にどうすれば良いのだろう?


 まさにセイレーンは誘惑だ。


 心に身を寄せると、魅了され本来の目的を忘れてしまう。


 そうなったらまさに本末転倒だ。


 本当に本当に気を引き締めないとセイレーンの誘惑にアスターの歌声に負けてしまう。


 渡辺さんや片山さん、その他の観客達にはあのセイレーンの姿は見えず、ただそれに気が付かず魅了されているだけだ。


 私一人の力ではダメだ。もう一度みゆきちゃんと手を繋いで、互いに意気投合して精神を集中させる。


 このセイレーンの障害を克服しなければ、アスターの盟と梓の命はないと思った方が良いかもしれない。


 とにかく精神を集中させる。


 このセイレーンの歌声に紛れた邪悪な何かを読まなくてはいけない。


 ここで分かったが、セイレーンに悪意は感じられない。


 気持ちが良い。


 その目を開けると、一面コキアの紅葉に染まった草原だった。


 美しい。


 どうやら私とみゆきちゃんはセイレーンの誘惑に魅了されてしまったみたいだ。


 気を引き締めてもダメだ。


 魅了されてはいけない。


 魅了されてはいけないと思えば思うほど、心がセイレーンに引き寄せられていく。


 ダメだ。


 私とみゆきちゃんはコキア畑の紅葉に佇み、そこに美しいセイレーンの歌声、アスターの歌声が響く。


「どうしようみゆきちゃん。ヤバい感じがするけど、この誘惑には勝てそうもない」


「だったらいっそ魅了されてしまえば良いんじゃないかな」


 みゆきちゃんの意見に何かヒントが浮かびそうで、


「そうだね。いっそ魅了されて・・・どうすれば?」


「セイレーンに悪意は感じられない。分からないけれども魅了されてしまえば良いかもしれない」


 するとみゆきちゃんは私の手を離してセイレーンが作り出した幻想的な世界である夕焼けにそまったコキア畑の紅葉をリズムに乗るように戯れる。


「メグさーん」


 と遠くから私を呼んで一緒に戯れようと誘っている。


 何か腑に落ちないが、セイレーンの誘惑には精神を統一できそうもないので、ここは諦めると言う訳じゃないが、とにかくみゆきちゃんと戯れるしかなかった。


 みゆきちゃんと戯れて爽快な気分だ。


 きっと観客の人たちも私たちと同じ幻想的な世界に引きずり込まれて、ハイテンション状態だろうと悟った。


 本当に気持ちが良い。このアスターのCDが欲しいよ。寝る前にこの曲を流しながら目をつむって眠ったら、心地の良い眠りにつき、まさに快眠状態で、次の日に起きたら、爽快な目覚めでリフレッシュしそうだ。


 まるで心地の良い夢に佇み、空も飛べそうだと思ったら、本当に飛んでしまった。


「みゆきちゃん」


 みゆきちゃんを空から見下ろして、飛んでごらんと言わんばかりに言う。


 そしてみゆきちゃんも空を飛び、鮮やかな夕焼けに染まったコキア畑の紅葉を大空の下から見下ろして、気を失ってしまうんじゃないかと言うほど、気持ちが高揚してしまう。



 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



 その目を開き、辺りを見渡すと、観客の全員が時が止まったかのように停止した状態になっていた。


「何が起こったの?」


 みゆきちゃんが心配になり、辺りを見渡して探してみると、みゆきちゃんは私の足下に倒れていた。


「みゆきちゃん。みゆきちゃん」


「うっ」


 気が付いたみたいで私はとりあえず安心した。


「みゆきはセイレーンに魅了されて・・・」


 ステージの方を見ると、アスターの盟と梓も観客同様に時が止まったかのように停止していた。


 みゆきちゃんも立ち上がり辺りを見渡して震える声で言う。


「節子ちゃん」


 と。


「節子ちゃんってメビウスに捕らわれている子の事?」


「これは節子ちゃんの力で『タイムトリップ』だよ」


「タイムトリップ?」


「メグさん。間違いない。これはメビウスだ。メビウスが節子ちゃんを利用して何かをもくろんでいる」


 取り乱しているみゆきちゃん。私はそんなみゆきちゃんを抱きしめて、


「落ち着いてみゆきちゃん。・・・ほら深呼吸」


 みゆきちゃんは私の言う通り深呼吸をして気持ちを少し落ち着いてくれて私は安心する。


「そのタイムトリップにかけられたなら、どうして私達は動けるの?」


「分からない。でもタイムトリップは危険な能力だ。時を止められた人はマネキンのように動かなくなり、少しでも衝撃を与えたら、バラバラに砕けて死んでしまう」


 衝撃的な事実に私は激しく動揺してしまう。


「とにかく今は待つしかない。節子ちゃんのタイムトリップは時間がたてば・・・」


 みゆきちゃんの表情が恐怖に染まる。私も感じている。この強大な邪悪な力を。


 とにかく私はみゆきちゃんと背中合わせで手を取り合って、その邪悪な気配に身を構える。


 私とみゆきちゃんは手を取り合って心で語り合う。


『もしかしたらメビウスは私たちに気がついていないかもしれない』


『それは分からないけれども、とにかく油断してはいけないとみゆきは思う』


 すると観客に向かって見えない衝撃波を関知して、瞬時にそれを見抜いて、その衝撃波がタイムトリップで止まった人に浴びせられ死んでしまうと思ってその衝撃を私は跳躍して手で振り払った。


 衝撃はライトに当たり、そのライトが落下して、マネキンのように止まった人に直撃する事までは予想出来なかったため、そのまま落下したが、運良く人には当たらなかった。


 邪悪な気配、上空に感じて、その方に目を向けると、漆黒のマントに身を包みメビウスの姿、その肩に一目見て分かったが、節子ちゃんだと確信した。


 そんなメビウスと目が合い。私を見るとすぐに不敵にその表情を変える。


「メビウス」


 立ち向かおうとした瞬間に、心にみゆきちゃんの声が木霊した。


『メグさんダメ。状況的に形成が悪すぎる。そのまま立ち向かったら、犠牲者が増えるだけ』


『じゃあ、どうすれば』


『説明している場合じゃない。みゆきがホーリープロフェットで援護する。だからみゆきの言う通りにして』


『分かった』


『メビウス六時の方向』


 みゆきちゃんの心の声に向かうとメビウスの攻撃よりも早くホーリープロフェットで察知して、メビウスがマネキンと化した観客に衝撃を与えて殺すつもりであり、みゆきちゃんの言われた通りにメビウスの六時の方向つまりメビウスの真下だ。


 即座にメビウスの真下につき、みゆきちゃんの予言通り、メビウスは真下に衝撃波を放ち、それを私は両手で受け止めてかき消した。


 安心したのもつかの間、『今度は五時の方向』『次四時』『次七時』次々とメビウスの攻撃をみゆきちゃんのホーリープロフェットで予言してもらい、私はそれを次々と回避していく。


 攻撃を回避してメビウスは不敵に笑っている。私達をもて遊んでいるのか?


 とにかく油断はしてはいけない。


「遊びは終わりだ」


 メビウスは嘲笑う。


『次は舞台の方向にメビウスはアスターの二人を粉々にする。今度の衝撃はハンパないよ』


『分かった』


 メビウスはみゆきちゃんの言う通り、片手を上げて邪悪に満ちた禍々しい気をためている。


 私は移動しながら、両腕に力を込めて、受け止める準備をする。


 そしてメビウスはため込んだ邪悪な気をまとったオーラを放つ。


 ちょっとヤバいかも。もしかしたら受け止められないかも。


 でも私が受け止めなくては私の後ろでタイムトリップでマネキンと化したアスターの二人が粉々に砕けて死んでしまう。


 そんなのは絶対に嫌だ。


 凄まじい邪悪に満ちた気のオーラが迫り、すごい早さなんだけど、なぜかすべてがスローモーションのように感じて、ゆっくりと近づいてくる感じだ。


 私は両手を構えて、気を引き締め、受け止めた。


 すごいパワーだ。少しでも気を抜いたら、アウトだ。


 でも私は負ける訳には行かない。


「負けるわけにはいかないんだー」


 何だろう。私に何か見えない力が漲り、すべての邪悪な障害をぶち壊せるような感じだ。


 そして、その邪悪なパワーをかき消した。


 メビウスの方に目を向けると、不敵な笑みを浮かべて、みゆきちゃんのいる方向へと邪悪に染まった衝撃波を放つ。


「死ねえ!」


『みゆきの事は良い。とにかくメビウス・・・節子ちゃんを・・・』


 何だろう。追いつめられると、時がものすごいスローモーションに見えるのはなぜだろうか?


 みゆきちゃんを助けなければ。メビウス・・・何て卑怯なんだ。


 追いつかない。このままではみゆきちゃんが死んじゃう。


 メビウスはみゆきちゃん一人を狙って撃った。


 みゆきちゃんは覚悟を決めて、そのメビウスが放った邪悪な気をよける余裕がない感じだ。


 何とかしないとみゆきちゃんがみゆきちゃんが・・・。


 その時、何が起こったのか私の頭の中に様々な記憶が駆けめぐった。


 実の母親に虐待を受けていた記憶。


 エイちゃんの愛情に包まれていた記憶。


 優しくしてくれた塾のみんな。


 メビウスとの初めて戦った時。


 みゆきちゃんと初めて出会った時。


 わがままなみゆきちゃん。里音。聡美ちゃん。五月さん。聡美ちゃんがやっている部活の試合を観戦しに行こうとエイちゃんと約束した時。アスターである盟と梓との最初にあった時の記憶。みゆきちゃんの大好きなアニメ美少女御子奈々。美少女御子奈々の信条。片山さん。五月さん。豊川先生。このままじゃあ。みゆきちゃんが。みゆきちゃんが。早く早く。すべてがスローモーションなのに、何で私までスローモーションでしか動けないの?


 早く。お願い。


 様々な記憶が私の脳裏に描写される。


 聞いた事がある。


 人間境地にたたされたとき、その危険を回避する為に、様々な記憶の引き出しを開けると。それでこんなにも私の脳裏に様々な記憶が駆けめぐっているのだろう。


 その間まさに刹那的な、まさに一秒にも満たない時間の間に駆けめぐっているんだ。


 そしてこれが時間的に最後の引き出しになるだろう。


 その引き出しを開けると、みゆきちゃんとリンクと出た。


 死を覚悟しているみゆきちゃんの心に伝える。


『みゆきちゃん。私はみゆきちゃんを信じているから』


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