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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
24/89

新たなる予感


 プロローグ

 

 スラム街の町のダンスホールで軽快な音楽に乗せて美しい歌声で歌う二人の姉妹がいる。


 彼女達が歌うリズムに合わせて、みんな踊っている。


 その踊りに振り付けなど存在しない、ただリズムに合わせて腕を振ったり腰を振ったりして、踊るだけ。


 ただそれだけで明日頑張れる。明日また嫌な仕事に対して意欲的に取り組める。中には狼藉を働き居場所をなくした人、人生に溺れて、麻薬に手を染めてしまったもの。


 ここはまさに秩序のない堕天使達の行きつけのダンスホールだ。


 暴力、犯罪、レイプは日常茶飯事。


 ダンスホールに来なくなったと思ったら、その人は死んでいたって事を知っても誰も悲しみやしないし、驚きもしない。


 私はダンスホールの人混みをかき分けながら、ゆっくりと舞台の方に近づいていく。


 私はその双子を知っている。


 盟と梓。



 また夢を見てしまった。


 でもこの夢はただの夢じゃない気がしている。


 最近塾に盟と梓の双子の姉妹が来ていない。


 夢の中で彼女達は天使のような歌声で、観客達を魅了して歌っていた。


 時計を見ると午前五時を示している。


 夢の事を予知夢的な何かなのかは分からないが、後でみゆきちゃんに相談して考えた方が良いだろう。


 そのみゆきちゃんは天使のような寝顔で小さな寝息をたてて眠っている。


 今起こすのは悪いと思うし、いやでも以前、『外に出るなら、どうしてみゆきも一緒に連れてってくれなかったの?』と言っていたので起こそうと思って、体を揺すろうと思ったが、何か今は一人で考えたい気分なので、一人で外に出ることにした。


 とにかく悩み事や考え事って、部屋でこもりながらしていると、ネガティブな方向に陥る傾向があるから、それならば、こうして外に出て何か目的意識を持ちながら考えた方が、問題がスムーズに解決の糸口に導かれる時がある。


 早速着替えて外に出て、太陽の光を浴びて、今日も一日全力で頑張れる気がして、力が漲ってくる。


 いつものルートで、民家を走り、とある河川敷にたどり着き、何かすごく爽快な気分になる。


 とにかく私が見た予知夢は、最近来なくなった盟と梓の双子の姉妹の事だった。


 心配になっていたが、とにかく後で豊川先生に相談して、みゆきちゃんに力を借りたいと思っている。



 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **



「なるほど、麻美ちゃんの時もそんな予知夢を見て、それが現実に起こった」


「はい。あの時は何も気に留めずにいたんですけど、実際起こって、それで今回も予知夢的な何かを見て、見過ごしてはいけない気がして」


「確かに見過ごしてはいけない気がするよ僕も」


「こんな予知夢を見る私はまた吸血鬼としての何か能力がまた目覚めたのですか?」


「いや、僕が知る限りではそれはない。はっきり言って僕も原因は分からない」


 ちょっと不安になる私。


「とにかくその予知夢だけど、差し支えなければ詳しく話してくれないかな?」


「はい」


 私は豊川先生に今日見た夢の事を語った。


「なるほど、盟ちゃんと梓ちゃんか・・・確かにあの二人、この数ヶ月顔も見ていないし連絡もないね。僕も心配だったんだよね」


 豊川先生の話を聞いて私も心配になってきた。


「とにかく後で連絡取ってみるよ」


「私も出来る限りの事はします」


 パソコン室から出て、私は盟と梓の事で英治メモリーに思いを寄せた。


 実の父親に二人は虐待を受けて、海外に売り飛ばされそうになったところを、豊川先生に助けられたと言っている。


 どのように助けたかは不明だが、豊川先生はもしかしたら、何かすごい伝があるのかもしれない。


 色々と考え巡らして、立っていると、


「メグさん」


 ちょっと怒り気味に私の名を呼ぶみゆきちゃん。


「あっ、みゆきちゃん。ちょうど良かった。出来ればまた力を貸して欲しいんだけど」


「自分の要求をみゆきに求める前に、みゆきがどうして怒っているか考えてよ」


「えっ?」と何で怒っているのか考えると、そう言えば、昨日の約束を破ってしまったんだっけ。だから私は「ごめん」


「昨日みゆきも一緒に外に散歩しようって言ったじゃん」


「ゴメン。みゆきちゃん気持ちよさそうに眠っていたからさ」


「起こしてって言ったじゃん」


「分かったよ。この埋め合わせはするから、また力を貸してくれない?」


 みゆきちゃんを上目遣いで見つめて、懇願する。


「じゃあ今度の休みに水族館に行きたい」


「えー」


 不服の声を漏らす私。休みはいつも決まってエイちゃんとの二人きりの華やかなデートの予定だ。いくら埋め合わせだからと言って、朝の散歩の約束を破った事と割に合わない気がする。


「何?出来ないの?じゃあみゆきは力を貸さない」


「分かったよ。連れて行ってあげるから」


「本当に?」


 目を輝かせてみゆきちゃん。


「だから学校が終わったら、力を貸して」


「分かった。でも約束してね」


 私とみゆきちゃんは小指と小指を絡ませて、『指切った』と約束した。


 私は一つため息をして、「週末のデートはお預けか・・・仕方がないな。盟と梓の事が気になるからね」


 朝食も済んでエイちゃんと聡美ちゃんとみゆきちゃんに「行ってらっしゃい」と言った。


 そしていつものように私は高齢の東大合格を目指す徳川さんを待つことに。

私は徳川さんに今日教える課題を予習している時に徳川さんは塾にやってきた。


「ようメグさん。今日も張り切って行くのでよろしく」


「こちらこそ」


 今日も私は心配事を胸に勉強を教える。


 毎度の事だが、やはり私は何かと心配事、あるいは悩みは常に背中合わせだと人知れずため息を付いたが、昨日徳川さんにため息を付いたら幸せが逃げると教えられた事を思い出して、とっさに吐いた息を吸い込むように、幸せを逃げないようにした。


 そうする事で、心なしか悩みを決別させ、徳川さんに勉強を教える事に専念できた。


 お昼、私は屋上でぼんやりと盟と梓の事を考えてしまう。


 あの二人、元気にやっているだろうか?


 ちゃんとご飯食べているのだろうか?


 そう思うとみゆきちゃんが早く帰ってこないか、気が急いてしまう。


 午後も徳川さんに勉強を教えて、そしてみゆきちゃんは帰ってきた。


「おかえり、みゆきちゃん」


「ただいま」


「早速だけど、みゆきちゃん」


「分かっているけど、約束覚えているよね?」


「覚えているって大丈夫だよ」


「それで誰の予言したいの?」


「以前、ここの塾に盟と梓って双子がいたでしょ」


「あーあの二人」


「あの子達のこと何だけどさ、予言できる?」


「みゆきを誰だと思っているの?」


「分かったからみゆきちゃん」


 完全に私はみゆきちゃんに媚びを売っていた。


 早速準備するために、部屋に戻った。


 部屋には二人きり。


 みゆきちゃんはポケットからビー玉サイズの水晶玉を取り出して、それを握りしめ目を閉じた。


 みゆきちゃんの能力であるホーリープロフェットの発動だ。


 そんなみゆきちゃんの姿を見ていると、何か得たいのしれない何かを感じ取る事が出来た。


 そして一瞬辺りが、夢で見たダンスホールの様子が描写されるように映った。

 

 何、ここは?私の中で何が起こったの?


 我にかえると元にいたエイちゃんの部屋だった。


「メグさん?どうしたの?」 


 みゆきちゃんに声をかけられ、ハッと我に返る。


 いったいどうしてしまったのだろう?


 それよりも今は盟と梓の事をみゆきちゃんに予言して貰っているんだった。


 みゆきちゃんはどうした事か、急に悪寒がするような表情で身を震わせ、かがみ込んだ。


「どうしたの?みゆきちゃん」


「盟ちゃんと梓ちゃんの居場所は特定できたけど、何か不穏な気配が近づいている」


「誰なのそれって」


「分からないけど、その姿を頭の中で描写しようとすると、みゆきもおかしくなりそうだから、それ以上は探れない」


 みゆきちゃんは力を使って、呼吸が荒くて、精神的に参っている感じだ。


 みゆきちゃんを無理をさせたことに対して私は申し訳なく思い、とりあえずみゆきちゃんに。


「ゴメンみゆきちゃん。無理な事をさせてしまって」


「いいや。みゆきも盟ちゃんと梓ちゃんの事が心配だったから。とにかくあの二人何かヤバい者の手が迫ろうとしているのは確かだよ」


「とりあえずみゆきちゃん。いったん深呼吸して、横になって休んで」


「分かった。それと約束覚えているよね」


 心が疲弊してもその事を考える余裕があるとは、実を言うと週末の一度きりのエイちゃんとのデートは楽しみにしているので、うやむやにしようと考えていたが、どうやらそれも出来そうもない。もしそんな事をしてしまったらみゆきちゃんはやさぐれてしまい、二度とホーリープロフェットで力を貸してくれなくなってしまうかも。


 とりあえずみゆきちゃんを少し休ませ、二人の居場所を聞いてみようと思う。


 さて徳川さんに勉強を見ている最中に抜け出してしまったんだな。


 勉強室に戻ると、徳川さんの様子がおかしかった。


「徳川さん?」


「俺が東大に行くなんておこがましいよな」


「どうしたんですか?突然」


「ABCがろくに書けないんだよ」


 自棄になり、机の上を思い切り叩く。


 私は徳川さんにこのような時どうすれば良いのか、困惑してしまう。


「徳川さん。一歩一歩ですよ。小学校から勉強を積み上げてきて、今こうして中学レベルに達したじゃないですか」


「でもそれまで六ヶ月もかかったし、その勉強も忘れている箇所が多くてよ」


 しまいに涙まで流してしまった。


 ここは冷静にならなくてはいけない。私は大きく深呼吸して、徳川さんに優しく言い掛ける。


「人間は一日の事を六割忘れてしまうので、それは仕方がないですよ」


「仕方がないのかよ」


 不安をあおってしまった。でも私は冷静に、


「人間は誰だって完璧じゃないですよ。だから繰り返し繰り返し、書取を毎日少しずつやっていって、次のステップにつなげていきましょうよ」


「そうだよな。悪いなみっともないところを見せちゃって」


「とにかく徳川さん、深呼吸して気持ちを落ち着かせましょう。お腹に手を当てて大きく吸い込み、お腹を膨らませて、そしていったん留めて、そうしたら、吸った息をお腹がペタンコになるまで吐き出します。その繰り返しです」


 私の言う通りになったら徳川さんは落ち着いてくれた。


「何か落ち着いてきたよ」


「とにかく徳川さんは頑張りやさんだから、頑張りすぎて無理をしないように程々にしてくださいね。もしどうしても分からない問題が合ったら一緒に考えましょう。

 とにかく受験は毎日の積み重ねが大事ですから」


「よし、とりあえずもうひと頑張りして、終わらせるよ」


「あまり無理しないように、その労力を明日に繋がるように残しておいてくださいね」


「おう」


 徳川さんは相変わらずに東大東大って連呼している。


 私は東大に限らずにどこでも良いから大学に行って、そこでどの教科の勉強をしたいか考えてほしいが、頑固者の徳川さんには私の説得は通じない。


 でも確かに勉強に携わってない徳川さんが東大受験は無謀かもしれないが、本人がやる気があるなら、私達は全力で協力する。


 ここに来る授業料だって徳川さんの少ない年金から払われているのだから。


 まあ、うちのフリースクールは、本人が何をしたいか?その事について一緒に考えて行こうと言うのが本来の趣旨だ。


 東大だろうが、何だろうが、本人がやる気があるなら全力でバックアップする。その為にお金を支払って貰っている。


 ここのフリースクールは豊川先生が引きこもりの生徒に無償でメールやラインなどで相談に乗り、そのエールを送る慈善事業に見えるが本来は商売と変わらない。


 それにここの塾、かなりの借金が膨らんでいるみたいだ。その額は詳しくは教えてくれないが、考えただけで不安に思ったりもする。

 それで、みゆきちゃんの予言で競馬や競輪などを予想させて、借金返済に充てよう何て考える時もあるが、それは何かしてはいけない気がして、そう思う度に私の中でブレーキがかかる。


 


 ******   ******   ******   *****

 *********   ******   ******   **


 

 さて、徳川さんも帰った事だし、みゆきちゃんの様子を見て、盟と梓は今どこにいるのか聞いてみようと思う。


 部屋に戻ると、みゆきちゃんはアニメに夢中だった。


「何のアニメ?」


「美少女御子奈々」


「面白い?」


「すごく面白い」


 どうやらテレビに夢中になっているみたいなので、それを中断させて話を聞くのは酷だと思うので、私もみゆきちゃんが見ているアニメが終わるまで一緒に見ることにした。


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