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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
23/89

川上メグの日常2

前回のあらすじ。


 メモリーブラッドの事を豊川先生に相談したが、使うことは反対されたが、豊川先生の血を吸いたければ、いつでも申し出て良いと言われ、私は願ってもないことなのに悩み葛藤した。


 そんな中、私のいつもの日常が始まる、東大合格を目指す、型破りな高齢者の徳川さんに勉強を教えて、そんな中私は、麻美ちゃんの事が心配になり、勉強が一段落した昼休みに、私は麻美ちゃんのいじめられた辛い気持ちを想像して悶え苦しんだ。


 でも私は一人じゃなかった。

 

 私らしくあるべき場所がある事はとても幸せなことだと私は思っている。



 お昼を食べ終えて、徳川さんの勉強の続きを見ている。


 質問されたら一緒に考えて、徳川さんが理解するまでつき合う。


 そうでない時は、私は午前中と同じように、徳川さんの勉強している傍らで、私は私の勉強している。


 でも勉強って悩み事が多いと集中できない。


 私は今朝の事で悩んでしまう。


 それは豊川先生が血を吸って良いと言う事に私の心は葛藤している。


 願ってもないことだと思うが、私の中で何かが拒んでいる。


 何が私をそんなに拒んでいるのか考えようとするが、頭がおかしくなりそうなので、深呼吸して気持ちを整えて、とにかく今は徳川さんの勉強をサポートする事を言い聞かせる。


 そうじゃなきゃ、懸命にやっている徳川さんに失礼だ。


 でも人間は常に何かしら悩みを抱えて毎日を生きている事に気づかされる。


 でも昨日今日と衝撃的な事がありすぎて、その思いは大きすぎる。


 でも、こうして徳川さんの勉強を見ている時に、ふつふつと思い浮かばないようにしたい。


「メグさんよ。さっきからそわそわしているけど、何か心配事でもあるんじゃないか?」


「い、いや別に」


「なら良いんだけどよ。もし良かったら、頭の悪い俺でも話くらいは聞いてあげられる事は出来るからよ」


「ありがとうございます」


「おう。まあ、悩み事でも何でも解決までは至らないけど、話すだけでも気持ちが楽になる時があるからよ」


 と言って徳川さんは勉強の方に頭を切り替える。


 言われてみればそうだ。悩み事や心配事を誰かに話すだけで、気持ちが楽になるときがあるって、知っていたけど。徳川さんに改めて気づかされた。


 この三ヶ月徳川さんに勉強を教えて、その人柄を見てきたが、悪い人ではなく、良い人だよね。


 そんな徳川さんをちらりと見て、今悩んでいる事を話そうかどうか迷っている。


 でも徳川さんに話したら、徳川さん良い人だから、私の悩みを聞いて、それが重荷になり、勉強に集中できなくなると思うから、やめておいた方が良い。

 

 だから徳川さんのその優しい気持ちだけを受け取り、私の気持ちは心なしか楽になった。


 そして気が付いた。私は答えをすぐに出そうと焦っていたことに。


 それに気が付かせてくれた徳川さんに、私は人知れず心の中で『ありがとう』と呟き、歴史の勉強に移った。


 

 ******    *******   ******   *** *****   ******   *******   *****



 夕方になり、徳川さんも勉強を切り上げて帰って行った。


 私も私の勉強も出来て、気持ちも整理した事で、すっきりしている。


 とにかく豊川先生の血を吸って良いと言う件に関しては、いつでも良いと言っていたのだから、すぐに答えを出さないで、じっくり長い目で考えていけば良いんだ。


 それと麻美ちゃんの事も心配だが、別に大事に至った訳じゃないから、あまり深刻に考えなくて良いと気持ちの整理が付いた。


 こうして、勉強でも何でも、何かに没頭していれば、悩み事に苛むことなく、いつの間にか気持ちが楽になっている時があるって、今日改めて分かった。


 とにかく私は目の前の道をまっすぐと進めば良いのだ。


 後込みしていると、妙な事に悩んで苛むからね。


 徳川さんの次は、キャバクラだ。


 私が勤めるキャバクラは以前は夜中しか勤務することが出来なかったが、こうして日中でも外に出られるようになり、勤務時間は夕方の午後六時から夜の午後十一時までの間、しっかりと働かせて貰っている。


 私のお姉さん的存在の五月さんにも、店長にもお客さんにも気に入られて、私は店でナンバー2の実績にまで上り詰めた。

 ちなみにナンバーワンは五月さんだ。

 その差は圧倒的だが、いつか越えてやろうと、五月さんはお姉さんでもあり、ライバルの存在でもあり、私が私でいられる存在意義を高めるための大切な仲間だ。


 時計は午後五時半を示している。


 夕食は早めにとり、みんなとは一緒に取る事が出来ないのが少し残念だが、精一杯キャバクラで働きたいので、それはそれで仕方がないと思う。


 私は自分の夕食を済ませて、塾のみんなにも豊川先生にも「行ってきます」の挨拶をして外にでる。


 九月に入ってから、日照時間は短くなり、そろそろ秋が来るのだとしみじみ思った。


 私が勤めるキャバクラに到着して、控え室に入って、活気よく「おはようございます」と挨拶をする。


 そこには私を慕ってくれる五月さんに、その他にも私の事が気に入らない人も何人かいる。


 でも私はそれでも挨拶はきちんとして、気持ちよく仕事をしたい。


 まあ私を嫌っている人は挨拶はおざなりに済ますけど、私を慕ってくれる五月さんは笑顔で私に対応してくれる。


「五月さん。今日も一日頑張りましょう」


「相変わらず元気ね」


「何を見ているんですか?」


 スマホに釘付けの五月さんに聞いてみる。


 すると五月さんは私にスマホの画面を見せつけ、内容を読んでみると、SNSでのエールの呟きが記されている。


 そんな優しい五月さんに何か心がほっこりとして、


「五月さん。私も頑張りますから」


「本当にあなたはかわいい子ね」


 頭を撫でられて、子供扱いされている感じがして嫌にも思ったが、それほど私の事を五月さんは慕っている証拠だと、前向きにとらえることが出来た。


 早速夜の朝礼が始まって、お客様への五大用語、詳しくは伏せておくがそれらを一同復唱して、開店する。


 開店直後、私と五月さんは控え室で待機している暇はない。


 すぐにお客様の指名が入り、私はお客様に切に対応している。


「メグちゃん。会いたかったよ」


「ご指名ありがとうございます。恩田様」


「メグちゃん聞いてよ。本当に今日は会社でムカつく事があったんだから」


 私はお客様である恩田様に真摯に対応している。


 会社の連中を皆殺しにしてやりたいだの、私に会わなければ明日仕事なんてやってられないよ・・・何て、愚痴をこぼす。


 私達キャバ嬢の仕事は、そんなお客様に癒しを与える存在でなければ、勤まらない。


 まあ中には、適当に盛り上がって、ちょっと体を触らせれば、お客様は満足に帰ると言っているが、まあ完全には否定は出来ないが、それだけじゃないと私は思っている。


 私は偉そうな事を言うようだけど、キャバ嬢は一種のカウンセリング療法だと思っている。


 私は周りからかわいいなんて思われているけど、かわいいだけではダメだ。とにかく人を癒す魅力は、私から言わせれば、私らしい姿を自信を持って接する事だと自負している。


 その証拠に五月さんに到底かなわないが、この店のナンバー2でお客様に引っ張りだこだ。


 でも職場の中では私と五月さんをねたむ輩がいて、私たちの事を悪い噂を流したり、皮肉たっぷりの嫌がらせなんて日常茶飯事だが、五月さんが入る事で、パニックに陥ったりはしない。


 おかしくなりそうな時、ただ五月さんを側で感じられればそれで良いと思っている。


 仕事が終わって一息ついて、私はふと麻美ちゃんの事を思い出す。


 やっぱり心配なんだな。


 今から病院に行って様子を見ようと考えたが、びっくりしてパニックになるかもしれないから、今はそっとしておくしかないよね。


 まあ今日も一日乗り切れた事に充実した気分でいた。


 私は今、本当に毎日が楽しい。


 まあ、色々と悩みや不安は日常的に存在しているが、豊川先生は言っていたが、悩みのない人間はスーパーマンだ。


 私たち人間はそんなスーパーマンになれないのだから、そんなのはハリウッドで役者に演じさせる事に任せておけばいい。


 家に到着して、玄関に入ると、パソコン室から明かりが漏れていて、きっと豊川先生が作業しているのだと思って、とりあえず『ただいま』の挨拶をして置こうと思う。


 挨拶は済んで、豊川先生はいつものようにほっこりとした笑顔で「ご苦労さん」と労ってくれる。


 本当に今日も疲れた。


 部屋に戻るとエイちゃんがデスクに向かって勉強をして、みゆきちゃんはぐっすりと健やかな寝顔で眠っている。


「エイちゃん。今日も徹夜で勉強?」


「ああ、とにかく大学で色んな事を学びたいから、本当に寝る間も惜しいほどなんだよな」


「あまり頑張りすぎないでね」


「そんな言い回しをしてくれる奴はお前くらいだよ。ありがとな。もう少しやったら眠るから、お前も今日は疲れただろ。だから寝ろよ。明日も早いんだろ」


「うん」


 私はみゆきちゃんが眠っているベットに一緒になり、布団をかぶり、眠りにつこうと目を閉じる前に、私はエイちゃんがデスクに向かって勉強している姿を見る。


 エイちゃんも朝早く起きて、大学で勉強して、その後コンビニでバイトして、帰ったら、再び勉強。


 エイちゃんも苦労しているんだな。でも私とエイちゃんはそんな苦労を共に出来る恋人同士で、密かに誇りに思ったりもする。


 そして私は目を閉じて、勉強しているエイちゃんに心の中で『おやすみ』と言ってその目を閉じて眠りに入った。


 メモリーブラッドだけど、もうエイちゃんの心を探る必要はないと思っている。


 まあ、この事はエイちゃんには秘密だけど。


 それと豊川先生の血は今のところは保留にしておいた方が良いな。


 人生を達観していると言っても過言じゃない豊川先生の血を吸えば、私は鬼に金棒かもしれないが、でもそれはいけないような気がする。


 私はまた同じ事で悩んでいる。


 それと麻美ちゃん。


 まだ容態は聞いていないが、大丈夫なんじゃないかと思えてきた。


 だから私は麻美ちゃんを信じる。


 もし麻美ちゃんが私の力を必要とするならば、私は喜んで力になるよ。


 そして麻美ちゃんの事はもう心配はいらないかもしれない。


 麻美ちゃんは一人じゃないから。


 私も一人じゃない。


 こうして見えない糸で私たちは繋がっている。


 まあ、こんな事はあまり公言するのは良くないと思うから、心の奥底にそう言い聞かせれば良いのかな?


 きっと麻美ちゃんも私たちの事を思い出し、再び立ち上がり、歩み出すだろう。


 最初は一人だがやがて、みんなが集まり、旺盛な意欲をかき立てるだろう。


 とにかく私はポジティブに考える。


 幸せは歩いてこないのだから。


 だから私がこの暗中模索の人生の中で、歩み続けるしかないのだ。


 どんな悲しい問題が降りかかろうと、とにかく歩み続けるしかない。


 今の歩みを私は決して止めたりはしない。


 今出来る事をやり続け、私は永遠の幸せへと誘われる事を信じている。


 とにかく今は歩み続ける。


 そして私は感じていた。


 不穏で見えない何かが私たちに迫ろうとしている事に。


 それは何なのか?


 それはいくら勉強しても分からない明日にある事は分かる。


 何か分からないけど、私もみゆきちゃんじゃないが、未来を探知する能力が芽生えてきた。


 麻美ちゃんが自殺未遂の時もみゆきちゃんよりも先に私はかすかだが感じていたんだ。


 でもそれは何の取り留めも根拠もないものだと思って気には留めなかったが、みゆきちゃんのホーリープロフェットで予言してもらってはっきりしたんだっけ。


 何なのか?このかすかに感じる不穏な見えない力は?


 看過しない方が良いだろう。


 だから明日、みゆきちゃんと相談した方が良いかもしれない。


 私とみゆきちゃんは最高のコンビだからね。


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