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メモリーブラッド0  作者: sibatamei
第2章
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メモリーブラッド

 


 緊急事態だ。

 

 私とみゆきちゃんはお互いの能力を駆使して手がかりのあるところに向かっている。


 私はみゆきちゃんを負ぶって、みゆきちゃんはホーリープロフェットを駆使して手がかりを探っている。


「みゆきちゃん。麻美ちゃんの手がかりは?」


「廃墟のビルから、生きる事を・・・って麻美ちゃん自殺するつもりだよ」


 みゆきちゃんのホーリープロフェットを頼りに私は廃墟とかしたビルと聞いて思い当たるところは、いっぱいあり過ぎて分からない。


「もっと詳しい事は分からないの?」


 みゆきちゃんはビー玉サイズの水晶玉を握りしめ予言で手がかりを探る。


「南都六斗星の方角って言っているけど」


「訳が分からないよ」


 麻美ちゃんの命が散るのに刻一刻と迫っているような気がしてパニックになりそうだった。


 とにかく落ち着け、そう思っていったんみゆきちゃんを降ろして、深呼吸をして気持ちを落ち着かせて考えた。


 南都六斗星って何だと思って、考えると英治メモリーが、それは夏の南の空に射手座と連なっている六つの星みたいだ。


 南の空ってどっちだ。と英治メモリーは教えてくれた。


 ここは町のど真ん中で南の空を確認したいが、ビルに遮断されて見ることはできない。


 それにもう真夜中なので人はあまりいないので、とっさに私は思いつき、


「みゆきちゃん。つかまっていて」


「うん」


 みゆきちゃんは私の背中にしがみつき、


「しっかりつかまっていてね」


 私はその場から思い切りジャンプして、南の空の方を見た。


 あれが南斗六星、その方角に廃ビルを発見して、吸血鬼である私の肉眼で確認してみると、そこには麻美ちゃんが今にもビルから飛び降りようとためらっている姿が映り、私は気が気でなくなり、いったん着地して、ビルからビルへと跳躍して、その廃ビルの天辺までたどり着いた。


「メグちゃんにみゆきちゃん。どうして?」


「どうしてだろうね」


 穏やかに笑いながら麻美ちゃんとの距離を縮めようとすると、


「来ないで」


 私はいったん立ち止まって、


「バカな事はやめてよ。麻美が死んだら、私とみゆきちゃんを含めて悲しむ人間はいるんだよ」


「もう私の事はほおって置いてよ」


「とりあえず話くらいは・・・」


 その時、強風がわき起こり、麻美ちゃんはバランスを崩して・・・。





 私が吸血鬼の力を持ち、人間として生きられるようになったあの日から三ヶ月、私とみゆきちゃん、そして私の彼氏であるエイちゃん、それに私と縁がある人たちとともに平和な日々を送っていた。

 

 そんなある日、私は豊川先生の助手として働く事になり、今日みたいな塾の生徒、もしくはメールでエールを送っている引きこもりの生徒達に何か合った時に緊急で現場に向かって欲しいと頼まれている。


 今日は麻美ちゃんが豊川先生に自殺をほのめかすメールを送り、行方が分からなくなったので、私の吸血鬼としてのずば抜けた身体能力と、予言を駆使するホーリープロフェットの使い手のみゆきちゃんと協力して、麻美ちゃんを突き止める事ができた。


 



 さすがにこれは痛いよ。


 でも麻美ちゃんは無事だ。


 私は麻美ちゃんがビルから落下した瞬間に、私は無我夢中で、落下する麻美ちゃんを吸血鬼としての身体能力を最大限に駆使して、麻美ちゃんを抱き留め、そのまま落下して私は麻美ちゃんのクッションになってあげたのだ。


 麻美ちゃんは気を失っている。


 そこでみゆきちゃんが駆けつけ。


「メグさん。大丈夫?」


「なん・・・とか」


 落下するとき麻美ちゃんの体重と私の体重で、落下速度は速くなり、地面にたたきつけられるその衝撃は、普通の人間だったら、バラバラになっているだろう。

 

 吸血鬼の私でさえ、これほどの衝撃にはさすがにこたえて、しばらくは動けそうもない。


 とにかく麻美ちゃんを無事に助けられて良かった。


 



 ******・・・・・・*****・・・・*****・・・・・・

 *********・・・・・****::::****::::**




 豊川先生の話によるとこのような事になったのは、麻美ちゃんは今日夏休みが終わった新学期に学校に登校しようと決意を固めていたみたいだ。


 それでいざ学校に登校しようとしたのだが、学校に行く事が恐ろしく怖くなり、結局行くことは出来ずに、そんな臆病な自分を責めずにいられず、自分自身を追いつめてしまい、自殺未遂に至ってしまったのだ。


 夏休み前は、麻美ちゃんは悩み事に苛む様子は無かった事に、人の心は、安易に見えないものだと改めて思う。


 私の吸血鬼としてのメモリーブラッドを駆使すれば、そんな悩みを看破出来るのだが、この力は相手の血液を吸わなければ発動できないし、それに私はエイちゃん以外の血を吸ってはいけないと以前から釘を刺されている。


 それに私はもう人の血を吸う必要はなくなった。




 麻美ちゃんの事でいっぱいで夜も眠れず、気が付けば朝を迎えていた。


 ベットには私とみゆきちゃんが入り、エイちゃんはその下に布団を敷いて眠っている。


 時計を見ると午前六時を示している。


 みゆきちゃんもエイちゃんも、まだ眠っている。


 私はみゆきちゃんを起こさないように、ベットから降りて、床で眠っているエイちゃんを踏まないように慎重に歩いて部屋を出た。

 外に出てお日様の光を浴びて、寝不足だが、麻美ちゃんに対する悩み事が少しだけ、癒された感じだった。


 麻美ちゃんは今、精神疾患で病院で入院している。


 三日で退院するって聞いたけど、何か心配だった。


 昨日のことを思い出すだけで、鼓動が激しく高鳴り、深呼吸して気持ちを整えた。


 本当に危ないところだったんだよな。


 何となく手のひらを太陽にかざして、私の能力であるメモリーブラッドを使えるようにエイちゃんに事情を説明した方が良いんじゃないかな?と考える。


 エイちゃんは普通の人間として生きられるようになった私を知って空を飛びそうな程、喜んでくれた。

 まあ、豊川先生が私を吸血鬼に仕立てた事は伏せておいたが。


 そして私の力を余すことなく、塾のみんなにも知ってもらい、頼りになる友達として受け入れられている。


 まあ、メモリーブラッドの事はきっと豊川先生はこの能力の事を知っているだろうが、今だに打ち明けたことがないし、相談に乗ったことがない。


 私はメモリーブラッドを使わなくても、あまり必要ないと思って、普段から使わずにいた。


 でも今回の件で私は使えるようになれば、麻美ちゃんの力になれたかもしれない。


 心と言うものは安易に表情や態度で分からない。


 それは麻美ちゃんの悲しい笑顔に気づく事が出来なくて、分かったことだ。


 だからまず、豊川先生に相談した方が良いかもしれない。


 少し心地よい朝の空気を吸いながら、散歩をして、土手の花壇で秋に咲く千日紅やレッドサルビアやコスモスを眺めて、生きることのすばらしさを感じつつ、豊川先生にメモリーブラッドの事で相談する決意を固める。


 自宅に戻り、時計は午前七時を示していた。


 ちょうど玄関に入ったところ、エイちゃんが階段から降りてきて、


「おう。メグ。おはよう」


 と意気揚々と元気良さそうなエイちゃんを見て、麻美ちゃんの事で悩んでいた気持ちが少し和らいだ感じがして私も、「うん。おはよう」と笑顔で挨拶が出来て、すばらしい日常の始まりを実感することが出来る。


「みゆきちゃんは?」


「・・・まだ眠っているけど」


「あの寝坊助」


 すぐに叩き起こしたいところだが、新学期が始まってもまだみゆきちゃんは学校が決まっていない。

 それに昨日の疲れも残っているかもしれないし、寝坊助と思ったことは心の中で謝って置く。

 

 そこでパソコン室に行くと、豊川先生はソファーの上で横になってお疲れモードで休んでいる。


 メモリーブラッドの事を相談しようと思ったが仕方がない。


 とりあえず再びみゆきちゃんの様子を見に行こうと思って部屋に戻ると、みゆきちゃんは起きていて、私に気が付くと、


「メグさん。起きたならどうしてみゆきも起こしてくれないの?」


「いつも起こしているけど、起きないじゃない。無理矢理起こそうとすると怒るし」


 返す言葉が見つからないと言った感じで黙り込んでいる。


「とにかくみゆきちゃん。朝ご飯出来ているみたいだから、早く一階の食卓に行きなさい」


「はーい」


 と気の抜けたような返事をして下に降りる。


 まあ、みゆきちゃんは私の前では生意気な口を叩いているが、私以外の人に関しては小悪魔的な演出で媚びを売っている。


 はっきり言って、そんなみゆきちゃんを締めてやりたいと思ったこともあったが、何か憎めないし、みゆきちゃんは私の大切なパートナーだ。


 この三ヶ月、豊川先生のスタッフとして働き、みゆきちゃんのホーリープロフェットには何度か助けられた事もある。


 でもみゆきちゃんはホーリープロフェットを使う時、体力を大幅に消耗してしまう時がある。だからあまり無闇に力を使わせるのは良くない事を肝に銘じている。


 私も食卓に行かなければ。


 食卓に行くとみゆきちゃんはもう召し上がっているようで、豊川先生の奥さんである由美子さんに「おはようございます」と挨拶をする。


「はい。おはよう」


 この人、豊川先生の奥さんである由美子さんはエイちゃんと知り合ってから、あまり話したことがなかったが、こうしてスタッフとして任命されて、朝ご飯をいただいて毎朝顔を合わせる事になった。


 由美子さんは小説家で、朝食と買い物以外の時は自分の書籍でいつも小説を描いていると言っている。


 それに男勝りで、豊川先生もこのような人をお嫁に貰った事を手をやいていないかと思ったがそうでもない。


 この三ヶ月、二人の様子を見てみると、あまり家でも、はち合うことはないが、本当にバランスの良い関係を築いていて生活をしている。


 私もエイちゃんも豊川先生と由美子さんのような相思相愛的な関係を築いて生活することを夢見たりもする時もある。


 まあそれはそれで良いとして私も朝食をいただく事にして、手を合わせて、「いただきます」と言って、ソーセージから口にしようとすると由美子さんに、


「メグちゃん。野菜から食べた方が、健康には良いのよ」


 言われた通り、トマトから食べて、


「よし」


 何て言われて何かほっこりとしてしまう。


 私もこんなに優しいお母さん欲しかったな。


 朝食も食べ終わって、今日は聡美ちゃんが食卓にいなかったのは部活の合宿でいなかったみたいだ。


 ちょっと寂しい感じがしたが、まあそれは仕方がないだろう。


 そしてエイちゃんが学校に出かける時、玄関まで見送って、


「エイちゃん。気をつけて行ってきてね」


「おう。今日はバイトないから早く帰れると思うから、その時また語り合おうぜ」


 親指を突き上げ、にかっと笑って私はそんなエイちゃんを見て胸が熱くなり、手を振り、


「行ってらっしゃい」


 そしてエイちゃんは玄関のドアを開けて、学校へと出かけるのだった。


「新婚さんみたいだねあんた達」


 いきなり後ろから由美子さんの声が聞こえて、ビクッとして振り返り、由美子さんの笑顔を見ると、何かちょっとだけ、照れてしまった。


 いつもの朝だ。


 今日も平和で何よりだが、麻美ちゃんの一件でそう言い切る事は出来ない。


 パソコン室を垣間見ると、豊川先生はパソコンでいつものように操作をしている。


 私は「失礼します」と中に入り。


「はーい」


 と豊川先生は穏やかな返事を私にくれる。


「豊川先生、相談があるんですけど」


「何かな?」


「多分豊川先生なら知っていると思うんですけど、私の能力にその人の血を吸ったら、その人の記憶と能力を取り込む事が出来るみたい何ですよ。

 それを私はあえてメモリーブラッドって呼んでいるんですけど」


「・・・なるほど、メモリーブラッドか良いネーミングだ」


「ご存じですよね」


「もちろん知っていたよ。メグちゃんが質問してこなかったから言わなかっただけかな」


「今回、麻美ちゃんの件でこの力を駆使して入れば麻美ちゃんの力になれたんじゃないかと思うんですよ」


「うん」


「でもエイちゃんに私は他人の血を吸ってはいけないと釘づけられていて、無闇に人の血を吸うことが出来ないんですよ。

 つまり、このメモリーブラッドですが、豊川先生が許可してくれれば、エイちゃんの約束を破った事に良いわけが出来る。

 だからもし今回のように麻美ちゃんのような人と出会ったときに許可を得られればと思って・・・」


 豊川先生は黙っている。


 私は少し緊張している。


 そして・・・。


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